戸山香澄がポピパを結成する少し前、具体的にはおたえと一緒に家庭科室でギターを弾いていた頃のこと。
かつての仲間にして、かの伝説的バンド「ジ・エンド・オブ・センチュリー」の創設者――ダミアン浜田殿下こと、浜田イサミは、家庭科の先生に頼まれ、自分が担当するクラスに在籍する二人の様子を見に来ていた。
(はあ……。なんで私が。まぁ一応、学年主任だけど)と、ため息を吐きながら廊下を歩くイサミ。
すると家庭科室からギターの音色が聞こえてきた。
「これは……エレキギターの音? しかもキラキラ星? 一人は随分と拙いけれど……」
現役時代、年末のライブにゲストとして呼ばれるほどの知名度を持っていた彼女。ギタリストとしての腕前は、センチュリーの活動休止以前からプロ顔負けだった。そんな彼女にとって、目の前の演奏は稚拙なものかもしれないが、そこに込められた“楽しさ”には惹かれるものがあった。
しばし耳を傾けていると、時計の針が進んでいることに気づく。
「いけない。もうこんな時間……」
イサミは慌てて扉を開ける。
「あなたたちっ――!」
結局その後、家庭科の課題をほったらかしてギターを弾いていた二人を指導し、さっさと課題を終わらせさせることになった。
(ギターケースのカバーか……懐かしいわね)
そう思いながら、生地を縫い合わせている二人の姿を眺める。自分も中学時代、似たようなものを作った記憶が蘇る。あの頃は生地が足りなくて、マミやエミに少し分けてもらって仕上げたんだった。
それからというもの、イサミは戸山にギターを教える機会が増え、市ヶ谷の家にもよく出入りするようになっていった。
その中で、彼女は戸山香澄の“才能”に驚かされていた。
(まるで、ギターを弾くために生まれてきたような子……それは言い過ぎかもしれないけど)
一度教えたフレーズを、拙いながらも再現してみせ、次に来たときにはほとんど完璧にしてくる。
――こういうのを、きっと“主人公”って言うんだろうな。
ついていきたくなる気持ちも、分かる気がする。私にとっての“主人公”は、たぶんマミだった。小さい頃から趣味でギターを弾き、中学で中二病をこじらせていた頃、密かに書き綴っていたマミのポエムノート――その内容が、今やセンチュリーの代表曲として知られているのだから、人生は分からない。
(懐かしいな……)
自分は中三でセンチュリーを抜けた。抜けたくなかった気持ちの方が、今でも大きい。
インディーズ時代のライブ――“オール悪魔感謝祭”以降も、何度かゲストとして呼んでもらった。だからこそ、あの子たちにメジャーデビューの話が来たとき、正直、悔しかった。
(もし、あのときやめなかったら……一緒にメジャーデビューできていたかもしれない)
東京の大学に進学してからの4年間は、年末の黒ミサに呼ばれ続け、センチュリーの“レアキャラ”として定着した。そして、センチュリーのメンバーたちが通った花咲川女子学園で教師として赴任し、今に至る。
文化祭のゲストを誰にするかという話になったとき、偶然、知り合いであった松原さんの娘さんを通して「マミを呼べないか」と打診してみた。
正直、あの舞台でマミともう一度演奏したいという個人的な願望もあった。でも、まさか――初代センチュリーが全員そろうなんて、思ってもみなかった。
(そういえば、この前“チュチュ”って子に『私のバンドに入らない?』って誘われたけど……一体、何だったのかしらね)
今回も最後まで読んでくれてありがとうございました。
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