どうも、小暮マミです。
前回、私たちのバンドに5人目の悪魔が加わり、路上ライブを続ける傍らで、軽音部の正式な創設に向けた準備を着々と進めていました。
しかし――
教師陣や生徒会に部活創設のための書類を提出したものの、結果は却下。
顧問を引き受けてくれると言ってくれた先生も、申し訳なさそうな顔でこう言ったのです。
どうやら、私たちのバンドは路上ライブなどの活動が問題視されていたらしく、既に学校側から目をつけられていたのだと。
さらに保護者会からも、
「教育上よろしくない」
「行儀が悪い音楽」
といった、心ない声が多く寄せられており、学校としてはこれ以上関与を認められない、という見解になってしまった。
当然――私たちは、荒れました。
しかも全員が中学3年生。
そんな中、「くだらないことはやめて、勉強しろ」などと上から目線で言われる始末。
「なんでよ、なんでよ!」
一番荒れたのは、もちろんイサミでした。
ようやく念願のバンドメンバーが揃い、部活として正式に認められると信じていた彼女にとって、今回の却下はあまりに残酷でした。
今思えば、当然のように思える。
ここは令和の時代じゃない。私が前世で死んだあの時代ではなく、2000年代初頭。
“聖飢魔II”のような、ヘヴィメタルを広めた存在もいないこの世界では、誰もがこの音楽を「異質」と見なし、受け入れる素地すらなかった。
それでも私たちは諦めず、隣の市まで足を延ばし、ライブハウスを探して演奏を続けていた。
しかし――思うように客は入らず、どこに行っても門前払い。演奏を断られるようになっていった。
それに、私たちの音楽から活気が失われていったのは、他でもない、イサミの異変が原因だった。
「イサミ、いつまでそうしてるの?
貴女、自分で言ってたでしょ?
“私たちの音楽が通用するまで、頑張ればいい”って。
私たち、5人でメジャーデビューを目指せばいいって……!」
「うるさい……うるさい!
今年が……今年が最後のチャンスだったんだよ!」
「どういうことですか?」
エミが静かに問いかける。
「私……親父から最初に路上ライブをする時、条件を突きつけられてたんだよ。
“この夏までに結果が出なきゃ、進路は親父の言う通りにする”って。
メジャーデビューをちまちま目指してる時間なんか、もうないの!
私たちが5人揃うまでに、どれだけ時間がかかったと思ってるの!?」
「私とマミが同好会を立ち上げたのが、2年の冬。
正式な形で動き始めたのは、今年の2月。
エミが加わったのが4月。
初めての路上ライブが5月末。
祭りのステージに立ったのが7月の中旬。
そして……明日からはもう8月。
世の受験生は、もうとっくに動き出してるんだよ……!」
「なら、高校でも続ければいいじゃない」
「……私の志望校じゃ、バンドなんか――『バチンッ!』」
突然、涼子がイサミの頬を叩いた。
「ふざけんな、あんた!
あーしを“そんな期間限定のモン”だと思って、誘ったのかよ!?」
「落ち着きなさい、イサミ! 涼子!」
「うるさいっ! マミは、あーしと浜田、どっちの味方だし!」
「……私はね、今回は涼子の味方。
私もあんたにバンドに誘われて入った身だけど……
それを“期間限定”のつもりで考えてたんなら、私は許さない」
「マミ……わかってくれ……
今年じゃなきゃ……ダメなんだ……」
「それを言ってくれなきゃ、わからないって言ってるの。
……受験勉強だけが理由じゃないでしょ。
他に、何かあるんじゃないの?」
「あ、あの……」
静かに手を挙げたのはエミだった。
「どうしたの? エミ」
「イサミさんが焦っているのは……私にも責任があります」
エミは語り出した。
彼女は頭が良く、いつもテストでは学年トップ。
高校ではより高い学力を求めて勉強を続け、本場でハードロックを学ぶため、アメリカに留学することを目標としていた。
これまでの実績により、アメリカへの留学も視野に入ってきた。
でも――その前に、どうしてももう一度、大きなライブがやりたかった。
だからこそ、学校からの許可を取るため、エミなりに準備や手続きを頑張っていた。
けれど、それもすべて、今回の“却下”で潰れてしまったのだ。
「……ここが、良い落とし所だったのかもしれません」
「落とし所⁉︎ ふざけてるのッ!」
「ふざけてなんていません。
私は……あなたたちと一緒にバンドを続けることも、アメリカに行くことも、どっちも大事な夢でした」
「じゃあ、なんでそれをイサミにだけ言って、私たちには相談しなかったのよ!」
「……余計な心配、かけたくなかったから……」
「その結果が、今の状況になってるのよ!」
「もう、いい!
我々“ジ・エンド・オブ・センチュリー”は、解散だ!
続けたい奴だけで続ければいい!
マミ、お前に次のリーダーを任せる!」
――そう言い残して、イサミは教室を飛び出していった。
「……すみません。こんなことになってしまって」
エミもまた、ベースのケースを背負って、静かに教室を去った。
「ふん……あんな奴ら、いなくてせいせいした……」
――そこまで言ったところで、涼子の言葉が止まった。
「……ごめん、あーし、今日は頭冷やしてくる。
明日また、これからのこと考えよ」
そう言って、涼子もカバンを持って出て行ってしまった。
結局、その日を境に涼子もこの教室には来なくなった。
残ったのは――私と、まりなだけだった。
まりなと私は、二人きりでも何とかならないかと、ライブハウスでヘルプ演奏をしたり、細々と活動を続けていた。
けれど、ある日――
「ごめん、マミちゃん……」
「お父さんの仕事の都合で、東京に引っ越すことになっちゃったの」
……私はその事実を、どうしても受け入れられなかった。
そして12月。私は、またひとりぼっちになった。
それから3ヶ月後――
私は高校生になった。
今回も最後まで読んでくれてありがとうございました。
主人公のバンドの進路
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