テンプレバスター!ー異世界転生? 悪役令嬢? 聖女召喚? もう慣れた。クラス転移も俺(私)がどうにかして見せます! 作:たっさそ
俊平を飲み込んだ
その威力は凄まじく、
「緑川………」
運良く、光彦の近くに落ちてきたその腕を拾い上げる。
つい先ほどまで生きていた学友。
腕を拾い上げても、その死に実感が沸かない。
「ぅおおおおおおおおおお!!!!」
ズズン!! と、両の拳を地面に叩きつけるのは、光彦の幼なじみである、松擦
無口な彼が、涙を流し、叫びながら地面を叩いている。
彼が地に伏しながら睨み付けるのは
「………………………!!!!」
肩に縁子をかついでその場からの離脱を試みていた、赤城雄大。
「あん? ぐべぇあ!!?」
その巨体で、その膂力で、思い切り殴りつけた。
「おい、何やってんだよリキ!!」
「………! ………!!」
ふーっ、ふーっ! と荒い息を漏らす力。
雄大が振り落としてしまった縁子を、早風瞬がスライディングで滑り込み抱きとめる。
「あ? こいつが俊平を………? マジかよ、最低だな、雄大。」
「けっ、なんとでも言え。全員無事で切り抜けようなんて、虫のいい話だったんだ。」
「だからって、てめぇ、俊平を!!」
「切れるカードを切れる時に切る。それが今回、チビ介だったってだけだ。」
「………っ!!!!」
ドガン!! と、再び雄大を殴るリキ。
「………。ゴホッ! 気ぃ済むまで殴ればいいだろ。抵抗はしねえ。田中の異能も効かず、あのクソ野郎と、佐藤を一撃でぶっ飛ばした相手だぞ。俺が役満ぶち当てても勝てる保証はなかった。」
「だからと言って、味方を犠牲にするのか!」
そう叫んだのは、光彦であった。
彼の手の中にある、小さな腕を見つけた雄大は、目を逸らす。
「これが、君がやった結果だ。君が望んだことだ。満足かい?」
「………うるせぇ」
しゅるる、と、遠くの方で上からロープが落ちてきた。
複数のロープを本結びで固定した、極長のロープだ。
「この大穴だ。あんだけのロープを上からたらすのに、こんだけ時間がかかるんだ。あのドラゴンの攻撃を、ずっと防いで、無傷で帰還できると、本気で思っているのかよ?」
「それは………。」
「あのブレスは防げるのか? 爪は、牙は?」
「………。」
「俺は、それを天秤にかけた。チビ介の能力なら、時間を稼げるかもしれない。そう思ったからな。俺がやったことは、許されるとは思っていない。………。悪者は、俺一人でいい。」
「………俺は、赤城、君を許せない。」
「そうかよ。勝手にしろ。」
「おい! 喧嘩なんかしてる暇はないぞ! 登れ!!」
団長の言葉に雄大は肩をすくめ、ロープに捕まり、登っていく。
そして、俊平が自爆したことにより生じた大穴。
そこかしこから、魔物が押し寄せてくる。
リビディアの置き土産。興奮した魔物たちが、そこで餌を求めてひしめいていた。
クリスタルモンキー、リトルドラゴン、マジックコックローチ。
ジュエルタランチュラやリザードマンも、新たにこちらに向かってきている
女子は萌の作り出す木につかまって。男子はロープを伝って迷宮からの脱出をしていた。
そんな時である。
ーーーピィイイイイ!!!!
突如、不吉な音が再び響く
「嘘だろ、まだあいつ生きてんのか!?」
「しぶとすぎだろ!!」
反響する指笛の音は、どこから聞こえるのか、まるでわからない。
光彦と瞬、リキ。雄大は登るのを取りやめて手を離し、地面に着地すると拳を握りしめて構える。
『限界よ、限界。もう無理。無理、バツだけど………』
「くそ、どこにいやがる!!」
尋ねても、姿を現さないリビディア。
『最後に一人くらい、道連れにしてあげるわ』
その声と同時に
「ぐぶっ!!!?」
「うわあああ!! 響子! 響子、しっかりしろ!!! くそっ! 貴様、何をする!!」
空手部大将、光彦の幼なじみである百地瑠々の叫ぶ声。
「うふふ、あはははは!! 言霊使いは厄介だもの。せめて地獄には一緒に落ちてあげる!!」
トカゲのような魔物の背に跨がり、全身が焼けただれたリビディア。左腕は炭化し、彼女の足はひしゃげている。
右の目ははとうに光を失い、左の目には執念のみを灯していた。
彼女の、その爛れた右腕が突き刺すのは、此度のリザードマンの掃討に多大なる尽力をした、白石響子の背。
彼女の胸の中央を貫通し、完全に息の根を止めていた。
魔人は、勇者と同等のステータスを持っている。
本人の戦闘力は低くとも、魔人というだけで、新米の勇者など一捻りにできるものなのだ。
勇者を一人を道連れにするなど、勇者たちが迷宮からの脱出に向かい、数が減った今、彼女にとってそれはできて当たり前のことだったのかもしれない。
「貴様、響子から離れろ!!」
瑠々の回し蹴りを避けることもできず、その回し蹴りを側頭部にくらい、魔物の背から転がり落ちるリビディア。
多少の怪我ならば、言霊使いの仲間であるデリュ―ジョンに癒してもらえたかもしれない。
だが、いつまでたっても現れない仲間に、リビディアはもう、己の生存はあきらめた。
デリュ―ジョンも、唯一迷宮に落ちなかった、あの余裕ぶった男に、苦戦しているのかもしれない。そう思った。
「あと一人の言霊使いは、無理そうね………!」
もはやうつ伏せに倒れ込んだリビディアには、己の力で立ち上がる気力は残っていなかった。
明滅する視界。彼女がその視界に映すものは………
「<纏気> <剛気> <剛脚>!! うぉおおおおお!!!」
「魔王様………。」
ゴギン!! と、骨の砕ける音が聞こえる。
瑠々が気を纏い、漲らせ、高火力のかかと落としをその頸椎にお見舞いして、リビディアの灯は消えた。
あとがき
次回予告
【 有能な人材は早くどっかいくにゃ 】
お楽しみに
読んでみて続きが気になる、気にならないけどとりあえず最後まで読める程度には面白かった
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