テンプレバスター!ー異世界転生? 悪役令嬢? 聖女召喚? もう慣れた。クラス転移も俺(私)がどうにかして見せます! 作:たっさそ
俊平が目を覚ますと、そこには崩れた大穴が広がっていた。
俊平の行った自爆の跡だ。
俊平は次第に自分が何をしていたのかを思い出してくる。
食糧として連れてこられた俊平を待っていたのは、蜘蛛の苗床にされる女の子
彼女を巻き込んでバラバラに自爆したはずだった。
だというのに、生きている。
不思議な感じだった。
俊平は思わず右手で頬をつねる。
竜の中で自爆した際に弾け飛んだはずの右手で。
「なんで右手が…………」
『よかった………キミが生きてて本当によかった』
「こえ!? どこから!?」
どこからともなく聞こえてきた声に、俊平はキョロキョロと周囲を見渡す。
『安心して、わたしはあなたの中にいる。いや、融合してしまったと言うべきかな?』
「………どういうこと?」
『その前に、自己紹介をしよう。わたしは小暮あおい。よろしくね』
「えと、僕は緑川俊平です。よろしくお願いします。………あの、あおいさんは………なんなんですか?」
死んだと思ったら怪我が直って復活をしていた。
訳がわからない状況に俊平は首を捻るしかない。
『抽象的すぎる質問だけど、君は覚えているかな。最後の大爆発』
「は、はい。」
『蜘蛛の苗床になって、死にたがっていたわたしを殺そうとしてくれたね。本当にありがとう。わたしは、ずっと前からあそこで蜘蛛に捕らえられて生かされてきた。糸に絡め取られ、逃げることもできず、かといって死ぬこともできず、永遠と回復を続けるこの呪われた肉体を母体に、ずっと蜘蛛の卵を孕まされ続けた。』
「………。」
『それを壊してくれたのが君だ。ようやく死ねる。そう思った。同時に、君を死なせたくないと思ってしまった。』
「………」
『だから、わたしのアビリティ<
「混ざって………」
『だから、その体はわたしでもあって、キミでもあるんだ。大切にしてね』
「………わかった、けど………」
『わかってる。キミの能力、自爆だろう? 私を殺そうとした時に気づいたよ。安心して。キミがいくら自爆しても、その肉体はいくらでも修繕できる。通力の量には自信があるんだ。再生するスピードよりも、回復するスピードの方が多い程度にはね。』
それはつまり、俊平の自爆の能力の最も厄介なデメリットがなくなるということ。
いくら俊平が自爆を行っても、回復してしまう。厄介な人間爆弾の誕生だった。
「あおいさんは、なんで蜘蛛に囚われていたんですか?」
『なんでだったかなぁ………。たしか、わたしが一番弱くて、再生できるから、囮にされちゃったんだよね』
「そんな!」
『そんなわけで、囚われのお姫様を助けてくれた俊平は、わたしにとってのヒーローなの。死ぬことを望んでいた私に、希望をくれた。生きることさえ許してくれた。』
「でも、僕は君を殺そうと………したんだよ?」
『本質を見誤っちゃだめだよ。わたしが死にたかった理由は、蜘蛛の糸から抜け出せず、永遠と続く苦痛を受け続けなければならなかったから』
声はあくまで優しく、俊平に語りかける。
『蜘蛛の糸から開放されて、生きていけるのなら、こんなに嬉しいことはないよ。』
あおいは死にたがっていた。
だがそれは、蜘蛛の苗床という地獄から抜け出せず、死すら許してもらえなかったから。
死をもたらそうとした俊平だが、その結果、苗床の倉庫、完全崩壊というありえない結果だった。
『ひとまず、迷宮から脱出しよう。騒ぎを聞きつけてきた蜘蛛たちが戻ってきたら面倒なことになる』
「………うん!」
☆
俊平が迷宮に落ちてから早半年が過ぎようとしていた。
迷宮で食べるものはゲテモノのような魔物。
自爆というアビリティのせいか、俊平の魔法の適性は炎のみ。
水分をとるのが非常に困難だった。
たいていは魔物の血。
毒に犯されようと、もがき苦しもうと、抗体ができるまで<
広い迷宮で3日ほど魔物の姿が見えないこともあった。
由依とこの迷宮に迷い込む原因となったリビディアとの会話をつなぎ合わせれば、この迷宮は魔人の大陸と人間の大陸がつながっている。
そういうこともあり得る話だった。
そんな場合、俊平がとった行動は、自食。カニバリズム。己の血肉を己で食らう外道行為。
おもえば蜘蛛たちもあおいに無理やりゴブリンの腕を細かくすりつぶした汁を飲ませていた。
なんなら、腹を食い破った際に、直接胃に流し込むくらいの事はしているのかもしれない。
スキルの回復のためには、食事と休息は必要な行為だったのだ。
俊平も死にたくはない。
吐き気を堪えながら、自らを食し、そして再生する。
自分はいったい何をしているのかと自問しながら
迫りくる魔物には、自ら抱きついて自爆。
肉片をかき集めてそれを食する。
もちろんまずい。だが、しのごの言っている場合ではないのだ。
生きるためには、食わねばならないのだから。
もはや魔物の肉にも、自らの血肉にも慣れた頃、俊平は迷宮の最下層にたどり着いていた。
あとがき
次回予告
【 バイバイ、僕のトラウマ 】
お楽しみに