テンプレバスター!ー異世界転生? 悪役令嬢? 聖女召喚? もう慣れた。クラス転移も俺(私)がどうにかして見せます!   作:たっさそ

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第43話 樹ー迷宮脱出

 

 どうやら悪戦苦闘しながら着付けを行う俊平。

 

「まっ! かわいいですね」

「そうですね〜^^」

「二人ともどこ見てんですか………………」

 

 

 俊平は着替えるためにすっぽんぽんにならなければならないわけで。

 見られているとも知らずに、なんとか褌を巻いた俊平を哀れに思う。

 

 

『ここを………こうして………』

『そうそう………あとこれを………』

 

 あおいの指示の元、俊平はなんとか着付けを行おうと悪戦苦闘している。

 正直、俺も一人で着るならば袴が限界だ。

 袴の着付けしかわからん。

 なんでかって? 実は俺と由依は弓道部なんだわ。初耳だろ?

 だって言ってねーもん。

 

『もう! これ一人で着付けられるようなものじゃないよぉ!』

『文句を言わないでくれ。わたしだって着付けの指示なんて初めてだよ。説明書がほしい』

 

 

 どうやら俊平は上手に着付けができずに業を煮やして、布をポーイ! と放り投げてしまった。

 駄々こねてる子供みたいだぞ、俊平!

 

『小物も多いし、どうやって使えばいいかわからない物も多いし………』

『せめて紋付袴だったら多少は楽だったのに』

 

 どうやらあおいとは気が合いそうだな。

 というか、着物の着付け方が多少わかるだけでもすごいと思う。

 

『ねえ、この衣装、僕用なの?』

『さあ、ダンジョンから出るアイテムはランダムだからね。 その服もないよりはマシでしょう』

『ぐぬぬ!』

 

 

 着付けって大変なんだな。しかも一人で着付けとか大変すぎる。

 俊平は放り投げた衣装を持って、とりあえず簡単に履ける足袋を足に装着している。

 

 

「なんか、俊平のくせにめちゃくちゃかわいいな」

「あー、わかる。今の俊平ちゃんって完全に女の子にしか見えないもんね」

 

 四苦八苦しながらも、1時間以上かけてなんとか衣装を着た俊平。

 チビの俊平に合わせたサイズで、服のサイズは小さいし、走れる程度の足元のゆるさも確保しているようだ。

 

「言っちゃなんだが、めちゃくちゃ似合ってる。」

 

 俊平は男だ。男なのだが………。

 そのセミロングの白髪と真っ白の衣装が実に神々しく

 着崩れたその衣装が官能的なまでのエロさまで兼ね備えている。

 

「本当だね〜、可愛いよりも綺麗………かな?」

「白いってのはそれだけで神聖な色ってんですよ」

 

 たしかに。ぎゅぎゅっ! となんとか衣装を自分に合わせた俊平は、完全に白の申し子。

 その眩しさに思わず目を細めてしまう。

 

「樹、樹、この俊平ちゃんを写真に収めといて!」

「お、了解。」

 

 

 響子の指示に従い、俺は俊平の様子を写真に収める。

 あとで田中と由依と妙子に見せてきゃっきゃしよっと。

 

 ついでに佐之助にも見せてみるか。面白い反応をしそうだ。

 

 

 

『それにしても、迷宮を脱出するために、迷宮に潜り続けていたけれど………僕は潜りたいわけじゃなくて登りたいんだけどなぁ』

『言わんとすることはわかる。でもね、半年かけてようやくたどり着いたここにこそ、その答えがあるのさ』

 

 確かに、気にはなっていた。

 俊平は上へ上へのルートを探しているのとばかり思っていたけれど、漆黒竜はトラブルさえなければずっと下層にいるはずなんだ。

 なのに、それを倒しているということは、俊平は登っているんじゃなくて潜って行っていたということだよな?

 

 だからこそ、半年もかかっている? いや、地図もない地下の迷宮でどっちが北かもわからなければ、うっかり魔人族の大陸に出てしまうこともあるかもしれないのか。

 

『つまり、迷宮から脱出できるなにかってこと?』

 

 やはり俊平は見かけによらず鋭い。

 文脈からあおいの言いたいことを読み取っているようだ。

 

『その通り。ここはボス部屋。いわば中間地点。ボスを倒した者には、ここと外を行き来できる権利が与えられるのさ。』

『つまり、ここに戻ってこれるし、外にも出れるってこと?』

『そう。よくがんばったね、俊平。ようやくこの迷宮での生活もおさらばさ』

『そっか………』

『あとは、あの魔法陣に乗って、外の世界に帰るだけだ』

 

 俊平の視線の先には、地面に描かれた、淡い光を放つ魔法陣。

 

 俺はその魔法陣を写真に収めた。

 解析したら使えるようになるかな

 

 俊平が魔法陣に乗り込むと、視界が白く歪む。

 

 

「どうやら俺らはすごくいいタイミングで俊平のことを覗き見できたらしいな」

「そうみたいですね………。よくわかりませんが、俊平くんが無事で何よりです。」

 

 

 ヱリカさんが、鏡を立てかけられている俊平の頭を撫でる。

 

 向こうの俊平と違い、こちらの俊平は黒髪短髪だ。

 白っぽいカツラを被せたら、たぶん同じようになる。

 

 

『う………ん………ここは………!』

 

 俊平が目を開けると、そこは………

 

 

「よかったね、俊平ちゃん、外に出られて………」

「まったくだ。あんまり心配はしていなかったが、それでもほっとした」

 

 

 そこは外。

 俊平の後ろには洞窟があった。

 

 迷宮の入り口には、謎のモノリス。モノリスにも魔法陣が記されて光っている。

 それも写真に収めておいた。

 

 なんか俊平の記念写真を撮っているみたいだな。

 

「よくわからんが、このモノリスと、さっきの魔法陣がつながっているのかもしれないな。」

「そうかもね。俊平ちゃんがあのモノリスに近づけば、さっきの迷宮の中に入れるんだと思う」

「なんだかとってもRPGな世界ってんですよ」

「いや、ロールプレイしてませんから。俊平の素ですよ。オリジナルプレイです。」

「そいういやそうでした」

 

 団三郎さんが用意してくださった茶菓子を食べる。

 おいしい。

 

『さて、ここから俊平の新しい冒険物語が始まるわけだけど、どうするかい?』

『どうするって?』

『どこに向うかってこと。わたしとしても、数百年ぶりの外の世界だ。今の世界がどうなっているのか、まるでわからないわたしとしては、ひとまず街に向かうのがいいと思う』

『そうだね』

 

 あおいの声に頷く俊平。

 相変わらず姿は見えないけれど声は聞こえる。

 

 これって、実際にはあおいの声は俊平以外には聞こえていないのかな。

 

 ここが俊平の夢の中だから、俊平が体感している夢の声だから、この夢映しの鏡のおかげで聞こえているだけなのかもしれない。

 

『迷宮から抜け出たはいいものの、ここはどの大陸のどこなのか、まるで見当がつかない。迷子の迷子の俊平だ。魔人族の大陸ではないことを祈ろう。俊平も、正規の方法で迷宮に入ったわけじゃないようだしね』

『そうだね。街に行っても、多分言語がわからないよ。翻訳の指輪は持ってないし………』

『翻訳の指輪なんてのがあるのかい? ここが人間の大陸ならば、わたしがある程度翻訳してあげるよ。わたしがいた頃はそんな便利なものはなかったからね。必死で覚えたものさ。」

『おおー、頼りになる! さすがあおいさん!』

『よせよせ、あまり期待はするな。だいぶ昔の話だ………まだ覚えているかな………』

 

 

 そうだよな。言語がわからないんだったらどうしようもない。

 彼女の存在は俊平にとっても道標になるのだろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 





あとがき


次回予告
【 変則的な武術(自爆) 】

お楽しみに


読んでみて続きが気になる、気にならないけどとりあえず最後まで読める程度には面白かった

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