テンプレバスター!ー異世界転生? 悪役令嬢? 聖女召喚? もう慣れた。クラス転移も俺(私)がどうにかして見せます! 作:たっさそ
「あおいさん、さっきの天使、見た?」
『ああ。なんか天使がいたな。』
俊平とあおいが見た天使。
それは、クリーム色の、羊のような髪の毛で、背中に羽が生えた生き物。
天使と形容するにふさわしいものだった。
屋敷へと戻ってきた俊平は、先ほどの天使について考える。
「あんな生き物がいるんだ………亜人ってやつかな」
『聞いたことないな。ハーピィにしても下半身がしっかりしていた。』
あの一瞬でどこまで観察しているのだろう。
『腕が羽になっているわけではなかったし、背中には羽があったな。矢尻がハート型になっていたのも覚えている。あれでは天使というよりキューピットだ。』
本当にあの一瞬でどこまでみていたのか!
「みんな、あれ知ってるのかな。」
『さあ、どうだろうな。』
「子供、だったよね」
『ああ………。』
「天使ってことはさ、僕たちをこの世界に呼ぶために力を借りた、神様ってのと関係あったりするのかな?」
『ふむ。たしかに、そういえば私もそんな感じでこちらの世界に召喚されたのだったな。ありえるかもしれない。』
ふむ、と俊平は顎に手を当てて考える
「あの子、水の中に飛び込んでいたよね」
『しかもすぐに見えなくなった。あの透明度の湖で。もしかしたら水溶性の魔物か幻術の類かもしれんな』
「なにがなんだか………。ああ、言葉がわかればこんなこと悩まずに聞けば済む話なのに!」
『いっそのこと、もういちどエデン湖に行って確かめてみるかい?』
「なんだかすごく気になるし、ずっと屋敷に世話になるのも変な感じだし、行ってこようかな………」
『とはいえ、外に出るなら使用人さんたちにも伝えないといけないんじゃないかい? ………………言語わかんないけど、勝手にいなくなられたらそれこそ迷惑かけちゃうだろうしさ………』
「そうだね………。」
なんて部屋でモンモンとしていると、コツン! と窓に何かがぶつかった。
「うん? なんだろう………」
俊平が窓の外を覗くと
「あ、さっきの天使」
『む。どういうつもりだい』
そこにいたのは、クリーム色の頭をした純白の翼を持った6歳くらいの女の子? が、俊平の部屋の窓を叩いていた。
それも至近距離で。
背中の羽をパタパタとパタつかせながら。
「ど、どうしたの?」
俊平が窓を開けてそう聞くと
「●△□×ωαγβνμ!!」
謎言語で俊平を指差した彼女? が俊平に抱きついてきた
「わっ! わっ! なにほんと!」
『わっはっは! モテモテだな俊平! この小娘どついてくれる!』
「そんなこと言ってないで翻訳してよ!」
『すまない、この大陸の言語ではないようなのでな。わたしもわからん』
「そんなぁ!』
俊平は困った。
困りに困った。
それはもうとても困った。
なにせ言語がわからないのだから。
抱きついてきた理由もわからないのだ。
「『びえぇええええええええええ!!!!』」
『泣いているぞ』
「言われなくてもわかってるよ!!」
謎言語で泣き付かれてしがみつかれる気にもなってよ! と俊平が心の中で愚痴をもらすものの
「『 なにごとですか! シュンペイ様!』」
泣き声につられてオレンジ色の髪を靡かせたジャニスが慌てて部屋に入り込んできた!
「『な、そ、そのお方は………! 天使族! シュンペイ様がずっとおひとりでお話ししていたのは天使様で、シュンペイ様はもしやマベヒッツ空中大陸の神様なのでは!?』」
「なになに!? あおいさん!」
『すまん、わたしも早口で聞き取れなかった。適当にうなづいておけ!』
「わっわかった!」
「『やはりそうなのですね! こうしてはいられません! 宴を! 宴を開かなくては!』」
バビューン! と勢いのついた足で走り去ってしまったジャニス。
「なにがどうなって………!」
『ひとまずこの天使をどうにかしよう』
「………そうだね。おーよしよし。だいじょーーぶ。怖くないよー。」
俊平は慣れた手つきで天使のふわふわの頭を撫でる。
「&%#$”’’$%………」
すんすんと鼻をすすった天使が俊平を涙目で見上げる
「僕がなつかれる理由がしりたい………。」
『あるとするならば、服装だろうか………。今の俊平はどことなく神聖な姿をしているのだ。神様か、親か、仲間かなにかと思っているのではないか? エデン湖で俊平を見かけて、ついてきたのかもしれない。さっきはびっくりして逃げちゃったのだろう』
「まあ、そんな感じで逃げてたけど………」
俊平は天使を抱き上げてベッドに座らせると、天使は俊平の白無垢をぎゅっと掴む。
俊平は天使のクリーム色の髪の毛を優しく撫でる。
撫でり撫でり。
『俊平、キミは子供の扱いにそうとう慣れているようだね』
「え、まぁ、そうだね。僕の見た目が子供だからかな。よく子供にはなつかれるんだよね」
『子供も大人の感情の機微には敏感だ。俊平は子供の心をよくわかっているから、子供もなつくのだろうな』
「それって僕が子供っぽいって言ってない?」
『そう聞こえなかったかい?』
「やっぱり言ってたんだ!」
『ほら、そういうところさ。キミは人の感情を読むのが得意だから、子供のことがわかるのさ』
むうと頬を膨らませながら、子供っぽく怒る俊平。
褒められているのだろうが、子供扱いは嬉しくないお年頃なのだ。
「僕は、しゅんぺい。キミの、名前は?」
ひとまずいろいろを脇に置いておいて、俊平は天使に向き直る。
単語を区切って自分を指差し自己紹介をするものの、天使は言語がわからない。
首を捻るばかりだった。
「僕、しゅんぺい。」
「ぼく、しゅんぺー?」
天使が俊平を指差して復唱する。
「うん。しゅんぺい。」
「しゅんぺー!」
両手を万歳してニコニコの天使。
かわいい。思わず頭を撫でる俊平。
「うん。きみの、名前は?」
「きみ、なまえ?」
首を捻る天使。
やはり言葉の壁は厚い。
俊平は自分を指差すと
「しゅんぺい」
とだけ伝え、今度は天使を指差す。
「………。」
そして何も言わずに首を捻ると
「………!! リリ! &%$#” リリ!!」
ようやく自分の名前らしきものを伝えてくれた。
長い名前じゃなくてよかった。リリということを伝えたかったらしい。
「リリちゃんか。可愛い名前だね」
俊平は天使の頭を撫でる。
「んふー!」
撫でられてご満悦のリリであるが、やはり何が目的で俊平の元に飛んできたのか、謎のままであった。
あとがき
次回予告
【 なんか自分が生贄にいくらしいけど言葉わかんない。 】
お楽しみに
読んでみて続きが気になる、気にならないけどとりあえず最後まで読める程度には面白かった
と思ってくださる方は
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