テンプレバスター!ー異世界転生? 悪役令嬢? 聖女召喚? もう慣れた。クラス転移も俺(私)がどうにかして見せます! 作:たっさそ
なんだか天使が俊平に懐いて館内がバタバタして、そっから盛大な宴が催された。
「な、な、なにが、どうなって、こうなったの?」
『すまない……わたしもわからん。俊平こそ、心当たりはないのかい?』
「あるわけないよぉ………!」
俊平は基本、小心者だ。
表彰されるようなことは苦手だし、目立とうとも思っていない。
これが友達の樹だったら、おもしろそうだからと後押ししたり、どうせなら楽しもうと言ってくるのだろうが、残念ながら俊平は小心者の小市民なのだ。
目立たず騒がずひっそりと暮らすのが大好きなのだ。
周囲がなぜか放っておかないだけで。
「…&%$%$”#??」
「………ごめんね、不安だよね。よくわかんないけど、僕が守ってあげるからね」
「にひー!」
言語はわからなくとも、なぜか俊平の事を信用して笑顔を見せる天使。
ぎゅっと俊平の手を握って離さない。
「………かわいいな」
『ええいはなれんか小娘。わたしの俊平に近づくな』
「あおいさんの声は聞こえてないよ」
『だから困るのだろう! くそう!』
頭の中できゃんきゃんと喚くあおいの脳内音声に集中力が欠けてくる。
「『 この度、はるか上空にある天空のマベヒッツ空中大陸より、白の神子様………シュンペイ様が降臨なされた。シュンペイ様は成長された
「『 うぉおおおおおおおおおおおおおおお!!! 』」
「あおいさん助けて!」
『ええと、空中大陸………白い……神様? 青い竜? が……ええと、わからん。生贄? いや襲われ………だめだ、翻訳しきれない。 娘を……ああ、もう。 たぶんウルフから助けてくれたことを誇大表現しているんじゃないかな』
「そ、そうなのかな?」
『わからん。笑顔の仮面は剥がさずに手を振っておけ』
「わ、わかった! 」
とりあえず笑顔を浮かべながら手を振る俊平。
すべてを肯定するようなその微笑みに、会場のボルテージはスパークでボルケーノ寸前だ。
「………悪化してない?(にっこり)」
『わたしは悪くない』
「………成仏ってどうすればいいのかな(にっこり)」
『わたしは死んでいないぞ。』
笑顔で手を振りながら額に青筋を浮かべる俊平。
「『 降臨して下さった白の神子様に盛大な拍手を!』」
―パチパチパチパチ!!
「何の拍手かな?(にっこり)」
『みんな俊平を見ているのは間違いないな』
「ものすごく居心地がわるい(にっこり)」
『なんか腹話術みたいだぞ俊平』
「誰のせいだと………!(にっこり)」
『俊平が大陸の言語を覚えていたらこんなことにはなっていなかったかもしれん』
「ぬぬぬぅ………! 正論!(にっこり)」
☆
なんだかよくわからない宴に参加させられた俊平は、お湯と布で体を拭いた後、ぐったりしながらベッドにダイブする。
今までが魔物と自爆する生活だったからか、言語もわからない土地で生活する事に多大なるストレスを感じている。
いつまでも屋敷に厄介になるわけにもいかないが、まずやらないといけない事は、言語の習得だ。
挨拶の仕方もわからなければわかるものもわからない。
買い物すらできないだろう。
それで困るのは俊平自身だ。
(言葉を教えて下さいって、どういえばいいのかな………)
「にひーっ!」
(この子も、どうすればいいのやら………)
謎に歓迎され、謎の天使に懐かれ、迷宮から脱出したとたんにとんでもないことに巻き込まれ、キャパシティを完全に超えた。
「寝よ」
寝た。
☆
翌日、俊平の部屋を訪ねてきたのは、ジャニスと、小さな女の子。名前をカリン。10歳だという。
なぜわかったか? それは、部屋に入ったと同時に「カリン!」と叫んで両手を広げて「んっ!」と突き出していたから。
ああ、10歳なんだろうな。と俊平は納得した。
この世界の10歳とは、つまり俊平と同い年位にみえる、ということ。
なにやらご挨拶しなさいとかジャニスに言われて、カーテシーで挨拶したカリンを、俊平は笑顔で迎え入れた。
かわいい子が頑張って練習の成果を見せている姿を見るのは、俊平の心がとてもほっこりするのだ。
「遊んでほしいのかな?」
『そうかもね。』
「’&%$#”!」
「『 はわわわ! 天使様! ごごごきげんうるわしゅう!』」
天使のリリが謎言語でカリンの手を引っ張り、俊平の元へと連れてくる。
「『神子様に置かれましてはたいへんうるわしくごきげんがそのあの、すごい白いです!』」
『大混乱していることだけはわかるな。』
そうだね、と俊平は心の中でつぶやいた。
なんだかんだと、俊平の部屋でジャニスとカリンが居座り、天使のリリがカリンの手をつないでにこにこしている。
緊張するカリンだが、ジャニスは俊平に向き直り、わからない言語でなにやら話し出す
「『 わたくしたちは、明日、満月の晩に、エデン胡へ生贄として向かいます』」
『彼女たちは明日の夜、エデン胡に行くらしい』
「『生贄として白羽の矢が立てられたコーデ家の者としての責任を取らねばなりません。わたくし達をウルフから救って頂いた事、誠に感謝いたします。白の神子様に出会えて、ほんとうによかったです』」
『なんか家に矢? が飛んできて、責任がある? 助けてくれてありがとう、かな。』
ひとまず、真面目に聞いているふりをしつつ、あおいによる同時通訳を確認する。
ジャニスが手に持っているのが、白い羽のついた矢。矢じりがハート形になっている、こどものおもちゃみたいなやつ。
感情を読むのが得意な俊平は、彼女が、何かを怖がっているように見えた。
「なにこれ、くれるのかな?」
『わからん。飛んできた矢なんじゃないかい? そういや、この天使が持っていた矢と同じ形だな。あの小娘に渡してあげたらどうだい?』
「そうだね。ジャニスさん、それかして下さい」
と、俊平が矢に手を伸ばすと
「『まさか、代わりにシュンペイ様が向かわれるというのですか!?』」
驚愕の目で俊平を見つめる。どこか嬉しそうだ。
「なんか驚いた表情しているけれど、大事なものなのかな………」
『だったら申し訳ないことをしたな………ええと、俊平、代わり? 行く?』
「わからないけれど、これはジャニスさんにとって不吉なもので、僕が持っていると嬉しいものなのはわかった」
ジャニスが白羽の矢を俊平に手渡す。
俊平が、ジャニスの身代わりになると、ジャニスは勝手に勘違いしていたが、俊平には言語が分からないので、結局のところどうでもよかった。
あとがき
次回予告
【 薩摩隼人とかいて『戦闘民族』と読む。 】
お楽しみに
読んでみて続きが気になる、気にならないけどとりあえず最後まで読める程度には面白かった
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