テンプレバスター!ー異世界転生? 悪役令嬢? 聖女召喚? もう慣れた。クラス転移も俺(私)がどうにかして見せます!   作:たっさそ

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第55話 俊平ー翻訳の指輪が翻訳してくれない!

 

 

すっごく(まっこて)可愛い(めんこい)女の子じゃん(おごじょじゃっど)! こっちきて(こちきて)飲み会(のんかた)しようぜ(せんね)!」

 

「相手の翻訳の指輪が翻訳してくれない!! 全然聞き取れない! 最悪だ!」

 

 満月の湖畔に、酒瓶を右手に槍を左手に持ったその魔人。

 翻訳の指輪をしているものの、翻訳してなお聞き取れないその言語に俊平は頭が割れそうだった。

 

『あの翻訳の指輪が翻訳してくれるのは、どうやら標準語のようだね。魔人語がなまっていたら、なまって翻訳されるのだろうか』

「だからって鹿児島弁って………」

『魔人語を日本語に翻訳するにあたり、彼の言葉は鹿児島弁っぽいってことだろうか。わたしだってわからん、私の時代は翻訳の指輪なんてなかったんだ。聞き取りにくい方言とはいえ、まるでわからないよりはマシじゃないかい?』

「まあ、確かに………。」

 

 ええっと、僕があの男が言った言葉でわかったのは、かろうじて「すっごく可愛い」「こっちきて」だけなんだけど

 チラリと俊平がジャニスの方を向けば、顔面蒼白であの男を見つめていた。

 

 きっと、邪淫のリビディアと同じ五戒魔帝だから、なんだろう。

 ここにいること知っていたのかな。この街の人は魔人と取引があるとか?

 

 うーん。ジャニスさんの顔を見るにそれはなさそうだ。

 

 

 などと俊が観察を続ける

 

『おごじょは女の子、のんかたは飲ん方、つまり飲み会のことだと思う。俊平らのことを指差して女の子と言っていることから、合コンに誘われているのでは?』

「僕男だし子供だし相手おっさんだし………。なんなら6歳くらいの天使もいるんだけど」

『わたしだって鹿児島弁なんかわからないよ。いつもの適当翻訳さ』

 

  なんだかんだ博識なあおいも、鹿児島弁にまでは精通していない。

 多少なりとも翻訳できたことを褒めるべきだろう。

 

なんで(ないごて)なんも言わないの(なんも言うてくれんと)! 船に寄りかかって(船になんかかって)どこいくの(どこはってっと)? なんで無視すんの(なん無視しよっと)! お前ら(はんな)俺が(おいが)かわいそうだと(ぐらしかて)思わないの(思わんと)!? いいかげん(てげてげ)ぶん殴るぞ(うったくっど)!」

 

 ガン! と槍を地面に打ち鳴らしてこちらに怒鳴る飲酒のドリンキー。

 

「ぐおぉ………………情報量………!」

『よくわからないけどキレているね。薩摩隼人は戦闘民族。沸点は…………酒のように低い!』

「うまいこと言ってないであおいさん! ………ジャニスさん! あれ! なんなの!?」

 

 その方言を全く解読できず、状況が理解できない俊平はジャニスに問うものの、ジャニスも俊平の言語が理解できていない。

 

「『 魔人が、なぜこんなところに………!? そういえば群青竜(ブルードラゴン)も一向に出てきません………。なにがどうなって………!』」

 

「だめだ、僕も含めて人の話を聴ける状態じゃない!」

『自覚がある分、君は冷静だよ、俊平』

 

 

 とはいえ、飲酒のドリンキーの能力の影響か、周囲にアルコールの匂いが漂い、俊平自身の正常な判断力も奪われていく。

 酒など、俊平はこの世界にきた当初に妙子から勧められてちょっと飲んだくらいしか味わったことがない。

 いやむしろ妙子がなんで中学生に酒なんか勧めているのだとツッコミたいところだが、俊平はお酒に耐性がない。

 

 彼の鹿児島弁はかなり難解だが、揺れる頭を最大限フル回転させて彼の発言を思い出すと、彼の能力はおそらく、湖を酒に変えることができる能力だ。

 

 このアルコール臭も、周囲の水がアルコールになってしまったから。

 酒の匂いに当てられて、船の揺れだけでなく、やはり頭までボーッとしてくる。

 

 

「魔人の幹部なら、倒したほうがいいよね………! さっさと自爆で………!」

 

『まて俊平! この湖を全部酒に変えられてしまったのなら、自爆はまずいのではないかい? 君の自爆は炎だ。気化したアルコールにでも引火してみろ、大爆発だ!』

「そんな………! 僕もうそうとうクラクラしてるよ!」

 

 頭を押さえながら飲酒のドリンキーを睨む俊平。

 

『とにかく、あいつらの相手をするならば小船に乗っているだけじゃだめだ。接岸して直接仕留めよう』

「わかった!」

 

 クラクラする頭を振りながら、俊平は糸を飛ばし、手繰り寄せることで小舟を近くの足場まで寄せる。

 

 

「よくもおいどんを無視しよったんな。怒ったど」

 

 

 すると、ドリンキーの方から接岸した俊平たちの方に近づいてきたではないか。

 

 

「ごめんなさい、無視したくて無視したんじゃなくて言ってることの理解に時間がかかっただけで」

 

 

「せからしかああああああ!!!」

 

 ぶうん!! と豪快に槍を振るう飲酒のドリンキー。

 

 俊平はその槍が自分ごとジャニスを傷付けようとしていることに気づいて、ジャニスとリリを守るために覆いかぶさった。

 ズン!! と俊平の頸から鮮血が舞う。

 

 

「ごぽぉ! 」

 

 喉から発せられる血から空気が漏れる音。

 

「シュンペイ様!」

「しゅんぺー!」

 

 皮一枚でつながった頸は即座に再生するものの、やはり俊平は痛いのはいやだし、嫌いだし自爆だってしたくない。

 だからといって、助けられる命を無駄にすることはできないのだ。

 

「ゴボッ! ごほっ! げほっ! こんな役回りばっかりだ!!」

 

 喉に詰まった血反吐を吐き出す。

 白無垢の袖で口元の血を拭うと、バサっと左手を横に伸ばして血を払う。

 

「話聞いてくれるとは思ってないけど、ここまで無差別だと、さすがに僕も怒った。僕が退治してあげる!」

 

 俊平は、自分にここまでよくしてくれたジャニスを危険に晒したこの魔人を許さない。

 左手を右肘に、右の拳はドリンキーに向けて伸ばした。

 

『対敵幹部戦だ。引き締めていくよ』

「うん! ………ひっく」

 

 

 酔いが、回り始める。

 

 

 

 

 





あとがき

☆★鹿児島(かごんま)弁講座★☆ じゃっど。


黒板消し→ラーフル(黒板消しの工場があるからだとかなんとか)
ホウキではく→ホウキではわく(九州人は標準語だと思っている)
しまう・片付ける→なおす(九州全般)
○○じゃん→○○せん ○○だせん(これは北薩摩かな)

次回予告
【 泣き上戸 】

お楽しみに


読んでみて続きが気になる、気にならないけどとりあえず最後まで読める程度には面白かった

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