テンプレバスター!ー異世界転生? 悪役令嬢? 聖女召喚? もう慣れた。クラス転移も俺(私)がどうにかして見せます!   作:たっさそ

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第60話 樹ーお祭り大好きマンです。

 

「よーろよーろれっいっひ~! れっいっひ~とれっいっひ~♪」

 

「よーろよーろれっいっひとよっろっれっいひー♪ って何歌ってんの樹?」

 

「口ぶもごー!」

 

「即座に合わせる由依にゃんはなにもんにゃ? 鉄太にゃんはそれ以上言ったら著作権的にダメだから静かににゃ。」

 

 俺は浮かれていた。どのくらい浮かれていたかというと、教えておじいさーん! と叫びたくなるくらい浮かれていた。

 

 なぜって? 俊平にひっさびさに会えるからだよ。

 ほらほら、俺ってばなんだかんだで俊平の事大好きじゃん?

 

 クラスのマスコットがずっといないのはなんとも言えないさみしさがあるわけよ。

 響子が退場、俊平がはぐれているこの状態で、半年も会えなかった旧友と会える喜び!

 

 俺はテンプレをぶっ壊すの大好きだけど、別にテンプレが嫌いなわけじゃない。

 じゃないとテンプレにあふれるなろうを読み続けていないからな。

 

 俊平は元の世界で会ってはいるものの、抜け殻みたいだし、シュンペイ(ジュンパクの姿)は直接見たわけじゃあない。

 

 俊平の本質は変わってなくても世話になっている「あおい」とやらに挨拶もしたい。

 

 

「ほほう、エデン酒か………これはどのような酒かのう?」

「お、嬢ちゃんいける口かい? これはな、白の神子様がお作りになったお酒の湖から酌んだお酒なんだ。エデン胡の美しい水に神子様がお作りになった酒、それに好みの果汁を絞って飲むのがたまらなくうまい! 試飲してみるかい?」

 

「ふむ………。ぜひ頼む。」

 

 

 なんか俊平がお酒作ったらしい。

 俊平がお酒を造る? 意味が解らん。

 

 俊平はごく普通の中学生。

 お酒の作り方なんて知らないはずだ。

 

 俺? 俺は知ってるよ。ブドウの皮ごと潰して暫く放置したら出来るんでしょ。

 酒蔵で麹菌がどうこうするやつは知らん。

 

 

「むっ! 水にキレがあるのう。酒としてはなんともいえんが、果汁を加えたカクテルとしてはなかなかのものじゃな」

 

「アルコールの濃度や精錬さはまだまだ研究中だからな。これから試行錯誤していくのさ」

「ふむ。精進するんじゃぞ。また飲みにくるぞい。とりあえず原酒をひと樽分いただこう。」

「毎度あり」

 

 妙子はもう飲み歩いてやがる。

 

「消吾、頼んだぞい」

「しゃーねーなー。ほいっとな」

 

 妙子はここで酒の補充を行うつもりだ。

 消吾は商会への納品を終えて俺らと合流して妙子の荷物持ちに成り下がってしまっている。

 

「俺はさ、お祭りって大好きなんだよね。」

「だから浮かれていたのかにゃ」

「そうそう。うまいもん食えるのってそれだけで幸せじゃね?」

 

 屋台ってさ、美味しそうな匂いを撒き散らす兵器なんだよ。

 

「俺もそうだけど、樹は典型的花より団子な男の子だな」

 

 と、鉄太からのツッコミをいただいてしまった。

 

 意外とツッコミ気質なのかもしれない。

 鉄太が一番仲の良い友達は、ヒップホッパー、佐久間太郎。

 

 太郎は邪婬のリビディアに一撃を食らわせた実績から、かなりの実力者であることがわかっている上に、言霊使いというかなり有用な異能を持っている。

 そのため今回は俺たちの旅行にはついてこれずに別の場所で活動を行っている。たぶん、大陸間を繋ぐ大橋付近。

 

 鉄太の異能は複数人が同じ行動や同じような異能を使っていない限り便乗ができない。

 

 太郎と同じ、歌を司る言霊使いの響子がいなくなった今、鉄太の存在意義はほとんどなくなっていた。

 

 だが、鉄太は腐らずに剣の腕をみんなに便乗して習ったり、魔法の腕をみんなに便乗して習ったりしているおかげで、めちゃくちゃ器用貧乏な生き物になっているのだ。

 

 そのへんは田中の下位互換って感じがするな。

 鉄太の能力も、磨けば自分を含めて『複数』とすることで一人相手にも便乗できたり、相手の真似をして相殺したりと、能力の幅が増えそうな予感がする。

 

 そういう不思議な異能の応用の仕方を考えるのってめちゃくちゃ楽しいんだよな。

 

 だって俺はそういう不思議異能をたくさん手に入れて、たくさん応用してきた実績をもつ異世界トラベラーだぞ。

 そう言うの大好きなんだ。

 

 ルンラルンラと歩いていると、俺の鼻を直撃する暴力的な間違いなく美味しい匂い。

 

「おっちゃん。その串焼きはなんの肉?」

「豚だ。豚バラ、串あぶり。」

 

 絶対うまい奴確定!

 

「塩焼き5本!」

「俺も俺も!」

「計10本! 8000ルクだ。」

「ぐあ! お祭り価格だ! 悔しい………! でも払っちゃう!! ビクンビクン!」

「ガハハ! いっぱい食え!」

 

 

 袋に5本入った豚串。これ、竹か。竹は温暖で湿潤な地域で繁殖する植物だ。

 でかい湖があるから、水気が多いから竹がよく育つのか?

 

 不思議だな。

 あ、この豚串うま!

 

「じー………」

 

 おっと、俺の豚串を物欲しそうに見ているお嬢さんがいるぞ

 

「由依、あーん」

「あー………ん。うま!」

 

 なぜ俺が串肉を5本も買ったか? みんなにも食べてもらいたいからさ。

 鉄太は5本も食えるのか?

 なんか絶望的な表情している気がするがそっちは見ないぞ。

 

 パクリと俺の食いかけに食いついた由依は目を輝かせて俺の手の豚串をひったくった。

 うまぁ………! と目を細める由依は可愛い。うん。可愛い。天使。

 

「田中、あーん」

「あー………あふいにゃ!」

 

 田中の口元にも新たな豚串を持っていくと、ぱくりと食いついた。

 串を手渡すと、田中は上品に持ち手をハンカチで持っていた。

 意外といいとこのお嬢さんなのかしら。

 

「消吾、あーん」

「え、ワイも? はぐ………。うっま! なんやこれ! 稔のやつ絶対来た方がよかったやん!」

 

 俺は消吾にもあーんしてやる。

 消吾はマジシャン。消したものを取り出せないマジシャンだ。

 消吾の実家は飲食店を経営している。

 

 そこの常連なのが、大食漢の太田稔。

 『団体一名様入りましたー!』ってのも実は消吾の店の出来事なのだ。

 

 接点が多い消吾と稔は仲良しなのだ。

 

 まあ今回は勇者と一緒に魔人退治に精を出しているよ。

 魔物の肉とか調理して食ってたら、稔のやつ完全に化けたからな。

 

 毒物耐性とか、縮地とか、空中跳躍とか剛力とかなんか魔物からめちゃくちゃスキルをラーニングしている。完全に動けるデブだ。

 通常時は勇者パーティには入らないものの、勇者と同等かそれ以上の力を持っている。

 持っているスキルの数なら、俺や由依よりも断然多い。

 稔も順調にインフレしているのだ。

 

 そもそも俺は剣術系と移動補助のスキルくらいしか自力で生やせてないからな。

 

「妙子も、あーん」

 

「うむ。良い酒のつまみになりそうじゃ」

 

 妙子はあーんとかキャラじゃなさそうなのに、普通にかぶりついた。

 なんなら串は受け取らずに、そのまま持っておれといって瓢箪から「っかーっ!」と酒を飲む有様だ。

 なんてこった。俺、今完全に食事介助要因じゃないか、おばあちゃん!

 

 元気なおばあちゃんには押し付けといた。

 

 

「縁子、あーん」

「は?」

「あーん」

「は?」

「あーん」

「………。」

 

 めっちゃ睨まれたけど、それで俺が引き下がると思うなよ。

 俺が引かないとわかると、縁子はため息をついて手を差し出した。

 

 あーんはできなかったが受け取ってはくれるみたい

 

 

「鈴木くん、気を使わなくていいよ………。」

「うんにゃ、使うね。この旅行は縁子のためでもあるんだから。ほら、リラーックス。これ美味しいから。由依と一緒にこの豚串の美味しさについて語って来なよ。」

「………本当に、あなたはお節介だよね」

「さあ、俺は楽しければそれで良い刹那的な人間だからね。あとのことはしらーんプイ」

 

 ばいばいっと手を振って縁子を由依の方に追いやる。

 クスッと聞こえた笑みに、縁子の肩の力が少し抜けたのを感じた。

 

 

「た、樹………俺も………」

 

「鉄太………何も考えずに5本も買ったらダメだろ。ほら、あーん」

 

「あーん………。」

 

 

 俺は最後の豚串を鉄太の口に突っ込み、鉄太の持つ残り4本の豚串を佐之助の分を2本残してアホの鉄太の後処理で消化するのに務めるのであった。

 

 

 




あとがき


次回予告
【 再会 】

お楽しみに


読んでみて続きが気になる、気にならないけどとりあえず最後まで読める程度には面白かった

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