テンプレバスター!ー異世界転生? 悪役令嬢? 聖女召喚? もう慣れた。クラス転移も俺(私)がどうにかして見せます!   作:たっさそ

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第62話 樹ー合流

 

「俊平くん、俊平くんだぁ………!」

 

 

 ポロポロと大粒の涙をこぼす縁子。

 

 この世界にくる前から、俊平のことを気に入っていた縁子が、半年前に俊平が漆黒竜(ブラックドラゴン)に食われるところを直接目撃したらしい。その後、食われた俊平が自爆するところまで目の当たりにしている。

 

 半年だ。

 

 半年間。ずっと俊平のことを想い続けていた。

 俊平を助けるために、地下の迷宮に潜り続けた。

 

 ようやく。

 

 ようやくだ。

 

 ようやく、会えたのだ。

 その溢れる気持ち(ナミダ)を止める術を俺は持っていない。

 

「ぐすっ、うぅ………」

 

 拭っても拭っても溢れる涙は止められない。

 よせよ。そういう涙見ると、悲しくなくとも、嬉しくなくとも俺はつられて涙が出るくらいには感受性豊かなんだぞ。

 

「うそやん、あれ俊平か? えらい白うなっとるやんけ」

「確かに………………樹は知ってたのか?」

 

 50mほど先に見える白いその姿に、縁子の泣きながら呟く声と合わせてあの白い生き物が俊平だと消吾と鉄太もわかったようだ。

 あまりにも思わせぶりな俺達のやりとりに気づいた鉄太が俊平の方を指差しながら俺の方を見る。

 

 口の周り、油だらけだぞ。拭け。

 

「まあな。この旅行を決めたのも、お前達を誘ったあの日に………。俊平が迷宮から脱出できたことがわかったからな。絶対に俊平が面白いことしているって思って、急遽遠征に来たわけだ。」

 

「確かに、ワイらがこの遠征に行くことになったのってかなり急やしな」

 

 

「肩まで白い髪が伸びて、見た感じ完全に女の子にゃ。」

「かわいいよねー」

「うむ。佐之助がおったら確実に写真を撮っておるだろうな。」

「絶対売れるにゃ」

「わたし買うよ。俊平ちゃんの写真集」

 

 

 田中、由依、妙子が俊平の姿を見てニヤニヤとしながら縁子のそばに寄る。

 

「わたしも()うぅ………」

 

 

 泣きながらその写真の購入を確定する縁子。

 案外冷静じゃねえか。

 

「どう? このサプライズ。感謝は? ねえ感謝は?」

 

ーーポス

 

「いて」

 

ーーポスッ

 

「いてて。どういたしまして」

 

 グーで最大限の照れ隠しのありがとうをもらいました。

 あんだけ煽ってムカつく感じされて、素直にありがとうと言えないみたいだけど、最大級の感謝の気持ちが籠もっていた。

 

「そんじゃ、迎えに行くぞ」

 

 と、前しか見ない、気遣い上手の樹さんが縁子に言ってやると、下を向いたままコクリとうなづいた。

 

 

 

 

          ☆

 

 

 

 縁子の背中を由依が撫でて歩かせる。

 

 なんで俺が俊平が迷宮から脱出しているのを知っているのか?

 そんなもん、いい感じの探知ができる西村佐之助(スケープゴート)がいるから言い訳なんてどうにでもできらぁ。

 

 困った顔で櫓の上でぶつぶつと何事かを笑顔で呟く俊平。

 

 おそらく、「あおい」と話しているのだろう。

 

 いくら姿形が変わろうと、いくら崇め奉られていようと。

 

 俊平が俺たちの仲間である事実は消せない。

 

 

「俊平ーーーーーーー!!!!」

 

「おーーい! 俊平ちゃーん!」

 

「こっちむくにゃーーー!!」

 

 

 喧しい一般名字三人衆が俊平に向かっって盛大に自己アピール。

 

「っ!!?!? 樹くん!? みんな!!」

 

 こちらの姿に気づいた俊平が驚いた顔でこちらを見る。

 そりゃあ驚くわな。

 

 自分が崇められている姿なんて、一番見られたくないだろう。

 

 とはいえ、会えた驚きと嬉しさに、俊平は声を弾ませて櫓から飛び降りーー

 

 

「よせ俊平! 格好つけるな! お前はー!」

 

「うわっ!」

 

「お前は実はドジっ子じゃないか!」

 

 

 俊平がそれなりの高さのある櫓から飛び降りようとして、組み立てられた櫓の木の端に白無垢をひっかけてバランスを崩し、真っ逆さまに落ちた。

 

「うわあああ!」

「白の巫女様!」

「シュンペイ様!!」

 

 

 慌てる信者たち。

 

 俺? 俊平、痛いんだろうけど、首折れても再生する能力持ってるんだろ? 慌てちゃいないよ。

 

 

「俊平くん!!」

 

 

 そんな俊平にいち早く反応したのが、我らが大和撫子。北条縁子。

 

 人の隙間を縫うように走り、俊平の落下地点に滑り込むと。

 

「間に合った、今度は、間に合ったよ。ちゃんと助けられた。」

 

「ゆ、縁子、ちゃん?」

 

「俊平くん………………」

 

「………………。うん」

 

「………………おかえり。」

 

「………………。うん。………………ただいま」

 

 

 ぎゅうっと抱きしめる縁子のハグに、俊平もそっと背中に手を回した。

 

 

 

 その後ろで俺と由依と田中は、それをみてハイタッチ。

 便乗して鉄太も来たから一緒にハイタッチ。

 

 妙子も拳を突き出してきたから、上から拳で軽く叩くと、妙子も拳で上から叩き返し、最後に拳と拳を正面から合わせる。

 

 なんだこれ洒落てんな。

 

 

 とまあ、紆余曲折あったけれど、ダンジョン最下層RTAしていた俊平との合流を果たせたわけだ。

 

 

「だいぶたくましくなったじゃあないの、俊平」

「せやね、ずいぶん可愛らしい格好に成長したやんけ」

「俺も俺も! 俺もそう思う!」

 

 俊平と縁子を囲むように俺たちは信者達を押しのけて集まった。

 

 

「よく頑張ったな、俊平。おかえり。」

「うん………。がんばったよ。何度も心が折れそうになった。でも、………。ううん。多くは語る必要ないね。ただいま」

 

 ふにゃっと、崩れた笑顔を向ける俊平。

 そのただいまに、全ての感情が込められているのは、すぐにわかった。

 

 

 

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