テンプレバスター!ー異世界転生? 悪役令嬢? 聖女召喚? もう慣れた。クラス転移も俺(私)がどうにかして見せます!   作:たっさそ

64 / 69
第64話 由依ーハグハグハグ!!

 

「お待ちしておりました。どうぞこちらへ………」

 

 この街の領主に謁見することになった。

 ここは客室。泊まる部屋というよりはお客さんをお待たせする部屋かな。

 曲がりなりにも私たちは勇者だ。その地域のお偉いさんには勇者としてあいさつをしますとも。

 

 時間帯的にも落ち着いたので、俊平がお世話になっているであろうお屋敷に顔を出して、俊平とお話せねばならない。

 屋敷の窓全体に麻でできたカバーがかけられていたのは意味が分からないけれど、窓ガラスはないのかな。

 

「勇者様方、ようこそ、こんな辺鄙な田舎街へ。何もないところですが、どうぞお寛ぎください。」

「はい。過分なご配慮、誠に有難うございます。」

 

 

 タツルが代表して礼を述べるが、すまんなタツル、「過分」な配慮………それは文書での言い回しであって口頭での言い回しに適さないぞ。

 タツルは理科以外がポンコツだから国語がうんこっこだ。

 

 まあ、異世界ではどうかは分からないけど、領主さまも勇者のご来館に緊張をしている様子。

 

 そうだよね。当然だ。

 お城でも王様が勇者に対してはかなり丁寧に接している。

 領主ともなれば勇者と接する機会は王城よりは機会がない。

 

 急に偉い人が来たらそりゃあ緊張するのも仕方がない。

 ほとんどアポなし訪問だもの。

 

「とはいえ、白の神子さまもお疲れの様子。会合を明日にすることは………」

 

 

 何言ってるのだろう。ここにきて自分の都合を押し付ける領主にちょっとイラっとした。

 俊平ちゃんが望んだ会合を、拒否したい様子。

 

 理由はわかるよ。絡んでいるのは利権だ。

 ここに俊平ちゃんがいることで得をするのだ。

 

 気持ちもわからんでもない。俊平ちゃんを神格化することにより、人が集まり、集客し、外から来るお金で経済が回る。

 そうすることによって、税収が上がりまわりまわって手元に来るお金が増えるのだ。

 俊平ちゃんを長い間手元に置いておきたいはずだ。

 そこに俊平ちゃんの意思はない。ただの客寄せパンダだ。

 

「のう。俊平は見世物ではないぞい。さぞ良い人寄せになったじゃろうな。通行税や商業税で大分儲けたのではないか? これ以上俊平を利用しようなどと言うのであれば、その旨国王に伝えても何も問題あるまい?」

 

 同じ考えに至ったタエコちゃんが、腕を組んで直球で脅す。

 

 

「………。大変失礼いたしました。すぐに場をご用意致します。ご食事の用意などは」

「屋台で食べてきたからいいですにゃ。お気持ちだけ頂きますにゃ」

 

 謝罪ののち、食事のご招待があったものの、タナカちゃんが一蹴。

 タナカちゃんの頭に乗っかる猫耳に眉をしかめたものの、勇者に対して強く言う事はなく

 

「かしこまりました。すぐにお呼びいたします。」

 

 一礼して出ていく領主さま。

 

 差別と言うのはどこにでもある。

 だが、残念ながら、タナカちゃんは人間だ。獣人じゃない。睨むのはお門違いだぞ。

 

 しばらくして、私たちの待つ客室にオレンジ色の髪の女の子に連れられて俊平ちゃんが現れた。

 白い装束はそのままに、笑顔の花を咲かせた俊平ちゃんが現れたのだ。

 ついでにクリーム色の髪の天使を連れて。

 

「みんな!」

「おっす俊平!」

 

 そこでタツルは両手を広げて先頭で待ちわびる。

 

「ふふっ、樹くん、さっきぶり!」

「おう、さっきぶり。」

 

 そこに俊平ちゃんは駆け寄ってタツルを抱きしめた。

 合わせるようにタツルも俊平ちゃんをハグ。

 

 半年ぶりの再会だ。テンションも上がる。タツルはハグした俊平ちゃんの頭をなでる。

 

「あおいさん、俊平がお世話になっております。俊平のこと、これからもよろしくね」

「なっ!? なんで、樹くんがあおいさんのことを!?」

「ククク。秘密。」

 

 驚愕のままタツルは俊平ちゃんから手を離す。 

 しょうがないから、わたしも俊平ちゃんを抱きしめる為に両手を広げてタツルの後ろで待機。

 

 

「おかえり俊平ちゃん」

「うん。ただいま、由依ちゃん。」

 

 苦笑した俊平ちゃんはタツルから開放されたあと、少し恥ずかしそうに私も抱きしめてくれた。

 ああ、かわいいなぁ。

 胸にフィットするこの感じ。おっふぅ……。安心する。私も抱きしめ返してあげるのだ。

 ユカリコが抱きしめたくなるのもわかる。

 

 タツルや俊平ちゃん以外だったら絶対にしないよ。俊平ちゃんだから抱きしめられるのだ。

 なんというか、俊平ちゃんは私の中で女子枠だから。

 男子じゃないんだよ。

 

「俊平にゃん、こっちおいでにゃ!」

「うん、花音ちゃん」

「にゃはは、次カノンって呼んだらぶっ飛ばすにゃ。田中にゃ、た、な、か。」

「くるし……田中ちゃん!」

「わかればいいにゃ。」

 

 タナカちゃんも俊平ちゃんを抱きしめてむぎゅぎゅっと締め付ける。

 俊平ちゃんは、みんなを名前呼びしたい子だからね。

 しばらくしたら、またタナカちゃんをカノン呼びして田中押しされそう。

 

 それを見た佐之助(エロガッパ)も次のハグで待機。

 

「頑張ったな。言いたいこと、いっぱいあるっぜぃ。」

「僕もだよ。心配かけてごめん………」

 

 ポンポンと俊平ちゃんの背中をたたいてあげる佐之助。

 俊平ちゃんはぎゅっと佐之助を抱きしめ返した。

 

 

 俊平ちゃんと佐之助は幼馴染で親友同士。親友というか悪友と言うか。

 佐之助がやらかすことに、良く巻き込まれるのが俊平ちゃんなのだ。

 この半年の空白の時間。

 俊平ちゃんの生存が分かっているからこそ、佐之助はむしろずっと心配していたのだ。

 

 

「次、ワイやな。あとで俊平の冒険を聞かせてな」

「わかった。長編物語だよ。覚悟してね」

 

 俊平ちゃんはマスコットという立場ながら、クラスメイトの和を保つ役割を持つ。

 俊平ちゃんのいないうちのクラスは張りが足りない。キョーコもしかり。

 ショーゴとしても、俊平ちゃんがいなければ盛り上がらないのだ。

 

 いいリアクションをしてくれる俊平ちゃんこそ、いい観客でもあるのだから。

 

 ショーゴともハグを終え

 

「俺も俺も! 俊平、お前本当に抱き心地いいな。」

「抱き心地なんて僕にとってはどうでもいいステータスだよぉ!」

 

 便乗男子、テツタもハグを行う。

 テツタはとりあえず便乗しているだけだ。

 

「では儂も便乗するとしよう。俊平。こっちに」

「うん。」

 

 タエコちゃんもぎゅっと俊平を抱きしめた。

 

「ほう、これは確かに。なかなかの抱き心地。儂専属の抱き枕にならんか?」

「ならないよ!」

「なんじゃつまらん」

 

 俊平のハグをやめ、肩に手を置く。

 

「あのとき、俊平を助けられなくてすまなかったな」

「妙子ちゃんのせいじゃないよ」

「いや、儂が本気を出しておればあの程度………。申し訳ない。儂の怠慢じゃ。」

 

 

 俊平の肩に手を置いたまま、深々と頭を下げる。

 ユラリと頭の上のクヌギの葉っぱが揺れる。落ちない。

 

「本気出せない事情があったんでしょ。耳とかしっぽとか。」

 

 俊平ちゃんもなんだかんだとタエコちゃんと距離が近い生徒だったからか、化け狸であることとか知ってたみたいだね。

 ってか頭の葉っぱある時点で化けてるのはみんな知ってると思う。 

 両肩をポンポンと叩いて俊平ちゃんから離れる。

 

「俊平君………。」

「縁子ちゃん。ただいま」

「おかえり、おかえりぃ~~………!!!」

 

 もっとも待ちわびていたユカリコが、泣きながら 俊平ちゃんを抱きしめた。

 

 むぎゅうっと俊平ちゃんを抱きしめるユカリコ。

 中学生にしてそれなりの大きさのあるその胸で俊平ちゃんを押しつぶす。

 

 わんわんと泣くユカリコの背中を、ポンポンと撫でる俊平ちゃん。

 

 

 もうどっちが子供かわからないな。

 




あとがき


次回予告
【 ………どっちもついてた。 】

お楽しみに


読んでみて続きが気になる、気にならないけどとりあえず最後まで読める程度には面白かった

と思ってくださる方は
ブクマと評価をお願いします。(できれば星5はほしいよ)


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。