テンプレバスター!ー異世界転生? 悪役令嬢? 聖女召喚? もう慣れた。クラス転移も俺(私)がどうにかして見せます!   作:たっさそ

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第65話 由依ー………どっちもついてた。

 

「あの、みなさんは、シュンペイ様とはどのようなご関係ですか?」

 

 

 みんなのハグ合戦が終わり、オレンジ色の髪の女の子が落ち着いた私たちにそんなことを聞いた。

 さて、この人たちがどこまで勘違いをこじらせているのかわからないところだけど、どう答えたものか。

 

「友達だよ。大事な友達。みんな、この人はジャニスさん。僕をこの屋敷に置いてくれる領主の娘さんだよ」

 

 

 俊平ちゃんがユカリコに後ろから首を通して抱きしめられながら紹介してくれた。

 なにそこ、いいな。定位置かしら。

 

「俊平ちゃんがお世話になっております。」

 

 と私は頭をさげると、みんなも合わせて頭を下げた。

 

「私たちにとっても俊平ちゃんは友達です。ジャニスさんにとって俊平ちゃんはどんな人ですか?」

 

 どんな認識かによって態度を変えなければならない。

 

 彼女の答えは。

 

「わたしにとってシュンペイ様は、尊ぶべき存在です。」

「具体的には?」

「神様だと思っております。」

 

 

 と答えた瞬間。

 

「もぶっふ!!!」

「ん”ん”っ!!」

 

 わたしとタツルが我慢できずに吹き出してしまった!!

 ちょっ! マジか! だいぶ予想通りだけど! まさかの俊平ちゃんの神格化に開いた口から変な声出ちゃうよ!

 

「………なにか?」

 

 しらーっとこちらを見下ろすジャニスさん。

 あまりに失礼な私たちの態度に眉を寄せた。ごめんなさい。

 

「いえいえ、続けてください。」

 

 肩を震わせながら手で制し、続きを促す。

 

「人ならざる神聖な御姿もさることながら、魔人を倒したときの神の一撃。連れておられる天使様がそれを証明しております」

 

 私は後ろを確認した。

 

 みんな目を逸らした。

 タエコちゃんも、タナカちゃんも。

 ショーゴも佐之助(エロガッパ)

 テツタもユカリコも。

 

 なんなら俊平ちゃんも。

 

「つまり、やはり俊平は神様だってことですね!!!」

 

 と、やけに大きな声でタツルは肯定した。

 勇者に自分の考えが認められて嬉しそうに口元に笑みを浮かべーー

 

「いやあ! 勇者として俊平と仲良くさせてもらっていましたが!!! やっぱり俊平は神様ですね!!! 確かに! 前々から!!! 彼には!! 格が!! あると!! 思っていましたァ!!! 」

 

「なんですかあなた。馬鹿にしているんですか?」

 

 すぐにタツルが嘲笑していることに気づいて笑みを取り消す。

 タツルは間違いなく馬鹿にしている。むしろ笑っている。これ、完全に人をイラつかせるやつだ。

 

「いやいや、俊平にはプリズムの煌めきがありますよ。彼ならスタァになれます。なんなら4連続ジャンプもフェザーなしでできるでしょう。」

 

「それレインボーライブ。こことは世界線違うよ。プリズムショーはできないからね」 

 

 先日プリティーシリーズ10周年を迎えた女児向けアニメじゃないですか。

 と、わたしがツッコミを入れるものの、タツルは意に介した様子もなく、顔の表情を消した。

 情緒不安定かな?

 

「ジャニスさん。俊平が神々しいのはわかる。俺だってびっくりしてる。でも、それで俊平を利用するな。流石に俺もイライラするしムカつくし………勘違い系は大好きだけど、それで俊平に迷惑かける系は看過できないからね。」

 

「なにを………」

 

「俊平は勇者だよ。俺たちと一緒に召喚された。だから、申し訳ないけど、ここで神様の真似事はもうできないんです。」

「そんな………………でも、確かにシュンペイ様は………白の神子様で………。伝承も………。」

「どんな伝承かは聞かない。俊平が指輪をしているのは、つい最近のことだろう。俊平に聞いたのか? 俊平が神であるかと。思い込みじゃないか?」

 

 

 わたしたちが最後にみた俊平ちゃんは、右腕が弾き飛んでいた。翻訳の指輪はしていないのだ。

 この街についてから指輪を嵌めているのだろう。

 私たちのクラスメイト全員が指輪をしているが、翻訳の指輪っていうのは、かなり高価なものだ。

 外国に行く必要もない人が持っているものではない。

 

 俊平ちゃんがいましている指輪は、いつつけたものかはわからない。

 でも、少なくとも、こんなに騒ぎが大きくなるまでに俊平ちゃんが何も言わないなんてことはありえない。

 

 噂話では、俊平ちゃんは魔人の幹部を倒したとの報告を受けている。

 

 人間の大陸にやってくる魔人の幹部は、間違いなく交渉のためか最低限の会話のために指輪をしている。

 わたしの勘が正しければ、俊平ちゃんが倒した魔人の指輪をしているのだろう。

 

「………っ!!」

 

 

 思うところがあったのか、目を見開き、そしてタツルから目を逸らした。

 

「まあ、俺も厳しく言いたいわけじゃないし、その辺は俊平の意志にまかせるわ。俊平、どーしたい?」

「うーん。ジャニスさんにはお世話になったし、恩返しをしたかったんだけど、たぶんもう受けた分の恩は返せていると思う。せっかく佐之助たちが迎えに来てくれたんだし、僕は帰るよ。」

 

「そ、そんな………。シュンペイ様、ほ、本当に、神様じゃ、ないのですか………?」

「うん。ごめんなさい、僕も全然いいだせなくて………。」

「いえ、全てはわたくしの早とちりが原因ですので………………………。」

 

 消沈しながら、俯いて部屋を出ようとするジャニスさん。

 

「領民になんと説明すれば………」

 

 と頭を抱えるジャニスさん。

 

「うん? 別に領民の勘違いを正す必要はないぞい」

 

 と、そこに待ったをかけたのがタエコちゃん。タエコちゃんは腕を組んでジャニスを引き止める。

 

 

「な、なぜですか?」

 

「宗教というものは力じゃ。求心とはすなわちカリスマ。俊平の力を勝手に勘違いさせるのはワシとしてはかまわんよ。ワシらには責任はないからのう。勝手にやる分にはかまわん。適当に俊平は天に帰ったとでも言い訳すればいいだけじゃ」

「いいの? タエコちゃん。」

「いいもなにも、かってに俊平のことを盛り上げていただけじゃ。樹が言っていることも正しいが、もう終わったことじゃ。後始末は本人達に任せればよい。」

 

 ああ、当事者じゃないから、あとは勝手にやっててねってことね。

 

「あとは………俊平しだいじゃが、俊平が自分の名を使ってもいいというのであれば、時々なら俊平も手を貸すじゃろう?」

 

 

「え? まあ、いいけど。僕としても、この1週間、ジャニスさんにはとても世話になったし。手伝える範囲でなら、神様の真似事しても全然おっけーだよ」

 

「俊平がそういうなら、俺もいうことねーや。俺一人だけ空回りしてるみたいで恥ずかし。ジャニスさん。……さっきは馬鹿にした言い方してごめんなさい。面白おかしくなる分にゃもう何も言いません。」

 

 タツルは私から見ても言い過ぎだった。頭を下げるタツルに、ジャニスは

 

「いえ、わたくし、本当に恥ずかしい早とちりをしていたみたいで………。魔人との戦いの後、気を失っている俊平さまの介抱をしたとき、………………その、男性器も女性器もあったので、わたくし、てっきりシュンペイ様は本当に神様だと………………。勇者様のいた世界では、普通のことだったのですね………………………。こんな勘違いをしてしまって………………………本当に申し訳ございません」

 

 

 爆弾を落とした。

 

「はえ??」

「にゃにゃ??」

 

 ぽかんとタツルとタナカちゃん。

 

 

「え!? ぼ、ぼく!? おんなのこ? おとこのこ!? あれ? あれれ????」

 

 

 俊平ちゃん自身も大混乱していた。

 

「ファーッ!? わたしも予想外だったよ。俊平ちゃん!ちょっと、トイレ行ってきて!」

 

「う、うん!」

 

 

 バタバタとトイレに駆け込んだ俊平ちゃんが、しばらくして、部屋に戻ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………。どっちもあった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 流石にジャニス以外の全員が大爆笑したことを、許して欲しい。

 

 


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