テンプレバスター!ー異世界転生? 悪役令嬢? 聖女召喚? もう慣れた。クラス転移も俺(私)がどうにかして見せます!   作:たっさそ

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第66話 樹ー笑って済ませる友情

 

「ぎゃははははは!! しゅんぺっ、おまっ! おまええ!! マジで女の子になっちゃったのかよ! あ、いやふたなりか? ぶっくく、あっははは!!」

「くふっ! ふっははははーあ! ちょっ! 俊平ちゃん設定盛りすぎ! 神様までは容認できたけど、両性具有は予想外なんだけど!!」

 

 俺と由依はテンプレの予想が大きく外れた予想外の俊平の肉体変化に爆笑を堪えきれず、二人して地面を叩いて爆爆爆笑した!

 しょーがねーだろ! まさかそんな展開あるかよ! 少なくとも俺は読んだことねえ!! 知らねえ!!

 だからこそ面白い!!

 

 

「しゅ、俊平………。んふっ、女の子としての相談なら儂が………ぐふっ相談に乗っても良いぞ。人生経験は豊富じゃからな。もし妊娠しても、出産も儂が立ち会っても良いぞ。」

 

 

 口元に手を当てながら横を向いて震える妙子。

 笑ってんじゃん。妙子おばーちゃんなら、子供どころか孫くらい居そうだけど、だからといって、俊平が妙子にそんな相談するかよ。

 ちょっとお下品な妙子おばあちゃんだ。

 

「妊娠って………。さすがに僕は男の人とキスはしないよ!」

 

 

 しまった。俊平は肉体だけでなく性知識もお子様だった!

 恋愛知識がキス止まりだ!

 

「しょーがねーっぜぃ。ここは俺っちが俊平に正しい性知識を植え付け………」

 

 と、ここで変態の異名をもつエロガッパが手をわきわきしながら俊平に近く。

 

 しまった。佐之助は女の子ならなんでもいけるやつだった!

 

 パーツが一部女の子なら佐之助のセンサーに引っかかる!

 最低な親友だ!

 

「佐之助! 今のアンタがそんなこと言うたら犯罪の香りしかせえへん! そのにぎにぎした手をやめれや!」

 

 笑いながらも次元収納していたハリセンを取り出して佐之助の後頭部をスパコーン! と叩く消吾。

 

「ひっひっひっ! っ! っ! はぁーー! 俊平っすごいな! 迷宮から出たらそうなるのか!? だーもう腹痛え!」

 

 鉄太は引き笑いしながら呼吸困難になっていた。

 

「うわ、これが女子から見た佐之助か。たしかに気持ち悪いね」

 

 自分に気持ち悪い笑みで迫ってくる佐之助にドン引きの俊平。

 

「俊平にふられたっぜぃ!」

「あっちいけ佐之助!」

 

 わちゃわちゃとじゃれる佐之助と俊平。

 まあ、なんだかんだで仲良しか。

 

「俊平くんが、おとこのこで、おんなのこ? うふふ、あはは、それって一度に二度お得ってこと?」

 

「縁子にゃんがなんか壊れた笑い方してるにゃ! でも俊平ちゃんのことは受け入れているにゃ!?」

 

 縁子も混乱しながら笑っている。

 俊平の本質が変わらないのなら、男でも女でも大好きなのか。

 

「なんというか、器が広いのか器に穴が開いているのか………。」

「両方じゃない? あれ? なんか召喚前にこんな話したような」

 

 俺と由依のツッコミも誰にも届かない。

 

 この場合はまじで両方か。広い器に穴空いてる。

 んで、たしかに召喚前にそんな会話したわ。そんなところで伏線張ってんじゃねえよ。

 

 みんなで笑い転げてひーこらひーこらしていると

 

「シュンペイ様は、男の子、なのですか?」

 

 俊平の性別に疑問しかないジャニスがそんなことを聞いてきた。

 

「そりゃあ男の子ですよ。ちょっと事情が複雑で、俊平自身が自分が女の子にもなっていたことに気づけなかっただけで」

 

「そ、そんなことがあるのですか………」

 

 

 性別が混ざっても気づかないなんてことあるのだろうか、と疑問に思うジャニスだが自分の理解の及ばないなにかが起こっているのだろうと納得してもらうしかない。

 

「だから、本当に複雑なんですよ。俊平、俺は独自のルートから、お前が再生のアビリティを持つ「あおい」という少女と融合してしまったことを知っている」

 

 おれがそう切り出すと、俊平は佐之助たちとわちゃわちゃしていたのを止め、ゴクリと唾を飲んだ。

 

「樹、それホンマか?」

「ああ。なんなら、由依や田中、妙子も証人だ。」

「女たらしや!」

「あ? 由依以外の女の子にそんなにキョーミないんだが………」

 

 キレそう。俺、そんなに女たらしに見えるか?

 うーん………あ、いつメンが完全に女の子だった。

 

 田中は田中だし、妙子はおばあちゃんだし、全然気にしていなかった。

 

「樹くんは、なんでも知ってるんだね」

 

「おう。俺は無敵だからな。俺のアビリティをうまいことわーってやったら大抵のことはなんとかなる。」

 

「なんというか、反則級の能力なんだね………。」

 

「もっとも、再生できるようになった俊平は攻撃力だけで言えば俺よりも上だぞ。そこは誇っていい。」

「う、うん………。」

 

 俺よりも攻撃力が上といっても、俊平は自爆しないといけないから、素直に喜べない様子。

 

「俊平、その「あおいさん」と人格を代わることってできるか? 無理なら代返でもいいんだけど………」

「どうだろ………一度肉体の主導権を渡したことあったから、できなくはないと思うけど………。あおいさん、代われる? ………。おっけー、じゃあよろしく」

 

 俊平が目を瞑る。

 そして、しばらくして俊平が目を開ける。

 

「やあ、君がタツルくんだね、わたしはあおい。よろしくね。俊平から話は聞いているよ。頼りになるクラスメイトだと。」

 

 俊平は典型的な黒目だったんだけど、どうやら主導権をあおいに譲ったときは目の色がブラウンに変わるようだ。

 見分けづらいが、基本の操縦は俊平なのだろう。

 

「はじめまして。どうやら俊平の肉体の主導権は任意で選べそうだな………」

「わたしの肉体でもあるからね。とはいえ………私自身、体を動かすのは久しぶりだな………。どれ………」

 

 手をぐっぱっと動かす。

 

「なるほど………。うん、やはり基本的には肉体の主導権を握るのは俊平の方が良さそうだ。わたしは<自己再生(シナズ)>のアビリティを持ってはいるが運動音痴でね。普段は俊平のサポートに徹しさせてもらうよ。」

 

 

 急に口調が変わった俊平に、言葉を失う縁子と消吾、佐之助、鉄太。

 

 俊平の無事を知っていても、俊平のなかにもう一つの人格が入り込んでいることはわからなかっただろう。

 

 いや、わかる方が不思議だ。俺が元の世界に帰った上で、夢映しの鏡で俊平のことを盗撮していなかったら、俺だってわからなかった。

 偶然の力がでかい。俺の力じゃあないが、俺はこう言う時にドヤしたい人間なんだ。

 

「わたしは元々女子高生。17歳だった。再生のアビリティを持っていたが、蜘蛛の魔物に捕らえられてしまってね………。数百年は蜘蛛の苗床にされていたよ。」

 

 

 なるほど………。再生のアビリティだから、年も取らなかったのかな。

 それとも、精神体だから年を取らない?

 検証はできないが、数百年の間、ずっと苗床になっていることを思えば、まさに俊平にとってのテンプレヒロイン。

 

 相当地獄を見ていることはわかっている。不謹慎だと言うこともわかっている。

 だけど今回はそういう言い回しをさせてもらう。

 

「わたしをその地獄から救い出してくれたのが、俊平だ。」

 

 あおいさんは胸に左手を当てる。

 生を噛み締めるように。

 

「死にたくても死ねないわたしを、俊平は自分もろとも、ぐちゃぐちゃに自爆した。そして、わたしのアビリティで、一緒になって再生してしまった。これが真相だよ。」

 

 右掌を上にして指先を俺に向けるあおい。

 

 その顔は、苦痛よりも、慈愛に満ちていた。

 

「じゃあ、その時に融合して俊平にゃんの髪が白く、精神は二つに、そして両性具有になったのかにゃ?」

「そうだね。両性具有についてはわたしもさっき初めて知ったけど、そう言うことだと思う。まあ、ベースは俊平だ。俊平には男には気をつけるよう、言っておくよ」

 

 

 理解の早い田中は、すぐに咀嚼して内容をみんなにわかりやすく噛み砕いて、質問口調の解説を行う。

 そんで、あおいさんはそれを肯定した。

 

「あおいさん、あなたの本名を教えてください。」

「む? 小暮あおい。俊平のなかにわたしがいることまで知っていて、本名まではしらないのかい?」

「すみません、俺もそこまではわからなかった。うまくいけば、ええっと………耳貸してください」

 

 俺はあおい、という人がいることまではわかっても、フルネームは知らなかったからな。

 俺が小さく手招きすると、あおいは耳を寄せる。

 

(俺、元の世界に戻れるんで、あおいさんも地球に帰せるかもしれないんです)

 

 一番大事なネタバレを行った。

 

「ほ、本当かい!? 俊平も驚いているが………」

「この事実を知っているのは、あそこの超絶可愛い由依と、猫耳の田中と、タヌキの妙子だけです。どうかご内密に。ただ、融合してしまった二人がどう言う風に戻るのかは見当がつかないですけど。」

 

 俺は茶目っ気たっぷりにウインクと人差し指を口元で立てた。

 

「わ、わかった………………。でも、なんでそれをわたしに伝えたんだい?」

「うん? 数百年も希望がなかったと聞いたら、流石に同情しましてね。ほぼ毎晩、夢幻牢獄に何年も閉じ込められている俺と由依だけは、その数百年の孤独を多少なりともわかるから。サービスです。」

「………。どうやら君のアビリティもわたしと同じ、呪われた力のようだね。」

「その分、強力ですよ?」

「………………違いない。」

 

 

 そういって苦笑したあおいの瞳には、さらなる希望があふれていた。

 

 

 

 




あとがき


次回予告
【 勘違いと答え合わせ 】

お楽しみに


読んでみて続きが気になる、気にならないけどとりあえず最後まで読める程度には面白かった

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