Ability Wars (仮)   作:大山鳥

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時は西暦2XXX年。突如として世界に誰もがかつては空想したであろう超常的な力を持つ人々が現れる。

そんな不思議な力を人々は『能力』と呼称し始めた。

そこから『能力』により、人類の文化は進歩した。

そして『能力』の出現から数年、犯罪率は一気に上昇。悪しき方向へ使うもの現れたのだ。

世界のとあるところでは『能力』の研究が日々行われ、軍事転用までし始めた。

これを危険と見たわが国では『能力法』が整備された。もっとも当時のこの国では『能力』を使用された犯罪が少なかったこと、入国禁止の鎖国を行っていた事からその拘束力・罰則は他の国と比べて緩かった。

 

高を括っていたわけでも慢心していたわけでもない。その整備から5年が経った頃、現在の首都である東京で事件は起こる。

経済成長の象徴のタワーが突如爆破され、その付近で一斉にテロが起きる。

テロを起こした人間は『能力』を持ち、彼らを止められるのは『能力』を持ったものだけだ。

だが、対抗組織は当時存在せず、多くの犠牲者・けが人を出しながら数か月以上の年月を経て、事態は収束に向かった。

 

そこから改めて『能力法』は改訂され、かつてのテロの激戦区となった地に巨大な基地が作られていく。

さらには、二度と同じ悲劇を繰り返さないよう、国内各地に対策基地を作り、国から認められた『能力』を持つ人『能力者』が街中を警備するようになった。

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4月。天気は憎らしいほどの晴れ。

通学路に植えられた桜の樹は入学を祝うかのように花びらを散らし舞っている。

オレからしたら、この天気も花びらも鬱陶しいことこの上ない。

(どうせなら、曇り空かつ桜なんて散り終わってりゃいいのにな…)

まぁ、どうでもいいやと思いながら肩にかけた学校指定カバンを背負いなおす。

ほどなくして、白金の巨大な建物が見えてくる。

そこが今日から3年間通う学校。『国立能力者育成学園関東校』。

かつての「首都陥落事件」の跡地周辺に建てられた国内最大規模の能力者を育成する学園である。

 

「信、見~つけた」

「ぐっ…つ」

後ろからいきなり抱き着かれる。急すぎて前にこけそうになる。

「んだよ、紫花」

「先に登校するなんてひどいよ。それに、二人の時は『来華』でしょ」

「るせぇ。いいから離れろっての」

全力で引っぺがそうとするが、能力を使っているようで簡単に離れない。

赤髪の少女は紫花来華。ガキの頃から小6年まで一緒だった幼馴染というやつだ。

当時もこんな調子でくっついていたが、今はそれ以上にひどくなっている。

こちらも軽く能力を発動させ、やっとこさの思いで離す。

そんな調子で学園まで一緒に歩いていく。学園に近づくにつれ、同じ制服を着た人が増えていく。

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学園到着後、入学式を行うため、体育棟の第一体育館に通される。

通された時、式のしおりと番号の振られた紙を渡される。

聞いてみたところ、クラス分けの紙だという。

「1ね…」

「やった、ひとまず1年間よろしくね」

結構音量落としていったはずが、来華には聞こえていたようだ。

来華が持っている紙にも1が書かれている。

 

体育館に並べられている座席には指定がないので壇上より比較的後方かつ端の席に座る。

隣には来華が有無を言わさずひょいっと入り込む。

ざっと見た限り、20×6列で120名が今年の新入生、同級生の総数ということになる。

二階の席には上級生たちがいるが、目測で100人いるかいないかだ。

欠席かあるいは…。なんてことを考えていたら、入学式が始まった。

学園長の言葉に新入生の挨拶、在校生の歓迎の言葉。

約20分ほどで式は終わり、担当教員引率の元で教室への移動となった。

 

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「改めて担任の小早川です。1年間よろしく」

教室に到着。いったん手荷物を自分の席に置き、教室や設備についての説明を受ける。

今年の入学生徒数は120名。試験の時はもっといた気がするので残っているのはやはり優秀なのだろう。

5クラス24名で構成され、クラス分けは完全にランダムらしい。

学園のシステムを説明するにあたり、先生から渡されたのは二種類の機械。

携帯電話型の機械と手首に付けるタイプの機械だ。

 

「こちらのスクール・ライフ・デバイス。通称SLDは学園生活する際に必要になります。皆さんが普段使っている携帯の学校版とでも把握してください」

画面をつけると普通の携帯のロック画面のようだ。

解除するとこれまた普通の形態と同じような画面。

そこに数種のアプリが事前に落とされているようだ。

電話やメールといった一般的なものから、時間割や校則といった学生らしいものまで入っている。

 

「そして、こちらの手首に装着する端末は明日以降の部隊活動で使用します。本日は皆さんにSLDの仕様と部隊活動で使用する隊室を確認してもらいます」

 

ちなみ、どちらも破損は保証するが、紛失の場合は即刻退学となるとのこと。

それだけ、重要度が高いというわけだ。

 

「では、1300にもう一度ここに集合してください」

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説明が終わったのは12:00。昼飯時である。

先程説明を受けた食堂で食事するもよし、購買で何か買って食うもよしの状態になる。

オレと来華は食堂に行くことにした(厳密にいえば来華は勝手についてきただけ)。

注文システムは単純でSLDで注文し、出来上がり次第それに通知が入る。

出来上がりまでの時間で、席を確保し座る。

「午後は何するのかな」

「部隊活動について話すんじゃねぇの」

「どうしてそう思うの」

「半分勘。もう半分はその説明を受けてないから」

SLDに掲載されている校則とは別に「部隊活動規則」なるものが載っている。

さっと読んでみたがこの説明をまだ受けていない。

それらを改めて読み直していると、出来上がりの通知が入る。

席番を来華に任せて、注文したざるそばを取りに行く。

戻ってくると、今度は来華の端末が音を出し振動しているので入れ替わりで来華が昼飯を取りに行った。

 

ぐるっと食堂を見渡してみる。食堂はかなりでかい。

2階構造な上に総生徒200名が全員入れるぐらいは広さがある。

しかもメニューも豊富で料金は国が持ってくれるので無料で食い放題というわけだ(食べ残し罰則有)。

営業時間も朝5時から夜0時までと、3年間朝昼夜の飯には困らない。

「飲食店の最強系だよなぁ」

「食堂のこと?」

いつの間にやら戻ってきた来華。トレーに乗っているのはナポリタンである。

「そんだけで足りんか」

「足りるね。というか男子高校生がその量ってほうが心配なんだけど」

「オレは一般高校のスポーツ学生じゃないっての」

「それもそうだね。でも心配だな」

「誰目線なんだよ」

味の方も文句なし。普通にうまいのだ。

1300まではまだ時間もあるし、ここに来るまで15分もかからなかった。

10分前くらいに出れば余裕で間に合うな。

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「では、今から部隊活動についての説明をします」

現場事情は能力者の人手不足が常である。

能力者同士での戦闘となれば死亡のリスクは非常に大きく、需要に供給が追い付かない形になりつつある。そこで即戦力かつ生存率の高い隊員を育成するためにこのシステム『部隊活動』が各育成校で行われている。

現場に限りなく近い状況下を何度も経験することで、より濃い経験値を積めるからだ。実際、一般公募の隊員より育成校卒業生のほうが良い結果を出せている。

それでも育成可能な人数は120名程度が第一高校での限界である。

ちなみに、卒業できるのは直近3年平均では25名ほどである。

 

「例えどんな任務であろうとも、手と気を抜かずこなしていくことです。でないと気付いた時には死んでいた。なんてことになりますのでね」

語気は明るいが内容が内容だけに教室は静まり返る。

その静寂を破ったのは全員のSLD。一斉になりだし教室内は一気に騒がしくなる。

内容は「指定時間以内に部隊活動の拠点となる部屋にたどり着け」。

「では、最初の試験です30分以内に自分の隊室に到着して下さいね」

そう言い残し先生は教室を出て行ってしまった。

どのクラスも同じ状況のようで5クラス計120名が一斉に動くとなると廊下がごった返す。それなりに人数が減るまで自分の席で校則・規則を読んでいく。

恐らく一般的な学校に比べて、緩いほうだと思う。

ネットでよく見るブラック校則とかいうやつは見当たらない。

その代わり、昇級に関しては厳しめといった感じだ。

紙の試験に加えて、これからの部隊活動が影響するようだ。

学校が入学試験の結果を考慮して部隊を編成しているらしい。

 

「信、そろそろ行こうよ」

いつの間にか横に来ていた来華に声をかけられ横の廊下を見る。

先程までいた大勢はだいぶ減ったようで、教室の人数も数人しか残っていない。

SLDに表示された残り時間は20分。

「そうだな。あんま遅いと他のメンバーに悪いしな」

荷物一式をカバンに突っ込んで背負い教室をでた。

「で、その隊室ってどこにあるの」

「そこからか」

オレは事前に学園の構造をSLDで読んでいたから場所はある程度把握しているが、来華は全く分かっていないといった感じだ。説明程度はしておいたほうがいいか。

この学園にはいくつか『棟』といわれる建物が分かれ存在する。

まず、さっきまでいたのが1年の学業棟。普通の授業はここで行われる。

これが各学年ごとに存在し、計三つの学業棟が存在する。

次に、生活棟。ここには入学式をした体育館や大型の食堂、大規模な図書室がある。

そして、これから向かうのは部隊棟。

ここには学年関係なく部屋が割り振られており、地下まで存在する。

 

「わかったか」

「その部隊棟に行けば」

「だいたいわかるだろ。わかんなきゃSLDで部屋検索だ」

来華への説明もかねて、道案内アプリを使い指示通りに目的地に向かう。

平面のルート指示だけでなく建物に入ればある程度角度がついた立体地図で表示される。

 

「これは…凄いね」

アプリのおかげもあって10分もせずに、部隊棟についた。

だが、来華は絶句している。

入り口にある館内地図の前で1年生でごった返しているのだ。

これではどこに行けばいいのか全く分からないだろう。仮に部屋の位置が分かったとしても、その場所から動けない状態が続く。完全に悪循環だ。

「どうする?」

「ちょっと待ってろ」

 

SLDには部隊棟で使えるアプリも入ってる。

自分の学生名・IDを入力すれば…

「ほい」

画面に行くべき部屋がぱっと表示される。オレの隊室は1階の奥の方だ。

ついでに、来華のも調べたがこれまた同じ隊室。同じ部隊のようだ。

何かと縁があるね~、なんて言ってくるが、ここまでくると学園側から操作されているような気させしてしまう。もちろん、そんなことはないだろうが。

 

端末のおかげで隊室まですんなり来ることができた。

到着した隊室のドアに端末を当てると電子ドアのロックが外れる。

予想だが、隊員以外は入室できないようにするための措置だろう。

 

部屋のサイズは5人が活動するには十分な大きさだ。

他のメンバーが来るまでの時間で部屋の設備を見てみる。

機材は最新のモノであり、これが全生徒分あると考えるとやはり相当な資金が突っ込まれているようだ。

それだけ能力者育成に本気であると考えられる。

世界情勢を考えれば、いつどの国でも内内の戦闘や他国からの侵略行為があるわけだから当然と言えば当然か。

 

「結構、雑な試験だったね」

「そーでもないだろ。意図はあったと思う」

不思議そうにしてる来華に、自分の理解した範囲で説明をしていく。

まずは時間制限。単純に考えると生徒を急かして軽いパニックを起こさせるため。時間を限定されてしまうと最初の数分は「早く着かないと」という具合に思考が一本道になってしまう。理想はこうならず、なってしまっても、そこからいかに早く別の思考にたどり着けるかが重要である。

次に、情報取得や到達までの手段。『棟』の存在を把握していなければ到着は困難。

なら、なぜ部隊棟の入り口が混雑していたのか。恐らくだが1年に扮した上級生か教員辺りがここだと教えたのだろう。引っ張ってきた学生を入り口で放置して離脱。また、1年を引っ張り込んで放置。これを繰り返し、後続を呼び込み先行した1年を人の波で拘束する。

SLDの仕様を把握していなければ、かなりの時間をあそこで消費させられてしまう。

逆に仕様を把握しておけば、今のオレ達の様に順当に到着できる。

 

そんなことをしているうちに、一人が数分もせず到着。

互いに軽く会釈をし、そこから15分ほどしてから、もう二人が部屋に入ってくる。

この時のSLDの表示していた残り時間は1分。下手すれば彼らはアウトだったかもしれないが焦りの表情ではない。そして、同時にアナウンスが入る。

 

「えー、全一年生の入室を確認しました。後は皆さんにお任せします。本日はこれにて帰宅許可を出します。お疲れ様でした」

この主は小早川先生。ブツッとマイクの電源が切れたと同時にSLDにメールが入る。

送信者名は『学校』。内容は部隊の役振りと、今後の予定。

部隊割り振りでは隊長職を任されている。

「あー、自己紹介でもしようか。オレは赤柱信。能力は『弾丸予測』」

「じゃ、次は私。紫花来華。能力は『未来予知』。って言っても5秒ぐらいだけどね」

次、白髪長髪の君。と来華が壁によりかかり立っている同級生に順を振る。

こういうところで気が使えるのはコイツのいいとこだよな。

白髪の少年はもたれかかるのをやめ、姿勢よく立つ。

身長は完全にオレより上で180ぐらいある。

「白井翼。『身体強化』。で、こいつが」

「灰崎龍悟。『竜人化』」

白井の隣に立っていた奴は言葉少なくそう答える。

鍛えているのか制服はオレの様に隙なく、ピシッと張っている

「最後は僕ね。黄原誠作郎。技工士(エンジニア)志望で『睡眠不要体質』」

ゴーグルを首から下げた少年は元気そうに答え、SLDを触り始めた。

黄原の「エンジニア」(正式に技工士)とは簡単に言えば機械・システム周り全般のメンテナンスや開発を行う、表には出ない裏方のような仕事をする役目である。破損した武器の修復・部隊に必要な装備の用意なんかを対応してくれる。

 

来華にあてられた「オペレーター」(正式には支援員)は現地で活動する隊員のサポート。周辺状況や仲間の状態を管理し戦況を支える。

他にも複数の部隊と連携する際、各部隊の情報共有が円滑に行えるようにするなど、状況によっては現場隊員並みに忙しい頭脳職。

 

部屋の中央にある作戦用の机はSLDと連携させることができる仕組みになっている。

その機能を使い送られてきたメールの内容を机に表示し共有する。

最初はどの部隊も隊長・隊員2名・オペレーター・技工士。計5名が標準のようだ。

隊や生徒の欠員状態や身体状況に応じて、多少の入れ替えはあるとのこと。

だが、よほどのことがない限り、解隊はせず、3年間初期メンバーで頑張ってと書かれている。

ちなみに、隊長の選定基準は学園サイドの独断と偏見であり、隊長役を誰かに回すことは禁止とされている。

 

「で、部隊活動ってのはどうすればいいんだ」

全員が内容を一読し、話を始めたのは白井。

「その辺は私から。部隊活動は学園から配られる任務をこなしていくみたい。最初の難易度は低めね」

オペレーター用のデスクに戻っていた紫花の説明は続く。

難易度は5段階(A-E)で分けられ、難易度が高ければ達成が難しいということだ。

配布される任務は学園がこれまでの部隊活動を鑑みて各部隊に応じて変化する。

優秀であれば高難易度に、そうでなければ低難易度を受注する事に成る。

 

「要は、高難易度をクリアすれば上に行けるわけだな」

「早い話はそうだね。でも、まだ高難易度なものはないみたいだよ」

紫花はPC画面をスクロールし、現在配布中の任務を確認する。

内容は紫花の言う通り、戦闘的なモノはなく担当区域のパトロールなどだ。

戦闘能力の低い学生にはパトロールをさせ、異常があれば本職の隊員たちに伝達し対処といった流れだろう。人手不足を学生で補うのはいい判断だとオレは思う。

「初日から受注はできないから今日は解散かな」

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