幼馴染と一緒に迷宮探索者になる   作:猫仔猫

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第10話 初迷宮探索

23XX年4月9日 日本時間08:30 HR

 

「皆さんおはようございます。今日の午後は座学では無く、迷宮に入りますよ。おめでと~」

 

朝のHRで突然に午後の授業は迷宮に入ると言ってきましたよ。

教室内は喜びより戸惑いの方が多いぞ。

 

「本当なら後1回座学やってからなんだけど、今日迷宮で実地しておかないと迷宮への入場許可出ないからね。明日明後日の土日に何もできないのは暇でしょ?」

 

外出出来れば別だけど、出来ないからな。

迷宮に入れないと借金しながら生産するくらいしかやる事が無い。生産スキル無い人に比べたらましだけどね。

 

「ですので、13:30に運動着に着替えてFランク迷宮の前に集合です。探索者カードだけは忘れないように」

 

昼になったら学食でご飯食べて、寮に戻って着替えてFランク迷宮前に移動か。

何気に初めて運動着を着るな。体育も掃除も無いから、やっと出番が来たようだ。

 

ちなみに掃除は生活魔法持ちの先生が夕方見回りついでに<清浄>をかけているらしい。すっごい便利!

 

 

 

23XX年4月9日 日本時間13:30 三校Fランク迷宮前

 

明日香と美咲という巨乳美少女二人が俺の側に居るからか、男子からの視線が痛い。信也の方がでかくて目立つ筈なのになぁ……

 

4日目ともなると少しづつグループが出来始めている。男女混合グループはまだ少ないけどね。

で、少ない混合グループの1つが俺たちだ。そして女子の数が多いからか、男子グループから距離を取った女子グループが近くに集まってくるんだ。

そうすると、大きな女子グループの中に男二人混じっているように見えるじゃん? そうなると嫉みの視線が増えるんだよ!

 

健一? 健一は背が低いから女子の中に埋没しているよ、ずるい。

 

 

時間になると迷宮前に集まった生徒たちを掻き分けて高坂先生が迷宮前にやってきた。

何時ものスーツ姿でなく運動着姿なのでスポーツウーマンって感じだ。手持っている木刀を見なければだけど。

 

「今日はFランク迷宮の1階層での活動になります。

この学校のFランク迷宮1階層は自然型ですので、この大人数でも同時に活動できますからね。

では中に入りますから、探索者カードをゲートにかざして付いて来てください」

 

先生が先頭でゲートを起動して中に入ると、近くに居た人から順番に続いて行く。

少し離れた場所に居たので、男子が入り終わった後に女子を引き連れるような感じになってしまった。

 

ゲートに探索者カードをかざし迷宮の中に入る。

広間の奥の通路を進むとその先は草原だった。遠くには森林や湖らしき物まで見える。

 

少し先に先生とクラスメートたちの姿が見えたのでそこへと移動した。

 

最後尾の生徒が到着すると先生が説明を始める。

 

「ここで出現する魔物は大兎――ビックラビットだけです。あそこにも居ますね。敵対行動を取らない限り襲ってはこないので、落ち着いて行動するように。

今日は皆さん素手ですけど、スキルでステータス補正が1でもあるなら頭を掴んで首をコキっとやれば倒せます。見た目は可愛くても魔物ですから、殺せないようでは探索者として不合格です。ダメだった人は転校する事を考えてくださいね」

 

厳しい言い方だけど仕方無いよな。

それにしても首をひねって殺すのかぁ……。確かにスキル不要で誰でもできるんだろうけどさ。

 

「魔物を倒すと光の粒子となり迷宮に吸収され、ドロップ品だけが残されます。

ビッグラビットはお肉と毛皮、そして魔石ですね。これらは購買で買い取りを行ってますから、ポイントを貯めて自分のスキルに合った装備を整えるように。2階層以降は素手だときびしいですからね。

この後は自由に戦ってください。ただし、HPが50未満になったら帰るように。先生は15時までここに居ますから、質問や困った事が有ったら来るように。じゃあ、行動開始!」

 

先生の号令で元気な者は我先にと駆け出していく。

グループでまとまって動く者や人の少ない方へ行く者など様々だ。

 

 

「うんで俺たちはどうするよ?」

「襲ってこないなら一緒に動いて順番にやってみりゃ良いんじゃね? 失敗しても人数いりゃ捕まえられるだろうし」

「ん。初めてだからその方が落ち着いて出来そう」

「じゃあ、人の少ない方に行こう。取り合いになったら面倒だし」

 

俺たちが行動方針を決めると、側に残っていた女子グループの子が話しかけて来た。

なんでも最初は誰かがやる所を見せて欲しいらしい。まぁいきなり首を折れと言われても困るよね。

 

こうして俺たち10人と女子グループ8名の計18名は固まって移動を開始するのだった。

 

 

まぁ歩き回るまでも無く、すぐに見つける事が出来る。生えている草より体の方が大きいから、隠れてないんだよ。

 

「俺から行くか? 真也先に行く?」

「どうすっか。どっちでも構わないけど、初めてだしどう動くか見てみね?」

「じゃあ俺が前から、信也が後ろから近づいてみるか。襲ってこなくても逃げるかもしれないしな」

「OK、それで行ってみよう」

 

挟み込むように前後から距離を詰めると、大兎はぴょんと後ろに跳ねた。

そしてそれを信也が空中でキャッチして抱きかかえた。

 

「なぁ、そこから首折れる?」

「両手塞がっているから無理!」

「だよなぁ……。健一! 真也が抱えているからやっちゃえ」

 

俺が健一を呼ぶと、ひかりと紅葉に背中を押されてこっちへとやってきた。

 

「ぼ、僕がやるんですか……?」

「だって、一番無理そうなんだもん。押さえているのならやれるべ?」

 

健一が聞いて来たので答えると、女子たちの方から「あぁ~」とか「確かに無理っぽいかも」なんて言葉が聞こえて来た。

 

「で、でもどうやれば良いか分かりませんよぅ」

 

攻撃系でないにしても、こんなんでよく探索者になろうとしたな。

結局俺がやる事になったので、みんなが見やすいように集まって貰う。

 

頭と口を押さえて一気に180度回転させる。

すると数秒の後に大兎の体が光り始めた。

 

光が消えた後の信也の手にはラップに包まれた肉と魔石が残っていた。

 

「掴んでいた毛皮がどんどん違った感触になって行くの、何とも言えない変な感触だったぞ」

 

そんな報告は要らん!

 

「肉、思ってたより大きい」

「んだな、2kg有りそうな感じだ」

 

光が肉に興味を示すと、信也は腕を上下させて重さ確認してた。1年半以上鉄アレイで筋トレしていたからな。

 

「でもさ、先生の言うコキっとは違う感じじゃない?」

 

たしかに今のやり方だと体を固定していないと無理そうだ。

近くに1匹沸いたので後ろから近寄って行き、耳を掴んで持ち上げた。

 

「さて、ここからだよな」

 

俺の言葉にみんなが頷く。

片手で首を捻れればいいのだけど、大兎だけあって首も太い。

 

どうコキっとすれば良いのか。……いや、ひとりでも体を固定できれば良いのか。

脚の間に大兎の体を持って行き、両膝で大兎の体を挟む。左手で頭を押さえて右手を耳から放して顎を掴む。

 

そして、勢いよく頭を引っ張り上げながら時計の逆方向に捻る。

大兎の体が暴れるけど、膝から逃れてしまっても両手で頭を持っていれば自重で首にダメージが行くだろう。

それにいくら大きくても、突進で無ければ動かした足が当たっても駄々っ子パンチと大差ないからな。

 

大兎は光の粒子となり、俺の足元に肉と毛皮を残して消えた。

 

それを確認した信也は俺に持っていた魔石と肉を押し付け、近場に居た大兎を捕まえに行った。

信也が同じように仕留めて見せると、それを見た他のメンバーも行動を開始した。

 

 

 

1時間も経たないうちに全員が大兎を仕留める事が出来た。

うちのメンバーだと明日香と恵、そして健一が手こずっていたし、女子グループの何人かも同じように失敗していた。魔法使い系は力に補正入っていないからなぁ。

 

まぁ後は時間とHPが許す限り自由行動だ。

これからは1つに固まり続ける必要もないだろうという事で、バラけて行動する事になった。ただし、女子はある程度固まるようだけどね。

 

俺は草原に生えている微薬草や石を採集しながら森林の方へと向かう。適当な木の枝や蔦が欲しいからな。

 

 

 

 




補足
大兎ならステータス補正無しでも殺せます。
ただ自然迷宮では1階層からゴブリンなのどのアクティブな魔物が出ますので、迷宮出現当時はステータス補正が無いと勝てませんでした。

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