幼馴染と一緒に迷宮探索者になる   作:猫仔猫

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第23話 泊り授業②

先生の話が終わると、各々が行動を開始した。

その場で腰を下ろしたり、2階層に向かっていったり、大兎を狩り始めたり様々だ。

 

今週の1階層は中央から南、西、北西にかけて草原で2階層への階段は西にある。東から南東に湖があり、北から北東にかけて森林が広がっている。

 

「俺たちは4階層に行って来るわ」

「あぁ、無理はしないようにな」

 

信也、涼子、ひかりの3人が西に向かって行った。

4階層のスケルトン相手に戦闘か、24時間も有るんだし無理はしないで欲しい。まぁひかりの索敵もあるし大丈夫だとは思うけど。

 

「雪兎様はどうなされるのですか?」

「まずは湖沿いに森の方に移動だね」

 

森の中の方が生産材料を多く採れるし、森の中まで行けば人が少ないだろうし。

あと少しで魔石ポイントが貯まってガチャも出来そうだし、今日の目標の1つにしよう。

 

「わたくしも御一緒させて頂いても良いでしょうか?」

「ゆ~君、私も一緒~」

 

美咲と明日香は俺についてくるようだ。

この二人なら問題無いし、一緒に居ないと男子が寄ってきて可哀そうだしな。

 

大兎を狩りながら湖に向かって行くと、楽しそうに話しているグループが居た。俺らと同じく数少ない男女混合グループのようで、男子十人に女子二人だった。

進む方向が同じだから、彼らも湖を目指しているのだろう。

 

 

湖に着くと前を進んでいたグループの一人が、人より大きい布で囲われた物を取り出した。アイテムボックスか生産スキル持ちが居るんだな。

その中に女子二人が入っていくと、残った男子たちは近くに荷物を置いて服を脱ぎだした。

 

「あの方々は何をなさっているのでしょう?」

 

俺の陰に隠れて男たちが視界に入らないようにした美咲が俺に聞いて来た。

 

「ズボンの下に水着を着ていたみたいだ」

「あの中に入った女の子も着替えているのかな~?」

 

水着姿になった男子は水際に移動したけど、チラチラと女子の入った更衣室もどきの方を見ている。

あの様子からしてそうなんだろうな。近くで女子が水着に着替えてると思うと気になるのは仕方ないよ。

 

彼らに近寄らないように湖に近寄って、小石や砂を採取して北の方へ向かうとしよう。

楽しそうなんだし邪魔しても悪いからね。

 

明日香と美咲に小石を集めて貰って、砂を採取していると後ろから男たちの歓声が聞こえた。

気になったので見てみるとビキニ姿の二人の女子が居た。……ってあの二人は市華ちゃんと巴ちゃんじゃないか。

 

裁縫と錬金スキルを持っている市華ちゃんなら、あのくらいの更衣室もどきは作れるよな。

始めは女子グループに居たあの二人が男子と組んでいるのか。う~ん、それがあの二人の選択なら口を出す事では無いけど、十人に二人なんて大変そうだよな。まぁ全員とそういう関係になるとは限らないけどさ。

 

 

採取を終えて森の方に歩きだすと二人に腕を取られた。二人とも胸が大きいから両腕が幸せです!

 

「ゆ~君には私たちが居るからね」

 

二人ともこの授業の後の事を意識しているんだろう。

二人に好意は有るけど、まだLoveにはなってないと思う。だけどこの二人が他の男と考えるとイヤなんだよな。

 

「雪兎様、深く考えなくても良いのです。多夫多妻で完全な両想いなんてそうそうありませんので、少しでも好きと感じているであれば、わたくし達を受け入れてくださいませ」

 

そう言うと更に体を寄せて来た。

俺の腕を完全に胸に抱え込んでしまっていて、ちょっと歩きづらくなってしまった。

 

まぁ、美少女二人に流されるのも悪くないか。こうされても止めてない時点で認めているようなものだしな……

明日香と美咲はお互いに認め合っているみたいだし、悪いようにはならないと思うし。

 

 

 

森の中に入ると並んで歩けなくなるので、腕を開放して貰えた。

蔦や微薬草なんかを採取して進み、目的としていた場所に着いた。

 

ここは今週探索していた時に見つけた場所で、森の中にちょっとしたスペースがあって、そこにある塚から水が湧き池が出来ているんだ。

 

「わぁ、なんか童話とかでありそうな場所だね~」

「えぇ、おとぎ話の中に迷い込んでしまったように感じますわ」

 

二人がその景色に感動しているが、空気を読まずに近くの木の伐採を始める。

なんだかんだで此処に来るまで1時間以上かかっているから、明日まで過ごす場所を作ってしまいたい。

 

伐採した木を加工して板材にする。それを使用して5mx3mx2mのいわゆる豆腐ハウスを作る。迷宮内なら屋根を斜めにする必要もないしね。

それにこのサイズなら2階層以降の通路に置く事も出来る。一定以上の物がある場所では魔物が湧かないらしいから、行き止まりに置けば比較的安全な場所が出来るだろう。

中で暮らすわけでは無いので、床に羽毛で作ったマットを敷いて雑魚寝できるようにする。……羽毛布団とも言うが気にしないでおこう。

 

それから1mx1mx2mの小屋を作り横に配置する。中には洋風の便座を設置、漏れたりしないように防水にした革を付けている。

俺が生活魔法で清浄しないと汚物の処理が出来ないのがネックだが、二人に野外でさせるよりは良いかな。

 

そして5mx5mの板の間を作り、中央に採取した石と砂で地火炉を作る。

木材から木炭を作って地火炉に置き、火を着ければ完成だ。

 

 

後は大兎が近くに湧いたら狩れば良い。

肉も手に入るし水も汲める。寝床にトイレとこれで問題無いだろう。

 

「なんかちょっとしたキャンプ場って感じだね~」

「流石は雪兎様ですわ。予想以上に快適に過ごせそうで嬉しいです」

 

サバイバルが一転キャンプに早変わり。これが何でも作れるクラフトの強みだよな。

 

アイテムボックスに入れていた薬缶に湧き水を汲んで、地火炉の金網に乗せて湯を沸かす。

アイテムボックス内にも水は有るけど、迷宮産の物を使った方がクラフトの成長に良いだろうからね。

 

 

 

 

23XX年7月9日(金) 日本時間20:00

 

空というか天井が赤く染まり、そして暗くなっていく……

外の時間より遅いけど迷宮内の自然階層にも昼夜が有るんだな。こんな遅くまで迷宮内に居る事は無かったから初めてだ。

 

パチパチと炭の焼ける音を聞きながら、肉が焼けるのを3人寄り添って眺めている。

なんかスローライフって感じで良いよな。

 

 

そんな感傷に浸っている所に――

 

「ユキト~ォ、やっと見つけたデース」

 

情けない声を出しながら寄ってくる人影があった。

 

 

 

 


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