20XX年某日。
その日、人類は『光』を目撃した。
太陽の暖かな光ではない。月の優しく見守るような光とも違う。人類の叡智により作られた人を照らすための光とも違う、冷たく、突き刺すような眩いほどの『光』。
その『光』そのものは地球上の『すべて』へと降り注ぎ、太陽の光も月の光も覆い隠す程の明るさで数時間に渡って人類を照らし出した。
その光が消えた直後は、全世界で光の正体が科学者達により探られたもののその正体は誰一人として分からず、『神が終末を告げたのだ』と主張する者や、『某国の秘密兵器である』と主張する者が現れたこと以外は、さしたる異常はなかった。
しかしその『光』が降り注いだ日から、世界中で実行が不可能としか考えられない犯罪、『不可能犯罪』が世界中で発生した。
ナイフや銃等ではここまでするのは到底不可能、とされるような奇妙な変死体は序の口。下手をすると死体すら見つからない、そんな奇妙な犯罪…
下手人の正体はすぐに判明した。
……『未確認生命体』と呼ばれる『怪物』であったのだ。
その怪物が初めて人に目撃されたのは日本の東京でのことである。半狂乱で支離滅裂な事を話す通報を受けた警察が現場に駆けつけ…そして、目撃した。
体格そのものは人間と同程度か少し大柄か、という程度。しかしその姿は人間とは全くかけ離れている。
まるで昆虫が人の形を取ったような奇妙な光沢のある表面に手の先は動物のような鉤爪があり、頭は頭髪はなく、代わりに動物や昆虫のような触角に醜悪で生理的嫌悪感を抱くようなその面持ち…
まるで特撮の世界から飛び出してきたかのようなそのおぞましい怪物は、取り抑えようとした警察を虐殺し甚大な被害を出しながらも機動隊や警察によって鎮圧された。
その一件から続くように、日本の各地で未確認生命体が目撃されるようになった。
目撃例は日本だけでなく世界中で発生していたが、その大半は日本で暴れていたのである。
中には警察や自衛隊の装備では太刀打ち出来ず多くの人間が犠牲となり、多くの人々は絶望した…
しかし、希望はあった。未確認と戦う奇妙な未確認…『未確認生命体4号』の存在である。
当初は他の未確認生命体と同じように、虐殺を行うかと思われていた4号であったが、彼は他の未確認と戦い、人を守った。
あるときは赤色で、拳で悪を打ち砕いた。
あるときは青色で、棍で悪を打ちのめした。
あるときは緑色で、弓で悪を撃ち抜いた。
あるときは紫色で、剣で悪を切り裂いた。
それを受けて警察は4号との協力体制を構築することを表明、連携により多くの未確認生命体を撃破していった。
それから、4号とはまた別の…自らを『アギト』と名乗る、自らを異形の姿へと変えられる存在に覚醒した人間が現れるようになった。
彼らも理由こそ様々であるが未確認と戦い、人々を救った。
そういった異形と戦う者達の奮戦の甲斐あって、ついに未確認生命体…その分類の一つである『グロンギ』の首魁と思わしき怪物…『未確認生命体0号』と4号の決闘の末、双方の相討ちにより、『グロンギ』の殺人ゲームを止めることに成功した。
4号の行方不明という犠牲を払いつつも、0号の撃破により未確認の活動は収まったように見えた。
……表面上は、だが。
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太陽が沈みかけた夕方の、薄暗くなってきた路地にて。
「お願いお願いお願いお願い…!はやく繋がってよぉ…!」
一度転んだのか汚れが目立つレディーススーツを着た、仕事帰りのOLと思わしき女性が携帯電話を耳にあてながら、必死で何かから逃げ回っている。
走ることに不向きなハイヒールにスーツという格好で、汗だくになり化粧が汗で崩れ髪を振り乱し、それでも後ろを幾度となく振り向きながら、追ってくる『何か』へ怯えつつ逃げ回る。
「あっ…きゃっ!」
ハイヒールで走り回ったツケが来たのか、足を捻って盛大に転び、手にしていた携帯を取り落としてしまう。
転んで出来た擦り傷や捻った足の痛みを堪えつつ、落とした携帯電話へと手を伸ばす女性。
その目の前で、振り下ろされた足によって携帯電話がみしり、という音とともに無惨に踏み砕かれる。
「ちょっと、なんてことす…ひぃっ!」
携帯電話を踏み砕かれたことに抗議しようと顔を上げた女性は足の主を見て悲鳴をあげる。
人間のものと違う土気色の肌に包帯のように手足に巻かれたぼろ布と首周りには蜘蛛の巣のような衣類に手の部分には鋭い鉤爪。頭部はまるで蜘蛛を思わせるような6つに分かれた複眼に蜘蛛の脚のような突起が顔の横に生えている。
異形、怪物…そうとしか言い様のないその怪物にして、自分を殺そうと今まで追いかけてきた相手から逃れようと泥だらけになることも厭わず這いずり距離を取ろうとする女性。
その様子を嘲笑うようにゆっくりと歩み寄る怪物…『未確認生命体』の分類の一つ『グロンギ』。
『ズ・グムン・バ』と呼ばれる怪物は、女性をいたぶるようにゆっくりと、しかし確実に迫っていく。
「…れか…誰か…!助けて…!殺される…!」
携帯電話という助けを呼ぶ手段を奪われた女性は、必死で声をあげ、『助け』を求める。
しかしこの通路は滅多に車が通らず、誰かが通りがかることはほぼない。その上、もし誰かがやって来たとしても、ズ・グムン・バにかかれば重装備の軍人であっても赤子の手を捻るように殺される。
そんな『詰み』とも言える状況におかれながらも、女性は死にたくない、という一心で声の限りに叫び救いを求める。
そんな様子に興味を全く示さず、ズ・グムン・バの手の鉤爪が振り上げられ…
直後、怪物はやってきたバイクに跳ねられ仰け反る。
「……えっ……?」
助けを求めていた女性が信じられない、といった表情で顔をあげ、自らの狩りを邪魔されたズ・グムン・バもバイクにより跳ねられたダメージなど全くないかの如く、爛々と怒りを抱えた様子で、自分を轢いてきたバイクを睨み付ける。
「……ったく、散々追い回された怒りを轢き逃げで発散してやったってのにノーダメかよ」
『気を付けろよケイスケ、下級っつってもグロンギだ、相手次第じゃ4号でも苦戦させられる相手だぜ』
バイクによる体当たりを仕掛けた張本人であるフルフェイスのヘルメットを被った男がバイクに乗ったままうんざり、といった様子で無傷のズ・グムン・バを見て告げると、それを戒めるかのような電子音声が聞こえてくる。
「分かってるって…っと、そこのOLさん!あぶねぇから下がってもらえるか?」
「あっ…は、はい…!」
その様子を呆けて眺めていた女性であったが、ヘルメットの男の呼び掛けに答えて、慌てて必死で立ち上がり、捻った足を庇いながらその場から離れようとする。
それを見たズ・グムン・バが苛立った唸り声とともに女性へと向かおうとするが、またしても突っ込んできたバイクを避けるのにたたらを踏んでのけぞる。
「おいおい、つれねぇじゃねぇか、折角ここまで追い掛けてきてやったってのによぉ!」
『ウチじゃ女の子へのおさわりは禁止だぜぇ?確かにさっきのレディーは足がグンバツだったけどよぉ!』
「……お前そこだけはよく見てるな」
『ハッハッハッ!俺様のレディーセンサーの前には女性も丸裸よぉ!』
「へいへい……っと、無視されてた虫野郎がお怒りみてぇだな」
緊張感のない『ケイスケ』と呼ばれた男と電子音声の漫才にしびれをきらしたかの如く、野太い怒りの声をズ・グムン・バがあげる。
その恐ろしく人を恐れさせるような雄叫びを受けても、男は恐れたり怯えたりする様子はなく、むしろバイクから降りて仁王立ちになり、相手をしっかりと見据えて懐からスマートフォンを取り出す。
「さぁて…行くぜ、『トラスト』!変身だ!」
『合点承知!』
取り出したスマートフォン、『トランスフォーン』を起動し、液晶に写る複数のアプリの中から、『変身』と書かれたアプリケーションをタッチする。
するとトランスフォーンから帯が伸びて、『ベルト』のように腰に装着される。
そして時計回りに円を描くように腕を回転させ、左手をベルトのバックルの上に、右手を斜め上へと高くかかげ…そしてその言葉を叫ぶ。
「……変身ッ!」
【OK!トランスシステム・アクティブ!・マイティパッケージ!】
すると男の全身を黒いボディースーツが覆い、そして、装甲が装着されていく。
クワガタのような角のあるヘルメット、赤いプロテクターと手甲、そして右足に脚甲が追加され…その姿を見たズ・グムン・バが驚きの声をあげる。
《ビガラパ……クウガ……!?》
『違う』
クウガ、と呼ばれたその戦士は、しかし否定する。
『俺は…トランス!仮面ライダートランスだ!さぁ行くぜ…ミッションスタートだ!』
自分を『仮面ライダートランス』、と名乗った戦士は、驚いて硬直していたズ・グムン・バへと飛びかかっていく。
慌てて身構えるズ・グムン・バであったが一瞬遅く、トランスに距離を詰められ一気にラッシュを食らう。
『フッ!ハッ!セイッ!』
鋭い一撃を受け止めきれず、ズ・グムン・バは右・左と連続したジャブで防御を崩されたのち、渾身の右ストレートというコンビネーションパンチを食らって大きくのけぞる。
《ギ…ギィィィィ!》
『ケイスケ、首を右に傾けろ!』
『おう…っとぉ!』
攻撃に怒ったズ・グムン・バが頭部の口元から吐き出した白い糸(とはいえ太さは太めのロープほどにも匹敵するが)を、電子音声の助けもあってギリギリでかわす。
『っぶねー、なんだ今の…』
『恐らく蜘蛛糸だ、野郎のやり方は捕まえて手の鉤爪でケバブにすんのがお好きらしい!レディーになら縛るのも縛られるのもは好きだが野郎や化け物相手は勘弁願いてぇぜ!』
『OK、食らわねえように…ドラァ!』
再び吐き出された糸をしゃがみこんでかわして、反撃の回し蹴りをを叩き込むトランス。
ズ・グムン・バが怒って鉤爪を振り回すのを、空手の受けのように綺麗な形で受け止めて、逆に掴んでズ・グムン・バを一本背負いのような形で一気に投げ飛ばす。
《グギィ…!》
『うっし…!さぁて、フィニッシュと行くぜッ!』
【OK!パワー・トランスポーティング!】
トランスがバックルの液晶を操作し『必』とかかれたアイコンをタッチすると、電子音声とともに、右足にエネルギーが集中していく。
そしてトランスが構え、腰をひくく落として力をためるような動作をした後、倒れこんだズ・グムン・バへ目掛けて疾走し、跳躍!
『う、おりゃあああああ!』
一直線に飛び蹴り……『ライダーキック』を叩き込み、くるり、と一回転して着地する。
《グ、ガ…ギグガアアアアアア!》
そして、飛び蹴りのダメージとエネルギーを一気に注ぎ込まれたズ・グムン・バは、断末魔の悲鳴をあげて爆散し、この世から消滅した。
『……っと、なんとかなった、か…うし!これにてミッション終了、ってな!』
グロンギが爆散したのを見届けたトランスは、決め台詞とともにグッ、とサムズアップをする。
『さて、なんとか被害者出さずに終って良かったーっと…!帰ってメシだな!』
『おう!…っとその前にさっきのOLさんの連絡先を…』
『帰るぞ』
『無慈悲かっ!?』
トランスと電子音声…『トラスト』が漫才のような会話をしながら、放置されていたバイクへと乗り、その場を離れていく。
「……仮面、らい、だー…」
その様子を、助けられた女性は眺めていた。
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0号の撃破から三年。
未確認は未だに存在し、裏で暗躍するものもいる…
そんな不穏な中で、仮面を被った戦士達は各々の信念や守りたいもののために戦う…
マイティパッケージ
パンチ力:3.5t
キック力:8t
ジャンプ力:25m
走力:100mを8秒
『未確認生命体4号』のデータをラーニングし生まれた最初のパッケージ。
クワガタのような角のあるヘルメット、赤いプロテクターと手甲、そして右足に脚甲が追加される。
格闘能力が底上げされ、それ以外の能力もバランスが取れており、汎用性の高いパッケージ。
必殺技は脚甲にエネルギーをチャージし、助走をつけて跳躍、一回転して相手へ飛び蹴りを放つ『ライダーキック』。
ズ・グムン・バ
クモの性質を持つグロンギ怪人。
口から吐く糸は鋼より頑丈で、絹糸よりしなやかな性質を持つ。
三年前のグロンギ活発期はゲゲルに参加していなかったため、警察組織や4号とは未接触。
0号をはじめとしたグロンギの激減をのしあがるチャンスとして独自にゲゲルを初めるも、トランスにより撃破された。