マスカレイド・サーガ   作:バイン

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MISSION.1-C fin

「いっ、てぇ……」

 

 

レオパードドーパントがその場から離れて数分後、破壊された小屋の床で敬助は目覚める。

投げ飛ばされた際に打ち付けた頭を片手でおさえながら、もう片方の手でそばにあった机にすがりつくようにして立ち上がる。

 

 

「あいつは…いない…遥香とじいさんを追いかけてったのか?クソッ!」

 

 

壊された入り口の向こうに誰もいないことを確認すると、傷ついた体を引きずりつつ外に出ようとする敬助であったが、

 

 

『おい、待てそこのお前!』

 

 

突如として聞こえてきた声に呼び止められ、足を止める。

周囲を見渡して声の主を探すも、周囲にはレオパードが暴れて壊したと思わしき装置やガラクタが雑然と置かれ、テーブルの上に一台のスマートフォンが置かれているのみ……

と、そこで敬助はテーブルの上に置かれたスマートフォンへと目を向ける。

健三の所有物か、と一瞬考えるも、敬助の記憶では健三は今でも二つ折りの携帯電話…フィーチャーフォンを愛用していたはずである。

ならばこれは一体…と思い、スマートフォンを手に取ろうとすると、

 

 

『ったく、聞こえてるなら「聞こえてまーす」くらい言いやがれって!』

 

 

という悪態と共にスマートフォンから電子音声による怒号が聞こえてくる。

その声に驚いた敬助はぎょっとした表情で思わず後ずさり、

 

 

「す…スマホが勝手にしゃべった……!AIかなんかか!?」

 

『おー、中々鋭いじゃねぇか。あてずっぽうかもだが』

 

 

慌ててスマートフォンを拾い上げて液晶画面をまじまじと眺める。

手に取って、改めてスマートフォンを観察する。形状としては平べったい長方形と通常の携帯端末と変わりない。サイズと重さは少し大きく重い気もするがそういうモデルだと言われると納得出来る程度と、外見上はさほど変わった部分はない。

…聞こえてくる声を除いて。

 

 

「お前は一体…?」

 

『俺様か?俺様は…そう!アルティメットシャイニングハイパークライマックスエンペラーコンプリートAI!「トラスト」様よ!』

 

「……なんて?」

 

『アルティメットシャイニングハイパークライマックスエンペラーコンプリートAIことトラスト様だが?』

 

「…えーと、トラスト?さんか」

 

『こ、コイツ全部切りやがった…!』

 

 

AI、というと機械的で無表情無感動なものだというような先入観を抱いていた敬助であったが、目の前で人の声となんら変わりのない感情豊かな口調で話すAI(?)『トラスト』を見ているとその先入観は間違いであったのではないか、という気持ちになる。 

しかしすぐにはっ、と気を取り直す。

 

 

「っと、こんな事してる場合じゃねえ!早く遥香達のとこに行かねえと…!」

 

『行ってどうすんだ?また野郎にボコボコにでもされるか?』

 

 

慌てて外へと駆けだそうとした敬助を、トラストが呼び止める。

言葉こそ砕けてはいるものの、先程のどこか抜けた雰囲気のない、無感動でまさしく『機械的な』言葉に、ぞくりと寒気が走る。

その言葉に反論しようとした敬助の先を制するかのように、その冷徹な言葉は続けられる。

 

 

『すぐGユニット辺りがやって来んだろ、お前が行った所で何にもなんねぇよ。…あ、別にお前が憎い!って思って言ってるんじゃねえぜ?むしろこいつは善意の忠告って奴だ』

 

「で、でも…遥香達はどうなるんだよ…!?」

 

『遥香…ああ、逃げてったJCか…運よく警察とかが先に見つけて保護して貰えるのを期待するしかねえだろうな。マ、警察も有能だしなんとかなるだろ』

 

「…もしあの未確認モドキみたいなのが先に見つけたらどうなる?」

 

『そんときゃあご愁傷様、って奴だな。…少なくともお前みたいな一般人じゃどうにもなんねえのは間違いねぇけどな』

 

 

口調こそ乱暴で粗雑な物であったが、言葉の内容そのものはなにも間違った事は言っていない。

それは先程レオパードドーパントに挑みかかり、簡単にねじ伏せられた敬助本人が痛いほどに理解していた。

銃器で撃たれようが傷一つつけられないような硬質な体に普通の自動車程度なら軽くスクラップに出来るであろうその膂力の前に、ちょっと武道を修めた程度の生身の人間が徒手空拳で挑んだところでたかが知れている。

 

お前に出来る事なんてない。大人しく自分の家族がが辿る末路を大人しく祈っていろ。

 

その事実を突きつけられ、そして自らの頭で理解した敬助は…それでも扉へと向き直り歩き出そうとする。

 

 

『マジで行く気か?』

 

「…忠告は理解した…つもりだ」

 

『ハァ…こんだけ忠告してやったてのに危険に飛び込むってか?今度は投げ飛ばされるだけなんて甘いやり方じゃねぇだろうぜ、確実に殺しに来るだろうな』

 

 

完全に呆れた様子のトラストの言葉に、嫌な汗が流れるのが分かる。

『死』。三年前に、自らの目の前に迫ったその『死』の元へと飛び込もうとしている。

生身の人間ではどうしようもない存在により、大切な物を失ったその記憶が、警鐘を鳴らし敬助の足を止めようとする。

しかし同時に、その記憶が、敬助に死地へと足を向けさせる。

 

 

「…それでも、それでもッ…!これ以上、誰かに俺の大切な家族を奪われたくないんだよ…!」

 

 

瞼を閉じれば浮かんでくるのは、血の海に沈んだ父と母の姿。迫り来る異形と、その異形を打ち払った赤い戦士。

そう。

三年前のあの日、敬助は目の前で父と母を失った。

自・分・の・せ・い・で・。

そんな思いを二度と味わいたくない。

自分の大切な人達を失いたくない。

記憶が敬助に行動させる。

恐怖を振り切って、外へと足を踏み出そうとする敬助に、トラストはやれやれ、といった様子で話し出す。

 

 

『…マジで大馬鹿野郎かよお前……ああもう!ホントは美人なレディーが良かったが…緊急時だししょうがねぇな!』

 

「?なんだよ、何をする気だ?言っとくがもう何言われようとも俺は止まる気はないからな」

 

『馬鹿!こっちが助けてやろうってのになんでぇその態度は!』

 

「…えっ?」

 

『ったく!目の前で死なれると後味悪いだろうが!それに探すっつったって居場所もわかんねぇ、足もねぇのに探せるわきゃねぇだろ』

 

「…あ」 

 

 

トラストの言葉に冷や水をかけられたように、敬助は急速に冷静になって間抜けな声を漏らす。

レオパードドーパントがいなくなってから今までは数分ほどであるが、それでも遥香達は全力で逃げ、レオパードはそれを全力で追いかけている、と考えると走って追いかける、というのはあまりよろしくないだろう。

それに逃げ道も分かっていない。追いかける、と息巻いていた敬助であったが、顔面蒼白となって慌て出す。

 

 

「し、しまった…!バイクの免許はバイトのために取ってたけど…肝心のバイクは持ってなかったんだった…!」

 

『あーあー、だろうと思ったぜ…「だいじなかぞくをまもりたいんだ~」とか言う前にそういうことに頭回んないかねぇ?』

 

「ぐっ…い、言い返せねぇ…」

 

『マ、いいだろ。丁度装備のテストになるって考えりゃあ、損にはなんねぇか』

 

「え?なんか追いかける用の道具でも出してくれんのか?」

 

『バイクの免許はあるんだろ?なら丁度良いもんがあるぜ』

 

 

トラストが自信ありげに言った直後、スマートフォン…『トランスフォーン』の液晶画面が勝手に操作され、駆動音と共に小屋の床が開く。

 

 

「んなっ…!?どうなってんだ!?」

 

『おおっと!驚くのはまだ早いぜ!』

 

 

開いた床に目を見開いていると、開いた床の下から、何かがせり上がって来る。

それは一台の、飛行機を思わせる暗い青いカラーリングをした流線型の大型自動二輪であった。

 

 

「な、なんだこりゃあ…!?バイク!?」

 

『専用マシーン「ストライクトランサー」だ。さぁて、現役JCを追いかけるストーカー野郎をぶちのめしに行くとしようぜ!』

 

 

────────────

 

同じ頃、結城家から少し離れた、寂れた廃工場で、レオパードドーパントが遥香と健三と対峙していた。

怪我をした健三へと肩を貸しながらも必死で逃げ回っていた遥香を、いたぶるかのようにゆっくりと、それでいて確実に逃げ道を潰しながら追い回していたレオパードドーパント。

レオパードの策により逃げ道を徐々に潰され、警察等に助けを呼ぶことすら出来ずに、人通りが少なく人を殺しても後腐れのなさそうな町外れの廃工場へと追い詰められてしまっていた。

 

 

『追い詰めましたよぉ…お嬢さん?』

 

「っ…」

 

 

敬助や健三と会った時と同じように、慇懃無礼な口調で、震えながらも健三の前に立ちふさがる遥香へと話しかける。

工場の隅に追い詰められ、逃げ道は完全に無くなっている。よしんば逃げ道があったとしても、背中に庇っている健三の傷の具合もあって、無限に逃げ続けることは出来ないだろう。

そのことを認識した遥香は、落ちていた廃材を拾い、レオパードへと向ける。

 

 

「ち、近寄らないでください…!」

 

『おやおや…これは怖い』

 

 

震えながらも威嚇する遥香を見たレオパードは、わざとらしく大袈裟なリアクションで怖がって見せ、ゆっくりと遥香へと歩み寄る。

 

 

『私は本来暴力は好きではないんですよ…あなたのお兄さんやうしろに庇っているお爺さんには悪いことをしたと思ってます』

 

「近づかないで!ほ、本当にぶちますから!」

 

『そう怯えられると傷つきますねぇ…お爺さんがただ一言、「我々と共に行く」と行ってくれれば、お嬢さんは無事どころか、好きなものを買えるんですよ?良いことではないですか』

 

 

大仰な身振りと共に慇懃な口調で語りかけてくるレオパードであったが、意を決した遥香の振った鉄パイプがガン!と音を立てて自らの体に当たったの見て、じろりと目を向ける。

直後、一瞬で遥香の懐へと入り込んで、その首を掴んで軽々と持ち上げる。

 

 

「か…!はっ…!」

 

『このアマァ…大人しいと思ってたらつけあがりやがって…』

 

「や、やめんか…!お前の目的はわしじゃろ…!?遥香を離さんか…!」

 

 

息苦しげに顔を歪め、必死で首を掴んでいる手を引き剥がそうとする遥香であったが、渾身の力を持ってしても、その指一本動かすことは出来ない。

そんな孫娘の苦しむ姿を見かねた健三が、怪我を押してレオパードへとすがりつく。

 

 

『ああ、そうだった…本来の目的を忘れるところだったよ、健三博士…我々に従う気は起きたか?』

 

「ッ…貴様等のような連中に…」

 

『断る気か?…お前の孫娘の首がへし折れるところを見たいというんだな』

 

「なっ…」

 

目を見開く健三に、見せしめのように遥香の首を締めている手に力が込められ、遥香の表情が徐々に青ざめていく。

 

 

「か…っふっ……」

 

「や、やめろ…やめてくれ…!」

 

『いいや、止めないね。我々に逆らい続けた「罰」を受けてもらおうか』

 

 

レオパードが徐々に手へと力を込め、それと同時に必死で抵抗していた遥香から力が抜けていき、両手がだらん、と垂れ下がる。

体を引きずりながらも手を伸ばした健三の目の前でその首がへし折られ───

 

 

「人の妹に…」

 

『!なっ……!?』

 

「手ェ出してんじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

 

『ぐ、うおおおおお!?』

 

 

る直前、乱入してきた敬助の乗ったストライクトランサーが突進してくる。

それを見たレオパードは、慌てて遥香を放り捨てて逃れようとするも、一瞬遅くバイクの突撃を真っ向から受けて吹き飛ばされ、廃工場の壁へと叩きつけられる。

 

 

「ざまぁみやがれっ…!妹に手ェ出そうなんてお兄ちゃんがゆるさねぇからな…!」

 

『馬ッ鹿野郎!こいつがいくら頑丈だからってもっと丁寧に扱いやがれっ!試運転でブッ壊す気かぁ!?』

 

 

吹き飛ばされ叩きつけられたレオパードを見て不敵な笑みを浮かべる敬助と、それを怒鳴り声で戒めるトラスト。

かなり乱暴な方法で、バイクが破損する可能性もあったが、その分威力と効果は十分だったようだ。

吹き飛ばされたレオパードは軽く呻いて、まだショックから立ち直れていない。

 

 

「悪い…緊急避難ってことで…ってそれよりも!遥香!爺さん!無事か!?」

 

「敬助…!スマン…わしのせいで…」

 

「にい、さん…?」

 

 

慌てて駆け寄った敬助は、投げられた遥香と健三へと声をかける。

遥香の方は幸運なことに投げられた場所に放置され埃の積もっていたダンボールがあり、クッション代わりとなったために、少しふらつく程度で済んでいる。

健三の方は、斬られたと思わしき脇腹を抑えつつも、意識ははっきりとしている。

病院で詳しく調べる必要はあるかもしれないが、どちらも命に別状はないように見える。

そのことに安心して息を吐く敬助であったが、視界の隅に意識を取り戻したと思わしきレオパードが立ち上がるのが見える。

 

 

「…爺さん、遥香の事、頼んだ」

 

「敬助…!お前、何をする気だ…!?」

 

『よーやく出番かよ?心配すんなよ、博士さんよ!この天才AIトラスト様も着いてってやるからよ!』

 

「なっ…それは…トランスフォーン!?」

 

 

レオパードから二人を守るように立ちはだかる敬助は、懐から一つの携帯端末…『トランスフォーン』を取り出す。

自らの発明品を敬助が持っていることに驚く健三に、小さく笑みを向けて、心配するな、と言うように小さく頷く。

 

 

『グガアアアアアア…!このクソガキィ…!さっき殺しでおくべきだったか!』

 

 

完全にショックから立ち直ったレオパードが、憤怒と共に立ち上がって、敬助へと殺気を向ける。

しかし、敬助は怯まず、仁王立ちになってレオパードを睨みつける。

 

 

「これ以上はもうやらせねぇ…!」

 

『…なぁ、マジでやるのか?行く途中何度も警告はしたぜ?…今なら止めたいって言っても良いぜ、Gユニットもすぐに来るぞ』

 

 

トラストが、最後の警告を告げてくる。

いまからやることは、危険で、理不尽に会うこともあるだろうし、その上何の見返りも得られないであろう。

それを行く途中、懇々と説得された。

うんざりするほどに長くしつこいその言葉は、それでも自分を思いやってくれているからこその言葉だと分かる。

それでも敬助の意志は揺るがない。

 

 

「これ以上…あんな連中なんかに誰かが傷つけられるのを止められるなら…!喜んでやってやるさ!」

 

『…しゃあねぇなぁもう!相乗りしてやるぜ!』

 

「フッ…サンキュー、トラスト…!」

 

『何をゴチャゴチャ言ってやがるこのクソガキが…!』

 

 

決意と共に、手にしたトランスフォーンの液晶に写る『変身』と書かれたアプリケーションをタッチする。

すると、トランスフォーンから帯が伸びて、ベルトのように腰に装着される。 

そうして、液晶内にあるクワガタのようなアイコンのアプリケーションをタッチすると、勇壮な音楽が流れ出す。

『変身』にクワガタ…その二つを見て、脳裏に浮かんだのは、あの時の赤い戦士…『4号』の、傷だらけの勇姿。

そして、彼の叫んだ言葉。

 

 

《だから見ててくれ、俺の…》

 

「見ててくれ。俺の……《変身》ッ!」

 

【OK!トランスシステム・アクティブ!・マイティパッケージ!】

 

 

全身を黒いボディースーツが覆い、灰色の複眼のある丸いフルフェイスノヘルメットが頭へと被せられる。

そして直後、周囲に形成された装甲が、ボディースーツへと装着されていく。

クワガタのような角に赤色複眼のあるヘルメット、赤いプロテクターと手甲、そして右足に脚甲が装着されていく。

姿の変わった敬助の姿を見て、レオパードが驚き声を上げる。

 

 

『仮面ライダー…!?』

 

『仮面ライダー…?4号じゃない、のか?』

 

[仮面ライダー…ああ、あれか…都市伝説の話の奴か、昭和の頃の…]

 

 

この世界には、ある都市伝説がある。

この世に悪が蔓延り、人間の自由と平和が脅かされた時、嵐と共にやって来る、悪を切り裂く嵐の男…正義の仮面の騎士…『仮面ライダー』がいる、と。

トラストから話を聞いた敬助は、仮面の下でフ、と小さく笑う。

都市伝説に出てくるような正義の味方の名を借りられるというのは少し光栄な気分になる。

 

 

『仮面ライダー…か。なら…!今から俺は…「仮面ライダートランス」だッ!』   

 

 

ならばその名前に恥じない、自由と平和なんていう大きなことは無理でも、誰かのために戦える、仮面ライダーとなろう。

その決意を込めて、空手の型と共に裂帛の気合いを込めて叫ぶ。

俺は『仮面ライダートランス』だ、と。

 

 

『フ、ハハハ…!俺は運がいい…!科学者を捕らえに来て「仮面ライダー」と出会えるとは!そのベルトを奪い献上すれば組織からの覚えも良くなる…!だから…死んでもらうぞ、仮面ライダートランスゥゥゥゥゥ!』 

 

 

狂ったような笑いと共に、殴りかかってくるレオパードを見て、トランスが身構える。

人知を超えた、達人ですら捉え、受け止めることが困難な鋭く重い一撃。

敬助の胸元を抉っていった、撫でるような一撃とは違う、殺す為に振り下ろす本気の一撃。

 

しかし。

 

 

『なっ…にっ…!?』

 

 

トランスはその一撃を片手で受け止め、払う。

ならば、という調子で幾度となく振り下ろされる拳を、トランスは全て受け止め、払い、流す。

そして、隙を見つけ逆に正拳をその胴へと叩き込む。

 

 

『グオッ!?』

 

『オオラァッ!』

 

 

不意の一撃を受けて仰け反るレオパードに追い討ちの前方回し蹴りが突き刺さり、胴への直撃を受けて地面へと叩きつけられる。

 

 

『グウウウ…何故だ…!何故俺の攻撃が見切られる!?俺の速さが…!』

 

 

驚愕と憤怒がない交ぜになったような様子のレオパードは、立ち上がることすら忘れてトランスを恐れるようにして見つめる。

 

一連の流れに驚いていたのは、レオパードだけではない。

 

 

『見える…!奴の攻撃の軌跡が見える!どうなってんだ!?』

 

 

トランスに変身している敬助も同じように、今の状況に戸惑いを覚えていた。

レオパードの攻撃が行われる前に、『攻撃がここに来る』という情報がマスク内のディスプレイに写り、それに反応することで、攻撃を受け止めることが出来ている。

現れる情報源はどこか、と考えていると、トラストから声が掛けられる。

 

 

[そりゃあ、俺が攻撃予測と行動補助してやってるからな、こんくれぇはやってもらわねぇと困るぜ。]

 

『…便利なもんだなぁ』

 

(まぁこいつが武道結構出来てんのもあるがな)

 

『ん?なんか言ったか?』

 

[いんや、なんにも?それよりも…そろそろトドメと行こうぜ]

 

『応ッ!…で、どうすりゃいいんだ』

 

[っと、説明忘れてたぜ…画面に写ってる「必殺」ってアプリ起動しろ]

 

『わかった!』

 

 

トラストの指示に合わせて、『必殺』と書かれたアイコンをタッチする。

すると、

 

【OK!パワー・トランスポーティング!】

 

電子音声と共に、右足へとエネルギーがチャージされていく。

 

 

『さ、せるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』

 

 

それをさせまいとレオパードが突っ込んで、掴みかかってくる。

しかし、それもトランスは冷静に対処する。殴りかかってきたレオパードへと逆に向かっていき、懐に入って強引に胴体から肩に担ぎ上げ、

 

 

『おっ…らぁぁぁ!』

 

『うおおおおっ!?』

 

 

捻りを加えつつ投げ飛ばす。

投げ飛ばされたレオパードは抵抗できずにそのまま叩きつけられる。

トランスはバック転により距離を取り、右手を前に、左手を腰元に構え、レオパードを正眼に構えて、ダッシュする。

ダッシュの直後、その勢いのまま跳躍。回転を加えて…

 

 

『おおっりゃあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!』

 

 

エネルギーのチャージされた右足を、ランスのように突き立て、飛び蹴りと共に相手へ突き刺す。

 

 

『グ、オオオオアアアアアア!?』

 

 

蹴りの勢いをそのままぶつけられたレオパードは、そのまま数メートル吹き飛ばされる。

 

 

『お、俺が…こんな成り立てごときに…ウアアアアアアアッ!』

 

 

その後、立ち上がることすら出来ず、流し込まれたエネルギーに耐えきれずレオパードドーパントは、爆散した。

 

 

────────────

 

『…勝った、のか…俺…?』

 

[ヘッ、初変身にしちゃあ上出来じゃあねぇか…!]

 

 

レオパードドーパントの爆散した炎を、どこか現実離れした様子で眺めるトランスを、トラストが褒める。

短時間の中で多くの出来事が起こったために、若干処理しきれずに混乱してしまっているトランスであったが、横合いからかけられた声に現実に引き戻される。

 

 

「兄さん…!」

 

『おお、遥香!無事だっ…っと』

 

 

駆け寄ってきた遥香へと声をかけようとするトランスだったが、遥香に抱き付かれ中断させられる。

 

 

「大丈夫ですか!?どこかおかしなとことかは!?」

 

『だーいじょうぶだって、ほら、元気そのものだろ?』

 

「だって思いっきり切られてて…」

 

『あ、そういえば…でももうなんともねぇよ』

 

「痩せ我慢はやめてください!すぐ救急車を…」

 

 

トランスのボディをペタペタと触ったり、胸元に耳を当てたりする遥香を見て、心配させまいと力こぶを作ったり両手を振って大丈夫だ、とアピールするトランスであったが、涙目で詰め寄ってくる遥香に思わず後ずさる。

非難を逸らすのも兼ねて、祖父である健三を心配し声をかけようとした。

そこで見た物は

 

 

『っと、じいさんの方は…!おい!?じいさん!?しっかりしろよ!』

 

「健三さん…健三さん?」

 

 

二人の目の前に、気を失った健三が倒れ伏し、流れる血が水溜まりのように広がっていく姿だった。

 

 

『トラスト、救急車!』

 

[もう呼んだ!とりあえず、あんまり動かすな!そこのJCちゃん、ハンカチ出して止血してくれ!指示はこっちが出す!]

 

「は、はい…!」

 

 

戦いの余韻も冷めやらぬまま、トラストの指示を聞いて慌ただしく健三へ応急処置を行おうとする二人。

 

 

トランスは、敬助は知らない。

今に至るまでの戦いを、何者かが見ていたことに。

 

 

 

 

今日、『仮面ライダートランス』の誕生から、仮面の騎士達の物語が始まる。

多くの悪意と敵意に立ち向かっていく戦士達の物語が。




『仮面ライダートランス』の始まりのお話はここで終了…
だけどMISSION1はもうちょっとだけ続くんじゃ



レオパードドーパント

本作オリジナルドーパント。
『豹』の記憶を持つガイアメモリ『レオパードメモリ』を使った謎の男が変身した姿。

何者かの指示を受けて、結城家を襲撃するも、仮面ライダートランスとの交戦の末『ライダーキック』を食らい撃破された          ?


使用者(人に限らず)次第では本家のスミロドンドーパントにも匹敵する力を出せるはずだが、慢心とメモリの相性が微妙なことから力を出し切れなかった。
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