昼間のオフィス街。
仕事の都合でサラリーマンやOL達がせわしなく行き交う町中で、『
そいつにとっては、ここは無数に獲物がいる選り取り見取りの絶好の狩り場だ。
その中から絶好の獲物を選び取り、そして、『狩り』を行う。
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「はい、はい…そうですか!あ、ありがとうございます…!では、また後ほど…本当にありがとうございます…!」
取引先との交渉の電話を終えたサラリーマンの男は、喜色を露わにしてその場で軽くガッツポーズをする。
今回の取引で男の所属する会社にとってかなりの好条件を取り付けることに成功した。
そのことで喜色を浮かべた男は、会社に戻って吉報を持ち帰ろうとした、その時だった。
「よっし…!上手く行った…!いったん会社に帰って報告…?」
ふと顔をあげると、車のガラスに映った自分の身体に、どこか違和感を感じる。
ガラスの中の自分の首に、白い糸のようなものが巻き付いていることに気づく。
チョーカーや首輪等ではなく、白い紐状の…まるで
恐る恐る、自分の首に手を伸ばす。なにごともなく、自分の首に触れられる。
ガラスにゴミや汚れでもついているのかと思い、ガラスへと触れると、粘着質な触感と共に、指に白い糸がくっつく。
「なんだこれ?」
指先にへばりついた物体を引っ張ってみると、するすると際限なく伸びていく。どれだけ伸ばしても尽きる様子がない。
ハンカチか何かで拭い取ろうか、と男が考えていたその時。
ガラスの中の男の背後に、巨大な異形の蜘蛛が現れる。
「ひッ!?」
慌てて男が振り向くも、自分の背後には何もない。
「なんだよ…なんもいねぇじゃんか…疲れてんのかな俺…?」
背後に何もいないことを確認し、薄気味悪く思った男は怪物の写るガラスからゆっくりと後ずさり距離を取る。
そして、
「あ、ああ…ああああああああああああ!」
腰を抜かしへたり込む男の目の前で、小さな窓ガラスから、子供の胴体ほどもある八本の足と、そして胴体が現れる。
現れた蜘蛛…『ディスパイダー』と呼ばれるその異形の存在は、目の前でへたり込んでいるへとゆっくりと向き直る。
「た、助けて…誰か!助けてくれええええ!誰か…ぐぇっ!?」
男は慌てて、転げるようにその場から逃げ出し、遠くへと逃げ出そうとする。
しかし、突如として足を取られ転倒してしまう。
「な、なんだ…引っ張られてる…!?」
異常に気づいた男が足元へと目を向けると、自分の右足白い紐状の何かが絡みついているの見てしまう。
紐の先を辿っていくと、ディスパイダーが口元から、白い蜘蛛糸を出している様子が見える。
逃げようとした獲物…男の足に蜘蛛糸を付け、捕食しようという魂胆だろう。
ゆっくりと蜘蛛糸が巻き取られ、そのたびに男の体はディスパイダーの方へと引き寄せられていく。
「い、いやだ…誰か…誰か助けて…!」
男は何とか助かろうと、無事な左足や両手で必死に踏ん張ろうとする。
そんな抵抗も虚しく、男は引きずられていき、ディスパイダーの元へ…
『ギィッ…!?』
突如、鋭い銃声が鳴り響いたと同時に、飛来した数発の銃弾がディスパイダーへと着弾し、仰け反る。
直後、男の足に付着していた糸が切られ、自由になった男は飛び出してきた何者かに救出される。
男を抱えたままその場を離れ、数十メートル離れた場所へと移動する。
優しい手付きで男を地面へと下ろした何者かは、再びディスパイダーのいた場所へと戻っていく。
「た、助かったぁ…」
「大丈夫ですか?」
「は、はい…」
自由になり、安全地帯まで運ばれた男に、警官服を着た人間が何人か駆け寄ってくる。
腰を抜かしている様子の男に対して、何人かが手を貸して立ち上がらせる。
男を搬送する警官とは別の一人が、通信機を手にとって、交信する。
「避難はこちらに任せてください、チーム『カルナ』は未確認の排除をお願いします!」
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獲物を奪われたディスパイダーは、怒りに燃えて、目の前の邪魔者へと向き直る。
青と銀のカラーリングをした全身のアーマー、オレンジ色のバイザー・アイ。そして、『クワガタ』を思わせる二本の角の生えた頭部。
手にしているのは独特な形状の銃器、『GM-01 スコーピオン』。
人の手によって生み出された、未確認と戦うための力、『GENERATION』システム。
その発展系にして、『アギト』と呼ばれる超人の力との調和を目指し、生まれた戦士。
インドの叙事詩の英雄の名を冠した仮面の戦士。それが『カルナ』である。
そのカルナは怒りに燃え独特な鳴き声と共に威嚇してくるディスパイダーと対峙している。
軽自動車ほどのサイズの蜘蛛、という生理的嫌悪を抱きそうな異形に対しても全く怯えや動揺を見せず、ゆっくりとスコーピオンを腰部のホルスターへと仕舞い、拳を握りしめ、腰を低く落とし構える。
『ギギギギ…ギギギッ!』
先に動いたのはディスパイダーの方であった。
前の二本の脚を振り上げ、カルナを串刺しにしようと幾度となく振り下ろす。
コンクリートを軽く砕く鋭さと、常人では到底反応できないような速度で振り下ろされたそれを、しかしカルナは平然と受け流す。
真っ向から受け止めれば、カルナの装甲でも持たないその前脚を、側面から叩き、打ち払っていく。
串刺しにならない獲物に苛立ったディスパイダーが、一際高く脚を振り上げて、勢いよく振り下ろす。
しかし、カルナは打ち払うことはせず、身を翻してかわす。
勢いよく振り下ろされたその脚は、地面へと深く突き刺さり、ディスパイダーを地面へと縫い止める。
引き抜こうと躍起になるディスパイダーを見ながら、カルナは少し下がった後、頭部に手を当てて小さく呟く。
「リミッター解除、要請します」
『了解、カルナ、リミッター解除!』
応答が聞こえてきた後、カルナへと異変が生ずる。
両腕、両脚の装甲が展開され、カルナの頭部のクワガタのような角から新たに『クロスホーン』と呼ばれる角が展開される。
異常に気づかぬまま、必死で脚を引き抜こうとするディスパイダーの元へゆっくりと歩み寄るカルナ。
ゆっくりと右手を手刀の形へと変えると、そこから赤光が溢れ、光の刃を形成する。
自らのすぐそばに接近していたカルナに気づき、やっとの思いで突き刺さった前脚を引き抜いたディスパイダーは、ノコノコと近寄ってきた獲物へ、今度は二本の脚を振り上げる。
「…シッ」
振り下ろされる前に、カルナが右手を横へと薙ぐ。
侍の居合を思わせるその一振りは、振り下ろされんとしていたディスパイダーの二本の脚を断ち切った。
『ギ…イイイイイイイ!』
同時に二本の脚を失ったディスパイダーは、痛みで悶絶し、のた打ち回る。
しかし、右手を手刀から握り拳へと変え、ゆっくりとトドメを刺そうとやってくるカルナを見て、突如反転する。
前脚を失い不格好ながらも、死に物狂いで自らが出てきた車のガラスへと向かっていく。
しかし。
突如として、自らの体が引っ張られる感覚がディスパイダーを襲う。
ディスパイダーの六本の脚のうち一本に、鋼鉄製のワイヤーが巻き付いている。
ワイヤーの先を辿っていけば、カルナの左手に、アンカーランチャー『GA-04 アンタレス』が装着されている。
奇しくも、ディスパイダーが男を捕食しようと糸を巻き付けたように、カルナもアンタレスでディスパイダーを捕縛しようとしているのだ。
唯一の違いは、ディスパイダーには助けに入る存在がないないこと。
「…フンッ!」
ぐいっ、とカルナが力任せにアンタレスで相手を引き寄せると、ディスパイダーの巨躯が揺らぐ。
体勢を崩した隙を逃がさず、カルナは左腕のアンタレスを外し、大地を蹴って飛びかかり、ディスパイダーの真上へと着地する。
「…ゼァッ!」
ディスパイダーに抵抗する隙を握りしめた拳を容赦なく叩きつける。
単純なパンチの威力と、腕に仕込まれたバンカーが作動し、衝撃を与える。
胴体に突き刺さったその一撃は、ディスパイダーを即死させるのに十分な一撃であった。
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「…以上が、今回の出現した未確認生命体とカルナの交戦の映像です」
ぶつん、とスクリーンに映っていた映像が止まると同時に、室内に明かりが灯る。
室内には複数の警察官がいて、先程の映像…カルナの交戦記録について意見を交わしている。
「カルナの戦闘力は凄まじいですな…あのサイズの未確認を相手に真っ向からねじ伏せるとは」
「あの未確認、ガラスから出てきた…?」
「注意を出そうにも鏡には気をつけてなんて難しいだろうし…」
騒がしくなった室内から、一人の男がこっそりと出て行く。
髪型をウルフカットにした目鼻立ちの整った青年は、部屋を出て、ふう、と息を吐き、再び歩きだそうとすると、
「お疲れさん、と」
背後から聞こえてきた声に呼び止められる。
ウルフカットの青年が振り向くと、そこには二メートルに届くかと思える程の身長に筋骨隆々とした体格の男が立っていた。
抜き身の刀のような雰囲気に、体格も相まって威圧感を感じさせるその顔立ちを見たウルフカットの青年は、顔に軽く笑みを浮かべ、男へと近づく。
「あ、お疲れ様です、白神さん」
『白神』と呼ばれた筋骨隆々の男…『白神啓吾』は、同じようにふっ、と笑みを浮かべてウルフカットの青年…『鹿島誠一』の方へと歩み寄る。
「今回といい前回の豹の未確認といい大活躍らしいじゃないか、カルナ」
「あはは…」
からかうような言葉に、苦笑する鹿島。
そう。鹿島誠一。彼こそがカルナ。GENERATIONシリーズの発展系、『カルナ』のスーツの装着者である。
からかい混じりで褒められた鹿島は照れ笑いを浮かべていたが、ふとその顔が曇る。
「…やはり、気になるか」
「ええ」
「未確認の目撃情報、通報の回数…今月に入って増え続けている…三年前のグロンギの大量発生時期ほどじゃあない、が…それでも異常だ」
白神の言葉に、鹿島が一つの可能性に思い当たる。
「…何者かが、裏で手を引いている、とか?」
「可能性に過ぎん、がな。…マ、そんないるか分からない連中よりも、最近連続している失踪事件の件だが…やはり鏡が…」
歩いていく白神についていこうとした鹿島の脳裏に、一つの光景が浮かび上がる。
カルナと並び立つ、一人の仮面の戦士が。
仮面ライダーカルナ(鹿島誠一)
GENERATIONシリーズの発展機の一つ。
G3-X、G4とも違う、『アギト』と呼ばれる超人類の力と、人の叡智たるGENERATIONシリーズの調和を目指し作られたパワードスーツ。
基本は徒手空拳による格闘戦にナイフなどの装備を合わせる戦闘スタイルが特徴
ライダーチョップ
アギト由来の技で誠一が戦闘経験を積んでアギトの力が増し会得。
腕から伸びた赤い光の刃で敵を切り裂く。
GA-04 アンタレス
GENERATIONシリーズの装備の一つ。
頑丈なチタン製ワイヤーがついたフックを発射して未確認に絡ませ、動きを封じる。その射程は最大100m程。
ライダーパンチ
アギト由来の技。
カルナの場合、手に備え付けられたバンカーでの衝撃が加えられる。
鹿島誠一
茶髪のウルフカットで目鼻立ちがはっきりとした笑顔の似合うイケメン。
アギトに覚醒したが特にその力を振るうことはなかった。しかし恋人がグロンギに襲われた際にアギトに変身、戦闘する。グロンギを撤退させることは出来たが瀕死の重傷を負ってしまう。
その後、駆けつけた警察により押収され治療を受ける。
アギト故の回復力で治癒したが自身の力の無さを痛感していたところに現れた警察上層部によりアギトの力と人類の科学を合わせた新たなるGシステムの開発の被験者とならないかと誘われ承諾。
Gユニット『チームカルナ』に所属し活動している。
大ちゃんネオさんよりいただいたキャラ。
ありがとうございます!
白神啓吾
195cmという長身と筋骨逞しい肉体を誇る、熊のような巨漢。目付きも刃のように鋭く、怒っているわけでもないのに凄まじい威圧感を全身から放ち続けている。
G3ユニットが誕生する以前から身一つで未確認生命体に立ち向かい、4号と共闘したこともある熟練の刑事。その外見通りに自分にも他人にも厳しい豪傑だが、市民や仲間を守るためなら盾になることも厭わない自己犠牲精神も持ち合わせおり、彼を慕う警察官は多く存在する。
オリーブドラブさんよりいただいたキャラ、
ありがとうございます!