マスカレイド・サーガ   作:バイン

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MISSION.2-C

「…なぁ、トラスト」

 

『おう?なんだ?』

 

「ネットとかでゴルゴムが動いてるとか、そういう情報は?」

 

『…ハァ』

 

「な、なんだよ…俺は真面目にゴルゴムへの対策をだな…」

 

『あの、な。その質問何度目だと思ってんだ?これで7回目だぞ?』

 

「えっ…そんなに聞いてたの俺…?」

 

『おう。録音してた奴全部聞かせてやろうかこの野郎』

 

「いらねぇ…」

 

 

穴があくほどに見つめていた新聞から顔をあげた敬助が、申しわけなさそうにトラストに謝る。

 

レオパードドーパントの襲撃から数日がたった日。

『結城家』には何も起きず、平穏な日々がゆっくりと戻っていこうとしていた。

 

 

『ま、焦る気持ちもわからんでもねぇが…連日行方不明事件がニュースになったりして、ゴルゴムの仕業じゃねぇかーって思ったりしてんだろ?…要するに連中が動いてるのに何もしてないのが不安ってとこか』

 

「う…」

 

『図星か』

 

「し、仕方ねぇだろ…ゴルゴムってのは未確認をも取り込んでるって聞いたし…」

 

 

呆れた様子のトラストにズバズバと自分の思考を言い当てられ口ごもる。

結城家そのものには何も起こっていない。

しかし、新聞には連日のように行方不明者が出て、町中にはパトカーやGユニットのマークのついた大型トラックにバイクに乗ったG3が散見される。

そうした些細な変化すら、ゴルゴムの影響力の恐ろしさを聞いた後では彼等の暗躍の証拠に思えてしまう。

思案顔になった敬助の様子を見て、トラストが声を上げる。

 

 

『よーし、分かった。…お前には気分転換が必要だな』

 

──────────────

 

 

「…なあ、トラスト」

 

『おう?なんだ?』

 

「気分転換に来たんだよな、俺達」

 

『そうだが?』

 

「…ここに入れと?」

 

『YESだ』

 

 

それから数十分後。

敬助はレンタルビデオ店…そこの赤字に『R18エリア』の暖簾の前に立っていた。

…所謂『アダルトコーナー』と呼ばれる場所の前である。

場所を間違えてるかと思った敬助の一縷の望みも、トラストの爽やかな声色の返事に打ち砕かれる。

 

 

「帰る」

 

 

速攻で敬助が踵を返してその場を去ろうとすると、トラストから大音量怒りの抗議の声が上がる。

 

 

『オイオイオイオイオイオイオイオイオイオイオイオイ!気分転換はどーすんだお前!?せっかく俺様がオススメの場所』

 

「入るかこんな場所ォ!年齢ってもんや情緒ってもん考えろお前…!」

 

『馬鹿野郎…!スッキリするといえばここだろうが!』 

 

「ちょっと俺のこと気遣ってくれてんのかって思って嬉しく思った俺がバカだったよ畜生!ぜっっってぇ入んねぇからな!てか店員さんからの視線がすげぇ冷たいからはやくサッサと帰るぞ!」

 

 

 

端から見れば店内(しかも未成年が入ってはいけない場所の前)で大声で一人芝居をしているようにしか見えない怪しい人物を見る視線が次々に突き刺さり、遂には強面の店員が厳めしい顔で立ち上がってやってくるのを見て、慌ててビデオ店を飛び出す。

 

 

 

「ええい畜生め…気分転換どころじゃなかった…」

 

「あら、あなた…結城さん…?」

 

「ったく……ん?」

 

 

トラストを黙らせる意味合いを込めてトランスフォーンをポケットへと乱雑に突っ込んだ敬助に、横合いから声がかかる。

敬助が声のした方へと顔を向けると、セミロングの茶髪の少女と目が合う。

 

 

「お、椿じゃん、よ…」

 

 

知り合いだと分かった少女に敬助が声をかけようと手を挙げて声を掛けようとして…

 

 

『ええい、いいから戻るぞ!あの天国を目の前にして引き下がれるかぁっ!戻るぞ、R18エリアにぃ!』

 

 

直後のトラストの声でその場の空気が一気に凍りつく。

錆び付いたロボットのようにぎぎぎ、と音がしそうなほどに重く顔を見上げる敬助。

その目に、少女から向けられる視線が徐々に冷たくなっていき、最終的に目を逸らされる様子がまじまじと見えた。

 

 

「ごめんなさい、人違いでした」

 

「待って!?」

 

 

──────────────

 

「…なるほど。ここを嗅ぎつけたか。昔と違って今の人間は優秀らしい」

 

 

ゴルゴムの幹部の一人であるブラック。

彼は今、()()()()()()()()()()()()()

常人からすれば、滑稽な人間とも、頭の狂った異常者ともとれるような行動。

 

 

『あの忌々しい「カルナ」やチョロチョロと鬱陶しい「ヴァイパー」に加えて民間の協力者に私と同じ…「ライダー」の資格を持つ人間がいるみたいですからねぇ』 

 

 

しかし何もないはずの鏡の中から、返事が返ってくる。

鏡の中には蜘蛛の意匠のある一人の戦士…『仮面ライダー』が飄々とした様子で立っている。

大袈裟なほどの身振りと手振りで、ともすれば相手に不快感を抱かせるような慇懃な口調。

そんな相手を前にしても、ブラックの感情に揺らぎは見えない。

 

 

「それで、どうするつもりだ?あそこの『収集所』の廃棄は確定しているが、タダで奴らに踏み荒らさせるつもりか?」

 

『とんでもございません!歓迎の用意はしてありますとも。…ですが』

 

「なんだ」

 

『「カルナ」にやられた私のカワイイ子にリベンジをさせてあげたいいましてねぇ…力になってあげたいのですが…如何せん私のだけの力には限界がありまして。そこでブラック様にお力添えいただければ、と思いましてねぇ』

 

「…フン」

 

 

仮面ライダーからの言葉を聞いたブラックは鼻を鳴らして去っていく。

 

…その場に一つのガイアメモリを残して。

鏡の中から伸びた手がそのメモリを掴む。

 

 

『さぁて、お前にも存分に働いて貰わないと、な…フフフ、アギトの肉は「オルタフォース」が詰まっているからなぁ…楽しみにしておくんだぞぉ?』

 

 

誰もいなくなったその場に、仮面ライダーの哄笑と、異形の鳴き声が響く。

それが収まった後、小さくガイアメモリの電子音が鳴った。

 

 

『ARMS』

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