前回までのあらすじ
修業の為、今日との漫遊寺中学校にやってきた飛鳥達。漫遊寺サッカー部の監督の案内の元、サッカー部の選手と顔合わせをする事になったが、その道中でおかしな奴と出会った…。
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飛鳥「楽しいおもてなしをありがとう。でも、危ないよ」
「うっせー!!」
少年が悪態をつくと、春奈が激怒した。
春奈「うるさいじゃないでしょ! 危ないって言ってるのが分からないの!?」
「知るかよ! そんなに文句があるならオレを捕まえてみろー!!」
少年が逃げようとすると、春奈が追いかけた。
飛鳥「あっ! 音無さん! そこは…」
春奈「こらー!! 待ちなさ…きゃあああああああ!!!」
春奈が地面に力を入れて踏み込んで少年を追いかけようとしたその時、落とし穴に落ちた。
風丸「音無!!」
少林寺「音無さん!!」
風丸と少林寺が声をかけると、飛鳥が額を抑えて首を横に振った。
「やーい! やーい!! さっき落とし穴があるって教えて貰ってんのに落ちるなんて間抜け~!!!」
と、少年が春奈に向けて尻を向けると、春奈が激怒した。
「こらーっ!! 木暮~!!!」
木暮「やべっ! キャプテンだ!!」
一人の男子生徒が怒鳴ると木暮が慌てて逃げたが、飛鳥はその逃げる時の木暮の運動神経に注目した。
そして男子生徒が飛鳥達の所にやってきて、ため息をつくと春奈を見やった。
「申し訳ございません。うちの部員が…」
春奈「部員…?」
「ええ。それよりも、大丈夫ですか?」
春奈「あ、はい。ありがとうございます…」
と、男子生徒が春奈を引っ張り上げた。
飛鳥「あなたが、漫遊寺中学サッカー部の垣田大将さんですね?」
垣田「ええ。あなたは…」
飛鳥「今回、漫遊寺の修行体験を申し込んだ雷門中サッカー部コーチの一丈字飛鳥です」
飛鳥が包拳礼をすると、垣田も包拳礼をした。
垣田「これはこれは。漫遊寺サッカー部のキャプテン、垣田大将です。お待ちしておりました。こちらにどうぞ」
と、垣田に連れられてサッカー部の道場まで移動した。
風丸「大丈夫か音無…」
春奈「全く、何て子なの!?」
少林寺「漫遊寺サッカー部にあんな奴がいるなんて…」
風丸が声をかけると、春奈と少林寺は木暮に対して怒っていて、ジェミニストームも苦笑いしていた。
垣田「本当に申し訳ございません…」
飛鳥「彼、一体何者なんですか?」
垣田「道場に着いてからお話しします。他の部員たちの話を聞いていただければ、十分に理解して頂けるかと…」
「?」
垣田の発言を聞いて、大半は頭の上に「?」マークが表示されていたが、飛鳥は垣田の声色と表情を見て、苦労している事を感じ取り、困惑した表情を浮かべていた。
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サッカー部の道場。そこには漫遊寺イレブンが待っていて、飛鳥達と垣田達が向かい合うように座っていた。
垣田「こちらが、漫遊寺サッカー部のレギュラーです。あなたがたの修業相手を務めさせていただきます」
飛鳥「本日よりお世話になります」
飛鳥が頭を下げると、ジェミニストームも頭を下げた。そして風丸達も遅れて頭を下げる。
飛鳥「…さて、先ほどの彼の事について何ですが」
垣田「彼は木暮夕弥と言って、うちの漫遊寺サッカー部の補欠部員です」
飛鳥「そうですか…」
春奈「いっつもあんな事をしてるんですか?」
春奈の言葉に垣田だけではなく、漫遊寺イレブン全員が困った顔をしていた。
垣田「ええ。少々性格が歪んでいまして…」
「とにかく人を困らせるのが好きみたいで、此間も突然頭からペンキをかけられて取るのが大変だった。のう、兄者」
「そうだな。弟者よ」
FWの阿太郎、吽助兄弟がそれぞれ顔を合わせた。
「漫遊寺の食事にも香辛料を忍ばせて…」
「此間はわさびが大量に入れられていて、食事をした気にならんかった…」
と、木暮の悪戯に対する愚痴をこぼしあっていて、飛鳥達は困っていた。それに対して春奈と少林寺は木暮に対して怒りがわいていた。
すると垣田は飛鳥の顔を見た。
垣田「…あんな奴でも、サッカーの実力は我々正規メンバーにも引けを取らない程の実力を持ってるんです」
飛鳥「…と、言いますと?」
垣田「奴は結構捻くれていて、少しでも自分の思い通りにならないと、難癖をつけるんですよ。誰だろうがお構いなしに…」
と、垣田が木暮が練習に参加していた頃の事を想いだしたが、レギュラーとよくケンカをして自分が木暮を取り押さえている光景を思い浮かべて、困惑していた。
垣田「そこで、心身ともに鍛え治す事からやり直させたほうが良いと、グラウンドの整備、廊下の雑巾がけ等をさせていたのですが、このような有様で…申し訳ございません」
飛鳥「……」
垣田の言葉に対し、飛鳥は険しい表情をした。
垣田「…そちらの音無さんにしてしまった事につきましては、必ずお詫びを致します」
春奈「いえいえ! そんなに気を遣わないでください! 悪いのは木暮くんですし…」
飛鳥「それでしたら、一つ私の方からご相談がございます」
「え?」
皆が驚いたように飛鳥を見た。
垣田「相談…?」
飛鳥「その前にひとつ質問があるのですが、木暮くんのご両親はどうされてるんですか? もし差支えが無ければ、教えて頂けますか?」
飛鳥の言葉に垣田は俯いた。
垣田「…木暮の両親は、木暮が小さい頃に蒸発したんです」
「!」
垣田「ただ蒸発をしただけなら良かったのですが、弁当を買いに行く、すぐに戻ってくると母親に言われてずっと待っていたのですが、帰ってこなかったんです」
飛鳥「そんな事が…」
春奈「で、でももしかしたら事故に遭ったとかじゃ!!」
春奈が慌てて木暮の両親を擁護しようとしたが、垣田が静かに目を閉じた。それはとても苦しそうに…。
垣田「私もそうであって欲しかった。ですが、暫くして木暮の親が逮捕されたんです。育児放棄で」
「!!」
垣田の言葉に皆が驚いたが、飛鳥が真剣な表情をした。
垣田「最初から木暮を置き去りして逃げるつもりだったのです。そして、開き直った木暮の親は木暮を突き放したんです。信じる方が悪いと」
垣田の言葉に春奈はショックを受けた。
飛鳥「…それが、今の木暮くんを作ってしまったと」
垣田「ええ…」
垣田が目を閉じたが、冷静さを取り戻した。
春奈「そ、それだったら…」
垣田「恐らく木暮は私たちの事を敵だと思っているでしょう」
「!」
垣田「グラウンド整備をさせるのも、雑巾がけをさせるのも、心身を鍛える為じゃない。自分を仲間外れにして、サッカーをさせない為だと。奴はそう思い込んでいるのです」
春奈「それが分かってるならどうして…」
すると垣田は春奈を見た。
垣田「確かに傍から見れば我々が木暮にしている事は酷に見えるでしょう。ですが、ここにいる漫遊寺の生徒は、皆木暮のように親から捨てられ、身寄りのない者達が集まっている学校なのです。木暮一人を特別扱いするわけにはいきません」
垣田の言葉にジェミニストームはショックを受けた。そう、自分たちと同じだったからである。親から見捨てられ、身寄りのないという点に。そして木暮の気持ちが痛いほど分かった。木暮みたいにはならないなんて言いきれないからだ。
垣田「それに、この学校は己の心身を鍛えるがモットー。どんなに辛い状況でも強い心で立ち向かう。いつまでもあのままでは困るのですよ」
春奈「でも!!」
飛鳥「音無さん」
「!」
春奈が反論しようとするが、飛鳥がやんわりと止めた。春奈は飛鳥の顔をじっと見ると、飛鳥は「それ以上は言ってはいけない」と言わんばかりに冷静な表情で春奈を見つめた。そして垣田を見つめる。
飛鳥「分かりました。漫遊寺中の理念はしっかりと伝わりました。こちらとしても、漫遊寺のやり方を否定したり、首を突っ込んだり致しません。話を戻させていただきます」
「?」
飛鳥が真剣なまなざしで垣田を見つめてこう言った。
飛鳥「この修業期間、木暮くんをお借りしても宜しいでしょうか?」
つづく