4日目の休息が終わり、5日目からは本格的に練習が始まった。飛鳥と付きっ切りで練習して貰った木暮も、飛鳥がジェミニストームの監督に戻るにあたって、再び雑用をやる事になった。
木暮「つまんねぇ!!!」
と、木暮は叫びながら雑巾で廊下を拭いていた。
木暮「そうだ…」
木暮が悪戯を仕掛けようとすると…。
「木暮」
木暮「な、何でしょうか監督!」
監督が急に現れて木暮がびくっとなり、監督の方を見るなり愛想笑いをした。
木暮「この通りちゃんと掃除はしてますよ!?」
監督「そうだな。掃除『は』ちゃんとしておるな」
木暮「……」
悪戯をしようとしていた事がバレて、木暮は滝のような汗をかいていた。
監督「だが、今のお主を見るなり、悪戯をする理由も変わってきたようだな」
木暮「…え?」
木暮が監督を見ると、監督は木暮に背を向けた。
監督「今までのお前は、垣田達に対して仕返しをする事で、自分の強さを示す為に悪戯をしていた。だが、今のお前には垣田達に対する逆恨みの心が無くなりかけてきている。その証拠にお前は垣田達の事を忘れて、一丈字殿からボールを奪い、突破する事で一丈字殿を驚かせる事に重点を置いていた。お主にとっては良い成長の兆しになっておる」
木暮「監督…」
監督から言われた言葉に木暮はつぶやいた。確かに今までは垣田達が偉そうに自分に命令ばっかりして大好きなサッカーをさせない為、その憂さ晴らしと虚勢を張る為に悪戯を繰り返していた。
だけど、飛鳥とサッカーをしていた時は違う。命令はするけど、何故そう言う命令をするのか理由を説明してくれるし、サッカーをさせてくれる。そして何よりも自分の事を見てくれる。
それが木暮が抱えていたわだかまりを解消させたのだ。
監督「これもきっと一丈字殿のお陰だろう。本当の意味でお主の事を見てくれていた」
木暮「……」
監督「この2日間。黙って鍛錬に勤しめ。そうすれば…」
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一方、飛鳥達は河川敷で本格的に練習していた。
飛鳥「という訳で、練習試合…じゃなかった、手合わせは二日後だ。各自それぞれ調整するように!」
「はい!」
飛鳥が選手たちに指示を出していたが…。
飛鳥「さて、今回の課題は3点。まず1点目が少林寺くんのブロック技の完成だ」
少林寺「はい!」
飛鳥「これはチーム全体で協力して完成させるように」
「はい!」
飛鳥が少林寺の方を見て指示を出すと、少林寺が反応して更に飛鳥がチーム全員で協力するように促すと、選手全員が返事をした。
飛鳥「そして2つ目は風丸くん」
風丸「はい!」
飛鳥が風丸の方を見た。
飛鳥「この3日間の修業で足も速くなったろう」
風丸「そうですね…」
飛鳥「今の君ならアレが出来るんじゃないかな」
風丸「あれ?」
飛鳥「オレが昔使ってたディフェンス技。それを教えてあげる」
風丸「本当ですか!?」
飛鳥の言葉に風丸が反応した。
飛鳥「ああ。君のスピードなら出来ると思うよ。で、3つ目なんだけど…」
飛鳥が3つ目の指示を出すと、風丸と少林寺が驚き、ジェミニストームがキョトンとした。
舞「相変わらず大胆な事考えるわね…」
春奈「……」
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そしてついに漫遊寺との手合わせが行われる時が来た。場所は漫遊寺サッカー部がいつも使っているグラウンドだった。
漫遊寺とジェミニストームが本格的な手合わせをするという事で、生徒達もたくさん見に来ていた。
飛鳥「漫遊寺の皆さん。本日はお手合わせ、お願いいたします」
監督「うむ。こちらこそよろしく頼むぞ」
と、飛鳥と少林寺が包拳礼をすると漫遊寺側も包拳礼をした。
だが、そこに木暮の姿はなかった…。
春奈「あの、漫遊寺の監督さん」
監督「何ですかな?」
春奈「…木暮くんは」
春奈の言葉に監督は俯いた。
監督「残念じゃが、あやつは今回は来ん。別件でな」
春奈「そ、そうですか…」
監督の言葉に春奈が残念そうにした。
少林寺「どっかで悪戯してなきゃいいけど…」
春奈「少林寺くん!!」
少林寺の一言に春奈がムキになると、少林寺は萎縮して飛鳥と風丸が苦笑いした。
そんなこんなで試合が始まる。
飛鳥「前半戦はジェミニストームね。どれだけ強くなったか試してこい」
「はいっ!!」
レーゼ達はこの数日間。雑巾がけや坂道のランニングといった、体力づくりを徹底的に行った。そして食事にも気を付けて健康的な肉体を手に入れた。
厳しい修行をクリアし、練習でも好調だった為、自信がついていた。
飛鳥「オレはお前たちを信じてる。さあ、行ってこい!」
「はいっ!!」
こうして前半戦が始まった。
「さあ! ジェミニストームと漫遊寺の手合わせが始まりました!! 果たして、ジェミニストームがどれだけレベルアップをしたのか、楽しみです!!」
と、当たり前のように角馬王将がいた。
飛鳥「…角間さん。お仕事はどうされたんですか?」
王将「休暇を取ってきた」
春奈「…奥さんに何か言われませんでした?」
角馬「呆れられたよ。子供達もすっかり私にそっくりになったって嘆かれてね。ハハハハ」
飛鳥と春奈に突っ込まれながらも王将の実況で、試合が始まった。
阿太郎・吽助「!!」
FWの阿太郎、吽助兄弟はジェミニストームの顔つきを見て、成長を感じていたが、あっさり突破されたことに驚きを隠せなかった。
パンドラ「リュウジ様!」
レーゼ「ああ!」
パンドラからのパスをレーゼが受け取った。そしてレーゼの前には真仮名井がいて、片足を大きく踏み上げた。
真仮名井「しこふみ!」
真仮名井が踏み上げた足を降ろそうとすると、レーゼがボールを上げてジャンプした。
真仮名井「!!」
レーゼ「大夢!!」
レーゼがティアムにパスすると、ティアムも同じタイミングでジャンプをしていた。
垣田「真仮名井のしこふみを攻略したのか!?」
前回、真仮名井のしこふみで足場を揺らされてパスが出来なかったジェミニストーム。数日前の練習で、飛鳥から対策を教えられていた。
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飛鳥「チームでの課題はパスを繋げる事だ」
「パス?」
飛鳥がジェミニストームの選手を集めて会議を開いていた。
飛鳥「お前達も気づいていると思うが、漫遊寺の選手はレベルが高い。特にFWの天神兄弟のコンビネーションは抜群だし、ディフェンスも侮れない。ましてや地響きでボールがすぐに取られてたからな。その対策をする必要がある」
飛鳥が真剣に説明すると、レーゼが手を上げた。
飛鳥「どうした? リュウジ」
レーゼ「その、前に真仮名井さんのしこふみでボールを奪われたんですが、振り上げたのを確認してパスを出す形でしょうか」
飛鳥「そうだな」
レーゼの問いに飛鳥が上を見ながら返事をすると、レーゼを見つめた。
飛鳥「そうなると、問題なのはパスを受け取る時だ。受け取った時に地響きで足場を揺らされて取れなかったら意味ないからな。しこふみをされる場合は、ジャンプしてパスをしてジャンプでパスを受け取るんだ。しこふみによる地響きの影響を受けない為にな」
レーゼ「成程…」
パンドラ「空中でなら、あまり考える必要がありませんね」
飛鳥の言葉にレーゼが納得すると、パンドラも続いた。そして飛鳥は正面を見つめる。
飛鳥「今回の試合で大事なのは、パスを途絶えさせない事。だから今回はパスを重点的にやるぞ。パスはサッカーにおけるコミュニケーションみたいなもんだからな」
「はいっ!!」
そしてそれを木暮が陰で聞いていた。ジェミニストームの練習が気になって練習をサボってきたのだろう。だが、聞いている時の彼は真剣な表情をしていた。
木暮「……」
つづく