しこふみをかわして、ティアムは必殺シュートを放った。
ティアム「アストロブレイク…改!!」
黒いオーラを包んだボールを漫遊寺のゴールに向けてシュートするが、前よりも威力が高まっていた。そして漫遊寺のGKである垣田が、大きく息を吸い込んで、火を噴いた。
垣田「火炎放射!!!」
垣田の火はボールの勢いを消そうとしたが、アストロブレイクの威力が強まって垣田は押され始めた。
垣田「!!?」
そしてボールはそのまま垣田の顔に激突して、そのまま失点した。
王将「ゴール!!! ジェミニストーム! 先制点を取ったー!!!」
ティアム「や、やった…!」
漫遊寺から先制点を取ったことでティアムが喜んでいた。
春奈「やりましたよ!」
飛鳥「ああ。修業の成果が出てるな」
春奈がはしゃぐと飛鳥も反応し、風丸と少林寺も先制点を取ったことを喜んでいた。ちなみに背番号は風丸が12番で、少林寺が13番である。
垣田「…なんということ」
垣田がボールを見つめた。
垣田「ですが、修行の成果が出たという事か」
垣田が正面を向いて漫遊寺の選手を見渡した。
垣田「皆の者! 彼らの健闘を称え、全力を持ってお相手するのだ!」
「はっ!!」
漫遊寺の選手たちにも闘志が宿り、試合は白熱していった。
阿太郎「くっ!!」
阿太郎と吽助の2人を数人がかりでマークして攻撃を防ぎ、そのままMF、DFを突破していった。
ティアム「リュウジ!」
今度はレーゼにボールが回った。
レーゼ「決める!! アストロブレイク…改!!」
レーゼも同じようにアストロブレイクを強化させて、そのまま2点目を奪った。
王将「ゴール!! ジェミニストーム2点目を奪ったー!!!」
レーゼ「や、やった…!!」
春奈「いいですよー!! 緑川さーん!!」
と、レーゼが春奈を見ると、春奈がにこやかに自分に対して微笑みかけた。1回目の漫遊寺の試合のハーフタイムで喧嘩をした事を想いだし、レーゼは微笑み返した。
レーゼ「地球にはこんな言葉がある」
「!」
レーゼが凛とした顔して正面を向いた。
レーゼ「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」
レーゼがジェミニの選手を見つめた。
レーゼ「試合は優勢だが油断はするな! 相手も戦いの中で進化する! 最後まで気を引き締めて行け!」
「おう!!」
レーゼの言葉にジェミニストームに闘志が宿った。
飛鳥(キャプテンらしくなったな。リュウジ…)
飛鳥が嬉しそうにレーゼを見つめていた。セカンドランクという事もあり、自信を無くしかけていたリュウジだったが、漫遊寺の厳しい修行を仲間と共に乗り越え、改めてキャプテンとしての使命を思い出したのだ。
それだけでなく、ずっと昔から彼の面倒を見ていたという事もあり、レーゼの成長に飛鳥は感無量だった。
飛鳥(そしてリュウジだけじゃない。他の子も顔つきが昔とはもう違う。これなら、マスターランクとまではいかないけど、イプシロンにだって負けない筈だ)
飛鳥の横顔を春奈達がじーっと見ていた。
春奈(監督…。凄く嬉しそう…)
風丸(やっぱりジェミニストームが成長したのが嬉しいんだな…)
少林寺(オレも頑張らなくちゃ!)
そして、あっという間に前半戦が終わった。
王将『ここで前半戦終了だー!! 試合はジェミニストームが2点リード! 漫遊寺の怒涛の反撃に耐える事が出来るかー!!?』
漫遊寺も反撃をしたが、漫遊寺の動きを研究したジェミニストームに攻撃を阻止されて、点数をもぎ取る事が出来なかった。
ゴルレオ「ふー。2点もリード出来たぜ!」
レーゼ「油断するなよ。何が来るか分からないんだから」
と、ゴルレオが余裕ムードになっていると、レーゼが諫めた。
飛鳥「ああ。本当に何が来るか分からないぜ…」
「え?」
その時だった。漫遊寺のユニフォームを着た木暮が現れた。
春奈「木暮くん!?」
飛鳥「……」
驚く春奈をよそに、飛鳥が笑みを浮かべた。
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それは試合前日の事…。
「木暮。明日の手合わせじゃが、後半戦から出て貰う」
「えっ!?」
とある蔵の中で、監督、木暮、飛鳥の3人が話をしていた。
監督「ジェミニストームの皆さんの成長の手伝いをせい」
木暮「……」
監督の言葉に木暮が迷っていた。
飛鳥「何を迷ってるの?」
迷っている木暮に飛鳥が言葉をだした。
木暮「べ、別に迷ってなんか…」
飛鳥「オレが監督さんにお願いしたんだ。次の試合に木暮くんを出してほしいって」
木暮「え?」
木暮が飛鳥を見つめた。
飛鳥「どうしてだと思う?」
木暮「な、何でだよ。どうして敵チームである筈のオレを…」
木暮の言葉に飛鳥が横を向いた。
飛鳥「信じてるからだよ。木暮くんの事」
「!!」
飛鳥の言葉に木暮が目を大きく開いた。それと同時に母親から言われた『信じる方が悪い』という言葉が脳裏によみがえったが、今は飛鳥の言葉が強く響いていた。
木暮「オレを…信じてる…?」
飛鳥「勿論出まかせじゃないぞ。だいぶ時間がかかったとはいえ、オレからボールを奪ったり、10秒以上キープ出来たじゃないか。あんなにいがみあってた音無さんや少林寺くんともなんだかんだ言って一緒にサッカーしてたしね。そして何よりも…」
木暮「!」
飛鳥が真剣かつ、温かいまなざしで木暮を見つめた。
飛鳥「この数日間、一番近くで君の事を見てきた。だからこそ、今の君なら垣田さん達と一緒にサッカーが出来るって信じられるんだよ」
この時、木暮の中で何かが変わった。今までは厳しい事から目を背け、悪戯で人を困らせて自分は強いつもりでいた。だが、飛鳥や春奈たちと出会って、思う存分『仲間』とサッカーを楽しんだことで、彼の中でわだかまりは消えていった。
信じてくれる人達の為に報いたい。そう思うようになったのだ…。
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そして木暮は監督と垣田達を見つめ、頭を下げた。
木暮「今まで迷惑をかけてすみませんでした」
「!!」
真剣に木暮が謝ったので漫遊寺の選手たちは驚いたが、監督はいつも通りだった。
木暮「この通り反省しています。ですので、もう一度オレを試合に出してください」
垣田「木暮…」
垣田が驚いていると、監督が笑みを浮かべた。
監督「よかろう。一時的であるが試合に出してやる。真仮名井、交代だ」
真仮名井「本当に良いのですか!?」
監督「木暮の言葉ではなく、プレーを見るのじゃ」
「!!」
監督が飛鳥を見た。それは飛鳥もきっと同じことを言うと確信をしていた。監督の言葉を聞いて垣田は俯いた。
垣田「…そうですね。監督の仰る通りです」
そう言うと垣田は、木暮を見つめた。
垣田「木暮」
木暮「……」
垣田が真剣な顔で木暮に話しかけると、木暮は少し驚いていた。
垣田「今まで私がお前にしてきたことは、お前の為だと思っていた。己の心身を鍛える為に、グラウンドの整備や雑巾がけ、あらゆる雑用をさせた。それは今でも間違っていないと考えている」
垣田の言葉を木暮だけじゃなくて、飛鳥一行も観戦しに来た漫遊寺の生徒達も聞いていた。
垣田「だが…」
木暮「!」
垣田が悲しそうな顔をした。
垣田「一丈字さんとお前の練習風景を見て、お前の事を見ているようで見ていなかったと気付かされた。今日まで下手に出るとお前が調子に乗ると考えていたが、そういう事を考えていた時点で心身が鍛えられていなかった事を痛感した。漫遊寺サッカー部のこれからの為にも、私とお前自身の為にも、私はここで過ちを認める。本当にすまなかった」
垣田が木暮に頭を下げると、木暮が驚いた顔をした。
木暮「キャプテン…」
木暮がそう呟くと、歯ぎしりをした。
つづく