前回までのあらすじ
ダミーイプシロンとの対決で引き分けになった雷門イレブン。正直喜べない結果に意気消沈するも、飛鳥は追い打ちをかけるように豪炎寺の離脱を宣告する。
「えええええええええええええええええーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!?」
飛鳥「うわ、すっごい響く…」
雷門イレブンの絶叫に飛鳥は冷静にツッコミを入れた。そんな中で円堂や鬼道はショックを受けていた。そんな中染岡はじっと飛鳥を見つめた。
栗松「り、離脱…!?」
春奈「一体どういうことですか!?」
鬼道「オレ達が納得のいく理由があっての事ですよね?」
飛鳥「君らが納得するかは分かんないけど、豪炎寺くん本人は納得してくれると思うよ」
飛鳥が豪炎寺を見つめると、豪炎寺が俯いた。
壁山「り、離脱って事は…クビって事ッスか!?」
飛鳥「ううん。一旦落ち着いて」
飛鳥はそう言って落ち着かせる。
飛鳥「今回の前半戦と豪炎寺くんの練習を見てきての判断だよ。理解して貰えるかは分かんないけど、今の豪炎寺くんを強くしようと思ったらね。もうナニワ修練場じゃ物足りないんだよ。あと、君たち以上に練習量も増やす必要がある。けど、チームにいたままだと公平性に欠けるし、集中できないから当面の間豪炎寺くんには別の場所で特訓して貰う」
「……!」
飛鳥の言葉に雷門イレブンはショックを受けるも、
「オレは賛成だぜ」
そう口を開いたのは染岡だった。
半田「そ、染岡…」
染岡「オレも『ワイバーンクラッシュ』を完成させるのに苦労したからな。それに豪炎寺の力はまだあんなもんじゃねー筈だろ」
豪炎寺「……っ」
染岡は静かに目を閉じた。
染岡「お前はどうすんだ豪炎寺。オレは止めないぜ」
染岡の言葉に豪炎寺も目を閉じて考えたが、すぐに目を開いて飛鳥を見た。
豪炎寺「分かりました。コーチに従います」
「!!」
豪炎寺の決断に飛鳥は苦笑いした。
飛鳥「本当にいいんだね?」
豪炎寺「はい。イプシロンに勝つにはもっと強くならないといけません。何でもします」
飛鳥「OK。他の皆も悪いんだけど、豪炎寺くんの意思を尊重してあげて」
飛鳥の言葉に壁山達は俯いた。本当は行って欲しくないし、完全には納得していないけれど、飛鳥の言っている事も一理あるし、何よりも豪炎寺自身が決めた事であれば、止める理由もなかった。
円堂「コーチ」
飛鳥「分かってるよ。行くのは豪炎寺1人だけなのかって話でしょ? そうだよ」
飛鳥の言葉に円堂が目を大きく開いた。
飛鳥「君たちの誰かと一緒だと、その子に気を遣って特訓に集中できないからね。心配なのは分かるけど行かせてあげて」
豪炎寺「円堂」
円堂「!」
豪炎寺が円堂に語り掛けると、円堂は豪炎寺を見た。
豪炎寺「行かせてくれ。頼む…」
円堂「豪炎寺…!」
豪炎寺が頭を下げると、染岡以外の雷門イレブンは驚いていた。円堂はその決意を見て何も言えなかった。
円堂「分かった」
円堂がそう言うと豪炎寺は顔を上げて円堂を見つめた。
円堂「強くなってまたオレ達の元に帰ってこい!」
豪炎寺「…勿論だ!」
円堂と豪炎寺の言葉に他の皆が口角を上げた。
飛鳥「さて、ジェミニと交代させたいから上に上がろうか。その間引き続き練習ね」
「はいっ!!」
こうしてジェミニストームと交代した円堂たちは再び修練場で特訓し始めた…。
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その日の夕方。雷門イレブンとジェミニストームは大阪ギャルズの計らいでご馳走を堪能していた。
リカママ「大阪サミット改や!! 今日はうちの奢り! じゃんじゃん食べやぁー!!」
「いっただきまーす!!!」
リカママ「ちなみにアンタはなしや」
リカ「なんでやぁー!! ダーリィーン!!!!」
リカは一之瀬の隣で食事をしようとしたが、リカママとギャルズメンバーに回収されて行って、苦笑いしていた。
飛鳥「申し訳ございません。こんなにご用意させて頂きまして…」
リカママ「飛鳥くん。そこは『ありがとう』やで」
飛鳥「えっ…?」
リカママは口角を上げて飛鳥を見た。
リカママ「うちらが勝手にやった事や。気にせぇへんといてや」
飛鳥「……」
飛鳥が驚いていると、リカママは飛鳥の顔を見るなり目に涙を浮かべて、背を向けた。
飛鳥「ど、どうされました?」
リカママ「…そっくりやわ」
飛鳥「!」
リカママがぼそっと呟いた一言を聞き逃さなかった飛鳥。リカママは自分の事を亡き母である笑子と重ね合わせていたのだ。
飛鳥「あの…」
リカママ「ああ! 大忙しや! ほらあんたら! キビキビやキビキビ!」
リカ「人使い荒いって~!」
リカママ「やかましい! それ以上文句言うなら一之瀬にあんたの恥ずかしい秘密バラしたるからな!」
リカ「それでも親か!!! それやったらお母ちゃんの黒歴史をここにいる全員にばらしたるわ!!」
リカママ「このクソガキ~!!!」
玲華「おばちゃん、落ち着いて!」
万里「リカも一之瀬くん見とんねんから、あんまみっともない事せんの!!」
玲華と万里が親子喧嘩を仲裁すると、皆漫才みたいだと大笑いしていた。
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そして食事が終わり…
リカママ「すまんなぁ。手伝って貰って…」
飛鳥「いえいえ」
食事が終わった後、飛鳥はこっそり手伝いに参加していた。今は飛鳥とリカママだけの二人になっている。
飛鳥「…その、浦部さん」
リカママ「おばちゃんや」
飛鳥「…おばちゃん」
飛鳥が遠慮気味に名前で呼ぼうとするが、リカママの圧に根負けしたのか、おばちゃんと呼び直した。
飛鳥「えっと、さっきの事なんですけど…」
リカママ「ごめんなぁ」
飛鳥の言葉にリカママが苦笑いした。
リカママ「一瞬あんたがお母ちゃんに見えてん」
飛鳥「…母に?」
リカママ「ああ。笑子はうちの常連やったんよ。勉強はあんま得意やなかったんやけど、スポーツ万能でな。その上可愛くて男子にモテモテやってん」
飛鳥「そ、そうですか…」
リカママ「今の商売を始めてまだそんなに年が経ってなかったんやけど、学校が近かったから来てくれてたんや。途中からあんたのお父ちゃんも来るようになったけど」
飛鳥「父が…?」
リカママの言葉に飛鳥が驚いた。
リカママ「せやで。あとな、赤ん坊やった頃のあんたにも会っとるんよ」
リカママが優しい顔つきで飛鳥を見つめる。
リカママ「あの若さで息子を持ったのは流石に驚いとったけど、あんたは笑子にとっても懐いとって、よく笑う子やった。強面のおっちゃんがあやそうとしても泣かんとずっと笑っとったんや…」
飛鳥「そうだったんですか…」
するとリカママが俯いた。
リカママ「…せやからな、あんたのお父ちゃんお母ちゃんが死んだときは凄く悔しかった。あんな身勝手な奴らに…」
リカママは悔しさでこぶしを握らせたが、これ以上怒っても飛鳥を困らせるだけだと思い、思いとどまった。しかし、涙はあふれたままだった。
リカママ「飛鳥くん…」
リカママは目を閉じて涙をポロポロこぼした。
リカママ「ナニワランドの時にも言うたけど…。あんたが生きててくれて、おばちゃんホンマに嬉しいわ…! ありがとうなぁ…!!」
飛鳥「……」
生きている事に感謝してくれるリカママを見て、飛鳥は静かに敬意を示した。
つづく