第85話
後半戦が始まった。
「こっちです!!」
「頼んだぞ!!」
円堂たちに励まされた宍戸はマックスからのパスにしっかり答え、陽花戸中の選手を突破していく。
秋「宍戸くん…動きが良くなった…!」
秋がそう呟くと、他のマネージャーも安心していたが、飛鳥は無表情で鬼道は俯いていた。
春奈「…お兄ちゃん?」
飛鳥「安心するのはまだ早いよ」
春奈「え?」
飛鳥の言葉に土門と一之瀬も真剣な顔をした。
鬼道「そうだ。今はいいが、近いうちに円堂なしで試合をしないといけない」
一之瀬「改めて円堂が凄い奴だというのは分かった」
土門「…オレも円堂がいたから雷門でやってこれたんだ」
ベンチメンバーの言葉を聞いてマネージャーたちは困惑していた。確かに鬼道たちの言う通り、円堂が敵になったと考えれば今みたいにはならないだろう。そう思った。
飛鳥「まあ、でも今は目の前の試合に集中だ! 心の準備だけはしといてくれ」
「は、はい!」
飛鳥がそう声をかけると、ベンチメンバーとマネージャーが返事した。鬼道たちの心情を察しつつも、コーチとして今何をしなければならないかを諭す。そして陽花戸の校長がそんな飛鳥を見つめていた。
***********
暫くして、試合は終わった。結果は雷門イレブンの勝利であった。
立向居「ハァ…ハァ…負けてしまった…」
立向居も頑張ったものの、やはりゴッドハンドだけでは厳しく、染岡にシュートを打たれてしまい、そのまま失点してしまった。そんな立向居に円堂・染岡・半田がやってきた。
半田「そんなに気を落とすなよ。ゴッドハンドが使える上に、よくここまで戦ったよ」
染岡「まあ、後はもっと特訓する事だな」
立向居「は、はい! ありがとうございました!」
立向居はそう頭を下げる。
「本当によく頑張ったのう。立向居くん」
立向居「こ、校長先生!」
飛鳥と校長がやってきた。
校長「他の選手も頑張ったが、君は毎日遅くまで残って練習しとったのをワシは見ておったよ」
立向居「……!」
校長「さて、そんな君たちにはもっと頑張って貰わないとな」
「え…?」
その夜、陽花戸中にてささやかな食事が振舞われていた。
少林寺「壁山。お前食い過ぎだよ」
壁山「ああ! どれもこれも美味しいっす!!」
壁山が福岡グルメに舌鼓していて、少林寺が困惑していた。
栗松「本当にどこまで言ってもブレない奴…あー!! オレの取るなでやんすー!!」
と、壁山と栗松が騒がしかったので、夏未が呆れていた。そんな中、宍戸は飛鳥や円堂と話をしていた。
飛鳥「宍戸くん。今度からは大丈夫そうだね」
宍戸「はい! 色々とすみませんでした…」
円堂「まあ、先の事は確かに考えないといけないけど、しっかり強くなっていこうな」
宍戸「は、はい!」
そんな中、立向居はそんな円堂たちの仲間になりたそうにじっと見つめていたが、陽花戸メンバーは雷門イレブンを接待するために、色々裏方にいそしんでいた。
戸田「立向居!」
立向居「は、はい! すみません!!」
戸田に呼ばれて立向居は持ち場に戻ろうとしたが、飛鳥はそれを感知していた。
飛鳥「あ、ごめん戸田くん!」
戸田「は、はい!」
飛鳥「申し訳ないんだけど、ちょっと立向居くんを貸して貰えるかな。次の練習試合の件で話があるのをすっかり忘れてたんだ…」
と、飛鳥が申し訳なさそうにすると、戸田は明らかに嘘だという事が分かり、困惑していたが、飛鳥の頼みならと立向居を行かせることにした。
立向居「お、お待たせしました!」
飛鳥「いいよ」
立向居「それでお話というのは…」
飛鳥「…まあ、後で戸田くん達にも話すんだけど、ちょっと君たち陽花戸中に協力してほしい事があってね」
そう言って飛鳥は事情を説明したが、立向居が驚いていた。
立向居「オレと円堂さんを入れ替える!?」
立向居の言葉に他の雷門イレブンも見ていたが、陽花戸中メンバーは初耳だったので驚いていた。
飛鳥「そう。ちょっと円堂くん抜きで試合をしてほしくてね。協力してもらえるかい?」
立向居「オ、オレなんかが…」
飛鳥「そう。オレなんかがいいの」
立向居が心配そうに言うと、飛鳥は堂々と言い放った。
飛鳥「来年フットボール・フロンティアに出るんでしょ?」
立向居「!」
飛鳥「だったら、君たちも経験が積めるし悪い話じゃないと思うんだけどな。やっぱり戸田くんの許可が必要かな?」
戸田「いえ、どんどんこき使ってやってください!」
飛鳥「話が早くて助かるよ」
飛鳥の言葉に戸田がすっと現れて、あっさり許可を出した。
飛鳥「まあ、そう言う事だから立向居くん。一つ頼むよ」
立向居「は、はい!」
飛鳥「勿論君一人に負担をかけるような真似はしない。特にDFの子達にはちゃんとフォローするように伝えとくからさ」
と、これで話はまとまった…。
飛鳥「さ、オレ達も食べよう!」
という事で飛鳥達も食事をしたのだが、飛鳥が替え玉ばっかりしまくっていた。
春奈「…コーチも意外と食べるんですね」
飛鳥「今日は特に腹減ってんだ。バリカタおねがい」
祭利田「任せんしゃい!」
壁山「オレもっス!」
栗松「お前は自重するでやんす~!!!!」
壁山もおかわりしようとしたが、栗松と少林寺に取り押さえられた。
**************************
食事が終わり、雷門イレブンと陽花戸イレブンが親交を深めている中、飛鳥は再度校長室で校長と話をしていた。
校長「今日は素晴らしい試合を見せてくれた。ありがとう」
飛鳥「いえいえ…」
飛鳥がそう言うと、校長が何か言いたそうにしていた。
飛鳥「…何かありましたか?」
校長「いや…」
校長が飛鳥を見つめた。
校長「…君になら話してもいいかもしれん。時間は大丈夫かね?」
飛鳥「…分かりました」
校長は飛鳥にある事を伝える。
校長「…実はな。大介からノートを預かっているんじゃ」
飛鳥「……!?」
校長の言葉に飛鳥が驚いていた。
飛鳥「そのノートの中身というのは…」
校長「簡単に言えば『究極奥義』とも呼ばれる必殺技が書かれておる」
飛鳥「…そんなものを何故私に」
校長「今の君なら話せると思ったからだ」
飛鳥「え?」
校長の言葉に飛鳥は片眉を上げた。校長が自分の事を高く評価していることが信じられなかったからだ。
校長「君は選手をとても大事にしている。ジェミニストームというチームと雷門中が戦う時も、自らを挺してジェミニストームの子たちを守った。そして今も沢山の子供たちを導いている。十分だ」
飛鳥「校長先生…」
校長「…だが、この『究極奥義』はその名の通り、ただの必殺技ではない。使う人間によっては大変な事になってしまう」
飛鳥「……」
校長の言葉に飛鳥は困惑していた。
校長「まずは君にだけその中身を見せる。確認してくれたまえ」
飛鳥「…もし今回の合同合宿で、円堂くんと立向居くんがこの究極奥義を会得するのにふさわしくなれば、私が伝授すれば良いのでしょうか」
校長「そこまでしなくては良いが、まずは究極奥義を会得するのにふさわしいかどうか見極めてほしい」
校長の言葉に飛鳥は静かに目を閉じて、依頼を受けることにした。
飛鳥「…分かりました」
つづく