大海原中のサプライズに雷門イレブンは困惑していた…。
「おおおおおお!! よく来てくれた!! 感動だ!! 実に感動だ!!」
バンダナを巻いて、沖縄のかりゆしウェアを着た大男が大声を出して雷門イレブンを歓迎していた。
春奈「…もしかして、あの人が監督さんですか?」
綱海「そうだぜ! いいノリしてるだろ!!」
秋「あはは…確かに試合の事忘れてそうかな…」
あまりにも能天気そうな監督にマネージャー達は苦笑いするか、困惑していた。そして監督は飛鳥を見るなり、目を輝かせていた。
監督「おおお! 監督さんですか!?」
「!?」
監督が飛鳥に対して色目を使っていた。
監督「いやいや光栄ですな!! フットボール・フロンティアの采配! 実に見事でした!」
「え」
監督「是非星空の下でゆっくりと聞かせてほしいですな! 優勝校の監督論!!」
監督がそう言うと、飛鳥は静かに目を閉じた。
飛鳥「生憎ですが、私は監督代理でして…響木監督にはそうお伝えしておきますね」
監督「響木…?」
飛鳥の言葉に監督は響木の顔を思い出して青ざめていた。
監督「あっはっはっはっはっは!! いやー、すみません!! 私としたことがそっくりだったので、間違えちゃいましたよ!!」
「……」
本当にアバウトだなぁ…と、雷門イレブンは思っていたが、ジェミニストームは別の理由でもっと困惑していた…。
飛鳥「それから…」
監督「?」
飛鳥「私は男ですよ」
飛鳥の言葉に監督はまたしても青ざめては笑ってごまかしていた。まあ、何か憎めない感じはするなぁ…と、雷門イレブンは思った。
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夏未「それはそうと、随分とユニークなのね…」
綱海「ユニークかどうかはさておき、とにかく皆ノッてんだよ!! あいつは毎日親父と船に乗ってて、あいつはノリ山町に住んでて、あいつの母さん、海苔屋のノリコ」
いろんな意味で乗ってるんだなぁ…と、飛鳥達は思っていたが、夏未は綱海の話を聞いて頭が痛くなっていた…。出来る事なら今すぐ帰りたいと思っていた。
綱海「…まあ、特に乗ってるのがアイツだ!」
「?」
綱海は水色の髪をして、ヘットホンをかけている少年を紹介した。
綱海「大海原中サッカー部・キャプテンの音村学也だ!」
音村「宜しく」
とまあ、そんなこんなで練習試合が始まる事となった訳だが…。飛鳥は王将が現れるのかと思い、出入り口の方を見ていた。
飛鳥「今回は来ないみたいだね」
夏未「ええ。さっさと始めましょう。実況なんかなくても…」
飛鳥「あっ…」
「実況ならここにいますよ!!」
圭太でも王将でもない、そっくりな青年が現れた。青色のスーツを着ている。
飛鳥「…もしかして、お兄さん?」
「はい! 角馬金将と言いまして、角馬王将の長男です!」
「金将!!?」
飛鳥「あー。そういや前にお兄さんいるって言ってたな…」
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金将「それでは皆さん! 大変長らくお待たせいたしました! ここ南国の地・沖縄で雷門イレブンとノリノリ大海原中の練習試合を始めたいと思います!!」
と、金将が前からいたかのように実況席で実況をしていた。
飛鳥「ちなみに今日お仕事の方は?」
金将「休暇です! 宜しくお願いしますね」
飛鳥「あ、いえ。こちらこそ…」
とまあ、雷門イレブンも試合の準備をしていた。
飛鳥「さて…スタメンを発表する前に、大海原の情報について聞く?」
「え?」
飛鳥の言葉に雷門イレブンは驚いた。
飛鳥「それとも自分たちの目で見てみる?」
夏未「情報を集めているのなら、共有してください」
飛鳥「OK。まず大海原はもう分かると思うけど、結構変則的だから、普通にやってると苦戦すると思うよ」
飛鳥の言葉に円堂達は驚いた。
壁山「ふ、普通にやったら苦労するって…」
栗松「どうすればいいでやんすか?」
飛鳥「それも今から説明する。要注意なのはキャプテンの音村くんだね。彼が皆に指示を出してるんだけど…音楽の用語を用いてる」
「音楽の用語?」
飛鳥「アンダンテとかね」
鬼道「ゆっくり歩くように…」
飛鳥「まあ、こればっかりは実際にやってみないと掴みにくいかもね。じゃ、発表するよ」
スタメン
FW 染岡
MF 少林寺 マックス
鬼道 一之瀬
塔子
DF 風丸 栗松
壁山 土門
GK 円堂
ベンチ:影野、半田、宍戸、目金
飛鳥「今回は鬼道くんと塔子さんと目金くんに頑張って貰おうかな」
目金「僕もですか?」
まさか自分も指名されると思っていなかった目金は驚いていたが、飛鳥は当たり前のように振舞っていて、目金を見つめた。
飛鳥「目金くんは音楽用語の知識は?」
目金「あ、ある程度なら…」
飛鳥「向こうもいつもと同じように指示を出してくると思うから、もし分かった奴があったら皆に教えてあげてね」
目金「わ、分かりました!」
飛鳥「あ、それから雷門さんも音楽得意だったりする?」
夏未「…ええ。嗜んではいますが」
飛鳥「じゃ、君も宜しく!」
飛鳥がそう言うと夏未はあっけにとられると、ジェミニメンバーは苦笑いした。
夏未「わ、私も参加するのですか!?」
飛鳥「フィールドには立たないけど、マネージャーでも出来る事は沢山あるでしょ。それに理事長先生が、もし娘に出来る事があったら協力させてくださいって仰ってたし」
夏未「はぁ!!?」
飛鳥「まあ、理事長先生ご本人がそう仰ってたし、何なら誓約書も書いてもらったから。宜しく!」
飛鳥の言葉に夏未が唖然としていると、染岡や半田、マックスは笑いをこらえていた。
円堂「ま、まあ…。とにかく張り切って行こうぜ!!」
「おー!!!!」
円堂の言葉に雷門イレブンが声を上げたが、染岡たちが本当に上機嫌だった。
夏未「…いつ父に聞いたのですか?」
飛鳥「うーん。結構前だよ。最初のころ」
夏未は体を震わせながら飛鳥にそう聞くと、飛鳥は平然と答えた。
飛鳥「まあ、一応肩書が雷門中サッカー部のコーチだから、雷門中の一番偉い人が知らないのは流石にマズいだろうって響木さんが紹介してくれたんだ」
秋「そうだったんですね…」
飛鳥「まあ、こっちも気を遣ったんだけど、理事長先生があっさりOKしたんだよね。それだけ君の事を信頼してるんだと思うよ」
飛鳥の言葉に夏未は俯いた。
飛鳥「…それと同時にとっても大事に育てられてるってのも分かった」
夏未「ど、どういう事ですか?」
飛鳥「……」
夏未の言葉に飛鳥はある事を思い出した。
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「…本当に宜しいのですね?」
「ああ。遠慮なく娘を頼ってくれ。もし娘が難しそうなら私に直接連絡するといい」
「感謝致します」
飛鳥は響木の立会いの下、夏未の父にして雷門中理事長の雷門総一郎と話をしていた。
響木「随分と娘を信頼しているんだな」
総一郎「そうだな。まあ、私が色々忙しい上に妻も亡くなっているからな。夏未には苦労をかけさせた…」
飛鳥「……」
総一郎の話を聞いて飛鳥は夏未も色々あったんだなぁと思っていたが、総一郎は飛鳥の事を気にせず苦笑いしていた。
総一郎「だけど、本当に夏未は立派に育ってくれた。昔はあんなに泣き虫だったのに」
総一郎の言葉に飛鳥は困惑していた。それを言って大丈夫なのかと…。
響木「意外だな」
飛鳥「!!」
そして響木が乗っかると、総一郎は話を続ける。
総一郎「そうなんだよ。夏未は普段は気丈に振舞ってはいるが昔は…」
とまあ、飛鳥がいるにも関わらず夏未の恥ずかしい秘密を色々喋ってしまったのだ…。
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飛鳥「…まあ、試合が始まるからまた今度な」
秋・春奈(絶対余計な事喋ったんだな…)
夏未「?」
知らぬが仏。青空の下で飛鳥と秋、春奈はそう思うのだった…。
つづく