『霊異伝』   作:月日星夜(木端妖精)

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第二十一話 多大な損失

 

 竹林に跋扈する兎少女達を、フランが撃ち落し撃ち払い吹き飛ばしているのを見ていると、奥の方に屋敷が見えた。きっと、みんなあそこに入っていったのだろうとフランと話し、入る事にする。不法侵入は巫女の(わざ)だよ。

 さて、屋敷の中を進んでいくと、長い長い廊下の先に光るものがあった。

 あれが、月……ではないか。……フランが何も言わないのを見ると、勘違いかな。

 どうなんだろー、と考えてると、ぴょーんと跳ねて、目の前に人。いや、妖怪兎。

 

「ああ、また来た。でも遅いわ、もう全ての扉は封印した」

 

 ん、なんか凄く懐かしい格好をしている気がする。その、ブレザー? 制服みたいなの。

 ぴっとこちらに指鉄砲を向けて、目を鋭くする妖怪兎に、何か勘違いしてない? とフラン。勘違い?

 

「ああなんだ、やっぱり違うんだ。何しに来たの?」

「月を取り返しに」

 

 よく分からない会話を繰り広げる二人を交互に見て、溜め息を付く。日本語で話して欲しいなあ。もしかしなくても俺の頭が悪いだけなのかもしれないんだけど。

 どやどやと喧しい奴ら、と妖怪兎がうんざりしたように言う。それは、まあ、俺達の前に六人ほど来ているはずだしねえ。

 妖怪兎は、こちらを見ながらぐんぐん奥へと飛んでいくので、それを追って俺達も飛んでいる。彼女は長い後ろ髪を払い、それにしても、といった。

 

「恐ろしい狂気の波動ね。そっちもそうだけど、そっちのあんたも」

 

 ぴ、とフランを指差したかと思えば、次は俺。……え、そんな、狂ってるように見える? 節穴め。さあ弾幕ごっこだとフランが張り切っていると、奥の方からひょっこりと誰かが姿を現した。

 長い銀髪を編んでいるのが特徴的な、そして服の色も特徴的な女性。あ、師匠、と妖怪兎が言うので、あれが親玉なんだろう。なんだっけ、エリンギとかなんとかいう名前だったような気がする。

 にしても……特異な力を感じる。不安定というか、増えているようで減っているような、そんな力。

 

「月は――――……ウドンゲ、私は紫の方を相手にするわ」

「え? あ、はい!」

 

 何やら言い掛けたエリンギさんは、俺を指名してきた。そんな険しい顔で見てこなくても、殴ってあげるのに。

 何を、と声を荒げようとしたフランが、兎が目を赤くするのと同時に、俺の名を叫んだ。

 

「れ、靈夢! 待って、どこに行くの!?」

 

 いや、ここにいるんだけど。と声をかけることもできず見ていると、フランは虚空を目で追って、それから恐ろしいスピードで飛び出していき、脇にあった扉の一つをぶち破って中に入っていった。なんぞあれ。

 それを追って妖怪兎も飛んでいってしまい、残るはエリンギさんと俺だけだ。あ、玄爺もいるけど。って、おい、ちょっと、何ふらふら飛んでるのじーさん! おいってば!

 ふらふらっと飛んでいた玄爺が、ついにまっさかさまに落っこちたので、慌てて甲羅を蹴って廊下に降り立つ。どうしちゃったんだ玄爺。ついに寿命が?

 駆け寄って、ぺしぺし頭を叩いてみると、目を回してうーんと唸っている。何か、変な術でも掛けられたのかな。

 

「あなた……あなたは、なに?」

 

 後ろから掛けられた声に、立ち上がって振り返り、仰ぎ見る。理解できないものを見る目で、彼女は俺を見ていた。

 なに、と言われましても。ただの巫女ですけど。

 言い返そうか迷っていると、突如として周りの壁が後方へと動き出した。いや、廊下全体がぐぅんと伸びて、どんどん俺達を奥へと運んでいく。

 はっとした時には、とても広い部屋に出ていた。慌てて後ろを見れば、玄爺の姿が無い。幻術の類ではない?

 キッ! と彼女を睨み付けると、ぶつぶつと呟いているのが見えた。

 

「あなたは、あなたを、生かしておけば、そう……姫を逃がすどころの話ではなくなる。なんて、危険な……危険な、存在」

 

 ぶつぶつと、俺についてなんやらかんやら。はあ、危険な存在ね。知らないよそんなん。変な事言ってるとぶっとばすぞ。

 

「私は、永琳。八意永琳。あなたの名前を、聞いておきましょう」

 

 ちょっぴり玄爺が心配だったので、戻ろうと背を向けると、名を問われた。振り返らずに、「博麗靈夢」と短く答える。

 うーん、玄爺、兎達にちょっかいかけられてなきゃいいんだけど。

 

「そう、ではさようなら」

 

 はいさようなら……なんていかないか。

 ぴょんと飛ぶと、足元の床が消し飛んだ。驚愕に目を見開いて、慌てて光線を放ち横に転がる。ふわあ、なんて威力だ。殺す気満々じゃないか。

 その場から飛び退くと、細い光線がいくつか床を抉り、転がって避ける俺を追ってきた。必死になってごろごろ転がっていると、光線が止む。身を起こして、八意永琳の姿を見上げ、息を吐いた。

 彼女は、判断に迷っているような表情をしていた。そんな顔をするくらいなら殺しにかからないで欲しいんだけど。

 

「……なぜ」

「なぜ?」

 

 口をついて、疑問の声が漏れる。なぜと聞き返してくる彼女に、冷や汗が流れた。もしかしなくても、命の危機か。また、わけのわからない理由で。

 

「それは、あなたが一番知っているんじゃない? その力。その存在。その全てが、危険すぎる。そう、何もかもを、なくしてしまいかねない程に……」

 

 ……言ってる意味が、わからないんだけど。俺は別に知らないし、そんな強いわけでもないし。少なくともお前みたいな化け物じみた力は持ってないよ。

 彼女の周囲に静かに巻き上がる、濃密な力。あれは、なんだろう。何をすればあそこまでの力を手に入れられるというのだろうか。ためしに、彼女に向けて気合砲を放つと、球状の霊力に阻まれて、届きすらしなかった。なんだあれ、反則じゃない?

 一瞬見えた球体の大きさは、おおよそ……二十メートルくらい? よくわからないけど、大きいのは確かだ。そして、その力が尋常じゃないのも、重ねて言える。

 だって、届かないとは思わなかった。払われたりした事はあったけど、届きすらしないとは。

 不思議な術を使えるのね、と言う彼女に向かって走り、床を蹴って跳び上がり、球体があった辺りに着地するように両足で蹴りつける。と、また一瞬球状の霊力が見え、次には吹き飛ばされていた。

 背を打つ前に空中で回転して体勢を整え、着地して、床を擦って止まる。結界術の類ではない? だけど、何かの術であるのは確かなようだ。幾つか、霊力の基点が見えた。恐らくそこを繋ぎ合わせて、こんなに大きなバリアを張っているのだろう。

 なんでそんなもんを張ってるのかは知らないけど。そんなに俺を殺したきゃ、その力で潰せばいいのに。

 袖に腕を通し、中をごそごそと漁る、カードカード……ああ、あった。

 

「先程戦った巫女に似ているけど……肉親かしら? そうは思えないけど」

 

 確認しておいて、そうとは思えないって、それ聞く意味あるのかな。

 カードを使い、遙か高い天井から降ってきた黒棒を伸ばした手で掴み取り、霊力を流し込む。よくわかんないけど、死ぬのは嫌だから全力全開で戦おう。

 でも、あの球状の霊力をなんとかしないとなあ。基点を叩けば壊せるかな。壊したらぶん殴ってやろう。黒棒を片手に持ち、剣のように構えて腰を落とす。とにかく、すぐに移動できるようにしないと。あの細い光線は危険だ。あのスピードであの破壊力とかシャレにならん。当たったら即お陀仏だ。たぶん。

 とか思っていると、永琳がこちらに指を向け、さっそく光線を放ってきた。考え事なんかしてなきゃよかった。跳ぶ準備なんかできちゃいない。

 仕方なく、黒棒を振って弾く。強い抵抗を感じたが、なんとか明後日の方向に反らす事ができた。……失敗してたら、心臓を貫かれてたかも。容赦も、ないんだな。巫女が嫌いなのか。

 息をつく間もなく、今度は弾幕。バルカンのように弾が放たれて迫ってくるので、弾かれたように横へ走り出し、追ってくる弾を避けた。

 広い部屋の中を走り回り、当たりそうになった霊力弾を棒で弾いて逃げ回る。その中で、永琳へと光弾を放ち、一瞬見えた霊力の基点を執拗に狙う。基点の数は、四つ。それらを攻撃していると、さらに大きな一つがある事に気が付いた。

 弾幕の嵐が止み、一息つくことができるようになる。咳き込むように息を吐いて、荒い呼吸を繰り返しながら永琳を見上げると、彼女は薄い笑みを浮かべて俺を見下ろしていた。

 ……何考えてるのか、全然わからない。

 

「ふふふ……気付いたようね、これの秘密に」

 

 彼女が手を振ると、攻撃の際にしか見えなかった球体が、常時見えるようになった。薄い白の向こうに、彼女を中心として四つ、円状の基点があり、彼女の真上に、大きな基点が一つ。見せて、どうするつもりだ。

 疑問に答えるように、彼女は言う。

 

「この四つの基点を叩けば、あなたの攻撃は私に届くようになる。……試してみる?」

 

 言われなくても。

 だけど、狙うのはその四つじゃない。一番大きな奴だ。

 だって、いくらなんでも怪しすぎるんだもの、自分からここが弱点です、なんて。きっと罠か何かだね。

 腕から垂れるぶんどうを外し、再度構える。これ、転がった時とかに体にぶつかって痛いんだよね。だから投げる。

 鬼のぶんどうだ、ひびぐらいいれられるだろうと思って、砲丸投げの要領で大きな基点目指して投げつけると、彼女はそれが如何に危険なものか理解しているのか、大きな光弾を一つ放ってぶつけた。濃い白色に光る霊力弾がぶんどうにぶつかった瞬間、ぱっと辺りを光が包み、一瞬後には爆発。爆風に煽られて仰け反っていると、また銃弾のように粒程の大きさの霊力弾を連射してきたので、斜めに跳び上がった。

 寸前で足元の床が爆ぜ、破片が足にかかる。息一つ吐く間に、もう天井近くだ。体を横に回転させて、遠心力を乗せて黒棒を手放す。ひゅんひゅんと回転し、空気を裂いて飛んで行った棒は、その身に纏った霊力で球状の霊力を裂き、その奥にある円状の基点に突き刺さった。

 再び、爆発。着地した際に足に掛かった衝撃に動けないでいると、棒の刺さった基点から黒い煙がぶわっと広がり、二、三度爆発した。

 その真下にいる彼女は、火の粉が落ちてきて、かぶっている帽子や肩なんかに降り掛かっても、払う素振りさえ見せなかった。

 その代わりに俺に向けた指先に光を溜め込み、光線として放つ。横一線に床を削って迫るそれから全速力で逃げていると、四秒程で光線は止み、今度もまた細かい弾幕だ。

 追い詰められたのか、目の前には壁。逃げるルートを誤ったらしい。だけど、少しでも速度を落とせば蜂の巣だ。悲鳴を上げる太ももの付け根に渇を入れて、速度を上げる。呼吸のたびに喉がひりつく。殺されるかもしれないというこの状況が、こんなに消耗を早めるとは。

 コンクリートの如き固さの床を蹴って跳び、片足を壁に叩きつけ、即座に転進、三角跳びの要領で壁を蹴って跳ね、着地と同時に前転し、走り出す。壁を穿ち破片を散らせた霊力弾の雨が、後ろを追ってくるのが分かる。背に流れる髪の傍を通っているのが分かる。くそ、髪に当てたら殺してやる!

 足裏で霊力を爆発させて、再び天井付近まで飛び上がる。彼女が俺に手を向けるまでに、袖の中から扇子を取り出す。幽々子が使っていた扇子だ、霊力もこもりやすいだろう。

 一瞬でこめられるだけ霊力を込め、ぱっと扇子を開いて大振りに振るう。荒れ狂う霊力が永琳に迫るが、やはり霊力の壁に阻まれてしまう。彼女が放ってきていた霊力弾も、途切れたのは一瞬で、無防備に落下を始めた俺に無数の霊力弾が迫ってきていた。

 咄嗟に気合砲を叩き付けると、数百の内の大部分が消滅したが、数十が残り、俺を貫こうと迫る。両腕で顔を庇って、来るだろう痛みに耐えようとしていると、着地に失敗してごろんと転がり、肩を打った。幸いなのかどうか、当たらなかったらしい。

 すぐに転がって起き上がるも、追撃の霊力弾が放たれている。迎撃しようと腕を上げようとするとずきりと痛んで動かないので、苦し紛れに扇子を投げつけた。

 霊力を纏って飛んで行った扇子は、黒棒と同じようにくるくると回転して霊力弾を弾いて進み、霊力の壁に突き刺さって、その周囲を爆発させた。

 

「しめた!」

 

 思わず、声が出た。彼女の至近で爆発したためか、彼女は自分の顔を庇って怯んでいる。しかも、今の爆発で霊力の壁に穴が開いた。

 ぐっと足に力をこめ、めいいっぱい力を溜めてから高く高く飛び上がる。両腕を広げ、両方の手に霊力を込め、それを基点に刺さった黒棒目掛けて放つ。二つだけではない。時間の許す限り連続で光弾を放ち、基点に当てて爆発させる。床に戻るまで、それを続ける。

 どっと重い音と共に着地すれば、それを見計らったように光線が放たれた。今の今まで溜めていたのか、さっき放たれたものよりも強い力を感じる。だけど、当たるかそんなもん!

 後方へ跳躍する。足元を光線が穿(うが)とうが、跳んでしまえばこちらに害は無い。両腕を広げ、揃えた両足を振り子のように振り上げる事によって空中で後方回転をする。その最中(さなか)、彼女の目がしっかりと俺を捉らえているのが、ゆっくりと流れる視界の中に映っていた。

 

 肩に何か当たった……?

 ふっと、くすぐったいような感触に違和感を覚え、右腕に目を向けると、赤い液体を散らしながら俺から離れていくところだった。

 あ、と声が漏れる前に着地し、片膝を立てて屈伸すると同時に激痛が襲い掛かって来る。びしゃびしゃと、肩からシャワーのように飛び散った血が床にぶちまけられた。右肩が熱い。いや、冷たい? いや、冷たいのは、体か。額に浮かぶ脂汗に顔を顰めて、ぶしゅうと血が噴き出す肩に手を当てようとして、痛みで体が跳ねて、動きが止まった。

 体温が流れ出ていく喪失感。痛みよりも何よりも、それが怖くて肩の傷を(ふさ)ごうとした。だけど、手を当てると痛くて、勝手に体が跳ねて、顔が上を向く。ぎしりと全身の筋肉が縮こまると、余計に血が噴き出して、熱が逃げていく。削り取られた天井の破片がぱらぱらと降ってきて顔に掛かるのなんて、気にならなかった。

 ぼとりと、横に何かが落ちてきた。目だけをそっちに向けると、それは、俺の、腕で……。

 駄目だ、と思った。あれを、離しちゃ駄目だ。肩にくっつけないと。

 真っ白になりかけた頭でそれだけを考えて、左腕を伸ばす。と、光弾が飛んできて、目の前の腕を飲み込んだ。白い光の中で、黒くこげてぼろぼろと崩れていくのが、やけにはっきりと見えた。

 

「――ぃ、ぎ」

 

 失くしたと理解した瞬間、痛みに飲み込まれる。

 腕が痛い。腕、無いけど、無くなっちゃったけど、痛い!

 肩も、ああ、肩も痛い。何で? なんで、こんな……!

 どうして痛いのか理解できなくなり、すぐに思い出す。その繰り返し。理解したくない。でも、痛みに理解させられる。まだ腕があるような気がするのに、目の前で無くしたのを見た所為で、それにすら縋れない。

 うぐ、と口から声が零れて、冷たさの中に消えていく。

 意味もなく上げた視界には、中空に浮かび、こちらに腕を向けている八意永琳の姿が映っていた。

 

「それ以上の痛みを感じさせないように、葬ってあげるわ。……さようなら」

 

 ずきりと、肩口が痛む。また痛みが来るのかと目をつぶって……すぐに、目を開けた。

 痛みが無い。痛みを、感じなくなってる?

 左の手の平を切り口に押し付けると、肉と、骨のざらついた感触が伝わってきて、でも、それだけだった。

 未だ血は流れているし、体温が抜け出ていく脱力感もあるけど、痛みが無くなっていた。それはきっと、危ない印なのだろうけど、助かった。

 立ち上がり、涙を拭った後に、切り口に袖を押し付けて、彼女を見上げる。彼女の差し出した手には、恐ろしい程の霊力が集まっていた。

 あれ、弾けるかな。……たぶん無理だろうなあ。

 あまり多くを考えられなくなった頭で、ぼんやりとそう考える。ぼたぼたと零れ落ちる生暖かい血液が膝を濡らすのに、特に何を感じる事も無く、彼女の真上、黒棒が刺さっている基点に手を差し向け、気合砲を放った。

 不可視の霊力の塊が黒棒を押す。すると、円状の基点にひびが入り、ぱらぱらと透明な破片を彼女へと零した。

 彼女はそんな事は意に介さず、ただ霊力を溜める事だけに集中している。でもそれ、明らかなオーバーキルだから。光線だけで十分なんじゃないかな。まあ、溜めてる間に基点を攻撃できるからいいけど。

 体の奥から搾り出すように霊力を練りだし、弾として固め、放つ。いつもならあくびをしながらでもできるその作業が、今は、とても面倒くさく感じられた。

 一発、二発、三発。彼女が悠長に溜め込んでいる間に、もうこれだけの数の霊力弾を打ち込んでやった。ぼこーんと爆発してひび割れ、四散する基点。投げ出された黒棒が床に落ちて滑り、足元まで戻ってきた。あははー、これであいつを守るものは無くなった。さあ、やっつけよう。

 腕が疲れたのでそっと下ろして、それから、彼女を隠す程にまで成長した光弾を眺める。あれ、なんも起きない。なんで?

 なんでかなあと考えつつ、肩を押さえる。手にかかる血は熱く、どくどくと脈動する肩は、硬かった。

 

「最初に教えてあげたというのに、天邪鬼ね」

 

 遠くの方から、彼女の声が聞こえてくる。エコーがかかっているのは、何でだろうか。

 光弾が、放たれた。視界一杯に白色が広がり、ゆっくりと近付いてくるそれの風圧に、尻餅をつく。起き上がる気力なんて、残ってなかった。

 あー、だめか。死んじゃうのかー。

 なんとなく、そんな事を考えて、次には、回想。この世界に立ってから今までのこと。生まれ落ちてから神社に雇われるまでのこと。初めて経験した異変。神社に溢れたばけばけのにくったらしい表情とか、かわいいわたしのこどものかおとかー。

 あはは、と笑って、目を閉じた。なんだ、案外死ぬのって、悪くないかも。

 

 そうして、光に飲み込まれた。


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