まともに書けなかった早苗さんを出したり
本編中に素で忘れていた約束を果たしてみたり
次への布石を置いてみたり。
読まなくても何も問題ない。
微(?)クロスあります。
かつて、夢の大妖怪によって創られた偽りの幻想郷。
泡沫の夢でしか無かったそれは、博麗霊夢と八雲紫の手によって満夢が退けられた事により、本物になった。……正しくは、本物と同じもの。
幻想の住人達はその事を喜び、その日は特別な日とされ、毎度のように開かれる宴会の口実にされた。
楽園が生まれ変わったその日、記憶を無くし、代わりのように甦った紫の髪の巫女は、「実家に帰る」と言って幻想郷を去って行った。
彼女が神社から姿を消して、早くも一月の時が経とうとしていた……。
◆
妖怪の山も紅色に染まり、秋も深まる頃、神社の境内では今代の巫女が掃除をしている……フリを、していた。それも、とても不機嫌そうな顔で。
なげやりに箒を振るう巫女――博麗霊夢に、賽銭箱に腰かけて栗を剥いていた霧雨魔理沙が、何がそんなに不満なんだ? と問いかけた。
魔理沙に背を向けたまま一つ息を吐いて、さっさと竹箒を振った霊夢が、重く吐き出した息と共にその理由を話し出す。
せっかく神を降ろす修行をしているのに何も起きないのが不満だーとか、毎日ご飯を用意してるのにあの人が帰って来ないのが不満だ、とか。
「そりゃあ、たまに来るとは言ってたが、そんな早くは来ないんじゃないか?」
あいつだって、家族の事とか、身の回りの事だとか、色々あるだろう。
もぐもぐと栗を摘まみながら言う魔理沙に、霊夢は手を止めて顔を落とした。
家族。
それは、霊夢とかつての
だけど、今はそうでない。縁を切ったとか、離婚(……)したとか、そういった理由ではない。というかそもそも彼女とは女性である。言わずもがな。
だが、少なくとも霊夢の中では、今でも彼女は家族……いや、それに限りなく近いものだった。
――霊夢の母が死んだ。自分の手で殺した。
だが、
しかし、姿は同じでも、彼女はもう二度と霊夢の事を娘として見る事はないだろう。
言ってしまえばそれだけの事が、それ程までに博麗霊夢という少女の心を揺らし続けていた。
魔理沙からしてみれば、鬱屈とした雰囲気とどこかピリピリした空気、それに、気落ちした
もう一人の友人も無事なようで、少々頭は緩くなったが、それでも喜ぶべき事のはずだった。
常ならば、長い付き合いのある霊夢の僅かな変化を敏感に感じ取り気遣う魔理沙も、ここ一年のあれやこれで感覚が麻痺していたのかもしれない。だからこその、家族がいる、という言葉である。もう少し魔理沙にいつもの余裕があれば、そんな事は言わなかったかもしれない。だが悲しい事に、今の魔理沙は栗を剥く事に夢中なのだ。
「それに、おっきな出来事ならこないだあっただろう」
だから、こんな事も平気で言ってしまう。
神社に乗り込んできた現人神。封印が解かれ、甦った満夢との戦い。新たな幻想郷での祝い。そして、『母』の死。
箒を握る手に生々しいものを感じた霊夢は、一度片手ずつをひらひらと振って、それから、目元を拭ってフラッシュバックした光景を拭い去った。
石畳を掃く音が消えると、魔理沙が栗と格闘する音だけがただ境内に響くようになる。
その中でふと名前を呼ばれた気がした霊夢が振り返れば、突如として栗が飛んできた。魔理沙が、剥いた栗を投げ渡したのだ。
何気ない、ただそれだけの行動。再び栗に取り掛かる魔理沙に、霊夢はなんだかばかばかしくなって、暗い気持ちも何もかも、衣を剥がれた栗と一緒に口の中に放り込み、噛み砕いた。
そのついでに、あれは特殊な例、と言った。
「そもそも、あの頃の紫は本物じゃなかった……とか、なんとか。今となっては、この修行には何の意味もないのかもね」
ふっと笑ってみせる霊夢に、顔を上げた魔理沙は「ふーん」と返事をしながら、隅に建てられた小さな
「神様を降ろすんだろ? ……そうだな、今は秋だし、豊穣の神でも……」
笑いながら言う魔理沙に、そういえば見た事無いんだっけ、と霊夢は言って、それとは関係なしにその案をばっさりと切り捨てた。その神を、今呼んだって意味はない、と。
「じゃあ、チロルの秋だから――」
「――チョコがどーかしたの?」
魔理沙の声を遮って二人の耳に届いたのは、霊夢によく似た、幾分大人びた声だった。
◆
ふわりと広がった鮮やかな紫の長髪をなびかせて、神社の裏から姿を現したのは、一月前にこの地を去った紫色の巫女だった。
とはいえ、前半分と後ろ半分で白黒に分かれたキャップ帽と、オーバーオールという現代的な格好にはなっている。……ファッションセンスはどうでもいいとして。
目を丸くする魔理沙の前まで来た巫女が、二人を見回してから、や、と軽く手を挙げてにっこり笑った。
呆けていた霊夢も、すぐに同じように笑って、帰ったの! と声を上げる。それがあまりに勢いが良かったのか、少し後退った巫女が、頬を掻きながら頷いた。
それから、魔理沙にも挨拶をする。
挨拶を返しながら賽銭箱から降りた魔理沙と霊夢が駆け寄ると、
「やー、れいちゃん、まりちゃん、元気してた?」
とぼけた声に、霊夢はわざとらしく息を吐いた。
「当たり前でしょ? 一月やそこらじゃ、何もないわ」
そりゃ良かった、と霊夢の頭の上にぽんと手を置いた巫女は(正確には、もう巫女ではないのだが)、次に魔理沙の頭に手を置いて、「いや、相変わらずちみっこくて安心したわ」と言った。
「そりゃ、そんなすぐに背は伸びないぜ……」
巫女が片手にしていたパンパンに膨らんだ手提げ袋を気にしていた魔理沙は、帽子のツバを押し上げて不満気に顔を上げた。
笑みを零した巫女は、そんな君たちにお土産があるぞー、とエコバッグを掲げて見せた。
まるで子供に対するような接しようだが、その実、彼女と魔理沙の間では約三十センチ程の身長差があるのだ。霊夢とだって、二十センチ程。
これは、彼女が特別背が高いという訳ではなく、霊夢達が小さいだけである。
というのも、やっとこさ十代後半になっていたはずの彼女達は、幻想郷が生まれ変わったと同じタイミングで、どうしてか十二くらいまで若返ってしまっていた。
どこぞのメイドもそれは同じなのだが、何故か彼女だけ姿が変わっていないのは置いておくとして。
八雲紫の言うところによれば、『この世界の整合性をとるため』らしいが、彼女達にはいまいち理解できなかった。
まあ、たとえ成長していても、比較的高身長の巫女からしてみれば、年下の子供に変わりはないのだが。
ちなみに、紫髪の彼女はぴっちぴちの十六歳……らしい。本人談。
さて、場所を移して、神社内。卓袱台を囲んだ三人、いや、霊夢と魔理沙の視線の先には、うずだかく積まれた菓子類の山があった。
「えー、ポテチでしょ、ポッキンでしょ、草餅とか、モナカもあるよ。アイスは流石に持って来れなかったけど……。あ、ヒーハー美味しいよ。れーちゃん食べてみる?」
ひょいと渡された赤と黒からなる小袋に露骨に顔を顰めた霊夢は、「いや、いいわ」と魔理沙にパスをして、山を作っている巫女に目を向けた。
――でん、と目の前に置かれた1.5リットルのペットボトルにびっくりしたりしながら。
「……実家は…………どうだったの」
『がば飲みクリームソーダ』とパッケージされたペットボトルを二本ずつバッグから取り出してはそこらじゅうに置く巫女に、霊夢が問いかける。声のトーンが低めなのは、あまり聞きたくない事だからだろう。
これで『家族』との楽しい日々を聞かされたりしたら、それを遮らない自信が霊夢には無かった。
「でも、案外戻ってくるのが早かったな。やっぱりここが一番か?」
チョコグラタンを見ながら言う魔理沙に、あー、と巫女が零す。
「実家ね、無かった」
「……ん?」
ふんふんと鼻歌を歌いながら次々とお土産を取り出す巫女が、サラッと重大な事を言うのに、顔を上げた魔理沙が小首を傾げる。
無かった? 実家が? ……なんで?
疑問がわいたら、すぐに人に聞くか考え込むかが魔理沙の
「んー? や、なんでって、わかんないけど、無かったんだよ。でも安心してねー」
手を止めた巫女は、満面の笑みを浮かべながら霊夢に寄って行って、その髪に手を通した。
野宿なんかしてないからさ、と笑う巫女に、霊夢はちょっと眉を寄せて、なんだか元気になったわね、と言った。
「元気? そりゃ、いつもの事だろ」
と、魔理沙。そうさ、と巫女も頷いて、バッグからお菓子を取り出すのを再開する。
「……でも、前とは違う。外で何かあったの?」
ペットボトルを弄りながらそう言う霊夢に、実家がなくなったとかか? と魔理沙が答える。
それは気にせずに、やー、ほら、と巫女が言った。
「外で友達ができてさ、その人の家に泊めて貰ってたんだ」
「なんだ、その言い方じゃ、今まで友達がいなかったみたいじゃないか。私達は違うのか?」
霊夢が言いたくなったことを、魔理沙が代弁した。たとえ家族でなくとも、親しい存在じゃないのか、と。
「二人は家族みたいなもんだよ。そんな感じ。友達ってのは、ちょっと違うかな」
伸ばされた手に、霊夢も魔理沙もなすがままに撫でられる。大きな手は、でもやっぱり繊細で、温かく感じられるものだった。
意外な言葉に顔をほころばせる霊夢は、「それにしても、一月もの間外で何をしてたの?」と機嫌良く問いかけた。どうせ、食べ歩きでもしてたんでしょうけど、とつけ加えて。
「えー? や、私だって、なんというか、凄い事してたよ? うん、悪いヤツと戦った! ……の、かな?」
一つの街を守ったのだ、と得意気に語る巫女に、霊夢と魔理沙は顔を見合わせて、笑った。
あはは、とあんまりおかしそうに笑うものだから、ふんぞり返っていた巫女も眉を八の字にして、何よ、と言った。しょぼくれた顔がよく似合う少女である。
「悪い奴は倒せても、食欲には勝てなかったみたいね?」
「口の端についているのはチョコクリームか? 言い逃れはできないな」
う、と一つ呻いた巫女が、ゴシゴシと口元を拭う。彼女としては、出来たお姉さんを演じていたつもりだったのに、これでは台無しだ。
「か、甘味は心の教養だ! 甘いも酸っぱいも、人生の全てはスイーツで知るの! だからほら、二人もいっぱい食べようね?」
「すっかり食欲の秋ね」
「人生の事はわからないが、スポーツの秋になるって事くらいはわかるな」
慌ててそれっぽい事を口にしてみれば、気にしている事を突っつかれてしまって、巫女はしょんぼりとお腹を擦った。
そんな巫女の様子に、シュークリームの包みを顔の前に摘み上げて眺めていた魔理沙が、「まあ、私は成長期だが」と小声で言った。
「それは、羨ましい事ね?」
鋭い声が三人の間に差し込まれた。
なんてことはない、ただの一言。それがまるで、投げられたナイフのように通って行くと、音もなく縁側へと続く障子戸が開かれた。
「縮んでいくのが成長というなら……あら、珍しい顔」
戸から手を離し、腕を組んで見せたのは、十六夜咲夜。
うえ、と眉を寄せる霊夢に対して、巫女は嬉しそうに「こんにちは」、と声を上げた。
「久しぶりだね、咲夜さん。元気してた?」
「ええ、変わりないわ」
「それは良かった。えっと、後で紅魔館にも行こうと思ってたんだけど……」
立ち上がって、部屋の外に居るままの咲夜の腕をとった巫女が、卓袱台の一角(?)まで引っ張ってきて座らせる。
クリームソーダ飲む? と聞かれて、お構いなく、と答える咲夜を、霊夢は頬杖をつきながら睨みつけた。
「なんか用?」
「ええ、なんか用ですわ」
端的な問いに、曖昧に返す咲夜に、魔理沙は投げ出していた足を引っ込めながら、当ててやろうか、と言った。
「レミリアの我儘だろ」
「うーん、半分不正解」
小さく笑みを作って、巫女が前に置いたコップを手に取った咲夜は、透明なグラスになみなみと注がれた薄緑色の液体に、顔色を変えずにゆっくり机の上に戻した。
ますます不機嫌そうに頭の位置を低くした霊夢が目だけで催促すると、相談に来たの、と咲夜。
「あれ、飲まないの? なら私が飲んじゃおっかな」
横から手を伸ばしてグラスを攫って行った巫女が、口をつけながら、台所の方へ引っ込んでいく。代わりのお茶でも取りに行ったのだろう。
霊夢はそれを見送ってから、
「相談? あいにく、私は忙しいの。相談には乗れないわ」
「そう。忙しそうには見えないんだけど?」
「こいつは怠けてるだけだ。相談なら、私が乗るぜ」
怠けてなんかないわよ、と手を振って、さっきだって掃除してたし、と霊夢が言うのに、してるフリだろ、と魔理沙が揚げ足を取る。
あの巫女に怠けているのを知られたくない霊夢と、ただからかっているだけの魔理沙がきゃいきゃい言い合うところに、「これは二人に聞いて貰わなきゃいけない事なの」、と咲夜が割り込む。
「あ? だから、相談には乗らないってば」
「霊夢、これは仕事みたいなものよ」
「あんたの相談に乗るのは私の仕事じゃない」
「その点、私はなんでも屋だ。なんだって相談に乗るぜ」
胸を叩く魔理沙を無視して、一瞬台所の方に目を向けた咲夜は、一つ息を吐いて、人間の助けになるのが巫女でしょう、と言った。
「だから、巫女は人間を助けるのよ。人間の私をね」
「……それで、どうして仕事になるって? あんたんとこの吸血鬼がまた何かやろうとしてるの?」
「半分の半分正解ね」
「それで、次の職でも探そうと相談しに来たのか?」
縁起でもない、と咲夜が言うと、ガサガサと音をたててお菓子の山が少し崩れた。それを面倒くさそうに積み直しながら、話が進まない。相談って? と霊夢が聞いた。
聞いてくれるのね、と笑みを零す咲夜に、早くしてよ、忙しいんだから、とふて腐れたように霊夢が言った。
咲夜は二人に、今自分が探している物の事を話し、思い当たるものはないかと聞いた。
その説明はやけに棒読みチックだったのに二人は引っ掛かりを覚えていたが、話の流れには不自然な所はないので、各々考える事にした。
そこで、お盆を抱えた巫女が戻ってくる。お盆の上には、モナカを乗せた皿と、四つの湯呑みに大きめの急須。それを卓袱台の上に置くと、なんの話ー? と会話に混ざりたそうにお菓子の山の横に座り込んだ。
「うーん、さっぱりわからない話――」
「――その時をま、あっ、れっ、あ!」
ドタドタドタと慌ただしい音が近づいて来ると、勢い良く障子戸を開いた魂魄妖夢が、何かを言いかけて、巫女の姿に息をのんだ。後を追ってきた半透明の塊がひょろろと部屋の中に入ってきて、一周回って妖夢の後ろに戻って行く。
「妖夢ちゃん、久しぶりー。なんだ、今日はお客さんが多いね?」
「あ、久しぶり……じゃなくて、待っていたわ! ああ、違った、その時を待ってたわ!」
幾度か焦ったように言い直す妖夢に、不思議そうな顔をするのが二人。余計に不機嫌になるのが一人に、変わりないのが一人。
「次から次へと……なんの用よ?」
「あ、うん。えっ……と、あ、そうそう、ロケットの推進力を探してるんでしょ?」
「なんであなたがそんな事――」
「ロケット? ロケットって、あのロケットの事?」
少し間をおいて咲夜が声を上げると、湯呑みの数とこの場にいる人数を指差し数えていた巫女が反応した。
それなら外で見たよ、と。
「見たって、実物? 仕組みはわかるの?」
「うん、あ、でも見たロケットっていうのは、
湯呑みを指していた形のまま軽く手を挙げた巫女がさっと立ち上がって、障子戸に手をかけたまま立っている妖夢の手を引いて、卓袱台の下に移動させながら説明を始めるのに、咲夜はこっそりと溜め息を吐いた。
「なんだ、これで解決か? スピード解決だったな。レミリアの奴は喜ぶだろうけど、私はつまんないぜ」
「えっ、えっ、あれっ」
自分の肩に手を置いたまま外であった事を話している巫女を、慌てたように見上げる妖夢に、これはちょっと不味い流れね、と咲夜は思った。
なので、追い出す事にした。
「そういえば、夜雀の屋台の事なんだけど」
「それで、宇宙……え、なに、私?」
話を遮られた巫女が、自分を指差して首を傾げるのに咲夜は頷いて、続ける。
「約束したのにずっと来ないから、今度会ったら三日三晩付き合わせてやるってカンカンになってたわよ」
「ええーっ! 行くなんて約束してたかなあ? ……そ、そんなに怒ってたの?」
おずおずと聞く巫女に、怒ってた、と咲夜が頷くと、ひえーと悲鳴を上げて慌てだした。
「早く行ってあげた方が良いと思うわよ?」
話に水を差した上に、煽るような事を言う咲夜に、ちょっと、と霊夢がたしなめようとしても、咲夜は妖夢に同意を求めるような事をしてまで急かすので、流石におかしいと疑問を抱く。
……抱きはしたものの、そういえば、彼女がこうなってしまう前――もうずっと前――に、そんな事を言っていたような、と思い出して、霊夢は一人納得した。
ああ、そうだ。彼女が忘れてしまっても、周りは覚えているんだったっけ、と。
彼女が甦り、同時に自分の名前も忘れてしまったあの日、みんなで取り決めた事が一つあった。
かつての名前で彼女を呼ばない事。それは、彼女を混乱させないための配慮だった。
たとえかつての名前で呼んでも、自分の事と認識しない彼女に、周りが考えた事。どうせ変わってしまったのだから、同じ人間として接するのはやめようと。
霊夢と同じ名前で呼ばれていた巫女ではなく、別の、ただ一人の人間として扱おうと。
霊夢には納得いかない事だったが、それが一番だとはわかっていたので、不満を隠して過ごしていた。
だけど、やっぱり同じ存在なのだと認識させられると、どうしても胸が痛むのを抑えられなくて、霊夢は静かに足を崩して、慌ててバッグに物を詰め込んで出かける準備をしている彼女を眺めた。
「ほっと、ごめんねれーちゃんまりちゃん、話とお片付けはまた後で! 咲夜さん、後でお土産持って行くからね! 妖夢、そこから好きな物持って行っちゃっていいからね!」
それじゃあ、とバッグ片手に開きっぱなしの障子戸から飛び出していった巫女を見送った咲夜が、何事もなかったように続きを話し出すのに、おい、よかったのか、と魔理沙が問いかけた。
「せっかく教えてくれそうだったのに、追い出しちゃって」
「ああ、私はただ教えてあげただけよ。それに、もう一人教えてくれる人はいるわ」
視線を向けられた妖夢は、少しの間ぼーっとして、あっ、はい! と思い出したようにコクコクと頷いた。
ふーん、こいつが? と言いながら、力の抜けきったように体を崩している霊夢の前に置かれた湯呑みにお茶を注いでやる魔理沙に、えっと、と前置きして、妖夢はたどたどしく説明し始めた。