『霊異伝』   作:月日星夜(木端妖精)

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第四話 戦う遺伝子

 魔理沙がお泊りに来た、その翌日の日の事。

 朝食の後に、俺は霊夢と魔理沙がいちゃこらできるように自主的に境内の掃除を始めた。

 玄爺を呼び出して、最近の幻想郷の事についてだべりつつ手を動かしていると、霊夢がやってきて、買い物に行って来てと頼まれた。

 行き先は人里。

 

 やあ、おつかいか。

 買うものは……お茶の葉にサンマに大根。

 ……ん? サンマ?

 海のお魚なんて、人里に売ってるのだろうか。

 んー、まあ、渡されたメモに書いてあるんだから、あるんだろう。

 

 早速玄爺に乗り、人里へと向かった。

 快適な空の旅……なんて風にはいかず、風で落ちそうになるのを必死で堪える。

 スピードを落としてもらおうにも、そんなんじゃ日が暮れちゃうし、どうしよう。

 そう考えていて、ぴんときた。

 霊力纏えば空気弾けるよ、と。

 早速やってみれば、予想は的中して、快適に移動できるようになった。

 

「ご主人さま、もう少しそれを引っ込めてください」

 

 そこで出たのが、玄爺のこんな文句。

 仕方なく引っ込めようとしたけど、そうすると風が酷い。

 試行錯誤する内に人里についてしまい、その頃には、大分霊力の纏う大きさを変えられるようになっていた。

 ……なったからって、何がどうなるってわけでもないんだけど。

 

 玄爺には外で待機していてもらう事にして、人里に入った。

 ぽつりぽつりといる人々が、物珍しそうに俺を見る。

 格好が格好だけに、注目されやすいんだな。

 足取り軽やかに道を行き、本当にあった魚屋さんでサンマを買って、八百屋で大根を買う。

 金銭の価値がよくわからない。困った困った、ちゃんと覚えないと。

 ひいふうみいとお財布の中の銭を数えて歩く。

 時々声を掛けられるのだが、その内容は、「あんれ、髪を染めたんですか」だとか、「なんか違う……あ、腋か」だとか。

 里の中央付近にまで来ると、「おや珍しい」なんて言われるようになった。

 さて、巫女がここいるのが珍しいのか、それとも、霊夢が中々中央まで来ないのか。どっちなんだろうな。

 ああ、何故買い物を済ませたのに里の中をうろうろしているかといえば、ただ単に、里の様子を見てみたかったのだ。

 好奇心からでもあるし、ここも記憶と違うのかなー、と思ったからもある。

 見て回っていれば、あったはずの家はなくなって空き地になっていたり、民家だったのが店に変わっていたり。

 こんな所まで変わってなくてもいいのになぁ、と思った。

 頂いた手提げ袋を抱えつつ、行き交う人を見回す。

 ゲームの中の世界とはいえ、現実となんらかわらない顔。

 現実と違うところといえば、なんだかみんな細いことぐらいだろうか。

 ちゃんとご飯食べてるのかね。

 人を避け、その度に顔を見て歩いていると、ふと、えらく面の良い男とすれちがった。

 反射的に振り返り、その背を見る。

 里の中では珍しい洋服姿だ。髪の色も奇抜で、緑ときた。

 いや、いや、しかし。一瞬見た顔の、なんと美しいことか。

 ふらふらと、俺の足は男の後を追っていた。

 いや、別に男に興味があるわけじゃ……あるわけじゃあ…………あるなあ。

 こりゃしかたないね。だってだってなんだもん。何がしかたないのかわからないが。

 その男は、とある茶屋に入っていった。

 追って、店内を覗けば、女性を中心に多く人がいて、それよりも団子やらあんころもちやらの甘味が目に入る。

 店内の様相は、現代のファミレスを想像してくれればわかるだろうか、大体それだ。

 そそそっと入り込み、男の姿を探す。と、見つける前に店員さんっぽいのに話しかけられて、席に案内されてしまった。

 その場で注文を聞かれる。

 まあ、待て待て待て。

 ここでお金を使ったらどうなるかを考えてみよう。

 これは霊夢のお金。頼まれた用途以外に使えば……え? あんみつ? 食べます食べます!

 

 

 不味い事になった。

 あ、いや、あんみつは美味しかったけど。でも不味い。

 なんかよくわからないけど、お財布が軽くなった。

 このままで帰れば、おつりが足りないと言われるのは間違いない。あ、後家から叩き出されるかも。

 

 はぁ、と溜息をついて、お腹をさする。

 甘味の魅力にゃ勝てなんだ。まったく、凄い奴だよお前は。

 なにか、どうにかする方法はないかと里の中をうろうろする。

 慧音ならお金くれるかも。

 ……考えが甘いか。

 ああ、しかししかし。それ以外に方法が無い。

 小銭落ちてないかなーって探し回る手もあるがそれは奥の手に取っておこう。

 

 手提げ袋を揺らしつつ、きょろきょろしながら歩いていると、「やや、巫女さん!」と老いた声。

 見れば、いかにも時代劇に出てきそうな姿の町民が俺に向かってきていた。

 立ち止まり、男性が来るのを待って、何か、と声をかける。

 

「いやいや、ちょうど(あやかし)に困っとりまして、頼みたいことがありましてな」

 

 手を擦り合わせ、皺を寄せて笑顔全開でそんな事を言う男。

 へえ、あやかし、ねぇ。人里で?

 詳しく話を聞いてみれば、この人は里の端の方に住んでいる人で、

 数日前から、近くの森から聞こえてくる音に悩んでいるという。

 最近じゃよく眠れず、仕事に支障もきたしている。

 いよいよもって、里の守護者に相談するか、

 たまに来る巫女さんに相談するかしようとしていた所、

 私が通りがかったので、頼みに来たというわけだ。

 音、といえば、騒霊が思い浮かぶけど、と犯人に当たりをつけていると、

 報酬は弾みますよ、と幾つか銭を渡された。

 あれ、まだ受けるとも言ってないのに、不用心な。

 ひいふうみいと数えると、どうやらあんみつを六つは頼めるくらいにあるみたいで、

 これなら五つ食べても元通りにできると引き受けた。

 で、音はどこから? と聞くと、案内しますので、と言うので、男の後ろについて、里の端っこまで移動した。

 

「ここです、この向こうです」

 

 高い囲いの向こうを指差す男。

 へー、向こうね。…………で?

 どこにも外へ出る所が見当たらないんだけど。

 えっと……乗り越えていけ、と?

 

「どうしたんですか、巫女さま。……え? 出口?」

 

 飛んでいかれないんですか? と不思議そうにしつつも、指を差して方向を教えてくれたので、そちらへ 向かった。

 空を飛べないってのは、結構面倒だな。玄爺がいるからまだいいけど。

 

 

 途中何度か茶屋に足を向けそうになり、その度に多大な精神力を用いて里の出入り口へと進む道を修正した。

 玄爺の元につく頃には、もうへとへと。

 甘いものが食べたいと愚痴をたれつつ、頼まれ事をしたと話すと、そりゃあ良い心掛けで、と褒められた。

 そうだよね、甘いものを食べようとするのはいいことだよね。

 

 玄爺の背に乗り、音の聞こえるという方向を目指す。

 たぶんあっちだと思うけど。近くに森があるのはあのあたりだけだし。

 あっちかなー、と玄爺に問いかけると、さあ? と返ってきたけど、玄爺はそちらへと飛び始めた。

 なんだ、そっち行くんじゃん。

 まあ、間違えてたらそこらへんうろうろしてればどうにかなるでしょ、と楽観的に考えて、森につくまで胡坐を掻いて待機する。

 お金は貰っちゃったし、その分きっちり働かなきゃ。

 しかし、いいタイミングだったなあ。助かった助かった。

 森に近付いてくると、確かに変な音が聞こえるようになった。

 ドーン、バーンと重い音。木々は目に見えて揺れ、土が飛び散っていた。

 なんだろー、と身を乗り出して見ていると、「強い力を感じます。ご主人さま、気を引き締めてください」と、まるでこれからボスでも出てくるかのような口ぶりで玄爺が言った。

 ほー、強い力ね。んー、あ、確かにちょっと集中すれば感じる。

 さて、どんな妖怪がいるのやら。

 このあたりで降りようかと玄爺に伝えた、まさにその時。

 森の中から何かが凄い勢いで俺達の方に飛んできた。

 咄嗟にリボンから御札を抜き出し、えいやと投げつけると、見事命中してその何者かの力を強制的に封印した。

 煙を上げて落ちていく何か。よく見れば、それは犬のような、または狼のような妖怪ぽかった。

 

「スピード解決」

「ご主人さま、先程感じた妖気はあれではありません。それに、あの獣は何かに追い立てられていたように見えます」

 

 ぐっとガッツポーズをすると、すかさず玄爺に(たしな)められた。

 よく見てるねえ。便利な亀だ。

 ぽんぽんと甲羅を叩き、それから、風除けのために薄く纏っていた霊力を大きくして、ばっと跳躍。大の字に体を広げ、地上へと降下した。

 なんて危ない! と亀が悲鳴を上げたが、無視。

 

 くるんと無駄に一回転してから、ずだん! と意外に大きな音を立てて降り立つ。

 ……足が痺れて動けない。

 顰めっ面をして痺れに耐えつつ、周りを観察する。

 抉れた地面。半ばから折られ、倒れている木。ちらばる葉っぱに、さっきの獣と大きな血溜り。

 あれは、あの獣の血だな。よく見なくても獣は傷だらけだし、玄爺が言ってた事であってるみたい。

 つまりは、他になんか暴れてる奴がいるって事。

 ようやく痺れが治まりつつある中で立ち上がり、足を擦る。

 それから油断なく身構え、いつでも動けるようにした。

 

 さて、音の正体は概ねこれだろう。数日前から聞こえていたというし、ここをねぐらにし始めた妖怪か何かがいるに違いない。

 そこに倒れてるのと同じ獣か、はたまた人型か。

 ……イケメン……いやいや、美少女だといいなあ。

 かさりと、葉が揺れた。近くの、腰程までに茂る植物にゆっくり目をやる。

 うむ。心地の良い緊張感が身を包む。どうやら靈夢は中々の戦闘好きだったらしいな。

 こんな雰囲気の中にいるだけで、滅茶苦茶テンションが上がってくる。

 テンションが上がると逆に静かに行動するのは、俺の方の性格だな。

 

 玄爺の背に乗っていた時にははっきり感じられていた妖怪の妖気も、地上に降り立つと薄れて感じられなくなってしまった。

 俺に気付いて逃げたのか、それとも、気配を消すことができる奴か。

 前者は時間的に難しいだろう。後者の場合は、ちとやっかいだ。そして、両者ともそういう能力を持っているならできるだろうな。

 とりあえず音がした方を見据え、駄目元で声でも掛けてみようか。いるかどうかはわからないが、出てきてくれたら儲けもの。会話が可能ならさらに、だ。

 すっと息を吸い、それから吐く。

 なんて言おう。「いるのはわかってるぞ」? 「貴様一体何者だ?」とか?

 うーん………………ああ、もういいや、普通に言おう。

 

「数日前からここで暴れてるのはお前だな?」

 

 静かな森に、俺の声が響く。

 …………これで誰もいなかったら、恥をかいて終わるな。

 身じろぎせず待つ事数十秒。誰も来ない。よし死のう。

 

「っ!?」

 

 ぼっ、と音を立てて纏う霊力を大きくしたら、その瞬間に木々の間から妖力の玉が飛んできた。

 そのスピードたるや弾丸の如く。反射的に横に跳ばなければ、痛いでは済まなかったかもしれない。

 つーか、いたのか。いるならいるって言えよ。

 衝撃を殺すために屈伸した姿勢のまま、妖力弾が飛んできた方向を睨み付ける。

 と、小さな影が現れた。

 ……少女。

 薄く青い髪を頭の後ろで結んでいて、髪飾りのように、髪と同じ色の花。服装は、なんというかわからないが、薄い布のようだった。

 羽が生えてるって事は妖精かな。

 いや、しかし、妖精がこれ程強い妖気を放つものなのか? 異変時ならまだわかるけど。

 その少女は、俺を見るなり驚きの表情を浮かべた。それから、やっちまったとでも言いたげな表情に変わる。

 

「ひょっとしてー……博麗の巫女?」

 

 その表情に(たが)わず、おずおずとした声音で尋ねてくる少女。

 立ち上がりつつ、そうだ、と答える。

 ……一応博麗の巫女を名乗ってもいいよね? 俺はまだ現役を退いたつもりはないし。……霊夢がいるけど。

 少女は額に手を当て、「ああ、―――ちゃんに怒られる」と呟いた。

 名前の部分はなんて言ったのか良く聞こえなかった。サ行から始まっていたような……。

 まあ、そんな事はどうでもいい。

 妖精か、と聞くと、そうですけど、と敬語が返ってくる。

 ふむ。妖精か、にしては凄い妖気だ。こいつが暴れていたので間違いなさそうだな。

 ……EX道中に出てくる妖精とかなのかな。ちょっと気になる。

 

 なんにせよ、言葉が通じる限りは、話し合いで解決できそうだ。

 近くで話そうと一歩踏み出すと、突然少女が険しい表情になって飛び退った。

 お、素早い! ……じゃなくて。

 えー、なんだその反応。そういや昨日の魔理沙もそんな反応してたな。

 靈夢ってそんな怖い顔してんのかなー?

 顔を触ろうと手を上げようとしたら、妖精が、「なんだ、やる気なんだ! うれしいなあ、巫女と戦う口実ができた!」と、本当に嬉しそうに言った。

 なんだそりゃ、戦闘狂かこいつ。妖精の癖に。

 

「でも、あの『スペルナントカ』ってなよなよしたのはごめんだよ! やるならやっぱり、格闘戦じゃなきゃ!」

 

 び、と俺を指差して、自信満々に妖精は言う。

 スペルナントカ……弾幕決闘のことか? もう広まってるのか。しかし、そのルールを拒否するとは。

 これは……霊夢に代わって俺がお仕置きしてやらなきゃな。

 ……くふふ、戦う口実ができた。この高揚感に身を任せて動いたら、さぞ気持ちがいいだろうなー。

 

 ぐっと足に力を込め、ようとしたら、ぼごんという大きな音と共に足場を失ったような浮遊感に包まれた。

 ちらりと足元を見ると、広く浅い穴。

 なんだ? 能力かなんかか?

 咄嗟に中空を蹴って飛び上がると、突っ込んできた妖精に胸を蹴られ、吹き飛ばされた。

 息が詰まり、衝撃に一瞬目をつぶってしまう。

 その一瞬の内に後ろにあった木にぶつかって前に弾け、追い討ちとして放たれたのであろう光弾に襲われた。

 爆発音。

 体を焼く痛みに耐えながら地に膝をつき、次いで、腕をつく。

 広がる煙の奥にいるだろう妖精を見据え、クラウチングスタートの体勢から一気に駆け出した。

 光弾が飛び出してきた方にこちらも霊力弾を投げつけ、間を置かず大きく跳躍する。

 上空から、横っ飛びに避ける妖精の姿が見えた。

 頭に結んだリボンから御札を二枚取り出し、霊力を込めて投げつけ、すぐさま地面に降り立ち、御札を避ける妖精へと走る。

 そのさなか、右手の平に霊力を集めて光弾を作りだし、走りながらも投げつける。

 腹に命中した。

 思ったよりも威力があったらしく、当たった瞬間に爆発などせず、そのまま突き進んでいき、木に叩きつけてようやく爆発した。

 黒煙が広がる。

 衝撃で折れた木が、ぱちぱちと音を立てて燃えている。

 十秒にも満たない短い交差だったが、こうも充実感を得られるとは。

 昔には体験し得ないことだった。

 肩で息をしつつ、いい加減熱いので焼け焦げた衣を破きさり、ぽいと放り投げる。

 肌着にじっとりとした汗が染みこんでいくのがわかる。

 風が冷たくて心地良い。

 

「ご主人さま!」

 

 今頃玄爺が降りてきた。

 俺の姿を見て心配そうにするが、手を振って大丈夫だと返す。

 熱い、が、痛くは無い。それは、興奮ゆえだろうか。

 ああ、俺は今興奮している。

 なんて楽しいんだ。蹴られた胸をそっと撫で、その蹴り方に思いを馳せる。

 あれは、蹴る瞬間に妖力で勢いを増していたな。

 ……こんな感じか。

 妖精の真似をして地面を蹴ると、妖精の能力かなにかで抉られていた地面が爆ぜて、さらに抉れた。

 飛び散った土が少々顔にかかったので、手で払う。

 玄爺が咳き込んでいた。

 ふっと微笑み、すぐに引き締め、妖精の方を見る。

 煙は、まだ晴れない。

 おかしい……? そう思うと同時、体全体に衝撃を受けて吹き飛ばされそうになった。

 なんとか踏ん張る事で少しずり下がる程度に抑えられたが、体の前面にじんじんとした痛みが残った。

 煙が晴れ、こちらに手の平を向ける妖精の姿が現れる。

 能力か? だとしたら、一体何の。

 俺が然程動いていないのに妖精は驚いるようだった。

 

 あれ、なに、と玄爺に聞くと、不可視の妖力を飛ばしてきているようですな、と返ってきた。

 能力じゃないんだ。

 しかし、不可視? どうやって……ああ、こうか。確かに見えないな。

 右手に霊力を纏わせ、色を薄める。

 色を変えることなんて簡単だ。こんな色になれーと念じてやればいいだけだからな。

 俺の行動を見て焦ったのかは知らないが、妖精が勢い良く腕を突き出してきた。

 ()()()

 霊力を込めてある右手で前方を払えば、手に重いものが当たった感覚がして、嵐のような風が吹きすさんだ。

 間髪置かず左手に霊力を込めて、掛け声と共に突き出す。

 今度は妖精が吹き飛ばされる番になった。

 空中で体勢を整えた妖精は、理解できないものを見る目で俺を見てきた。

 

 成長しましたな、と玄爺。

 俺は、自分の手を見て、その技について考えていた。

 不可視の力の塊をぶつける技……それって気合砲じゃね?

 このクズヤローッ!!! って感じで気合を込めて叫ぶと、相手が吹き飛ぶあれ。

 それを妖精が使ってくるとか、どんな難易度だよ。

 ちらりと妖精を見る。警戒してるな。真正直に腕を突き出しても避けられてしまいそうだ。

 ならば。

 ありったけに霊力を込め、天に向けて腕を振る。

 ちょうど妖精が立っていた場所を中心として地面が隆起し、凄まじい衝撃を空へと叩き上げた。

 空中に投げ出される妖精に、さらに霊力を込めた手を地面に向けて振り下ろす。

 重力に押し潰されるように、妖精は地へと沈んだ。

 

 それをやるたびに突風が吹き(すさ)び、地面が爆ぜ、土なんかが飛び散る。

 爽快だ。なんて気分がいいんだ、これは。

 しかし……。

 

「く……ぅ」

 

 まだ、立ち上がるか。もうそろそろ死んで(ぴちゅって)もいいんじゃないか?

 ことのほかタフな奴だ。

 ……もしかして、妖精ってのはみんなこうなのか?

 記憶を探ってみても、良くわからない。過去には雑魚といえば悪霊やらなんやらだったからなあ。

 妖精と戦った記憶って全然無い。

 まあ、いいや。とりあえず、はやいとこやっつけて神社に戻らないと。

 思ったよか胸への蹴りが効いてたのか、ちょっちクラクラする。

 軽く上げた右手の平の上に光弾を作り出し、霊力を注ぎ込む。

 

「それは……少しやりすぎでは?」

 

 うるさいな。

 あれだけ打たれ強いなら、このくらいやらないと反省しないだろう。

 そー、れ!!

 

 ぐっと振りかぶって放った光弾は、上空より飛来した別の光弾によって(はじ)かれ、地面に着弾して爆発した。

 我ながらかなりの威力。

 轟々と砂煙が襲い掛かってくるのを、顔を腕で庇ってやり過ごす。

 ……ん?

 希薄ではあるが、俺が相手をしていたものとは別の妖気があるのを感じた。

 それが、俺と戦っていた方を連れて、逃げていく。

 砂煙のせいで確認できないが、多分そうだろう。

 ……あーもう、鬱陶しい。

 ばっと腕を振ると、あれだけ唸っていた風も大人しくなった。

 うむ。気合砲は便利だな。

 

「ぺっぺっ。口の中砂入った……」

 

 ぺー、と声に出しつつ、口を拭う。

 うえ、袖にも砂がついてら。

 はあ、と溜息を一つついてから、体中の砂をはたいて落とす。

 そういえば。

 ふと、玄爺を見て思い出した。

 買い物袋……どこやったっけ。

 

「甲羅に仕舞ってあります」

 

 なんだそりゃ。

 ……あ、ほんとだ。

 便利だねー。でもそれ、気持ち悪いからもうやめてね。

 肩を落とす玄爺の甲羅によじ登り、腹這いになる。

 あー、疲れた。もう空も茜色に染まってきたし、神社に帰ったらお風呂浴びてご飯食べてさっさと寝よう。

 

 

 霊夢に怒られました。

 遅い。お魚が傷んでる。なんで服ボロボロなの。勝手な事すんな。次勝手な事したらご飯抜きにするからね。

 なんてことをつらつらと。

 うう……何も言えない。

 それに、ご飯抜きなんて絶対に嫌だ。

 霊夢のごはん美味しいし。

 

 その日はちゃんとご飯を作ってくれたけど、霊夢は一緒に布団に入るまで口を利いてくれませんでしたとさ。

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