世界最悪の邪神の恋物語   作:kajoker

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第3話です。

最近、WEB版の最新話まで読んだのですが、辛い…あれは辛いです。

…とにかく気持ちを切り替えていこうと思います。

それでは本編をどうぞ!


彼はとんでもないものを盗んでいきました…

「さて、そろそろ世界を救いに行くか」

 

彼のその言葉に、ついにこの時が来てしまったかと思いました。

 

もちろん理解はしていました。彼はいくつもの世界を救う神ですから、いつかはこんな日が来ると。

 

ですが…少々寂しいですね。いえ、嘘です…とても寂しいです。

 

「…普通の人が言うとイタいセリフですけど、あなたの場合は本当の意味で救いに行くんですよね…」

 

「まぁな」

 

「…ここにはもう戻ってこないんですか?」

 

「いや…実は、お前さえ良ければ本格的にここを拠点にさせてもらいたいんだけど…」

 

「…!」

 

彼の言葉に鼓動が跳ね上がりました。これはつまり、これからも彼と一緒に居られるということに他なりませんから。

 

「えぇ、構いませんよ」

 

「そうか…ありがとう!これからもよろしくな」

 

そう言って、彼は手を差し出す。

 

「こちらこそよろしくお願いします」

 

私はそう返して、差し出された彼の手を握った。

 

とても温かい…そういえば、こんな風に誰かの手を握ったのは初めてかもしれませんね。

 

「それじゃあ行ってくる。まぁ、帰って来るまで割と時間掛かると思うけど…」

 

「わかってますよ。あなたが帰ってくるまで、ここで待ってますから安心してください」

 

「了解…それじゃあ今度こそ行ってくる」

 

「はい、行ってらっしゃい…あ、今のやり取り夫婦っぽかったですね」

 

「お前と夫婦ね…想像できないな…だけど、こういう風に誰かに行ってらっしゃいって言われるのは悪くないな」

 

彼は笑顔でそう言って、転移魔法でこの場から別の世界へと向かっていきました。

 

「…彼のあんな笑顔は初めて見ましたね…写真や映像に残しておくべきでした…いえ、私だけ知っていればそれで良いかもしれませんね」

 

他の誰かに見せるのは、少々勿体ないですし。

 

さて、彼が帰ってくるまで、何をして過ごしましょうか?面倒ですが、先に仕事を済ませてしまいましょうか。

 

―――――――

 

―――――

 

―――

 

そうして、彼が帰ってくるまでのプランを考えた私ですが、問題がありました。

 

「退屈です…退屈すぎて死にそうです…まぁ、私は死なないんですけど…」

 

最近は彼と居ることが当たり前だったせいでしょうか?彼が居ないと退屈です。

 

彼が居ないと寂しいです…まだ1週間ほどしか経っていないというのに……会いたいです。いっそのこと彼の行った世界に私が干渉すれば解決するのでは?

 

それです!名案ですよ私!神のルールなんて知ったこっちゃないです。さっさと介入して彼を連れて帰りましょう。

 

そう考えて行動を起こそうとすると、目の前に空間の歪みが出現しました。

 

これは、もしや…!

 

「ふぅ…無事に戻ってこれたな。ただいま」

 

「…お帰りなさい。待ってましたよ…あなたが居ないと退屈で仕方なかったです」

 

「そうだったのか?」

 

「えぇ、退屈で死ぬかと思いました」

 

「いや、お前は死なないんじゃなかったっけ?」

 

「気持ちの問題です。察してください」

 

「わ、わかった…えっと、何かごめんな。お詫びに久しぶりに料理を振るまうよ…俺の感覚で言えば1ヶ月ぶりだし、久しぶりにお前とゆっくり過ごしたいからな」

 

「はい、そうしてください…私の感覚で言えば1週間ぶりですが、あなたが居なくて寂しかったのは本当ですから」

 

「寂しい…?お前が?いや、何でもない。とりあえず準備するから待っててくれ」

 

「えぇ、待ってます」

 

久しぶりに彼と過ごせる。そう考えるだけでさっきまでの退屈が嘘みたいに消えていく。

 

…これはもう疑いようがありませんね。

 

――――――私は彼に恋をしている。

 

彼が好きです。このまま永遠に共に居たいと思うほどに…まさか、私の中に恋愛感情が芽生えるとは思いもよりませんでしたが。

 

こんな感情は初めてです…ですが、邪神である私が誰かを愛することなどできるのでしょうか?

 

私は自分がどんな存在なのか理解しています。おそらく、どれほど時が経とうと、私という存在が変わることはないでしょう。その内、彼を傷つけてしまうこともあると思います。

 

しかし、それでも私は彼と共に居たいと願ってしまう。

 

…まったく、誰かを好きになるというのは中々難儀なものですね…私は彼を愛することができないかもしれない、だけど愛したい。彼を傷つけてしまうかもしれない、だけど共に居たい。

 

どこか矛盾しているこの感情…でも、これこそが誰かを好きになるということならば、この感情はとても尊いのでしょう。

 

「フフッ…まったく、面白いですね」

 

「何か良いことでもあったか?」

 

「えぇ、とても良いことがありました」

 

「そうか…」

 

「…これからも、よろしくお願いしますね」

 

「改まってどうしたんだ?ま、こちらこそよろしくな」

 

//////////////

 

「いや、告白しないんかい!!」

 

「だって、告白するのって結構勇気がいるものでして…あの時の私はその勇気がなかったので…まぁ、最終的には告白をして、彼にも好きだと言ってもらえましたので、問題なしです」

 

思わず、素の口調でツッコミを入れてしまった私の言葉にDはそう返す。

 

というか、マジで真っ当に恋愛してるよね、D…そういえば、気になってたけど、彼は結局今どこに居るんだろ?ちょっと聞いてみようかな?

 

「そういえば、彼は今どこに…?」

 

「……それを聞いてしまいますか」

 

「何か問題…?」

 

ここまで話して、実は作り話だったなんてオチは勘弁してよ?

 

まぁ、今回に関しては本当の話だと思うけど。だって、彼の話をする時のDは柔らかい表情をしていた。愛しい人の話をするように…懐かしい思い出を語るように。

 

Dは、演技であんな表情はできないと思う。だって、演技だったらどう頑張っても作りものの表情にしかならないと思うし。

 

ただ、そうなると嫌な想像が頭をよぎる。もしかして彼はもう…いや、でもDとタイマン張れるぐらい強いって話だし、そんな彼があっさりと…

 

「…まぁ、あなたには見せても大丈夫でしょう…ついてきてください」

 

「…?わかった」

 

Dが立ち上がり、私に着いてくるように手招きする。

 

彼の居る場所に連れて行ってくれるって考えて良いのかな?とりあえずついていこう。

 

そうして、家の中を少し歩いていき、ある部屋の前でDが歩みを止めた。

 

これは、部屋の中まではわからないけど、扉自体はどこにでもあるような部屋の扉だね…パッと見た感じだと、ただの部屋にしか見えないなぁ…もしかして、ここに例の彼が居るのかな?

 

「この部屋です。彼が居るのは」

 

「…ただの部屋にしか見えないけど」

 

「えぇ、そのように細工してますから。一応聞いておきますが、この部屋に入る覚悟はありますか?」

 

Dが真剣な様子でそう問いかける。

 

…Dがこんな風に聞くってことは、私の嫌な想像通りなのかもね…でも、ここまで来たんだから今さら後には引けない。

 

「…うん、大丈夫」

 

「では、開けますね…」

 

そう言って、Dは扉を開いた。

 

扉を開いた先に広がっていたのは、暗闇。周りには何もなく、ただ暗闇が広がっていた。そして、その暗闇の奥には仄かな光を放つ何かが見えた。

 

その光に惹かれて奥に進むと、そこには大きな結晶があった。

 

「これは…?」

 

「彼が眠っている結晶です…彼は今、消耗した魂とエネルギーを回復している最中なんですよ」

 

「消耗?回復…?」

 

言われてみれば、確かに誰かが結晶の中に居る。男の人だ…まぁ、それはわかりきってたことだけど。…結晶の中に居るせいか、詳しい見た目はわからないけど、黒髪のイケメンっぽい?

 

それにしても、魂とエネルギーを回復してるって…一体何があったんだろ?

 

「何があったのか?という顔をしていますね…あれは、ちょうど私と彼が世間一般で言う恋人になって、しばらく経った時でした…5つのとある世界で同時に危機が訪れてしまったんです」

 

「5つの世界で同時に…?」

 

何それ!?絶対あり得ないでしょ!

 

「普通ならあり得ません…私の所に彼を仕向けた神達の仕業です。本当にあいつら、舐めた真似をしてくれたものですよ」

 

「……」

 

怖っ!いつもの平坦な口調なのに、言葉の端々にとんでもない怒りを感じるんだけど!

 

「…そ、それで彼は一体どうしたの?」

 

「5つの世界を同時に救う為に、自分の分身体を出しました。ただ、彼の分身体は全て本体と同等の力を持っていて、エネルギーの消費量が馬鹿になりません。しかし、彼は世界を救う為にそこまでする人なんですよね…まぁ、彼らしいと言えば彼らしいですが」

 

「なるほど…それでどうなったの?」

 

「そこから先は私にも詳しいことはわかりません。ただ、5つの世界は全て救われたようです。それに、しぶとく生き残った5つの世界に居た神は私の手で葬ったので完璧に救われたと言えるでしょう」

 

「じゃあ、それで…?」

 

「いえ、それだけではないでしょう。聞くところによると、ちょうど同じタイミングで龍種も行動を起こしていたようです…おそらく、彼を始末する為に…あの害虫共め…!!」

 

Dがキレてるよ…もう怒りを隠す気ないんですけど!と、とにかく話を進めなくては!私の身の安全の為にも!

 

「…結論を」

 

「おっと、すみません。ついつい怒りが…これは、私の推測ですが、私に彼を仕向けた神達と龍種が手を結び、彼を始末する為にまず、複数の世界で問題を起こして彼を消耗させる…そして、消耗した彼を龍種の領域に引きずり込み、彼を更に消耗させる…もしくは倒そうとしたのだと思います」

 

なるほど…確かに推測としては正しいかも…ただ、龍種に彼を消耗させるという意図があったとしたら、まだ敵が居たってことになるんじゃ…

 

「あなたの考えている通りですよ。私もまだ敵が居たと考えています…そして、彼はその敵すらも打ち倒して私の所に帰ってきてくれたのでしょう。帰ってきたばかりの彼は本当にボロボロでしたし、魂にも損傷を受けてましたから」

 

だから、彼は今眠りについてるってわけね…にしても、すごいなぁ…5つの世界を救い、その世界に居た神達を退け、龍種の領域に引きずりこまれ、消耗している中でも龍種すら退けた。さらにはそのすべてを仕組んだであろう黒幕も倒した。

 

…うん。化け物すぎない?さすがはDとタイマン張っただけはあるわ。

 

「…強い人だね」

 

「えぇ、とても強い人ですよ彼は。単純な強さでも、精神的な強さでも」

 

「そうだね……いつ目覚めそう?」

 

「さぁ?ただ、私はもうすぐではないかと思っています。まぁ、何の確証もありませんが」

 

「そう…早く目覚めると良いね」

 

「えぇ、心からそう願っています……では、そろそろ戻りましょうか」

 

「うん」

 

そうして私達は部屋を後にする。

 

ついに彼の姿を見ることは出来たけど、これはちょっと予想外だったかも…まぁ、死んでしまったわけじゃなかったから良かったけどね。

 

それにしても、Dが彼の思い出を振り返りながら、彼が目覚める時を待っていると考えると、ちょっとDの見方も変わってくる。あの邪神にも、可愛いところがあるもんだ。

 

まぁ、Dのやらかしたことは許さないけどな!

 

そんなふうに、今回の出来事により、私のDの見方がほんの少し変わったのだった。

 




今回の話で出た龍種は本物の龍です。Dの強さがわからないのでこういう感じにしましたが、どうでしょうか?強すぎですかね…それとも弱いでしょうか…Dの具体的な強さがわかると良いんですが…まぁ、とにかく彼は結構な化け物という認識でお願いします。

それでは今回はここまで!ここまでの拝読ありがとうございます!
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