有名なSSの噛ませゲス提督に転生してしまった俺~寡黙な提督は今日も内心をひた隠す~   作:霧夢龍人

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提督だから

く、暗い・・・。

 

どこだここは?

 

 

咄嗟に立ち上がろうとするが、金縛りのように体がいうことを聞いてくれない。

 

 

お、落ち着け・・・落ち着くんだ俺。

 

まずは何故俺がこんな状況に陥っているのか、記憶を整理する必要がある。

 

 

相も変わらず体は動かないが、何もしないよりはましだろう。

 

 

 

えーっと・・・俺は確か職場から家へ帰路につく途中だった筈・・・だよな?

 

 

そしたらいきなり・・・あれ?

 

 

いきなり・・・どうなったんだ?俺は一体どうなった?

 

何があった?

 

 

わからない。

 

 

・・・駄目だ、発狂しそう。

 

 

人間は視界が確保できない状況にいれば、数分もかからず発狂してしまうと聞く。

 

 

では、いきなりこんな身動きもとれず、真っ暗な状態になってしまったら?

 

 

答えは簡単、即・発・狂☆

 

 

しかも、何故こうなったのか、という記憶が曖昧なのだ。

 

 

何故俺はこんなところにいるのか、何故身動きがとれないのか、何故・・・何故・・・という疑問もつきない。

 

 

やばいな・・・精神的にヤバイ。

 

 

 

あぁ・・・せめてこんなことになるなら「ブラック鎮守府から艦娘達を救った結果」通称を全部読んでおくべきだった・・・。

 

 

「ブラック鎮守府から艦娘達を救った結果」、通称ブラチン。・・・あれ面白かったんだよなぁ・・・タイトルセンスの無さは置いておくとしても、ストーリーの構成、キャラの濃さ、ほのぼのとシリアスの使い分け・・・なにより艦娘達が全員可愛かった。

 

 

特に天龍、龍田は俺の性癖に刺さりました、ありがとうございます。

 

 

まぁ、有名なSSではあったし、一応全部読んで、二週目の後半に刺しかかっていたところまでは熱中していたが話が出来る同僚がいなくて悲しかったのを覚えている。

 

 

艦娘も良く知らないままに読んでたから嵌まったのもあるんだろうなぁ。

 

 

・・・だが、まぁ、後悔しても遅いか・・・。

 

 

「起きてくださーい」

 

 

!?お、おい!!

 

 

い、いま人の声が!?

 

 

「ありゃ?完全に寝ちゃってますねー」

 

 

 

ね、寝る!?

 

 

もしかして、俺今寝てんの!?

 

 

は、はずかしっ!!

 

 

 

 

ただ寝てるだけなのに、俺こんなに騒ぎたててたの!?

 

 

はずかしっ!!!

 

 

なにが即・発・狂☆だよ!

 

 

・・・こ、この記憶は俺のブラックヒストリー八十七ページに密かに保管しておくとしよう・・・うむ・・・。

 

 

・・・そろそろ起きるとするか・・・と言ってもなぁ。

 

 

 

俺ってば今寝てるはずなのに、何故か意識があるし、起きようとしても起きれないし、まじでどうなってんだ?

 

 

うーむ、なにか解決策を・・「そろそろ起きて下さらないとー、鎮守府に到着してしまいますよー?」

 

 

 

「鎮守府だって!?」

 

 

アカン、これは起きん方がアカンで。

 

 

おっと某艦娘のような関西弁になってしまった。

 

 

 

だが、これも仕方がないだろう。

 

 

だって鎮守府だぞ?鎮守府だぞ!?

 

 

ブラチンで夢にまで見ていた鎮守府だぞ?

 

 

冷静沈着なクール系イケメンとも呼ばれた俺がここまで興奮してしまうとは・・・恐ろしや艦娘達。

 

 

「どうかしましたー?」

 

 

 

「あ、いえ大丈b・・・何でもない、気にするな」

 

 

 

 

んん?なんかおかしいぞ?

 

 

「ところで、鎮守府まであとどれくらいかかりまs・・・かかるのかね?」

 

 

・・・や、やはり。

 

 

敬語で話そうと思ったら何故か威圧感たっぷりの言葉になるんだが?

 

 

おかしくないか?

 

 

思った言葉をそのまま言おうとしているのに、口から出ているのは別の言葉・・・なんか違和感があって気持ち悪いな・・・。

 

 

 

「うーん、あと五分と言ったところですかねー。先程も言った通り、鎮守府まであともうすぐですよー」

 

 

ア、ハイ

 

ちゃんと聞いてなかった俺が悪いね。

 

 

外の景色を見れば、綺麗な砂浜と青い海、それに付随するように綺麗に並ぶ自然と調和したような建物。

 

 

 

 

「・・・綺麗だ」

 

 

思わず、ぽつりと溢してしまった。

 

 

前世でも、こんなに綺麗な景色は見たことがない。

 

職場でささくれたった心が癒されてゆく。

 

 

 

 

・・・前世?

 

 

俺は一体何を・・・何を言っているんだ?

 

 

待て、そう言えば俺の名前はなんだ?

 

 

前世?今世?どっちの名前だ?・・・

 

 

 

いやいや、前世ってなんだよ?今世?訳がわからん。

 

 

 

でも、あれだな。自分の名前を思い出せないのはヤバイ。

 

 

 

今から俺は佐世保鎮守府に配属される提督なんだぞ?しっかりとしなければ・・・ってあれ?

 

 

提督?

 

 

横須賀鎮守府?

 

 

なんだそれは?

 

 

 

・・・なんか、こう、俺の頭の中に二人分の記憶がある気持ち悪さがある。

 

 

俺が知らないことを知っていて、俺が知っていることを知らない。

 

 

 

本格的に俺の体はどうにかなってしまったんだろうか?

 

というか、そもそも私は何故この状況を受け入れている?

 

 

 

・・・私?俺の一人称は私なんかじゃない。

 

 

だ、駄目だ。これ以上は考えてはいけない気がする。

 

 

少なくとも今じゃない・・・そんな気が。

 

 

 

まぁいい・・・そのことは、今度おいおい考えるとしよう。

 

 

「着きましたよー」

 

 

ふむ、どうやら到着したようだ。

 

 

「あぁ、ありがとう助かりm・・・助かった」

 

 

 

そう一言だけ言って、黒塗りの車を降りる。

 

 

やっぱり違和感があるなぁ。

 

慣れるといいんだが・・・。

 

 

 

降りてすぐに広がる佐世保鎮守府。

 

 

なんというか・・・ズタボロだな。

 

 

俺のイメージしていた鎮守府とは違って、煤けているし、所々に皹も入っているし、なんか通気性がよさそうな大穴が空いているのが見てとれるし・・・。

 

 

はっきり言って廃墟みたいになってしまっている。

 

 

・・・でもなんか見たことがあるんだよなぁ。

 

 

 

「あ、あの!お待ちしておりました!・・・」

 

 

 

「む?あ、あぁ」

 

 

ビックリした。

 

 

黒髪ロングにメガネを掛けた、如何にも真面目そうな委員長タイプの子がいた。

 

 

・・・思い出したぞ!

 

この女の子、確か大淀と言ったか・・・。

 

 

ブラチンで何度も出てきているが、やはり目にすると違うな。

 

 

「け、軽巡洋艦の大淀と申します!・・・」

 

 

少し・・・いや、かなりの怯えが混じった表情で、大淀はこちらを伺う。

 

 

見れば包帯を巻かれた腕があまりに痛々しい。

 

 

目は恐怖を孕んでおり、俺が近づこうものなら悲鳴を上げて逃げ出しそうだ。

 

 

まぁ、そんなことはしないんだろうけどさ?

 

 

 

でも、実際やはり目にすると来るものがある。

 

 

 

「そう・・・か・・・」

 

 

「な、なにか・・・お気に召さないことでもあったでしょうか?・・・」

 

 

「いや、いい・・・気にするな」

 

 

やはり、そうか。

 

 

ここはこういう場所なのか。

 

 

 

できれば物語・・・フィクションの中だけにしてほしかった。

 

 

 

ここはやはり──ブラック鎮守府だ。

 

 

 

 

俺がここに配属された理由はただひとつ、この鎮守府を立て直せ・・・つまりそういうことだろう。

 

 

あぁ、やろうとも。

 

 

俺の全身全霊を懸けてこの鎮守府を立て直してみせる。

 

 

 

ブラチンでは艦娘が沈む・・・という描写がいくつかあった。

 

 

その時は、あまりの辛さに寝込むことしか出来なかった。

 

 

 

だが、今は違う。

 

 

俺は──私は提督だ。

 

 

 

ならば、出来ることがある。

 

 

それを私は成し遂げるとしよう。

 

 

なぜなら私は提督だから。

 

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