有名なSSの噛ませゲス提督に転生してしまった俺~寡黙な提督は今日も内心をひた隠す~   作:霧夢龍人

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提督奮起

「これから配属される、新しい提督だ。至らない点はあると思うが、宜しく頼む」

 

 

翻訳すると、これから配属される、新しい提督です。色々と至らない点が多いと思うけど、宜しく頼むね!である。

 

色々と省きすぎじゃないか?

 

 

新しい提督って言うのもおかしいよなぁ・・・でも、未だに名前思い出せないんだよなぁ。

 

 

「は、はい!宜しくお願い致します!そ、それでは、案内致しますので、こちらへ・・・ど、どうぞ」

 

 

ほらみろ、怯えちゃったじゃないか!

 

すまーいる、スマイルだぞ俺!

 

 

・・・わ、笑えない・・・だと!?

 

 

なに?表情筋死んでるの俺?

 

 

というか、さっきからずっと気になっていることがある・・・。

 

 

いや、表情筋も気になるのだが・・・

 

 

なんか、声が若い。

 

 

それも十歳くらい。

 

 

目茶苦茶女の子みたいな声してるぞ、俺。

 

 

 

身長も心なしか低いし、髪も長い気がする。

 

 

 

 

 

む、息子は!?

 

・・・あ、ある!!

 

 

「ふぅ・・・」

 

 

 

「あ、あの、なにか・・・」

 

 

 

「いや、なんでもない。気にするな」

 

 

 

・・・言えない。

 

息子があることに安堵してた・・・なんて言えない。

 

 

 

「わ、わかりました。ではい、行きましょう」

 

 

「あぁ、宜しく頼む」

 

 

 

大淀に連れられ、鎮守府の中へと入る。

 

 

一応、外からの景観からして、覚悟はしていたのだが───皹だらけの壁、隅に置かれた瓦礫、錆びた鉄柱、踏み抜かれた床・・・。

 

 

 

「・・・ふむ」

 

 

酷い。これは酷い。

 

あまりにも酷すぎる。

 

 

何故前任の提督はこの惨状をそのままにしていたんだ?

 

 

創作物と比べるのは良くないが、ブラチンに出てきた鎮守府といい勝負だ・・・。

 

 

いや、でもやっぱり・・・そう・・・だよな?

 

 

ならそっくりなのも無理はないか。

 

 

まぁ、兎も角、明らかに艦娘が過ごせるような環境じゃない。

 

途中、何人かとすれ違ったのだが、怯えと畏怖が混じった目で見られたし、睨まれた。

 

 

俺が考えているよりも事態は深刻になっているのかも、しれない。

 

それになにより・・・。

 

 

 

「すまない、私の部屋・・・執務室はどこだ?」

 

 

「あ、え、はい・・・。執務室・・・ですよね、すぐ・・・ご案内致します・・・」

 

 

 

あぁやはりか──執務室と言った瞬間に大淀の顔色が悪くなった。

 

 

まぁ、それも致し方ない。

 

 

彼女達は怒られるのが怖いんだろう。前任の提督は何をやっているんだろうか。

 

思いっきり殴った後に東京湾の海にコンクリートで固めて沈めたくなってきた。

 

 

 

顔色が悪いわけは容易に想像できる。

 

 

艦娘達をここまでさせた・・・そんな提督がいる部屋だ。

 

 

どんな惨状になっていても仕方がない・・・。

 

それにまだ私は良く知られていない。

 

 

 

執務室がどんな状態になっているかは分からないが、それがバレてしまえば怒られる──兵器の点検という名の暴力を受けると思っているのだろう。

・・・かくなる上は──

 

 

 

「執務室がどうなっていても私は気にしない。だが、なぁなぁで案内されないのは困る」

 

 

「ッ!?・・・はい・・・。申し訳ありません・・・」

 

 

 

緊張を解すために気にしないことを述べたが・・・やはりこの威圧感たっぷりの口調じゃ解すにも解せないな・・・。

 

 

 

「こ、こちらです・・・」

 

 

 

大淀に着いていき、執務室と書かれた部屋へと入る───おぉう、まじか。

 

 

中には散乱した書類、何かが焦げた後、真ん中から割れた執務机、割られた窓とetc・・・。

 

 

 

おいおい、まさか想像を軽く越えてくるとは思わなかったぞ・・・。

 

 

 

「掃除と・・・修理をする必要があるな・・・」

 

 

「・・・はい・・・」

 

 

 

何かが焦げた後・・・っていうか、明らかにこれ艤装でぶっ放してるだろ。

 

 

 

「少し・・・執務室の扉前で待機してもらってもいいか?」

 

 

 

そんな執務室の惨状に内心で頭を抱えつつも、やるべきことを済ますために、大淀に命令する。

 

 

 

「は、はい!わかりました!・・・」

 

 

 

俺からそう言われて、明らかに動揺と恐怖の感情を隠さず、足早に執務室を出る大淀。

 

 

 

「すまないな・・・こうしないと調べられないものでな・・・」

 

 

 

ボソッと扉前にいるであろう大淀には聞こえない程度の声で呟く。

 

 

なにしろ今からするのは、彼女達からすれば辛いものを見せるかもしれないからな・・・。

 

 

 

「・・・あった」

 

 

 

やはりか、思っていたよりも結構簡単に見つかったな。

 

 

ふむふむ、なになに?───おいおい・・・これは・・・。

 

 

 

見つかったのは、大量の書類・・・それも、全て非公式なお金関係の物だ。

 

 

艦娘の解体費、資源の配送費に、食費──に偽装している明らかに怪しい書類。

 

 

前任の奴、他所の艦娘の解体して、挙げ句金を貰ってやがったのか・・・明らかに黒だな。

 

資源の配送費に関しても、ここにはそんなに資源はない・・・筈なのに、どこからか資源を取り付けて、それを他所の鎮守府へ売って金も貰って・・・やっぱりこれも金か・・・。

 

 

最後の奴も、上二つとその他の方法で不当に稼いだ金で贅沢したのかはしらんが、明らかに高すぎる食費、服の請求書、なんなら酒まで完備してある。

 

 

いくらなんでも腐りすぎだ。

 

 

大淀を外に出しておいてよかった。

 

 

・・・こんな腐りきった提督が前任なら、艦娘達があんなに怯えているのもしょうがない。

 

 

あの提督のことだ。

 

 

大淀の傷に関しても、出撃させたはいいが中破してしまい、入渠するのも勿体なくてそのまま放置していたんだろう。

 

 

容易に想像できる。

 

 

そういえば、先程すれ違った子達にも、まだ治りきっていない傷が多かった。

 

 

入渠すれば治るのに、入れさせてもらえない。

 

 

人間の扱いもされず、だがしかし兵器とも見られない。

 

 

 

中途半端な存在として民間人達からは疎まれ、信頼出来るのは同じ艦娘と提督・・・それだけ。

 

 

───思い出した。

 

あぁ、思い出したさ。

 

 

いや、そもそも忘れていた私がおかしいのか。

 

 

 

・・・俺の──峯波場(みねはば)(よう)としての記憶と、

・・・私の──葛原(くずはら)和真(かずま)としての記憶。

 

 

 

私が・・・俺が転生した世界は、「ブラック鎮守府から艦娘達を救った結果」の世界だろう。

 

 

恐らく、前世の俺は──いや、まだ駄目だ。

“それ”を理解できる程、今の俺の心は強くない。

後回しにしておこう。

 

 

それで、だ。

 

 

俺が・・・私が転生?憑依?したこの体は、葛原 和真の体だろう。

 

 

あぁ、忘れもしない。

 

 

ブラチンの世界では、こいつ(わたし)のせいで、艦娘達が様々な苦渋を味わった。

 

 

泣いている艦娘達もいた。

 

怒っている艦娘達もいた。

 

だが、笑っている艦娘は誰もいなかった。

 

楽しそうにしている艦娘は誰もいなかった。

 

 

 

まぁ、そうだろう。

 

だって、俺はこの世界での悪役。

 

 

主人公の強さを・・・能力を見せつけるためだけに生まれた悪役。

 

艦娘達にトラウマを叩き込むために生まれた憎まれ役。

 

 

・・・なんだ、俺も前任と一緒か──と言えればよかった。

 

 

 

「逃げるなよ、俺」

 

 

 

あぁ、そうだ・・・。

 

 

悪役だからって言葉に逃げては駄目だ。

 

 

俺は今、この鎮守府にいる艦娘達の命を預かっている。

 

 

それに立て直すんだろう?この程度で決意が揺らいでどうする?

 

 

 

俺は悪役でもいい。

 

 

彼女達艦娘を幸せに・・・ハッピーエンド(最高の結末)へと導く。

 

 

そこに俺がいなくてもが関係ないだろうが。

 

 

今更、この程度で怖がるんじゃない。

 

 

 

 

「・・・すまない、もう入ってきてもいいぞ」

 

 

「は、はい!しっ、失礼・・・します・・・」

 

 

 

俺の言葉を聞いて、恐る恐るといったような顔で執務室へと入ってくる大淀。

 

 

さっきのゴミみたいな書類は、大本営に証拠として提出するために、既にバッグの中にいれている。

 

 

俺の心意気は充分だ。

 

 

後は艦娘達次第。

 

 

 

 

「大淀」

 

 

「は、はいっ!」

 

 

 

俺、というより提督が・・・男という存在が怖いんだろうな。

 

 

 

「変えたいか?」

 

 

 

俺が告げるのは諸刃の剣。

 

彼女達にやる気があれば、それを励ます刃となるが、反対にやる気がなければ、その心の溝を更に深くしてしまう。

 

 

 

「・・・へ?は、はい!」

 

 

 

言葉の意図が分からない・・・と、大淀は思っていることだろう。

 

 

 

「焦らなくてもいい・・・君達は・・・ここの鎮守府を変えたいか?」

 

 

じっ、と大淀の浮かべる怯えた目を見つめながら、そう口にする。

 

 

一番大事なのは、俺の意思よりも彼女達の意思だ。

 

 

 

「・・・」

 

 

少し迷ったかのように目を伏せる大淀。

握り締めている拳はぎゅっと赤くなり、少し震えている。

 

 

「正直に言って貰っても構わない・・・そうだな、少なくとも私は変えたいと思っている」

 

 

こんな現状では、深海棲艦が攻めてくればどうなってしまうかは目に見えている。

 

 

私は誰も沈ませたくはない。

 

 

私は過程よりも結末を大事にする人間だが、だからといって過程が悪ければどんな結末であっても納得はしない。

 

 

私はそういう人間だ。

 

 

「変えていくためにはキッカケが必要だ。どんな些細なことでもいい。それで変えたいと思えるなら構わない」

 

 

ほんの些細なことでもいいんだ。

 

 

少しでも・・・少しでも変わりたいと思っているなら。

 

 

 

「・・・だから、“私”と一緒にこの鎮守府を変えてくれないか?」

 

 

きっと私の浮かべている表情は変だろうな。

 

 

表情筋が死んでいるのか、ろくに動かせないのに必死こいて笑顔を作ろうとしているんだ。

 

 

まぁ、今さらかもしれんが。

 

 

 

「・・・私で・・・私なんかで、良ければ・・・」

 

 

少し戸惑いが籠った声色で、大淀は告げる。

 

 

違う、そうではないんだ。

 

 

 

「今は・・・君の力が必要だ、大淀。だから、私なんか、ではない。胸を張っていいんだ」

 

 

大淀へ向かって歩き出す。

 

 

建て付けが悪いのか、一歩踏み出す度にギシギシと音が鳴る。

 

 

だが、今はそんなこと気にならない。

 

 

 

「これから宜しく頼む、大淀」

 

 

純粋な、その気持ちを込めて──俺は彼女へ握手を求めた。

 

 

 

「・・・ふふっ。えぇ、宜しくお願いしますね、司令官」

 

 

 

彼女は俺の握手に応じて、安心したような・・・快活な笑みを浮かべくれた。

 

 

・・・少し格好をつけすぎたかもしれない。

 

 

 

提督帽を深く被り、赤くなった頬が見えないようにした。

 

 

──やはり、私にはこのような配役は似合わないな・・・。

 




次は大淀視点であります!
注意です!私はかなりのにわかなので、間違っている箇所があれば是非教えて下さい!
あと、いつ更新するかもわからないので、そこは申し訳です・・・。
進みにかんしても遅くなると思うので、かなりスローペースになると思いますが、宜しくお願い致します!
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