バトルスピリッツ 王者の鉄華   作:バナナ 

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EXターン03「忌子の旅路」

 

 

 

日本ではないどこかの国。

 

かげろう揺らぐ、灼熱の砂漠にて。

 

 

「……あ、暑い」

 

 

少女、徳川フウは彷徨っていた。

 

アルカナとの決戦が終わってから早5年。己が犯して来た罪の贖罪のため、今尚、気ままな旅路を進んでいる彼女。その次の目的地をショートカットするため、砂漠を直進しようと考えていたのだが。

 

 

「見通しが甘かった。これが本物の砂漠。水は」

 

 

水筒の蓋を開けて水を飲もうとするが、その中からは一滴の水さえ出ない。

 

フウは悟る。完全に詰みだ、と。

 

 

「終わり、ね。あぁだんだん意識が遠く。いや待ちなさいよ、こんなところで終わってたまるものですか。こんな、ところ、で」

 

 

まだ照りつける太陽が眩しい昼間だと言うにもかかわらず、急にフウの目の前は、夜のような暗闇に変わる。

 

遂に限界を迎え、気を失って倒れてしまったのだ。

 

しかし、そんな彼女の前に、1匹のラクダ。もっと言えば、その上に跨っている1人の女性が立ち止まって。

 

 

 

******

 

 

「ッ……!!」

 

 

意識を取り戻したフウ。反射的にベッドの上から起き上がる。

 

 

「どこ、ここ。助かったのでしょうか?」

 

 

気がつけばベッドの上。周囲は岩を削って造られたであろう壁。身につけていた衣服はそのままだが、首筋や額には冷却剤が張り付いていた。

 

 

「あら、目が覚めたのね」

「!」

 

 

誰かに助けられた。そう彼女が認識した束の間、部屋の扉が開き、誰かが入室して来る。

 

ターバンを巻いた若めの女性だ。手にはオボンを持っており、その上には水の詰まったコップが1つ置かれている。

 

 

「貴女が私を助けてくれたんですか。ありがとうございます、九死に一生を得ました」

「丁寧な子だね。喉乾いたでしょう、ほら、お水」

 

 

そう言われてから、フウの手は速かった。オボンの上にあったコップを掴み、勢いよくそれを飲み干し、喉を潤した。

 

 

「くぅ……生き返る」

「よかった。見たところ日本人だったから、お口に合うかわからなかったの。ほら、日本のお水って美味しいじゃない?」

「いや、こんな状況ならどんなお水だって美味しく感じますよ」

「あら?…じゃあ本当はそんなに美味しくなかったかしら?」

「あ。いえ、そう言うわけじゃ」

「ハハハ。冗談。真面目だね」

 

 

女性はフウを少しだけ揶揄うと、胸を張り、自分の名を名乗る。

 

 

「私はアジーナ。この砂漠都市、ゴビアシスで運び屋の仕事をしている者さ」

「運び屋。あぁなるほど。運ぶ道中で私を見つけた、と言うことですか」

「そう言うこと」

「私は、夏恋フウと申します」

「フウ。面白い名前だね」

「はい、よく言われます」

 

 

フウは、本名ではなく、いつもの偽名を使った。

 

だがそれでいい。この世界で徳川と名乗るのは、あまりにも危険すぎる。

 

 

「ゴビアシス。確か、東西南北に分かれている、最大の砂漠都市、ですよね」

「そうだよ。ここはその西エリア。フウは観光目的で砂漠を歩いてた感じ?」

「まぁそんなところですわね」

「じゃあさ。今から西エリア回ってみる?」

「え、いいのですか。助けてもらった上にそこまで」

「いいのいいの!!…どうせ今日はもう暇だから」

 

 

アジーナの提案に、フウは少しだけ考えたのちに結論を出す。

 

 

「……では、お言葉に甘えて、今日1日、よろしくお願いします。アジーナさん」

「ハハハ、さん付けはよしてくれよ。アジーナでいいから、こちらこそよろしくね」

 

 

優しく親切。それでいて爽やかな女性アジーナ。元々暇を持て余していたフウは、しばらくの間、彼女の好意に甘えることにした。

 

 

 

******

 

 

 

アジーナと共にラクダへ跨って、砂漠の中にある大都会、ゴビアシス西エリアを闊歩するフウ。

 

1番最初に観に行ったものは。

 

 

「おぉ、綺麗ですね」

 

 

多くの若者達で溢れかえる中心地。そこには見上げた首が痛くなる程に高い。超大型の噴水があった。

 

その光景は、もはや滝である。

 

 

「ゴビアシス西エリア名物、超巨大噴水さ。涼しいだろう?」

「えぇ、とても。ここのお水が美味しいのも納得です」

 

 

さっきの砂漠と比べると、まるで天国と地獄のような気温差。

 

フウがそう思った直後、アジーナはラクダを操って次の場所へとフウを連れて行く。

 

 

******

 

 

「アジーナ、ここは」

「服屋だよ。フウは砂漠をなめすぎ。もっとちゃんとした服装にしないと、またバテて倒れちゃうぞ」

「はは、確かに」

 

 

次に訪れたのは、洋服店。砂漠の中にあるため、当然それ専用の服も揃えてある。

 

 

「それなら、ちゃちゃっと買って来ますわ」

 

 

フウが中へ入店しようとした瞬間。アジーナは彼女の肩に手を当て、制止させる。

 

 

「お金は私が出すから」

「いや、流石にそこまでは」

「ふふ。いいのいいの!!…その代わりちょっとばかし付き合ってもらうからさ〜」

「……」

 

 

やや興奮気味のアジーナの表情を見て、フウは妙な既視感と嫌悪感の2つを感じ取って………

 

 

ー………

 

 

「いいよいいよ、フウ。初めて顔見た時から思ってたけど、やっぱアンタってば逸材じゃん」

「……」

 

 

中に入るや否や、アジーナはフウを様々な服に着せ替えて遊び始める。

 

5着目からだろうか。フウは自分が今日着た服の数を数えるのをやめた。

 

 

「はい。じゃあ次これ着てね」

「……えぇ」

「どうしたのもっと笑って。せっかくの美人が台無しだよ」

 

 

アレだけよくしてもらってNOとは言えない。フウは渋々新しい服を手に取り、試着室のカーテンを閉める。

 

その時、感じていた既視感と嫌悪感の正体に気がついて。

 

 

「そうかこの人。鉄華ライに似てるのか。どうりで一言声を聞くたびに虫唾が走ると思いましたわ」

 

 

ようやく素を出せたフウ。あの戦い以降、何の悪事も働いていないが、やはり彼女の本性は捻くれたままだ。

 

 

「懐かしいわね。アイツやその周辺の連中に媚びを売りまくってた時代」

 

 

フウは偶に考えることがある。

 

嘘をついて周囲に味方だと思わせていた、あの頃。

 

もしも嘘をついたままで、本当に味方になっていたら、一体どうなっていたのだろうか、と。

 

 

「君を見てると、妹を思い出すよ」

「わ!?…ちょっと覗かないでください」

「別にいいじゃん女同士なんだし」

 

 

突然アジーナがカーテンを開けてフウを覗き込んで来た。

 

言葉から、さっきまでのフウの独り言は聞いていなかった様子。

 

 

「で、妹さんに似てる?…私が?」

「うん。ちょうど年齢も君くらいじゃないかな。16とか?」

「私今年で19ですけど」

「えぇ若。私と2つしか変わらないんだ」

 

 

お喋りなアジーナは「でねでね」と、間髪入れずに話を進める。

 

 

「その妹とは、ずっと離れ離れだったんだけど。実は今日の夜、久しぶりに会えるんだ」

「へぇ。何年程お会いしていなかったんですか?」

「ざっと10年かな。だからもう嬉しくてさ。君に奮発しちゃったってわけ」

 

 

そんな理由で私を甘やかしてたのかよ。しょうもな。

 

と、内心で思っているが、フウは一旦猫を被る。

 

 

「ふふ。そんなにお金を使っちゃってもよろしいのですか?…妹さんに直接使ってあげた方が」

「いいのいいの。どうせ妹のとこに行ったら、こっちの世界のお金は使えないはずだから」

「……?」

 

 

アジーナの言葉に大きな違和感を覚えたフウは、すかさず「それってどう言うことですか」と尋ねるために、口を開けたが……

 

 

「アジーナじゃないか」

「市長。こんちゃ」

 

 

現れたのは、髭の長い年配の男性。だが身長は高く、屈強で逞しい。

 

アジーナは着替え中のフウを覗かせまいと、試着室のカーテンを閉めて、彼と話し始める。

 

 

「運び屋としての最後の仕事はどうだった?」

 

 

市長がアジーナに訊いた。フウも試着室の中から注意深くその会話を聞いている。

 

 

「もう思い残すことはないです。これで遂に妹と両親に会えるんですね」

「あぁ。彼らだけではない。もうすぐみんなに会える。ただ」

「わかってます。もうこの街には帰って来れない」

「うむ。故郷を離れるのは辛かろう」

「はい。でも、きっと家族やみんながいるところが、新しい故郷になるって信じてます」

「そうか」

 

 

市長と呼ばれる男は、直後に「では夜。待っているぞ」と告げると、この場から去って行く。

 

それをアジーナは「よろしくお願いします」と、声を張りながら、大きく手を振り、見送った。

 

 

「今の殿方は?」

 

 

元の衣服に着替えたフウが、カーテンを開けながら、アジーナに訊いた。

 

 

「あの人はゴビアシス市長のカークさん。昔からお世話になってるんだ」

「へぇ。ところでさっき話してた、家族に会えるというのは?」

 

 

純粋な彼女を相手に遠回しな質問はいらないと思ったのか、フウは直接本題に入った。

 

 

「あぁ聞いちゃってたの。本当は他言無用なんだけど、まあフウならいいか。実はこの街には掟があって

ね。40歳超えた者と優秀な者は、高次元世界へ移住することになってるの」

「高次元世界?」

 

 

初めて耳にした単語に、フウは頭の上に疑問符を浮かべる。

 

 

「この世界にはない物がたくさんある異世界よ。美味しい食べ物だったり、変わった歌や踊りがあって、後、大地が宙を浮いてるって市長が話してたかな」

「……」

「ウチは40を超えた両親と、何かと優秀だった妹がそっちの世界に行ってるから、今こっちの世界にいるのは私だけ。でもやっと今日会えるの。楽しみだなぁ」

「そう、ですか」

 

 

喜びながら話してくれるアジーナに対し、フウは歯切れの悪い返事をする。

 

その表情は、人によっては、何かを察してしまったようにも見えて。

 

 

******

 

 

「カーク市長!」

「うむ。来たかアジーナ」

 

 

昼間の灼熱地獄が息を潜める夜。月明かりに照らされる砂漠の道。その道沿いにある、人影ひとつない、大きな岩山の前に、ゴビアシスの若い女性、アジーナは足を運んでいた。

 

理由は聞くまでもなく、カーク市長に高次元世界へと連れて行ってもらうためだ。

 

 

「高次元世界はどこ?」

 

 

アジーナがカーク市長に訊いた。久しぶりに家族に会えるためか、早く行きたくてたまらないらしい。

 

 

「落ち着きなさい。全く、女の子だと言うのに、オマエは昔からお淑やかさが足りない」

「へへ」

「だが、その歳で高次元世界へ行ける程に優秀にな人材になった。市長として、誇らしく思うよ」

「いや〜それほどでも」

 

 

カーク市長に褒められたアジーナは照れ隠しに手を頭の後ろに当てる。

 

 

「再度問おうアジーナよ。本当にこの街への未練はないな」

 

 

今度はカーク市長がアジーナに訊いた。大事なことだ。

 

 

「はい。もちろん、私は今日、家族に会いに行きます」

 

 

アジーナの意思は固い。心には、家族への再会を強く望んでいる。

 

それを知ったカーク市長は「そうか」と納得の旨を含んだリアクションをすると……

 

 

「では、高次元世界へ行くため、高次元世界が別名、なんと呼ばれているか教えてあげよう」

「?」

「天国だよ」

「!!」

 

 

物静かで優しく、頼り甲斐のある市長から向けられた残酷な言葉、冷酷な表情に、アジーナは思考が停止。鳥肌が止まらなくなる。

 

 

「さぁ新しいお供物をご用意致しましたよ、ギドラ様!!」

 

 

悪しき笑みを浮かべたカークが叫ぶと、大岩を砕き、中より雷そのもののような三つの首を持つ龍が出現する。

 

 

「コレってキングギドラ!?…本物!?」

「あぁ本物だとも。バトルスピリッツにギドラは、ただの玩具。この目の前に居らせられるキングギドラ様こそ、ギドラの原初にして頂点」

 

 

ギドラのカード自体は、特に珍しいわけではない。一般的なカードバトラーも使用する程には有名なスピリットだ。

 

だが、今アジーナの目の前に君臨しているギドラは、正真正銘の本物。カークの言葉から察するに、この本物がモチーフとなって、今のギドラがあるのだと推測できる。

 

 

「何故貴方はこんなバケモノの飼育を」

「飼育ではない。祀っているのだよ。ギドラ様は宇宙から現れた神様ですからね。だから言ったではないか、新しいお供物をご用意致しました、と」

「ッ……まさか、私の家族や、他のみんなも!?」

「あぁ。全て、このギドラ様の栄養となって行ったよ」

「ッ……!!」

 

 

真実を全て知ったアジーナは、打ちひしがれ、その場に座り込んでしまう。

 

無理もない。今まで信じて来た者に騙された挙句、会えると思っていた家族はとうの昔に死亡してしまっていたのだから。

 

 

「私を、私達を騙していたのですか?」

「騙してなどいない。オマエは直ぐに家族の元へ行けるよ。高次元世界と言う名の、天国にな」

 

 

カークがそこまで言い切ると、落雷が鳴り響くような咆哮を張り上げるギドラ。もう我慢の限界か、遂にその三つの首の内一つの首が、アジーナを食しようと襲い掛かる。

 

 

「ごめん。ごめんなさい、私が馬鹿だった。父さん、母さん、ネロ」

 

 

死を覚悟した直前。アジーナが口にしたのは、両親と妹の名だった。

 

だが、もはや謝罪しても何も解決しない。ギドラの口内が、アジーナを捉え、飲み込む。

 

はずだった。1人の黒く邪悪な巨人が、アジーナを寸前で救い出すまでは。

 

 

「へ?」

 

 

呆気にとらわれたアジーナ。次から次へと起こる奇想天外な出来事に、脳の処理が追いつかなかった。

 

そんな中、目に映ったのは、Bパッドを展開し、そこへ1枚のカードを叩きつけていたフウの姿。

 

 

「フウ!?」

「怪しいと思って付けてみれば、案の定でしたわ。お怪我はありませんこと?」

 

 

フウは邪悪な巨人、ベリアルのカードをBパッドから離して消滅。ベリアルはその消える間際に、救出したアジーナを大地へゆっくりと降ろす。

 

 

「見慣れませんね。旅のお方ですか?」

 

 

カークがフウに訊いた。ギドラの大事な食事の時間を邪魔立てされたからか、その声色から不機嫌になっているのが伺える。

 

 

「えぇ旅のお方ですわ。貴方が裏で行っていた悪事、しかと耳に入れさせていただきましたわ。今日限りでそれも終わりですね」

 

 

フウがそう告げると、カークはそれを軽く鼻であしらう。

 

 

「フ。私は何十年もかけて街の者達を懐柔させて来た。アジーナや、その家族のようにな。たかが小娘1人の証言で何が変わると言うのだね」

 

 

カークの言う事はもっともであり、確かにフウの証言1つで、彼の市民からの信頼を地に堕とすのは難しいものがある。

 

だが、それに対して、フウは「ニッヒヒ」と、笑い返して。

 

 

「仰る通りですわね。だけど、私ではなく、貴方の声ならどうでしょうか?」

「なに!?」

 

 

直後、フウはBパッドの録音機能を再生。

 

その音声は、アークが本性を剥き出しにし、ギドラが大岩を突き破り登場した所からだ。彼の悪事は、全てフウのBパッドに詰められていた。

 

 

「ほほう。なかなかに賢いお嬢さんのようだ」

「賢くないですわ。ただ、私も嘘つきだから、同じ嘘つきがわかりやすいってだけですよ」

「だが、貴方もギドラ様の供物にして仕舞えば、証拠など、どうとでもなる」

 

 

カークがそう告げると、フウは「やはりそう来ますか」と一言。

 

 

「なら、バトルスピリッツで決着をつけましょう。格の違いを教えて差し上げますわ。かかってらっしゃい」

「フン。いいだろう。小娘め、粋がったことを後悔するがいい」

 

 

すると、ギドラは再び雷鳴のような咆哮を張り上げると、数枚束のカードとなり、カークへと握らせる。

 

 

「こ、これは。まさかギドラ様が私と共に戦いたいと!?…それとも、よほどあの小娘を食らいたいのか?……いや、もはやどちらでもいいことか。身に余る光栄にございますギドラ様。必ずや勝利して見せましょう」

「ギドラのオリジナル。相手にとって不足はなさそうね」

 

 

互いに展開したBパッドにデッキを装填。バトルの準備を完了させる。

 

が、その開始直前。アジーナが叫ぶ。

 

 

「やめてフウ!!」

「!」

「なにしてるの。早く逃げなさい。供物にされるのは私だけでいいから。貴女まで、妹に似た貴女まで失いたくない」

 

 

無茶な真似は止めようと、フウを説得しようとするアジーナ。

 

しかし、フウはまるで逃げようとしない。

 

 

「妹に似た貴女まで失いたくない?…都合のいいこと言ってんじゃないわよ」

「!」

「貴女、早く死にたいだけでしょ。早く死んで、死んだ家族のところにさっさと行きたいだけでしょ?」

「……」

 

 

核心をついて来たフウ。心優しいアジーナに怒りのスイッチを入れる。

 

 

「そうよ!!…それの何がいけないの!?」

「開き直るんですか」

「早く楽になりたいの。もう誰かに騙されるのは懲り懲り。死にたい。死んで家族に会いたいよ」

 

 

フウの言動に対して怒りを露わにすると、直後に涙を流してしまう。余程辛かったのだろう。

 

 

「人生がそんな楽なわけないでしょ」

「!!」

「大事な人が死んでも。残った者達は、その想いや意志を受け継いで、前に進まないといけない。人の足は、そのためについているのよ」

「……」

「貴女も人なら、立って抗ってみなさい」

 

 

フウは、「らしくないこと言ったわね」と、胸中で思いながら、再度Bパッドをカークの方へと向ける。

 

 

「お話はもう十分かね?」

 

 

カークがフウに尋ねた。

 

 

「えぇ。もうお腹いっぱいですわ。私、こう言う情に訴えて来るような展開って苦手ですの」

「フフ。私は、情に訴えても無駄ですよ?」

「存じております。だから反論できないよう、徹底的に叩き潰して差し上げますわ」

 

 

……ゲートオープン、界放!!

 

 

アジーナが見守る中、夜のゴビアシス周辺の砂漠地帯にて、徳川フウとカークによるバトルスピリッツが幕を開ける。

 

先攻はフウだ。目の前の悪党を叩き潰すべく、ターンを進めて行く。

 

 

[ターン01]徳川フウ

 

 

「メインステップ。契約創界神ネクサス、カイザーベリアルを配置」

 

 

ー【ベリアル銀河帝国皇帝カイザーベリアル】LV1

 

 

フウの背後に登場したのは、赤いマントを羽織った、黒き邪悪な巨人、カイザーベリアル。

 

世にも珍しい契約カードの中でももっと特別な存在、契約創界神ネクサスだ。

 

 

「配置時の【真・神託】により、コア+2。バーストでターンエンドです」

手札:3

場:【ベリアル銀河帝国皇帝カイザーベリアル】LV1(2)

バースト:【有】

 

 

さらにバーストを構え、フウはターンエンドを宣言。カークのターンへと移る。

 

 

[ターン02]カーク

 

 

「メインステップ。私は、契約ドラット様を召喚」

 

 

ー【未来のペット ドラット】LV1(1)BP3000

 

 

カーク側のフィールドに現れたのは、3体の小さな黄金竜。その外観や皮膚、翼などから、フウは直感的にあることを察して。

 

 

「これは、ギドラの幼体?」

「良い眼をお持ちですね。その通り、このドラット様こそ、ギドラ様の幼き日の姿。ここから幾多もの進化を遂げ、究極の姿になられるのだ。バーストをセットし、アタックステップ。ドラット様でアタック。効果でカウント+2」

 

 

ギドラの幼体が、フウのライフバリアへ向かって飛翔を始める。

 

前のターン、ネクサスのみをフィールドに置いた彼女は、これをライフで受けるしかなくて。

 

 

「ライフで受ける」

 

 

〈ライフ5➡︎4〉徳川フウ

 

 

「ぐっ」

 

 

3体のドラットの口内から放出された小さな電撃が、フウのライフバリアを1つ破壊する。

 

 

「どうですか、ドラット様の一撃は」

「大したことないですわね。もうちょっとやるもんだと思ってましたわ」

 

 

そう言い返した瞬間、フウは自身のBパッド上にあるバーストカードへ指先を当てて。

 

 

「ライフ減少後のバースト発動、メフィラス外星人」

「!」

「効果により、トラッシュからコスト4のスピリット、ネロンガを召喚し、デッキから1枚ドロー」

 

 

ー【ネロンガ[禍威獣]】LV1(1)BP3000

 

 

バースト効果により、大地を隆起させながら出現したのは、一角に稲妻を迸らせる怪獣、ネロンガ。

 

 

「ネロンガの召喚時効果。対象カードを手札から1枚破棄することで、2枚のカードをドロー。そして、バースト効果を発揮した、メフィラス外星人を召喚」

 

 

ー【メフィラス[外星人]】LV1(1)BP7000

 

 

突如空間から姿を見せたのは、黒く無機質な宇宙人、メフィラス外星人。

 

 

「私のターンに2体のスピリットを並べるばかりか、計3枚もカードをドローするとは」

「これだけで驚いていては、先は耐えられませんよ」

「驚いてなどいない。ギドラ様への供物が増えて喜んでいるのだ。ターンエンド」

手札:3

場:【未来のペット ドラット】LV1

バースト:【有】

カウント:【2】

 

 

余程ギドラの力に自身があるのか、カークはそのままターンエンド。

 

バトルは2周目。フウのターンだ。

 

 

[ターン03]徳川フウ

 

 

「メインステップ。創界神ネクサス、悪の権化 ウルトラマンベリアルを配置」

 

 

ー【悪の権化 ウルトラマンベリアル】LV1

 

 

「2種目?」

 

 

フウは2枚目のベリアルを配置。だが同名ではなく、全く別の効果を持った別種のカードだ。

 

フィールドには、マントを羽織っていないベリアルが出現する。

 

 

「【神託】でコア+2。さらに神話ブレイヴ、キガバトルナイザーを召喚、悪の権化ベリアルに合体」

 

 

ー【悪の権化 ウルトラマンベリアル+ギガバトルナイザー】LV2(3)

 

 

2種目のベリアルに、黒い棍棒状の武装が握られる。

 

 

「さらにもう1枚、メフィラス外星人を対象に、【煌臨】を発揮」

「!」

「闇をも呑み込む邪悪の化身、ベリアル アトロシアス、煌臨」

 

 

ー【ウルトラマンベリアル アトロシアス】LV1(1)BP9000

 

 

突如現れて、メフィラスを貪り尽くす闇。そこから姿を見せたのは、より強い邪悪に染まったベリアル、アトロシアス。

 

 

「煌臨時効果。トラッシュから怪獣か星人をノーコスト召喚。バルタン星人を召喚しますわ」

 

 

ー【宇宙忍者バルタン星人】LV1(1)BP4000

 

 

「召喚時効果。バルタンとネロンガに1つずつコアブースト。増えたコアを使い、アトロシアスはLV2にアップ」

 

 

アトロシアスが、手に持つギガバトルナイザーを翳すと、赤黒い邪悪な輝きと共に、蝉のような見た目の星人、バルタン星人がフィールドへ見参。召喚時効果により、フウに2つのコアを齎す。

 

 

「アタックステップ。アトロシアスでアタック。アタック時効果、煌臨時と同じです。トラッシュから2体目のバルタンを召喚」

 

 

ー【宇宙忍者バルタン星人[2]]LV1(1)BP4000

 

 

「召喚時効果でコアブースト」

 

 

フウは、トラッシュのカード達を自在に操り、ドローやコアブーストを連打して行く。

 

さらに、アトロシアスの効果はそれだけでは終わらず。

 

 

「アトロシアスのLV2からの効果。相手スピリット1体のLVコストを+2し、消滅した時、1点のダメージを与える」

「なに!?」

「ドラットを消滅。貴方のライフを頂戴します」

 

 

〈ライフ5➡︎4〉カーク

 

 

「ぐおっ!?」

 

 

アトロシアスによる、ギガバトルナイザーの刺突が、カークのドラットとライフバリア1つへ直撃。両方とも砕き、塵芥にして見せる。

 

 

「フラッシュ、カイザーベリアルの【契約技】を発揮。カウント+2。トラッシュから対象カード1枚を手札へ。そしてこれが、アトロシアスによる本命のアタック」

「ライフでお受けましょう」

 

 

〈ライフ4➡︎3〉カーク

 

 

今度はギガバトルナイザーで薙ぎ払うように一閃。2つ目のライフバリアを破壊する。

 

フウのアタックできる残りスピリットは3体。これらのアタックが全て通れば、早々に彼女の勝利となるが。

 

 

「なるほど。貴女はバトルスピリッツにおいて高い技術とセンスを誇るようだ。しかし、どんなに腕が良かろうと、たった1枚のパワーカードで戦況を覆すことができる。ライフ減少により、バースト発動!!…高次元怪獣ギドラ様!!」

「高次元怪獣?」

 

 

二度目のライフ減少で、カークは伏せていたバーストを発動。

 

その名は、自身がユートピアだと偽っていた高次元世界の名前が刻まれていて。

 

 

「効果により、合計BP30000まで3体のスピリットを破壊し、発揮後に召喚される。ギドラ様降臨。そしてネロンガと2体のバルタンを焼き払う」

 

 

降り注ぐ雷と言う名の神の裁き。それを受けたネロンガと2体のバルタンが爆散して行く。

 

 

ー【高次元怪獣ギドラ】LV1(1)BP12000

 

 

その後、雷鳴のような咆哮を張り上げ、雷纏いしミツ首龍、高次元怪獣ギドラが降臨。アジーナを食しようとしたものと同様の姿だ。

 

 

「ギドラ様がいれば、どんな屈強なカードバトラーが相手でも負けることはない。さぁターンエンドを宣言したまえ」

「はいはい。ターンエンド」

手札:4

場:【ウルトラマンベリアル アトロシアス】LV2

【ベリアル銀河帝国皇帝カイザーベリアル】LV1(3)

【悪の権化 ウルトラマンベリアル+ギガバトルナイザー】LV2(7)

バースト:【無】

カウント:【2】

 

 

高次元怪獣ギドラによる強烈なカウンターを受け、攻め手を失ったフウ。そのままめんどくさそうにターンエンドを宣言。

 

次は、遂にギドラを呼び出した、カークのターン。

 

 

[ターン04]カーク

 

 

「メインステップ。魂状態のドラット様を対象に【契約煌臨】を発揮。キングギドラ様1991」

 

 

ー【キングギドラ[1991]】LV1(1)BP5000

 

 

魂状態となり、色素を失ったドラット達が合体し、進化。巨大なミツ首龍、キングギドラ1991となって、フィールドに帰還する。

 

 

「煌臨時効果でカウント+2。さらにキングギドラ様1964を召喚」

 

 

ー【キングギドラ(1964))】LV1(1)BP3000

 

 

「召喚時効果。カウント+1。デッキ上から3枚オープンし、その中の新たなギドラ様を迎え入れる」

 

 

3コストの小型ギドラ、ギドラ1964が現れ、その効果でカークは新たなカードを1枚デッキから手札に加える。

 

 

「アタックステップ。ギドラ様1991でアタック。その【OC:5】の効果。3コストを支払い、トラッシュのソウルコアをギドラ様に差し上げる」

「ソウルコアを戻した?」

 

 

カークのアタックステップ。【契約煌臨】の効果を持つキングギドラでアタックするや否や、そのさらなる効果で大量のコストと引き換えにソウルコアをトラッシュから呼び戻した。

 

 

「契約煌臨元のドラット様の効果。カウント+2。この時、カウントが7以上なら、回復。さらに回復した時、トラッシュのコア3個を、ギドラ様へ」

 

 

カウントを7まで上昇させつつ、回復するばかりか、先程大量に支払ったトラッシュのコアまで回収。

 

そしてカークは「まだです」と高らかに宣言すると、1枚のカードを手札から引き抜き、それを自慢気に己のBパッドへと叩きつける。

 

 

「アタック中のギドラ様を対象に【契約煌臨】を発揮。至高の姿、宇宙に羽ばたく鋼鉄の翼、メカキングギドラ様マシンハンドをLV2で煌臨!!」

 

 

ー【サイボーグ怪獣メカキングギドラ-マシンハンド展開-】LV2(4)BP18000

 

 

アタック中のキングギドラが赤く発光し、進化を遂げる。

 

中央の頭部、翼、胴体などが機械化した、ギドラの最終形態、メカキングギドラが、フウとベリアルの前に出現した。

 

 

「ハハハ!!…なんと神々しいお姿。3体のギドラ様がいれば、私に敵などいない」

「逃げろフウ!!」

 

 

3体のギドラ、九つの首に高揚を抑えられなくなるカーク。フウの身を案じ、声を荒げるアジーナ。

 

そんな中、フウは終始無言で。

 

 

「メカキングギドラ様のアタックは継続中。ダブルシンボルの一撃を食らうがいい」

「……」

 

 

〈ライフ4➡︎2〉徳川フウ

 

 

メカキングギドラの三つの首が、フウのライフバリアを2つ噛みちぎる。

 

絶体絶命の状況に陥ってしまうが、フウは、このタイミングで発揮できるカウンターカードを一切提示しなくて。

 

 

「ハハハ。絶甲氷盾もないか。お終いですね。再びメカキングギドラ様でアタック。先ずはドラット様の効果でカウント+2。さらに、アタック時効果でコストを支払い、アトロシアスを破壊」

 

 

メカキングギドラは、胴体からマシンハンドを展開し、フウのフィールドに存在するアトロシアスを捕獲すると、そのまま手繰り寄せ、三つの首で噛みちぎり、爆散へ追い込む。

 

 

「【OC:9】の効果。ギドラ様が効果で敵スピリットを倒した時、1点のダメージを与える」

 

 

〈ライフ2➡︎1〉徳川フウ

 

 

中央の機械の首からはレーザー光線。残り二本の首からは電撃を放出し、フウのライフバリアをさらに砕き、追い詰める。

 

 

「もうやめろカーク。フウはこの街の者じゃない。やるなら私だけをやれ!!」

 

 

アジーナがカークに叫ぶ。

 

 

「秘密を知られて、生かして置くわけないでしょう。それにこの小娘の操るベリアルと言うカード。実に強力そうだ。ギドラ様への供物には最適」

「ベリアルが、供物、ね」

 

 

ここでフウがようやく口を開く。

 

 

「貴方、ギドラの起源は宇宙からだと言及していたわね」

 

 

フウがカークに訊いた。

 

そう、ギドラの起源は宇宙。今目の前に存在している高次元怪獣ギドラこそが、ギドラの始祖であり原点。

 

 

「それがなにか?」

「実は、私のベリアルも、起源は宇宙からですの」

「ほう。そんな偶然もあるんですね」

「えぇ。ベリアルは、怪獣を操り、銀河に帝国を築いた者らしいですわ」

「怪獣を、操る?……ッ」

 

 

会話の最中、カークは察してしまった。

 

自分にとっての残酷な真実を。

 

 

「おわかりいただけましたか?…何匹束になって来ようと、怪獣は怪獣。ベリアルの敵ではありません。フラッシュ、このカードはトラッシュにある対象カードを4枚、ゲームから除外するのとで、ノーコスト召喚できる」

 

 

ベリアルがどう言う存在なのかを、遠回しにカークに伝えたフウは、そのまま手札のカード1枚を引き抜き、その効果を発揮。

 

トラッシュに眠っていた4枚のカードが消滅したのを確認すると、彼女はそのカードをBパッドへと叩きつける。

 

 

「邪悪束ねし鋼鉄の魔帝、暗黒大皇帝カイザーダークネス、LV3で召喚!!」

 

 

ー【暗黒大皇帝カイザーダークネス】LV3(5)BP18000

 

 

フィールドに邪悪な粉末を撒き散らしながら現れたのは、鋼鉄の鎧をその身に纏ったベリアル、カイザーダークネス。

 

アークベリアル、アトロシアスと並ぶ、ベリアルの強化形態の1つだ。

 

 

「効果でトラッシュのソウルコアを回収」

「そんなわけが、そんな馬鹿なことがあってたまるか!!…宇宙からお越しくださったギドラ様こそが至高。それを上回るスピリットなど」

「カイザーダークネスの召喚時効果。このスピリットのLV1つにつき、相手スピリットのコア2つをリザーブに置く」

「!!」

「カイザーダークネスのLVは3。よって取り除けるコアの数は6つ。貴方が崇めるギドラ様は殲滅される」

 

 

カイザーダークネスは、闇を纏いし槍を構え、3体のギドラ、九つの首を一網打尽。全てを串刺しにし、貫き、爆散させた。

 

 

「ギドラ様が、私だけの、ギドラ様が」

「で、まだ何かできる?」

「……ターンエンド」

手札:2

場:【未来のペット ドラット】(魂状態)

バースト:【無】

カウント:【9】

 

 

怪獣のスピリットの中でも強力なキングギドラも、所詮は怪獣。ベリアルによって全滅させられ、カークも絶望。

 

次は、以前よりも確実にベリアルのカードを使いこなしているフウのターンだ。戦意を喪失したカークにトドメを刺すべく、それを進めて行く。

 

 

[ターン05]徳川フウ

 

 

「メインステップを飛ばして、アタックステップ。カイザーダークネスでアタック」

 

 

カイザーダークネスが、槍を構え、突撃する。

 

その間のフラッシュタイミング。フウはさらに効果発揮を宣言。

 

 

「フラッシュ、悪の権化ベリアルの【転神】を発揮。このターン、スピリットとなり、アタックを可能とする」

「なに!?」

 

 

終始フウの背後にいた悪の権化ベリアルが、戦前へ赴く。

 

【転神】、創界神ネクサスをスピリット化させる、この世界では非常に稀有な効果だ。

 

 

「カイザーダークネスのアタックは継続中」

「ら、ライフだ」

 

 

〈ライフ3➡︎2〉カーク

 

 

「ぐぉ!?」

 

 

カイザーダークネスの槍による刺突が、カークのライフバリアを襲う。

 

1つが砕けると、彼の眼前には、既に悪の権化ベリアルが、カイザーダークネスと肩を並べ、ギガバトルナイザーを構えていて。

 

 

「さようなら。出来損ないの悪党さん。悪の権化ベリアルでアタック」

「ァァァァギドラ様ァァァァ!!」

 

 

〈ライフ2➡︎0〉カーク

 

 

フウの無慈悲な宣言に応え、ベリアルはギガバトルナイザーを縦一閃に振い、カークの最後のライフバリアを撃破。

 

圧倒的な力の差を見せつけるとともに、彼女を勝利へと導いた。

 

 

「あ、あ、私のギドラ様。何年も掛けて育て上げた、私の」

 

 

激しいバトルダメージによって横転したカークの手から、ギドラのカード達が離れて行く。そして、その行く先は、フウの手の中。

 

 

「雑魚に興味はありませんわ。どこへでもお行き。ただし、もう人は食わないことね」

 

 

フウはそのカードを天空へ投げ出すと、ギドラのカード束は浮遊し、どこか別の場所へと飛んで行った。

 

 

「ギ、ギドラ、様」

 

 

カークは最後までギドラの名を口にし、見捨てられたことにショックを受けながら、気を失う。

 

 

「散々お世話になった挙句、こんなことを言うのは、大変烏滸がましいとは思うのですが、このムシケラの後始末、お願いしますね」

 

 

フウがBパッドを畳み、フィールドに残ったベリアル軍団を消滅させながら、アジーナに言った。

 

アジーナの方も何か言いたいのか、その唇を震わせていて。

 

 

「もう家族に会えないのなら、死んでもよかった」

「……」

「フウがどんな経験をして来たのかはわからない。でも、少なくとも私は、貴女のようには強く生きることはできない」

 

 

家族に会うために、努力を重ね、カークに認められるほどに優秀な人材となったアジーナ。

 

それ故に、全てギドラへの供物のための嘘だと知ってしまった彼女の絶望は深い。悲惨な想いの丈をフウにぶつける。

 

 

「どこの誰が、強く生きろと言ったのですか?」

「!」

「私は、前に進まなければならないと言ったんですよ。どんなに小さな一歩でもいいから、前へ。人一人が弱いなんて当たり前。だから人は協力し合う。そのために手が付いている」

「……」

「死ぬのは勝手です。私はどこぞの英雄ほど、甘くはありませんからね」

 

 

それらの言葉を最後に、フウはアジーナから背を向けて歩き始める。目指すは砂漠の先。新たなる旅路だ。

 

 

「フウ」

「……」

「ありがとう」

 

 

アジーナは、一粒の涙が頬に伝わるのを感じながら、フウに感謝の言葉を告げた。

 

この時、フウは見向きもしなかったが、小さな笑みは浮かべており「またらしくないことを言ってしまったわね」と、一言。

 

 

「!」

 

 

瞬間。フウのBパッドにメールが届く。

 

彼女はそれを確認するなり、とても嫌な表情を見せる。

 

 

「出た鉄華ライ。子供が生まれたからって一々メール入れるなよ。しかも双子。アイツらに似て憎たらしい目付きだこと」

 

 

メールを送ったのは鉄華ライ。彼女がもっとも毛嫌いする相手であり、唯一の友とも言える存在。

 

メッセージと共に送られて来た写真の赤子を見るなり直ぐに怪訝な表情を浮かべる。

 

 

「ニッヒヒ。まぁ、祝いの品くらいは送ってあげますか」

 

 

Dr.Aの呪いが取り除かれ、今も元気に歩くことができるフウ。

 

しかし、それを得るまでに犯して来た数々の罪は、未だ拭えず。

 

故に彼女は歩き続ける。いつかまた友に会うために。

 

 






後日談編は、今回で終了です。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました!

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