バトルスピリッツ 王者の鉄華   作:バナナ 

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第11ターン「剣帝、赤羽カレン」

喉かな夏がやって来た。

 

照りつける日差しが肌に刺さり、暑さを感じさせる。そしてそこら中で鳴り響く蝉のオーケストラが、その暑さをさらにグレードアップさせる。

 

そんな猛暑となった街の中、鉄華オーカミとその兄貴分、ヨッカは自分達が働くカードショップ「アポローン」までの道のりをぐだぐだと歩いていた。

 

 

「暑い…………おいオーカ。水筒取ってくれ」

「良いけど、もう水ないよ」

「………マジかよ………つーかなんでオマエこんな暑い中平気な顔してられるの?……なに、まさかマサイなの?……おい、マサイなのか?」

「何言ってんのアニキ」

 

 

買い出しに向かったのが運の尽き。お陰様で2人は焼けたアスファルトの上を歩く事になったのだ。

 

弟分のオーカは何故か平気そうな顔をしているが…………

 

 

「お、そう言えばオマエに伝えないといけない事があったんだった」

「?」

 

 

ヨッカは暑さを紛らわせるためにも一度話題を切り替える。

 

 

「今度、あの早美アオイとタイトルマッチをやる事になったよ。もちろんMr.ケンドーとしてな」

「ふーーん」

 

 

それはヨッカがモビル王としての顔、Mr.ケンドーとして高校生プロバトラーは闇アオイとモビル王の座を賭けてタイトルマッチを行うと言う内容だった。

 

早美アオイはダブルオーをエースとして活躍する少女で、オーカとも一度バトルした事がある因縁の相手だ。

 

 

「ふーーんってオマエ、そんなどうでもよさそうに」

「別にどうでもよくはないけど、バトルするのがオレじゃないから」

「オレ一応このバトルで負けたらモビル王から降ろされるんだが」

「応援はするよ、頑張れアニキ」

「おう。オマエも今度の界放リーグ頑張れよ」

「うん」

 

 

小さく笑い合いながらお互いに拳を合わせる。この行動は2人の絆の象徴とも呼べるモノ。ヨッカは俄然、今度の試合でのモチベーションを上げる。

 

 

「界放リーグか。最近ヒバナとイチマルが店に来ないのもその大会の準備に忙しいから………なのかな?」

「だろうな。街で1番の大きな大会だし、気合入ってんだろ………なんだオマエ、寂しいのか?」

「いや、別に」

 

 

界放市一のビックイベント「界放リーグ」…………

 

その中でもオーカは中学生以下の大会であるジュニアリーグに参加する。バトスピを通じて友人となった一木ヒバナ、鈴木イチマルはそこに向けてデッキのチューンアップに勤しんでいる。

 

 

「フ……今度のオレの試合を応援する時に観戦を誘ったらどうだ?……オマエと一緒ならヒバナも来るだろうし、ヒバナが行くならイチマルのヤツも来るだろうしな」

「うん。そうする」

 

 

起伏に乏しい表情だが、少しだけ嬉しそうに頷く。

 

 

「あ、やべ………」

「ん?」

「やばいぞオーカ、買い忘れだ。オレは今すぐ店に戻るからオマエはそこの公園の日陰で休んでろ、直ぐ戻っから!」

「わかった」

 

 

買い忘れを思い出したヨッカは道を逆走。オーカを置いてスーパーへと直行した。オーカは言われた通りに大木の存在で木漏れ日が全く刺してこない公園へと涼しみに向かった。

 

 

「…………」

 

 

******

 

 

とある事務所。空調の効いた一室にて、高校生プロバトラー、早美アオイはデスクに向かってBパッドを眺めていた。

 

その画面からは現モビル王であるMr.ケンドーのバトルが映し出されている。どうやら彼女は今度の彼との試合に向けて猛勉強している様子。

 

 

「……ほい紅茶」

「あら、気が効くのねフグタ」

 

 

彼女の召使いの青年、フグタがカップ一杯の紅茶をデスクの上にそっと置いた。

 

 

「最近寝てねぇんじゃねぇか?……寝ないと身体に毒だぜ」

「どうしたの急に。いつもは悪態しか吐かない癖に」

「お嬢は旦那さんから貰った生涯の宝物だからな。そりゃ心配になるんだわ」

「フグタ………」

 

 

珍しくイケメンなセリフを吐くフグタにアオイは少しキュンとする。

 

 

「なんてのは建前で、本当は心配したら給料上がるかな〜って思っただけです」

「ぶち殺されたいんですの!?」

 

 

一瞬だけキュンとした自分が馬鹿だった。やはりこの男、給料の事しか頭に入ってない。

 

 

「だけど、どうせオレが止めようとしても無茶するんだろ?」

「………」

 

 

急に真面目な表情を見せるフグタ。アオイはカップ一杯の紅茶を啜ると、返答する。

 

 

「えぇ……だってモビル王にならなければ私の計画は始まる事もないのだから…………」

 

 

静かにそう答える。アオイの深い計画を知るモノは未だ殆ど存在しない…………

 

 

******

 

 

 

「…………アニキ遅いな」

 

 

遊具もない簡素な自動公園。その中にある木漏れ日さえ差し込んで来ない程の大木の根本。オーカはそこにあるベンチに腰を下ろしていた。

 

どこか道草でも食っているのかは知らないが、待ち始めてから15分。もうそろそろ帰って来ても良い頃なのに未だにヨッカが帰って来ない。

 

 

「よぉ、チビ助」

「ん?」

 

 

そんな待ちぼうけていたオーカに高圧的な声色で声をかけて来たのは太めの体型であるあの男…………

 

オーカが難航して来た初日に彼から金を集ろうとしたあの人物だ………

 

 

「あぁなんだ、フクシマか」

「誰だそれ!!!……ブスジマだよ!!……校舎裏でオマエから金奪おうとしたろ!?」

「自覚あったの」

 

 

ガラの悪いドクロマークのTシャツを着た少年の名はブスジマ。オーカの一学年上で、学校一の性悪で有名だ。

 

 

「で、そのブスジマがまたオレになんの用?」

「ブハハハ!!……よくぞ聞いた。オマエ、最近あの早美アオイにバトスピで勝ったそうじゃねぇか。しかも誰も見た事がないスピリットで」

「うん。それが?」

 

 

随分前に出版された新聞記事をオーカに見せつける。これは以前オーカが早美アオイに勝利して取り上げられたモノ。

 

これがキッカケで界放市の現ジュニアトップの獅堂レオンと諍いに巻き込まれたのは未だに腹立たしいものの、今となってはそれも良い思い出だ。

 

 

「ブハハハ!!!…そうか、やっぱそうなのか!!……じゃあオレ様がオマエとのバトルに勝ったら、その誰も見た事がないカードはオレ様のモノになると言う事だな!!」

「なんでそうなんの。相変わらず自分勝手なヤツだな。そんなんじゃ、いつまで経っても名前、覚えてもらえないぞ」

「それはオマエのせいだろ!!」

 

 

理不尽な事を言い放つブスジマ。どうやら彼はオーカの鉄華団のカードを奪うのが目的でこんな猛暑日に彼を探し回っていたらしい。

 

 

「噂で聞いたぜ、オマエバトスピ初心者なんだろ?……どうせ早美アオイに勝ったのも何かの間違いか、運が良かっただけに違いない」

「は?」

「さぁさぁ、さっさとBパッドを構えろよ。でもって無様に負けてオレにそのカードをよこしな」

 

 

懐から取り出した己のBパッドを腕にはめ、構えながらオーカを煽るブスジマ。流石に腹を立てたか、オーカは静かに怒りを燃やしながら立ち上がると、自分もまたBパッドを構えようとするが…………

 

その時だった。

 

 

「そこで何をやっている?」

 

 

ー!!

 

 

「………誰?」

 

 

剣のように鋭く、気高い声色。その声の方へと2人が振り向くと、そこには金色の髪を一本に結ったポニーテールの少女がいた。

 

かなりの美人だが、オーカは知らない。頭にハテナのマークを浮かべるが、その横にいるブスジマの反応は違った…………

 

 

「う、ウソだろ……あ、赤羽カレン!?!」

「?」

 

 

いつもの無表情を見せるオーカとは違い、ブスジマは彼女に怯えていた。その事と、名前を知っている事から、彼女がそれなりに有名な人物である事は理解できる。

 

 

「だから誰?……オマエの知り合い?」

「オマエ、赤羽カレンを知らねぇのかよ!?……この街のジュニアNo.2……その剣のように鋭い性格とバトルスタイルから「剣帝」とまで呼ばれてるんだぞ!?」

「ふーーん」

 

 

その名は「剣帝」赤羽カレン。界放市では獅堂レオンに次ぐ強さを持つ有望なジュニアの1人。それが今、こうして2人の前に聳え立っている事は正に奇跡の出来事と言える。

 

自分から聞いておいてどうでも良さそうに返答するオーカ。ブスジマが弱腰になっているのを見る限り、彼女が相当恐れられている事は間違いなさそうだ。

 

 

「そこで何をやっているのかと聞いている。さっき小耳に挟んでしまったが、まさかオマエ、賭けバトルをやるつもりじゃないだろうな?」

「!!」

「賭けバトルは法律で禁止されている。バトルで何かを賭けるなら、己のプライドだけを賭けろ………さもなくば、私のデッキという名の剣が黙ってないぞ?」

「ヒ………ヒ、ァァァァァァァァァー!!!?!」

「あ、オイ………帰っちゃった」

 

 

完全に見通されているブスジマ。彼女の鋭い視線から放たれるプレッシャーに臆し、大きな背中を見せつけながら一目散に逃げ去っていく。

 

 

「……界放リーグが近くなるとあぁいう奴が増えてくるんだ。大丈夫だったか?」

「ん?……うん、まぁね。別に助けてもらわなくてもよかったけど」

 

 

オーカを上背から見下ろして来るカレン。彼女はオーカを庇おうとしていた様子なので、どうやら噂通りの怖いだけの人物ではないらしい。

 

しかし、話はそれだけでは終わらず、カレンはさらに口を開いて………

 

 

「………そうか。助けは不要だったか、流石はあの早美アオイを下した男、鉄華オーカミだな」

「ッ………オレの名前知ってんの?」

「そりゃもちろん。今界放市中で有名だからな、君と、君のモビルスピリットは」

「そーなんだ」

 

 

獅堂レオンやブスジマだけではない。今や鉄華オーカミの名前は界放市中で話題を呼んでいる。このカレンも例外ではない。

 

知っててオーカを助けたのだ。

 

 

「じゃあ尚更何でオレを庇ったんだよ。アイツくらい軽く捻り潰せたのに」

「君は見た目のイメージよりもずっと言葉遣いが物騒だな」

 

 

カレンは腕を組みながらオーカの質問に答えていく。

 

 

「実は、風の噂で聞いたあの話が本当かどうか知りたくてね。本人を目の前にして、居ても立っても居られなくなったんだ」

「風の噂?……なにそれ」

「それはコレの中で話そう……君も正直私とバトルしたくて疼いているんじゃないか?」

「…………」

 

 

バトスピ用端末、Bパッドを見せつけながらオーカにそう告げるカレン。正直な話、彼女が界放市で2位と聞いてオーカもバトルがしたくてたまらない………

 

どちらにせよ、バトルを振られて逃げると言う選択肢は彼にはなくて………

 

 

「わかった。受けるよそのバトル」

「あぁ、感謝する」

 

 

バトルは当然承諾。2人とも間隔を空け、Bパッドを腕に装着し、展開。そこにデッキをセットし、バトルの準備を瞬時に終える………

 

そして…………

 

 

「行くぞバルバトス。バトル開始だ………」

 

 

………ゲートオープン、界放!!

 

 

木漏れ日さえも遮る大きな大木が特徴的な自動公園の中、いつものコールと共に鉄華オーカミと剣帝、赤羽カレンのバトルが開始される。

 

先攻はカレン。剣のように真っ直ぐで鋭い視線をオーカに向けながらそれを進めていく。

 

 

[ターン01]カレン

 

 

「メインステップ………私はネクサス、ワンダーワールドをLV1で配置」

「ッ……なんだ?」

 

 

ー【ワンダーワールド】LV1

 

 

カレンの配置したネクサスカード。その影響で周囲に巨大な本が出現。ページが開いていくと、そこから空に浮かぶ小島、龍やグリフォンなどの架空な生き物が闊歩するファンタジーな世界が出現。飛び交う無数のシャボン玉がよりそれを顕著に感じさせる。

 

 

「ターンエンド。バトスピとは互いのプライドを賭けてやるものだ。私も全力で行く、だからオマエも全力で戦え」

手札:4

場:【ワンダーワールド】LV1

バースト:【無】

 

 

「一々固いな……まぁ言われなくても全力で行くけど」

 

 

真面目な性格のようで、言動がつくづく固いカレン。オーカはそんな彼女に少々呆れながらも己のターンを始めていく。

 

 

[ターン02]オーカ

 

 

「メインステップ……オレもネクサスカード、ビスケット・グリフォンのカードを配置」

 

 

ー【ビスケット・グリフォン】LV1

 

 

フィールドにコレと言った変化は見受けられないが、オーカもネクサスカードであるビスケットを配置。早速その効果を使っていく。

 

 

「ビスケットの効果。疲労させる事でデッキの一番上にある鉄華団カードを手札に加える……よし、オルガ・イツカ。よってこれを手札に加え、そのまま配置!」

「………!」

 

 

ー【オルガ・イツカ】LV1

 

 

流れるような展開で創界神ネクサスであるオルガを配置。その神託の効果でデッキの上からカードを3枚トラッシュ、今回の対象カードは2枚であったため、オルガに2つのコアを置いた。

 

 

「……鉄華団。やはり聞いた事がないカード達でデッキが構成されているのか」

「ターンエンド。アンタの番だよ」

手札:4

場:【オルガ・イツカ】LV1(2)

【ビスケット・グリフォン】LV1

バースト:【無】

 

 

ネクサス2枚を並べ、幸先の良いスタートを切ったオーカ。そのままターンをカレンへと返す。

 

 

[ターン03]カレン

 

 

「メインステップ………出し惜しみは無しだ。このターンから行くぞ」

「!」

 

 

そう言い放ちながら手札に手を掛ける。オーカは空気が変わり、こここら何か厄介なスピリットが呼び出される事を察した………

 

 

「召喚。龍を纏いしその衣、仮面ライダーセイバーブレイブドラゴン!」

 

 

ー【仮面ライダーセイバーブレイブドラゴン[2]】LV2(3)BP5000

 

 

「ッ……ライダースピリット。イチマルのとはまた違うヤツか」

 

 

カレンの前方に出現した真っ赤な炎。その中を気迫で振り払い、姿を見せたのは右肩に龍を宿すスピリット、仮面ライダーセイバー。

 

イチマルの使ったライダースピリット、ゼロワンとはまた違ったライダースピリットだ。

 

 

「召喚時効果。カードを3枚オープンし、対象となるカードを加えていく………私はオープンされたソードブレイヴ、火炎剣烈火を新たに手札へと加える」

 

 

効果でカードを1枚手札に加えるカレン。直後に「アタックステップ……!」と静かに宣言し………

 

 

「アタックだ、セイバー!」

 

 

攻撃して来た。そしてこの時、セイバーにはまだもう1つの効果を発揮できて………

 

 

「フラッシュ、セイバーブレイブドラゴンのアタック時効果。手札にあるソードブレイヴをこのスピリットに合体させる事で召喚時効果をもう一度発揮させる」

「なに……?」

「私は先程加えたソードブレイヴ、火炎剣烈火をセイバーブレイブドラゴンに合体!…召喚時効果で仮面ライダーエスパーダを手札に加える」

 

 

ー【仮面ライダーセイバーブレイブドラゴン[2]+火炎剣烈火】LV2(3)BP9000

 

 

ベルトに差し込んである赤い剣を引き抜くセイバー。合体スピリットとなり、強化される。このように、仮面ライダーセイバーのデッキは所謂ソードブレイヴと呼ばれる系統、剣刃を持つカード達を操り、戦っていく。

 

セイバーブレイブドラゴンは手札にあるソードブレイヴとノーコストで合体しつつ、手札の増加も狙える良質な効果だが、カレンの狙いはそこだけではなくて…………

 

 

「火炎剣烈火の召喚時効果。相手のネクサス1つを破壊し、その破壊時効果を無効にする!」

「ッ………ネクサスを破壊?」

「ビスケット・グリフォンのカードを破壊!」

「!」

 

 

登場直後の火炎剣烈火が刀身から赤い光を放つと、オーカのBパッド上にあるネクサスカードであるビスケットが勝手に場を離れてトラッシュへと送られた。

 

 

「アタックは継続中!!」

「………ライフだ」

 

 

〈ライフ5➡︎4〉オーカ

 

 

セイバーブレイブドラゴンが火炎剣烈火を振るう。そこから放たれた炎の斬撃がオーカのライフバリアを1つ焼き裂いた。

 

 

「ターンエンド」

手札:5

場:【仮面ライダーセイバーブレイブドラゴン[2]+火炎剣烈火】LV2

【ワンダーワールド】LV1

バースト:【無】

 

 

前のターンで幸先の良いスタートを切れたはずだったオーカのフィールド。しかしそれは世界三大スピリットであるライダースピリットの一種、セイバーブレイブドラゴンと火炎剣烈火によって一瞬にして半壊。

 

圧倒的なコントロール力を見せつけ、赤羽カレンはそのターンを終える。

 

 

[ターン04]オーカ

 

 

「メインステップ……」

「ネクサスカードが1つ消え、思うように動けまい」

「いや、ネクサスがなくてもシンボルを稼ぐ方法はある………1コストの1軽減、0コストで鉄華団モビルワーカーを2体、連続召喚だ!」

「!?」

「対象スピリットの召喚により、オルガにコアを2つ追加」

 

 

ー【鉄華団モビルワーカー】LV1(1)BP1000

 

ー【鉄華団モビルワーカー】LV1(1)BP1000

 

 

オーカが呼び出したのは銃火器を備えた車両型のスピリット、鉄華団モビルワーカー。1つでもシンボルがあればノーコストで召喚できるこのスピリット達でオーカはシンボル数を稼ぐ。

 

そして、手札にあるカードに手を掛け………

 

 

「行くぞ、大地を揺らせ、未来へ導け!!……ガンダム・バルバトス第4形態、LV3で召喚!」

「!」

「不足コストはモビルワーカー1体から確保、よって消滅する」

 

 

ー【ガンダム・バルバトス[第4形態]】LV3(4)BP12000

 

 

2体いるモビルワーカーの内1体が消滅させられた直後。上空から地上へと降り立ったのは、黒々とした鈍器、メイスを手に持つ白き外装のモビルスピリット、バルバトス。その基本となる第4形態だ。

 

 

「0コストで召喚できるスピリットで軽減シンボルを稼ぎ、無理矢理エースカードを召喚………そしてコレがバルバトスか」

「オレの鉄華団は止まらない。バーストをセットして、アタックステップ、その開始時にオルガの【神技】の効果を発揮!」

「ッ……今度はなんだ?」

「トラッシュから鉄華団カードをノーコスト召喚する。鉄華団のパイロットブレイヴ、三日月・オーガスをトラッシュからバルバトス第4形態に直接合体!」

「!」

 

 

ー【ガンダム・バルバトス[第4形態]+三日月・オーガス】LV3(4)BP18000

 

 

流れるような展開でバルバトス第4形態にパイロットブレイヴを合体させる。そしてオーカは反撃開始だと言わんばかりにアタックステップを続けていき…………

 

 

「行くぞバルバトス……アタックだ。効果で火炎剣烈火を破壊して、セイバーブレイブドラゴンからコアを2個リザーブに置く」

「ソードブレイヴを問答無用で破壊!?」

 

 

ー【仮面ライダーセイバーブレイブドラゴン[2]】(3➡︎1)LV2➡︎1

 

 

凄まじい速度で一瞬にしてセイバーブレイブドラゴンとの距離を詰めるバルバトス第4形態。そのままメイスで一撃、セイバーブレイブドラゴンは火炎剣烈火で受け身を取るが、火炎剣烈火は耐え切れず破裂するように消滅。

 

さらにバルバトス第4形態はもう一撃メイスを振い、今度こそセイバーブレイブドラゴンにダメージを与えていく。

 

 

「さらに三日月の合体時効果。相手スピリットかネクサスの維持コアを1増やして、リザーブのコア2つトラッシュに置く!」

「!!」

「セイバーブレイブドラゴンの維持コアを1つ増やして消滅させる!!」

 

 

ー【仮面ライダーセイバーブレイブドラゴン[2]】(1)消滅

 

 

二度目の追撃。三度目の攻撃がセイバーブレイブドラゴンにクリーンヒット。遂に撃破に成功する。

 

何より恐ろしい点は、これだけ一方的に蹂躙しておきながら、未だにアタックが終わっていないと言う事であって…………

 

 

「バルバトスのアタックは継続中……LV3効果でシンボル1つ追加、トリプルシンボルのアタックだ!」

「ソードブレイヴ、セイバー、リザーブのコアだけに飽き足らずライフまで捥ぎ取る気か。いいだろう、その攻撃、私のライフが受ける!!」

 

 

〈ライフ5➡︎2〉カレン

 

 

再びメイスを横一線に振い、カレンのライフバリアを一気に3つも叩き壊すバルバトス第4形態。オーカは勝機を逃すまいと次の行動に出ようとするが………

 

それよりももっと速く、カレンの手が動いていて…………

 

 

「だがそれ以上の攻撃は認めん!!……私のライフが減った事により、手札の絶甲氷盾の効果!」

「!」

「このターンのアタックステップを強制的に終了させる」

 

 

バルバトス第4形態を中心に始まった猛追もここまで。カレンの放った白のマジックカード、『絶甲氷盾〈R〉』の効果でオーカはアタックステップそのモノを強制的に終了させられてしまった。

 

 

「………ターンエンドだ」

手札:1

場:【ガンダム・バルバトス[第4形態]+三日月・オーガス】LV3

【鉄華団モビルワーカー】LV1

【オルガ・イツカ】LV1

バースト:【有】

 

 

迎えたのはエンドステップ。そのターンは致し方なく切るしかなかった。

 

 

「………それがバルバトスか。良いカードだな」

 

 

カレンは敵ながら天晴れであると言いたげな表情でオーカのモビルスピリット、バルバトスを見つめる。

 

 

「………バトルを始める前に風の噂がどうって言ってたけど、それってなんなの?」

「あぁ、そう言えばバトル中に話す約束だったな。いいだろう、今ここで話そう」

 

 

剣帝、赤羽カレンがオーカを前にして居ても立っても居られなくなる程の理由。それを淡々と説明していく。

 

 

「君は以前、界放市の現ジュニアクラストップ、獅堂レオンとバトルしたのだろう」

「!」

「しかもそのバトル中であのデスティニーをそこのバルバトスで破壊した………それが真実か知りたかった。ヤツのデスティニーを倒す事が私の宿命だからな」

 

 

獅堂レオン…………

 

最早そこら辺のプロバトラーよりも遥かに強いと言われる程の実力を誇る、ジュニアクラスNo. 1の天才カードバトラー。カレンはNo.2と言う事もあり、そんな彼をライバル視していた。

 

そして彼の操るデスティニーガンダムは今まで破壊された事が一度もないとされていたスピリット。それをオーカのバルバトスが破壊したと言う情報を密かに彼女は掴んでいたのだ。

 

 

「どうだ。真か、それとも嘘か」

「………本当だ。でもバトルには負けたし、アイツはデスティニーが破壊されるよりももっと早くオレを倒せたと思う」

「フ……謙虚だな君は。レオンのデスティニーを破壊しただけでも相当名誉ある事だと言うのに」

「謙虚とかじゃない、アイツはオレの倒すべき目標なんだ。でも、その前にアンタがいるって言うなら、アンタごと叩き壊してやる………この、バルバトスで……!!」

「向上心が高いのはいい事だ。だが、私もヤツに勝つ事を目標としている………甘く見るなよ」

「………」

 

 

そこら辺にいるカードバトラーならば間違いなく卒倒してしまうようなプレッシャーを放つカレン。

 

しかしそれに対してオーカは畏怖の念を抱く事はなく、いつもの無表情。バルバトスを始めたとした鉄華団スピリット達と共に彼女のターンを待ち構える………

 

 

[ターン05]カレン

 

 

「メインステップ……新たなスピリット、仮面ライダーエスパーダランプドアランジーナ!!……LV3で召喚!」

 

 

ー【仮面ライダーエスパーダランプドアランジーナ】LV3(6)BP12000

 

 

「………さっきとはまた別のライダースピリットか」

 

 

フィールドの地へと降り立つ光球。そしてその中より出現したのはセイバーとはまた違う剣士のライダースピリット、エスパーダ。

 

 

「召喚時効果。手札にあるソードブレイヴをノーコスト召喚する……来い、黄色のソードブレイヴ、雷鳴剣黄雷!!…エスパーダと直接合体!」

 

 

ー【仮面ライダーエスパーダランプドアランジーナ+雷鳴剣黄雷】LV3(6)BP15000

 

 

天空より地に突き刺さったのは稲妻の力を宿し剣。エスパーダはそれを引き抜き、強力な合体スピリットとなる。

 

 

「私もバーストをセットして、アタックステップと行こう……エスパーダ、アタックだ」

 

 

バーストが伏せる共にアタックステップを宣言。エスパーダは手に持つ剣、雷鳴剣黄雷の切先をオーカに向け、戦闘態勢に入る。

 

そしてこの瞬間、発揮できる力がエスパーダにはあって………

 

 

「エスパーダの合体時LV2、3のアタック時効果、BP12000以下のスピリット1体を破壊する」

「!」

「BP1000しかないモビルワーカーには消えてもらおうか」

 

 

剣の切先を地面に突き立てるエスパーダ。そこから電流を流し込み、モビルワーカーを感電、爆散させる。

 

 

「モビルワーカーの破壊時効果。デッキから1枚破棄して1枚ドロー………でもって、この瞬間を待ってた……!」

「ッ……!」

 

 

破壊時の効果を処理して、オーカが次に向けたのは前のターン、自分が伏せたバーストカード。

 

前までの鉄華団デッキだったらこの程度の猛攻だけで耐えるのが精一杯だった。だが、今は違う………

 

絶対的な守護神がそこにいるからだ…………

 

 

「破壊後のバースト発動!!……ガンダム・グシオンリベイク!!」

「なに、バルバトスとは違う、ガンダムの名を持つ2種目のモビルスピリット!?」

「効果により自身を召喚する………轟音打ち鳴らし、過去を焼き切れ!!……ガンダム・グシオンリベイク!!……LV2で召喚!」

 

 

ー【ガンダム・グシオンリベイク】LV2(3)BP9000

 

 

「不足コストはバルバトス第4形態のLVを2にして確保」

 

 

上空から降り立ったのは薄茶色の分厚い装甲を持つ一機のモビルスピリット。

 

その名はグシオンリベイク。オーカのデッキにおける第二のガンダム。左手に持つシールドと右手に持つハルバードは正しく守護神としての存在を顕著に表している。

 

 

「2種目のガンダムは聞いた事がないな。なんだコイツは……」

「バースト効果はまだ続く。このターンの間、コア2個以下のスピリットのアタックではオレのライフは減らない。さらに召喚時効果でエスパーダのコアを2つリザーブに送る!」

「!」

 

 

ー【仮面ライダーエスパーダランプドアランジーナ+雷鳴剣黄雷】(6➡︎4)LV3➡︎2

 

 

肩部に存在するサブアームを展開し、そのアームで背部にマウンティングされた滑空砲を握るグシオンリベイク。そのままその滑空砲をエスパーダに向けて連射。見事命中させ、その体内に眠るコアを2つばかり弾き飛ばす。

 

しかし………

 

 

「良い効果だ。だが、エスパーダのコアはまだ4つ……LV2でもそのモビルスピリットに負ける事はない!」

 

 

そう。LVが1下がったとは言え、エスパーダのコアはまだ4つもある。グシオンのバースト効果では防げないし、ブロックしてもグシオンはBPで負ける。

 

だが、そんな状況下においても、オーカは薄く笑顔を浮かべる………

 

 

「ふ……グシオンでブロックだ」

「ッ……血迷ったか!?……BPはこちらが上だぞ!?」

 

 

エスパーダの行く道をグシオンが遮る。モビルスピリットとして、全長はグシオンの方が3倍以上上回る。しかし、BPはソードブレイヴと合体しているエスパーダの方が遥かに上。

 

だがこの瞬間…………

 

グシオンのもう一つの効果が起動する………

 

 

「血迷ってなんかないさ。グシオンのアタックブロック時効果!!」

「!」

「疲労状態の相手スピリット1体を破壊する………今のエスパーダはアタック中につき疲労状態、よって破壊する!」

「なに!?……エスパーダ!!」

 

 

右手に持つハルバードをエスパーダに向けて振り下ろすグシオン。エスパーダは咄嗟に雷鳴剣黄雷でガードするも、グシオンはそれさえをも突破して見せ、エスパーダに一太刀浴びせる。

 

流石に力尽きたか、エスパーダは地に足を突きながら爆散して行った。

 

 

「……よし」

 

 

爆散による爆煙を眺めながら、安堵する意味合いを込めてそう呟くオーカ。次のターンまでに何事もなければ、間違いなく鉄華団の双璧、バルバトスとグシオンが彼に勝利を齎す事だろう………

 

ただし、それはカレンが何もしなければの話ではあるが………

 

 

「成る程。これは一杯食わされたな………でも、これで終わり、自分の勝ちだと思ったら大間違いだぞ」

「………」

 

 

緊張感高まる場面の中、今度はカレンが自分の伏せたバーストカードに目線を送り…………

 

 

「スピリットの破壊後によるバースト発動!!」

「なに………アンタも破壊後のバーストを、しかも自分のターン中に使うのか……!?」

 

 

バーストにはバーストで返すカレン。その勢いよく反転されたカードの鮮烈な効果を次々と発揮していく…………

 

 

「先ずは召喚だ、来い……仮面ライダーセイバードラゴニックナイト!!……LV3だ!」

「!!」

 

 

ー【仮面ライダーセイバードラゴニックナイト】LV3(6)BP14000

 

 

荒ぶる火球が地を熱するように出現。中よりそれを振り払いながら現れたのは、仮面ライダーセイバーの強化形態、ドラゴニックナイト。重厚感のある白銀の鎧がオーカの目に焼き付けられる。

 

そして悟らせる、コイツはヤバいと…………

 

 

「バースト効果には続きがある。その後、手札にあるソードブレイヴをノーコストで召喚する」

「!」

「2枚目の火炎剣烈火を召喚し、ドラゴニックナイトに直接合体!!」

 

 

ー【仮面ライダーセイバードラゴニックナイト+火炎剣烈火】LV3(6)BP18000

 

 

炎纏いしソードブレイヴ、火炎剣烈火が天空より降り注ぐ。セイバードラゴニックナイトは跳び上がり、それを掴み取る。

 

さらにタイミング良く赤きドラゴンが出現、その背中の上にセイバードラゴニックナイトを搭乗させる。

 

 

「この効果でソードブレイヴの召喚に成功した時、BP12000以下の相手スピリット1体を破壊する……!」

「ッ………!」

「BP9000のグシオンリベイクを破壊させてもらう!!」

 

 

赤きドラゴンと共に天空を舞うセイバードラゴニックナイト。攻撃の指示を出すように火炎剣烈火の切先をグシオンへと向けると、赤きドラゴンはそれに従い、口内から超高熱の炎を放出。

 

グシオンはその炎を浴び、たちまち焼き尽くされてしまう。

 

 

「………グシオン………」

「中々堅牢な守護神だったぞ。だがこの私の前では紙切れも同然!!……アタックだ、ドラゴニックナイト!!」

 

 

ここまでが一連のバースト効果の処理。ドラゴニックナイトの本当の攻撃はここから始まる…………

 

カレンから攻撃の指示を受け、ドラゴニックナイトが真っ先に目を向けたのはオーカの相棒であるモビルスピリット、バルバトス……………

 

 

「ドラゴニックナイトの【合体時】アタック時効果。このスピリットのBP以下のスピリット1体を破壊し、1枚ドローする」

「………今のそいつはBP18000。オレのバルバトスはLV2で15000………」

「察しがいいな。デスティニーを討ち取ったその首、私とセイバーが貰い受ける!!」

 

 

グシオンを葬った時と同様、ドラゴニックナイトは赤きドラゴンに炎のブレスを指示。バルバトスを焼き尽くさんと再び超高熱の炎を放出するが、バルバトスも負けじとメイスを振い、風圧でそれを吹き飛ばし、回避する。

 

だが、炎を吹き飛ばし、視界を確保した直後、バルバトスの眼前には既にドラゴニックナイトの姿があって…………

 

 

「貰ったァァァー!!!」

 

 

ドラゴニックナイトは火炎剣烈火を振い、バルバトスの首を撥ねた…………

 

かに思えた。まるでバルバトスを守るように現れた1体のモビルスピリットが出現するまでは……………

 

 

「!!」

「………このスピリット」

 

 

刀でドラゴニックナイトの斬撃を受け止めたモビルスピリットの名は2人とも知っている。

 

その名はスサノオ。この街のトップカードバトラーが持つカードであるため、それは余りにも有名なのだ。だが、オーカが召喚したわけではない。これは明らかに第三者によるバトルの乱入。

 

そして、オーカにとって、誰が乱入したのかは一目瞭然だ。背後の方へと振り向く。

 

 

「………アニキ」

「よ、オーカ。待たせたな」

「この方は………」

 

 

そこにいるのは当然九日ヨッカ。買い忘れからようやく戻って来た。その左腕にはスサノオを呼び出したBパッドがはめられている。

 

 

「剣帝の赤羽カレンだよな?……悪い、ウチの弟分がなんかしたか?」

「………いえ、何も。勝負を振ったのは私です」

「このバトルの決着を見届けてやってもよかったんだが、生憎、もうすぐ界放リーグだ。決着ならこんな寂しい公園じゃなくて、そこで着けないか?……コイツは絶対オマエのとこまで勝ち上がって来る、そっちの方が燃えるだろ?」

「…………」

 

 

モビルスピリット、スサノオの使い手。

 

細身で高身長の褐色肌の青年。

 

そして何よりも滲み出る強者感。

 

まさかこの方は…………

 

 

「フ………わかりました。貴方のお言葉に免じて、今日のバトルは以上とします。決着は界放リーグで」

「………逃げるのかよ」

「あぁ、今日は逃げる事にする。レオン以外にも勝たなくてはいけない相手が増えてしまったな………必ず上がって来いよ、鉄華オーカミ」

「………」

 

 

目の前にいる青年が何者なのかを悟るカレン。Bパッドの電源を落とし、フィールドのカード達を消滅させると、そのまま2人に別れを告げ、去って行く。

 

これにより、バトルは引き分けという形で幕を下ろした。

 

 

「……全く、オマエってヤツは放っとくといつも何かしらのトラブルに巻き込まれやがって」

「………別に止めなくてよかった」

「拗ねんなって!!……悪かったよ!」

 

 

中断されずに、最後までやり遂げたかった様子のオーカ。言葉の内容から本当に若干拗ねているのがわかる。

 

そしてひょっとしたら、あの後から勝ち筋があったのかもしれない………

 

 

「で、なんで遅くなったの?」

「いや、ちょっと知り合いとバッタリ会ってな。つい長話を………まぁなんにせよ、暑い中待たせてすまなかった。何か奢るぜ」

 

 

この後、オーカはヨッカに大量のアイスクリームを奢って貰い、無事に機嫌を直した。

 

そして今日この日、彼にまた負けられない人物のラインナップが刻まれたのだった。バトルスピリッツ発展都市、界放市の祭典、界放リーグ。それが開催される日は近い…………

 

 




次回、第12ターン「新世代系女子」
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