バトルスピリッツ 王者の鉄華   作:バナナ 

15 / 101
第15ターン「予選開幕、昂るゴモラ」

界放リーグ…………

 

それはバトスピ技術の最先端が迸る街『界放市』で年に2度行われるビッグイベント。1度目は夏、中学生の学生達がジュニアクラスとして凌ぎを削り、2度目は冬、バトスピ学園に通う高校生達がプロになるために激戦を繰り広げる。

 

そして今宵の季節は夏。鉄華オーカミなどの中学生達が熱かりしバトルスピリッツを求め、今年の会場である、界放市ジークフリード区の『ジークフリードスタジアム』へと足を運ぶ。

 

全ては界放市ジュニアの頂点の座を得るために…………

 

 

******

 

 

「おぉ〜…これが界放リーグ……予選の参加者だけでも凄い数」

「ざっと見て200人はいそうだね」

 

 

界放リーグジュニアクラスの今年の会場『ジークフリードスタジアム』………

 

その地下にある予選会場にて、鉄華オーカミ、一木ヒバナ、鈴木イチマルの3人はいた。無論理由は、界放リーグに参加するためだ。特に初めて参加するヒバナとオーカは大きな会場に新鮮味を感じずにはいられないようで…………

 

 

「どうだ、凄いだろヒバナちゃん」

「なんでアンタがちょっと誇らしげなのよ?」

 

 

イチマルが上機嫌な様子で語りかけて来た。

 

 

「ここで一応歳が一個上のオレっちから豆知識を1つ。この会場地下で行われる予選には、AからHの全部で8つのブロックが存在する。その各ブロックでの勝者8名が晴れてお客さんがわんさかいる本戦に出場できるわけだ」

「………イチマルが歳上なの完全に忘れてたわ」

「酷くないヒバナちゃん!?」

「その手の初期設定って段々忘れがちになっていくよね」

「オマエは初期設定とか言うなよ!?…今もちゃんと続いてるからね!?」

 

 

オーカとヒバナよりも歳上だが、どうにもカッコつかないイチマル。しかし彼の言っている事は本当で、200名以上参加するバトラーの中で、本戦に出場できるのは僅か8名しかいない。

 

ハッキリ言ってかなりの激戦区となる事が予想される。それ程までにこの界放リーグでのバトルは苛烈なのだ。

 

 

「………でもやっぱ、公式戦は緊張するな」

「大丈夫大丈夫!!……ヒバナちゃんなら余裕さ、愛してる!!」

「最後の一言が余りにも余計なのよね、アンタは…………オーカはどう?…緊張しない?」

 

 

会話の所々に求愛をして来るイチマルからそっぽを向き、オーカの方へと振り向くヒバナ。

 

オーカは至って普通で、至って平常と言った顔つきで、緊張は全くしていない様子であり…………

 

 

「いや、別にそう言うのはないかな。普通にバトルするだけだし」

「おぉ、流石オーカ……大物だ」

「オマエ、その激強メンタルでバトスピ初めて3ヶ月はウソだろ?」

 

 

ヒバナとイチマルがオーカの常人離れした感性に感心、驚愕した後に、オーカの華奢な方に大きな手が添えられて…………

 

 

「……よう鉄華。会いたかったぜ」

 

 

ー!!

 

 

「ゲッ……獅堂」

「『ゲッ』とはなんだ」

「獅堂レオン………」

「界放リーグジュニアの現トップ………鉄華オーカミの奴、マジで知り合いだったのかよ」

 

 

オーカ達の前に現れたのはツンツンした銀髪、長身の少年、獅堂レオン。最早ジュニアの王者として相棒のデスティニーと共に名前と顔が知れ渡っている彼が声を発した事で、突如周囲から視線が集まって来る。

 

 

「オマエの鉄華団デッキ、バルバトスとまたやり合えるこの日を待ち侘びたぞ」

「………あぁ、それはオレもだ。今度こそ、バトルにも勝って、勝負にも勝つ」

 

 

以前の2人のバトルは、エース同士であるバルバトスとデスティニーの対決ではバルバトスが勝利こそしたが、結果はオーカの負けで終わっている。

 

そんな因縁のライバル2人がこうして顔を合わせたが、レオンは気に食わぬ顔でオーカの横にいるヒバナへと目線を移し…………

 

 

「貴様もいたのか一木ヒバナ。父親の七光り程度の者ではこの戦場を勝ち上がれんぞ」

「…………」

「何をォォォ!!!……オマエ、オレのヒバナちゃんになんて事言うんだァァァー!!!」

「…………貴様は誰だ?」

「えぇぇぇぇ!?……オレ去年ベスト8だったんだけど!?……まさか覚えられてない!?」

 

 

ヒバナを庇おうとイチマルが割り込んで来るが、彼はイチマルの事など眼中にないのか、去年同じ大会に出場し、本戦に残った彼の事をすっかり忘れていた。

 

ヒバナは、そんなイチマルに「もういいから」と告げ、手でどかすと………

 

 

「………あの日とは違うから」

 

 

口角を上げ、レオンに向かってそう言った。その嘘偽りとない真っ直ぐな眼差しを見、レオンは「そうか、それが嘘でない事を願おう」と言葉を返した。

 

そして、その直後………

 

 

「………楽しそうじゃないか。私もその輪に入れてもらおうか」

 

 

ー!!

 

 

また別の人物の声が聞こえた。女の声だ。

 

皆その方へと振り向く。そこにいたのは金髪のポニーテールが特徴的で、非常に大人びた少女。

 

 

「………あ、アンタ確か、剣の人」

「赤羽カレンか」

「あぁ、久しいなレオン。そしてオーカミ」

 

 

オーカが「剣の人」と称するその人物の名は「赤羽カレン」…………

 

レオンに次いでジュニア2位の実力者である。また「剣帝」の異名でもよく知られている。この界放リーグと言う場にいるのは当然であるが、オーカが彼女とも知り合いだったと言う点に、ヒバナとイチマルは驚きを隠せなくて…………

 

 

「ちょっと待てェェェー!!!……どう言う事だ鉄華オーカミ!!……オマエ、まさか剣帝とも顔見知りだったのか!?」

「うん。最近知り合った。バトルした」

「バトルもしたァァァーー!?……やっぱオマエのバトスピ人生濃ゆすぎだろ!!」

「オーカ凄い………」

 

 

オーカの肩を揺らしながら質問するイチマル。やはりこの男の持っている豪快な運にはただならぬものを改めて感じ取る。

 

 

「………そこにいるのは君のご友人か、オーカミ?」

「そしてこっちにも覚えられてねぇーーー!!!……オレ去年ベスト8なのに!!!」

 

 

獅堂レオンだけでなく、剣帝のカレンにまで存在を忘れ去られているイチマル。ここまで来るとちょっと気の毒だ。

 

 

「………で、何の用だ赤羽カレン」

 

 

レオンがカレンに訊いた。

 

 

「いや別に、ただの挨拶さ………今日こそ、君をこの大舞台で倒すとね」

「…………」

「なんか今私達凄い場面に遭遇してない?」

「どっちも圧が凄すぎだろ、流石現界放市ジュニアのツートップ………迫力が違えよ」

「………早く始まらないかな」

 

 

界放市ジュニアのツートップ2人による、この場にいるだけで息苦しくなるような凄まじい貫禄と言う名の圧の押し合い。会場のバトラー全体がそれに呑まれ掛かる中、オーカはたった1人だけ場違いな発言をする。

 

そして、そんな彼の願いを叶えるように、会場中にアナウンスの音声が流れて来て…………

 

 

《ただいまより、界放リーグ予選を始めていきます。参加されるバトラーの皆様は、指定された各ブロックのバトル場へとお進みください。尚、どのブロックかわからない方は、各自Bパッドでご確認をお願い致します…………》

 

 

柔らかい声質の女性によるアナウンス。それだけで全バトラーの身が引き締まる。いよいよ待ちに待った界放リーグ、その予選の幕開けだ。

 

 

「私はAブロックか、オーカとイチマルは?」

「オレっちはF」

「オレはC。みんなバラバラだ」

 

 

3人はBパッドに示されたブロックを確認。3人ともそれぞれ別の場所のようだ。赤羽カレンや獅堂レオンのブロックも聞きたいところであったが、流石は有力カードバトラー、いつ確認したのか、もうこの場にはいなくて。

 

 

「まぁバラバラでちょうどよかったよ。鉄華オーカミ、オレっちは必ず本戦でオマエを倒すからな。それまで負けんじゃねぇぞ」

「言われなくても」

「はいはい、じゃあそこら辺にして、一旦解散!!」

 

 

鉄華オーカミは『C』

 

一木ヒバナは『A』

 

鈴木イチマルは『F』

 

互いの健闘を祈り、それぞれがそれぞれのブロックへと歩みを進めていった。

 

 

******

 

 

「ここが予選会場、やけに薄暗いわね。地下ってのもあるんでしょうけど」

 

 

一木ヒバナがそう言葉を落とした。ここはAブロックとBブロックの予選会場、あちこちにバトル場とも言えるスペースを確認でき、既に何人かはバトルを開始している。

 

ヒバナも、そんな初戦の相手を待っていたのだが…………

 

 

「お?……ブハハハ!!!……まさかこのオレ様の初戦の相手がオマエなんてな、一木ヒバナ!!……一木ハナビの劣化コピー!!」

「ん」

 

 

向かい側からとんでもなく失礼な事を言って来たのは、おそらく対戦相手であろう太っている少年。Tシャツのドクロマークがまたクソガキ感が増して見える。

 

そんな彼の事を、ヒバナは前々から知っている。

 

 

「…………なんか久しぶりね、今日は取り巻きはいないの?………モスジマ」

「誰がモスジマだ!!……ブスジマだよブスジマ!!…確かに今日の朝モスバーガー食って来たけども!!」

 

 

そう。このガラの悪い少年はブスジマ。ヒバナ達の通う学校の言わば番長的な存在だが、何故かみんなによく名前を間違えられる。

 

 

「ブハハハ!!……オマエみたいな雑魚が相手なら予選1回戦はオレの勝ちで確定だな、さぁ、さっさとオレに負けて無様な姿を晒せよ七光り!!」

 

 

いつもなら父である一木ハナビを話に出された事で、冷静さを欠いていたかもしれない。だが今は違う、ヒバナは口角を上げて…………

 

 

「………そう言うセリフ、負けフラグをよく作る奴のセリフだけど、大丈夫?」

「ブハハハ!!……知ってんだぜ、オマエが弱過ぎて大会に出ない事をな………良いカモになってくれよ!!」

「えぇ、アンタがね」

 

 

そう言い合い、互いにBパッドとデッキをセット。バトルの準備を終え…………

 

 

………ゲートオープン、界放!!

 

 

コールと共に一木ヒバナとブスジマによるバトルスピリッツが幕を開ける。

 

先攻はブスジマだ。何を勘違いしているのか、ヒバナの事を弱いと思っている彼は、淡々とターンを進めていく…………

 

 

[ターン01]ブスジマ

 

 

「ブハハハ!!……オレ様のメインステップ、先ずはテントモンを召喚。効果でボイドからコア1つを自身に置く」

 

 

ー【テントモン】LV1(2S)BP2000

 

 

「緑のデジタルスピリット………!」

 

 

ブスジマが意気揚々と召喚して見せたのはてんとう虫型の成長期デジタルスピリット、テントモン。その効果で早速コアを増加させる。

 

 

「オマエも父親と同じくデジタルスピリットの使い手だったな!!……このバトルでオレ様がオマエなんかよりも遥かに優れたデジタルスピリット使いである事を思い知らせてやるぜ、ターンエンド!!」

手札:4

場:【テントモン】LV1

バースト:【無】

 

 

またしてもヒバナを煽りに煽り、そのターンをエンドとするブスジマ。そんな彼の煽りなど、全く意に介さず、ヒバナは巡って来た己のターンを進めていく…………

 

これが界放リーグの初めてのターンだ。

 

 

[ターン01]ヒバナ

 

 

「すぅーーーッはぁ〜〜〜!!!………よし、行きます。メインステップ!!」

 

 

緊張を吐き出すように深呼吸をすると、ヒバナは手札にある1枚のカードを手に取り、それを己のBパッドへと叩きつける。

 

 

「ネクサス、破壊された城!!……LV2で配置」

「!」

 

 

ー【破壊された城】LV2(2S)

 

 

ヒバナの背後に配置されたネクサスカードは、かの有名な大阪城の姿に限りなく近い城。

 

 

「ターンエンド」

手札:4

場:【破壊された城】LV2

バースト:【無】

 

 

ヒバナの界放リーグ最初のターンは早々に幕を下ろし、再びブスジマのターンが始まる。

 

 

[ターン03]ブスジマ

 

 

「メインステップ………ネクサスで足場を固めるか、生意気な。オレ様もネクサスカード、旅団の摩天楼を2枚連続配置!!」

 

 

ー【旅団の摩天楼】LV1

 

ー【旅団の摩天楼】LV1

 

 

「配置時効果をそれぞれ発揮させ、デッキから2枚ドローだ………お?」

 

 

そう抜かしつつ、ブスジマが自身の背後に配置したのは、呆れる程に高い摩天楼。しかも2棟。

 

その効果でカードを引く彼だったが、どうやらお目当てのカードを引き当てる事ができたのか、今までよりもさらに上機嫌になって…………

 

 

「ブハハハ!!!……マジか、今日のオレ様めちゃくちゃ引き強ぇじゃねぇか!!……運がなかったな一木ヒバナ、これでターンエンドだ!!」

手札:5

場:【テントモン】LV1

【旅団の摩天楼】LV1

【旅団の摩天楼】LV1

バースト:【無】

 

 

そう自信満々な様子でこのターンをエンドとするブスジマだったが…………

 

 

「こ、コイツ………わかりやすすぎ。よく界放リーグに出ようと思ったわね………」

 

 

ヒバナはそんな彼に辛辣な評価。普通は良いドローをしても、相手に悟られないよう、ポーカーフェイスで隠すのがセオリーだからだ。

 

ここまであからさまに笑顔になるのはおそらくブスジマくらいであろう………

 

 

[ターン04]ヒバナ

 

 

「ドローステップ時、破壊された城の効果でドロー枚数を1枚増やす」

 

 

つまりは2枚だ。通常なら1枚しか引けないドローステップで、ヒバナは2枚のカードをドローした。

 

 

「メインステップ……ダークディノニクソー2体をLV1で連続召喚!」

 

 

ー【ダークディノニクソー】LV1(1)BP2000

 

ー【ダークディノニクソー】LV1(1)BP2000

 

 

黒いボディの小さい恐竜のスピリットで、腹部にチェーンソーのようなものを仕込んでいるダークディノニクソーがこの場に2体召喚される。

 

 

「そのままアタックステップ!!……ダークディノニクソー!」

「ライフで受けてやる!!」

 

 

〈ライフ5➡︎4〉ブスジマ

 

 

「続けてもう1発!!」

「それもだ!」

 

 

〈ライフ4➡︎3〉ブスジマ

 

 

問答無用のフルアタック。2体のダークディノニクソーが体当たりでブスジマのライフバリアを破壊していく。

 

 

「………ターンエンド」

手札:4

場:【ダークディノニクソー】LV1

【ダークディノニクソー】LV1

【破壊された城】LV2

バースト:【無】

 

 

できる事を可能な限り全て終え、ヒバナはそのターンをエンドとする。次は自信に満ち溢れているブスジマのターンだ。

 

 

[ターン05]ブスジマ

 

 

「メインステップ、先ずは2体目のテントモンを召喚。コアブースト」

 

 

ー【テントモン】LV1(2)BP2000

 

 

ブスジマの場に2体目のテントモンが出現。またコアを増やす。

 

そして彼はニタニタと笑いながら手札のカードをさらに引き抜いて………

 

 

「ブハハ、行くぞ七光り。オレ様はこのカード、アルケニモンを召喚!」

「!」

 

 

ブスジマの場に紫色の煙が立ち上がる。その中から勢い良く飛び出してきたのは、下半身がクモのような姿をした完全体のデジタルスピリット、アルケニモンだ。

 

 

ー【アルケニモン】LV3(4)BP9000

 

 

「アルケニモン、完全体のスピリットね」

「アタックステップ!!…ブハ、行ってこいアルケニモン!!」

 

 

エースたるスピリット、アルケニモンが颯爽と彼の指示を受け入れ、ヒバナの場へと突き進む。そしてこの時、いくつか発揮できる効果があって………

 

 

「アタック時効果、疲労状態のスピリット1体を破壊してコアブースト!」

「!」

「ダークディノニクソーを1体破壊だ!!」

 

 

アルケニモンが上半身にある手から闇のエネルギー弾を生み出し、それを疲労しているダークディノニクソー1体に向かって投げつけた。避ける術がなかったダークディノニクソーはそれに被弾し、爆発してしまう。

 

スピリットの破壊とコアブースト。これだけでもかなり強力なアルケニモンだが、それだけでは終わらなくて…………

 

 

「もう1つのアタック時効果!!…デッキから2枚オープンし、その中の完全体か究極体のデジタルスピリット1体をノーコスト召喚する!」

「追加でスピリットを召喚する効果!?」

 

 

デッキからカードがオープンされ、その中にある1枚のカードを見てブスジマはまた笑みを浮かべる。

 

当てたのだ。ノーコスト召喚の対処となるデジタルスピリットのカードを………

 

 

「聞いて驚け、見て叫べ!!……紫の完全体スピリット、マミーモンを召喚!!」

 

 

ー【マミーモン】LV2(3)BP7000

 

 

上空に渦巻くデジタルホールが出現し、その中より機関銃を携えた包帯まみれのミイラのようなデジタルスピリット、マミーモンが姿を現した。

 

 

「マミーモンはアルケニモンが場にいる時、BPが5000上がり、ダブルシンボルスピリットになる!!」

「!」

 

 

ー【マミーモン】BP7000➡︎12000

 

 

相棒であるアルケニモンの存在が、マミーモンを強くする。紫のオーラをその身に纏い、高BP複数シンボルというハイスペックなスピリットとなる。

 

 

「………アルケニモンのアタックはライフで受ける!」

 

 

〈ライフ5➡︎4〉ヒバナ

 

 

スピリットの破壊や召喚など、アタック中に様々な事をやっていたが、今はあくまでアルケニモンと言うスピリットのアタック中。

 

鋭い爪がヒバナのライフバリアを1つ引き裂いた。

 

 

「続け続けマミーモン!!…アタック時効果でダークディノニクソーのコア2つをリザーブに置き消滅!!」

「!」

 

 

止まらないブスジマ。マミーモンが機関銃を連射し、ダークディノニクソーを撃ち抜く。コアのなくなってしまったダークディノニクソーはたちまち消滅し、ヒバナのスピリットはこれで0となってしまう。

 

 

「さぁダブルシンボルの一撃だ!!」

「……ライフで受ける………きゃっ!」

 

 

〈ライフ4➡︎2〉ヒバナ

 

 

ヒバナのライフバリアもまたその機関銃に砕かれ、その数は2つとなってしまう。しかもブスジマの場のスピリットに、まだアタック可能なテントモンが2体存在する事から、このターンでの決着が予想されるが…………

 

 

「ライフが減った時、手札にあるマジックカード、シックスブレイズの効果を発揮!!」

「なに!?」

「ライフが3以下になった時に、手札からノーコストで使える!!…BP12000まで好きなだけスピリットを破壊させてもらうわ!!……破壊するのは当然テントモン2体!!」

 

 

ヒバナのカウンターマジックが発動。彼女の背後から6つの炎の弾丸が飛び交い、ブスジマのテントモン2体に直撃、爆散させる。

 

これでブスジマに攻撃する術は残っていなくて…………

 

 

「チッ……雑魚が、めんどくせぇカード握りやがって。ターンエンドだ」

手札:4

場:【アルケニモン】LV3

【マミーモン】LV2

【旅団の摩天楼】LV1

【旅団の摩天楼】LV1

バースト:【無】

 

 

予想外のカウンターマジックに腹を立てながら、ブスジマはそのターンを終える。次はヒバナのターンだ。依然ブスジマの有利には変わり得ないため、ここでなんとか巻き返したい所…………

 

 

[ターン06]ヒバナ

 

 

「ドローステップ時、破壊された城のLV2効果で1枚の代わりに2枚ドロー」

 

 

ヒバナは赤のネクサス、破壊された城により、このターンもより多くの枚数をドローする。

 

 

「メインステップ………先ずはディノニクソーを召喚!」

 

 

ー【ディノニクソー】LV1(1)BP1000

 

 

このターンの初めに召喚されたのは、色が黒くない普通のディノニクソー。そして直後にまた手札へと手を掛け、あるカードを1枚引き抜く…………

 

 

「行くわよ。これが私の新たなエースカード、古代怪獣ゴモラ!!…LV2!!」

「ッ……ゴモラ!?」

 

 

ー【古代怪獣ゴモラ】LV2(3)BP9000

 

 

地中を砕きながら出現した巨大な赤のシンボル。それが砕かれると、中より三日月のような形をしたツノを持つ大怪獣、ゴモラが出現した。

 

これは、ヒバナが己なりの考えで投入した、ウォーグレイモンに次ぐエースカードであって…………

 

 

「実戦では初陣だね、お願いねゴモラ!!」

 

 

ヒバナの言葉に応えるように、ゴモラは高らかと咆哮を張り上げる。

 

 

「ゴモラ………どうやら三大スピリットには属してないみたいだな。そんなスピリットでこのオレ様に勝つ気なのかよ」

「バーストをセットしてアタックステップ!!…ゴモラでアタック!」

 

 

このターンのアタックステップへと突入。ゴモラがやる気を見せるように両拳を叩きつける。そしてこの時、ゴモラもアルケニモンと同様に複数のアタック時効果を所有していて…………

 

 

「アタック時効果、先ずはマミーモンに指定アタック!!」

「バカか!!…やっぱり父親が凄いだけの雑魚だな。今のマミーモンのBPは12000!!…ブハハハ、9000しかないそのトカゲ野郎は返り討ちだぜ!!」

 

 

確かにこのままではゴモラは無駄に破壊されるだけで終わるが、わざわざそんな事をするわけがない。ヒバナはゴモラのもう1つの効果を発揮させる………

 

 

「ゴモラのもう1つのアタック時効果、ネクサス1つを破壊して1枚ドロー!」

「ッ……オレの旅団の摩天楼を破壊する気か!?」

「いや、私が破壊するのは、私の場にある破壊された城!!」

「はぁ!?」

 

 

ゴモラは突如ヒバナの方向へと振り向き、その背後にある巨大な城を破壊していく。自分のカードを自分のカード効果で破壊しているため、一見すると大損に見えるこの行為だが、実は違くて…………

 

 

「破壊された城の効果。破壊された時、BP10000以下のスピリット1体を破壊する!」

「!」

「BP9000のマミーモンを破壊!!」

 

 

破壊した城の天守閣を鷲掴みにし、マミーモンへとぶん投げるゴモラ。それは見事命中し、アルケニモンは天守閣の下敷きになって爆発してしまった。

 

 

「クソが、これが狙いか」

「名前に城を含むスピリットを破壊した事で、ゴモラは回復。さらにアルケニモンが消えた事でマミーモンのBPがダウン!!…BPは7000となり、BP9000のゴモラが上回ったわ!!」

 

 

疲労状態から回復状態になり、二度目の攻撃が可能となったゴモラ。しかもアルケニモンの喪失でマミーモンがパワーダウン。

 

負けじと機関銃をゴモラに連射するマミーモンであったが、全く通じず、尻尾で軽く薙ぎ払われ、爆散した。

 

 

「くっ……雑魚のくせにオレ様のアルケニモンとマミーモンを破壊しやがって………!!」

「アンタホントみみっちいわね!!……ゴモラで再アタック!!…効果で旅団の摩天楼を破壊して1枚ドロー!」

「……ライフで受ける」

 

 

〈ライフ3➡︎2〉ブスジマ

 

 

追い討ちを掛けるヒバナ。ゴモラは三日月状のツノから超振動波を放ち、旅団の摩天楼とブスジマのライフバリア1つを破壊した。

 

 

「私はこれで、ターンエンド!!……どう?…これが新しい私の、一木ヒバナのバトル!!」

手札:4

場:【古代怪獣ゴモラ】LV2

【ディノニクソー】LV1

バースト:【有】

 

 

ゴモラを軸に一気に形勢を逆転させたヒバナ。ディノニクソーをブロッカーに残し、そのターンをエンドとする。

 

次は再びブスジマのターンだが、中々上手い具合にやられてくれないヒバナにイラついているようで…………

 

 

[ターン07]ブスジマ

 

 

「メインステップ………このクソ雑魚野郎が、このオレ様を本気で怒らせたみたいだな」

「なんの実績もないくせによく言うわね」

「うるせぇ!!…オマエ如きがオレのスピリットをぶっ倒すなんて生意気なんだよ!!……金に物を言わせたこの最強カードで、今からぶっ倒してやる!!」

 

 

勝手にキレ散らかすと、ブスジマは手札に手を掛け、スピリットを展開していく。

 

 

「先ずはカッチュウムシを3体連続召喚」

 

 

ー【カッチュウムシ】

 

ー【カッチュウムシ】

 

ー【カッチュウムシ】

 

 

甲冑装着した小型の甲虫、カッチュウムシがブスジマの場に一気に3体も呼び出される。

 

 

「そしてこれがこのブスジマ様の最強スピリット!!……仮面ライダーシャドームーン!!」

「ッ……ライダースピリット!?」

 

 

ー【50th仮面ライダーシャドームーン】LV3(6)BP18000

 

 

空間を割るような音を立てながら、フィールドに稲妻が落ちる。その落ちた先に出現していたのは緑属性と紫属性の色を持つ、白銀のライダースピリット、シャドームーン。

 

ブスジマが全ての小遣いを注ぎ込んで手に入れた超一品のレアカードだ。

 

 

「どうだ驚いたか!!……オレ様はデジタルだけじゃなくてライダーも使う事ができるんだぜ!!……コイツの強さに、今更泣き出すんじゃらねぇぞ!!……召喚時効果、相手スピリット全てを疲労させ、その後疲労しているスピリットがいたら2枚ドロー!!」

「!」

「ブハハハ、ダークディノニクソーを疲労させて2枚のカードを引くぜ」

 

 

激レアライダースピリット、シャドームーンの眼光が光り輝き、そこから衝撃波が放たれ、唯一のブロッカーとして残っていたディノニクソーが疲労状態となり、フィールドに横たわる。

 

 

「アタックステップ!!……シャドームーンでアタック!!…その効果で疲労状態のスピリット1体を破壊する事で、相手ライフ1つをボイドに置く!!」

「!」

「ブハハ、そこの怪獣野郎にはくたばってもらうぜ!!」

 

 

〈ライフ2➡︎1〉ヒバナ

 

 

ライトセイバーのような武器を十字に振い、斬撃波を発生させるシャドームーン。ゴモラはそれに直撃してしまい、堪らず爆発四散する。

 

そして、その十字の斬撃波はゴモラを倒しても尚止まる事を知らず、ヒバナのライフバリアまでをも破壊。遂にその数は1つとなる。

 

 

「その後、自分のスピリット1体を破壊する事で回復。3体いるカッチュウムシ1体を破壊してシャドームーン回復!!」

 

 

複数且つ強力な効果を持つのは流石レアカードと言った所か。コストとなったカッチュウムシが1体粒子となり消え失せ、シャドームーンが回復、つまりこのアタックの後でも攻撃が可能となる。

 

もっとも、ヒバナの残りライフは1。このまま行けば回復させた必要もないのだが…………

 

それはあくまでも「このまま行けば」の話であって…………

 

 

「ブハハハ!!!……やっぱりオマエはとんだ出来損ないだよな!!…そんな弱っちぃから誰からも認められないんだよ!!……決めちまえシャドームーン!!」

「………」

 

 

シャドームーンがゆっくりと近づいて来る中、少しだけ静寂が横切ると、ヒバナはその口を開き、笑ってみせる…………

 

 

「はは、確かに。私はお父さん「一木ハナビ」みたいにどんな人にも認められる、最高のカードバトラーにはなれないかもしれない」

「あぁ?…んだよ急に」

「でも、気がついたんだ、私は私。お父さんは、私じゃない。私の存在価値は周りじゃなくて私だけが決めるモノ………そして、そんな周りなんかよりも、もっと凄い人達に、私はもう認められた」

 

 

ヒバナはオーカやヨッカ、ミツバ、アオイ、フグタ、後一応イチマル。これまでバトスピで巡り会ってきた仲間たちの顔を思い出していく。

 

みんなが認めてくれて、励ましてくれたからこそ、今の自分がいる事をブスジマに主張していくと、その伏せていたバーストカードを発動させる。

 

 

「ライフ減少により、バースト発動!!」

「!?」

「ドラグーンシュート!!……効果でトラッシュからコスト6以下の赤か紫のスピリットを復活させる!!……甦れ、ゴモラ!!」

 

 

ー【古代怪獣ゴモラ】LV3(5S)BP12000

 

 

勢い良く反転したバーストカードの効果により、古代怪獣ゴモラが大地を砕き、咆哮を張り上げながら復活を果たす。

 

 

「ブハ、今更そんなスピリットで何ができる??……BP12000じゃシャドームーンには敵わないし、そもそも1回ブロックできたとしても、オレにはまだまだ攻撃できるスピリットが残っているんだぜ!!」

 

 

ゴモラが回復状態で再召喚されるも、スピリットの数とヒバナの残りライフから逆算して己の勝利を確信するブスジマ。

 

だが、その確信はヒバナが手札から引き抜いた1枚のカードで揺らぐ事となる…………

 

 

「フラッシュ煌臨発揮!!……対象は復活したゴモラ!!」

「な、このタイミングで煌臨だと!?」

 

 

ソウルコアをトラッシュに置き、スピリットを更なる姿へと成長させる効果煌臨。

 

まさかまさかのスピリットが復活したこのタイミングだが、一木ハナビの娘、一木ヒバナが煌臨で呼び出すスピリットと言ったら、アレしかいない…………

 

 

「赤の究極体スピリット、ウォーグレイモン!!」

 

 

ー【ウォーグレイモン】LV3(4)BP16000

 

 

爆炎に包まれるゴモラ。その中で姿形を大きく変えていく。

 

そして、炎を鉤爪で切り裂きながら現れたのは、ヒバナのエーススピリットであるデジタルスピリットの最上位「究極体」のウォーグレイモン。

 

 

「ウォーグレイモンの煌臨時効果、BP15000までスピリットを好きなだけ破壊する!!……カッチュウムシを全滅!!」

「!!」

「大玉ガイアフォース!!」

 

 

ウォーグレイモンは登場するなり両掌に力を集中させ、太陽を模した炎の塊を生成。それをブスジマの場に投げつけ、2体のカッチュウムシを焼却した。

 

これでブスジマの場に存在するスピリットは、今現在アタック中のシャドームーンのみとなる。

 

 

「シャドームーンのアタックはこのウォーグレイモンがブロック!!」

 

 

ヒバナの指示を受け、ウォーグレイモンがシャドームーンを迎え撃つ。体格差を活かして肉弾戦に持ち込むも、シャドームーンはウォーグレイモンの一撃一撃を難なくかわしていき、その都度カウンターを決めていく。

 

 

「ブハハハ!!……シャドームーンのBPは18000、ウォーグレイモンは16000!!……勝負あったな!!」

「アンタ、本当負けフラグ立てるの好きね!!……フラッシュマジック、ダイナパワー!!」

「なぁ!?」

「この効果でウォーグレイモンのBPは合計19000!!…シャドームーンを上回る!!」

 

 

ー【ウォーグレイモン】BP16000➡︎19000

 

 

BPを3000上昇させる赤のマジックカードダイナパワー。その効果を受けて赤いオーラを身に纏ったウォーグレイモンがシャドームーンに反撃………

 

鉤爪の一撃でその手に持つライトセイバーを弾き飛ばす。思わず飛んでいった武器に意識を向けてしまったシャドームーン。ウォーグレイモンはその隙を突いてトドメの一撃を腹部にお見舞いする。

 

最後は呆気なく力尽き、シャドームーンは大爆発を起こした。

 

 

「う、う、う、ウソだァァァー!!?!……このオレ様のスピリットが、一木ヒバナのウォーグレイモン如きに全滅させられただと!?」

「ウォーグレイモンだけのお陰じゃない。このターンでのカウンターはゴモラが前のターンで場を荒らし回ってくれたからできた事。私のデッキは、もうウォーグレイモンだけに頼るようなデッキじゃない」

「くっ……クソが、ターンエンドだ」

手札:3

バースト:【無】

 

 

完璧なカウンターにより、完全な敗北を悟るブスジマ。苦渋の表情を浮かべながらそのターンをエンドとする………

 

 

[ターン08]ヒバナ

 

 

次はヒバナのターン。リフレッシュステップが巡って来ると、疲労していたディノニクソーとウォーグレイモンが回復状態となり、立ち上がる。

 

 

「アタックステップ!!……行け、ディノニクソー!!」

「ライフだ!…ライフをもらいやがれぇぇぇぇえ!!!」

 

 

〈ライフ2➡︎1〉ブスジマ

 

 

メインステップはすっ飛ばし、そのままアタックステップへと移行する。ディノニクソーが走り出し、お腹のチェーンソーでブスジマのライフバリアを1つ砕いた。

 

これで残り1つ。締めは当然あのスピリットだ。

 

 

「ウォーグレイモン!!」

 

 

ウォーグレイモンが鉤爪を構え、走り出した。狙うはもちろんブスジマの最後のライフだ。スピリットをカウンターにより失ってしまった彼にはもう反撃の術は残っていなくて…………

 

 

「クソがァァァ!!……ライフで受けてやる!!」

 

 

〈ライフ1➡︎0〉ブスジマ

 

 

ウォーグレイモンの鋭い鉤爪による強烈な一撃が、ブスジマの最後の砦を撃破。

 

よってこのバトル、一木ヒバナの勝利だ。彼女の勝利を知らせるかの如く、ブスジマのBパッドからは「ピー……」と寂しげな機械音が鳴り響く。

 

 

「………クソが、このデッキ、使えねぇ」

「…………」

 

 

敗北が認められず、自分のデッキのカード達に横暴な発言をするブスジマ。ヒバナはそんな彼を憐れんだような目で見つめる。デッキのカード達が可哀想、とでも言いたげだ。

 

 

「……私はもう、後ろは見ない。好きなカードと一緒に、バトスピを楽しむんだ。オーカみたいに」

 

 

一緒に戦ってくれたデッキのカード達を固く握りしめながら感謝の言葉を口にするヒバナ。

 

きっとそう言ったブスジマとの想いの差が、勝敗を分けたに違いない。

 

彼女はその後も試合もゴモラとウォーグレイモン、2体のエースを使い分け、8人しか抜けられない予選と言う名の関門を突破したのは、言うまでもない。

 

今日は界放リーグジュニアクラス。今はその予選の時間帯、ジークフリード区にあるジークフリードスタジアムの地下では、この他にも、中学生達による熱い試合が展開されていて…………

 

 

 




次回、第16ターン「荒波呼ぶズドモン、脅威のデッキアウト」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。