界放リーグジュニアクラス、その予選がジークフリード区のジークフリードスタジアムの地下で行われている。皆今日という日のために作り上げたデッキを信じ、激闘へと臨む。
予選Cブロックの鉄華オーカミもまたその1人。初参戦だからとて緊張しているわけではないが、そわそわしているのか、予選が始まる前にデッキを取り出し、気を紛らすように全集中で中身を再確認する。
しかし、そんな彼の集中を崩してしまう存在が1人…………
「試合前に己のデッキを再確認するか。初歩的だが、いい心掛けだな」
「………邪魔」
獅堂レオンがその横で常に口を開いていた。どこに逃げても彼から寄ってくるので既にオーカは諦めている。
「まぁそう言うな。オマエのCブロックとオレのDブロックは同じゾーンで行われるのだからしょうがない所もある」
「1人でいろよ」
飄々とした態度で淡々と核心を突くオーカ。腕を組み、偉そうにほくそ笑みながら「1人は嫌だ」とレオン。
オーカは最後に何もかもが面倒くさくなったので「そっか」と一言。
「………負けたな。Mr.ケンドー」
「ん?」
「あの時一眼見てわかった。奴の正体はオマエが働いているアポローンの店長なんだろ?」
唐突に元モビル王である赤い仮面のカードバトラー「Mr.ケンドー」の話題を振るレオン。以前のオーカと同様、一眼見ただけで彼が九日ヨッカである事を看破していた様子。
オーカもこれと言って特に慌てる様子もなく「うん、合ってる」と薄いリアクションで返す。
「業者撥水の理、猛き者もついには滅びぬと言うが、奴が三王でいた期間は特に短かったな。オマエも、デッキアウトには気をつけろよ。油断していると寝首をかかれるぞ」
「…………オマエ「首を洗って待ってろ」の事は「手を洗って待ってろ」とか言ってたクセに、そんなよくわからない言葉は言えるんだ」
「フ……オレの脳は極端なんだ」
「なんで偉そうなんだよ」
こんなやり取りをしていく内に、予選の試合開始のアナウンスが耳に入って来る。
レオンは最後にオーカと互いに健闘を祈り合おうとするも、オーカはそれをフルでシカト。こうしてそれぞれの予選ブロックでの戦いが幕を開けたのだった。
******
「行け、バルバトス第4形態!!……アタック時効果でダブルシンボル!!」
「ら、ライフで受ける………う、うわァァァァー!?!」
あれから暫く時間が経ち、これは予選の3試合目。
黒々とした鈍器メイスを武器に持つバルバトス第4形態がそれを振い、対戦相手の残ったライフバリアを全て打ち砕き、彼に勝利を齎した。
「なんだよあのモビルスピリットとそれを使うチビ、強すぎんだろ」
「………聞いた事がある。ジークフリード区には紫属性のモビルスピリットを操る赤い悪魔がいるって………まさかアイツの事なんじゃ」
オーカが勝ち星を上げた直後。周囲からそんな声が囁かれる。最初は無名だったオーカも、今ではすっかり有名人になってしまっている様子。
「よし、次で最後か」
しかしそんな事、本人は全く持ってどうでも良さそうにしている。彼としてはバトスピを楽しみたいだけなのだろう。
そんな予選ブロック決勝まで勝ち残った鉄華オーカミ。その決勝を争う対戦相手が、バトル場に立つ彼の前に現れて…………
「どーもでーす!」
「……?」
「あら、挨拶もまともにできないくらいコミ障な奴が、この僕の予選ブロック決勝の相手かよ」
「あぁ、ごめん。よろしく」
その少年は凄まじくチャラかった。チャラい割には挨拶のするしないを気にしている。オーカも彼のテンションがよくわからず、遅れて挨拶を返した。
「僕の名前は「南川ミチル」………まぁ気軽にミッチーって呼びなよおチビちゃん」
「嫌だ」
「あぁ?…生意気だな、テメ歳上に対する礼儀も知らないのかよ。オレが「呼びなよ」って言ったら、それはもうオマエは「YES」と答えるしかないんだよ普通」
「めんどくさ」
おそらく3年であろうこの南川ミチルと言う少年。先程から上から目線で高飛車な態度が目立つ。が、このくらいは全然平気だ。何せオーカはもっと上から目線な奴(レオン)で慣れているのだから………
「まぁいい!…どうせこのバトルが終わったら君の事なんて早々に忘れているだろうからね。今年こそは必ず界放リーグで優勝して、可愛い女の子達からキャーキャー言われるぞ!!」
「負けられないのはオレも同じだ。約束は守る」
ミチルの動機はかなり不純なものだが、この大会に賭ける想いはどうやら本気なようだ。Bパッドを取り出してバトルの準備を終わらせる。
オーカもまた負けられない理由がある。ヒバナ、イチマルとの約束を思い出しつつ、自身もまたBパッドを展開、バトルの準備を行った。
「じゃあ始めるか。ピーピー泣いても後悔しないようにね、おチビちゃん」
「泣くのはどっちだろうな。行くぞバルバトス、バトル開始だ!!」
………ゲートオープン、界放!!
鉄華オーカミと南川ミチルによるCブロック決勝戦が、コールと共に幕を開ける。
先攻はオーカ、緊張を一切感じさせない様子でターンを進めていく。
[ターン01]オーカ
「メインステップ………創界神ネクサス、鉄華団の団長オルガ・イツカを配置」
ー【オルガ・イツカ】LV1
オーカが早々に配置したネクサスカードは鉄華団の団長オルガ。背後には何も出現しないものの、これがあるだけでオーカの鉄華団デッキは戦いの幅が広がる。
配置時の神託も行ったが、今回の対象カードは0枚。従って、その上に乗るコア数も0からのスタートだ。
「ターンエンド。オマエの番だ」
手札:4
場:【オルガ・イツカ】LV1
バースト:【無】
「ふ〜〜ん。紫のデッキか」
創界神ネクサスで足場を固めると言う、先行の第1ターン目としてはかなり幸先の良いスタートを切ったオーカ。一度ミチルへとターンを渡す。
そんな彼はオーカとはまた違った余裕を見せつけながらターンを開始した。
[ターン02]ミチル
「メインステップ。緑のスピリット、ヤン・オーガをLV1で召喚」
ー【ヤン・オーガ】LV1(1)BP3000
緑のシンボルが砕け、中より蜻蛉人間と呼べる姿をしたスピリット、ヤン・オーガが出現。
「次いでにバーストを伏せて、ターンエンドだ」
手札:3
場:【ヤン・オーガ】LV1
バースト:【有】
罠のカード、バーストカードを裏側で伏せると、ミチルはそのターンを終了とする。再びオーカにターンが巡ってくる。
[ターン03]オーカ
「メインステップ……鉄華団モビルワーカーを2体、それぞれLV1と2で召喚」
ー【鉄華団モビルワーカー】LV2(3)BP3000
ー【鉄華団モビルワーカー】LV1(1)BP1000
銃火器を備えた小型の車両、モビルワーカーが2機出現。創界神であるオルガに神託でコアも追加されていく。
「アタックステップ……早速いくぞ、LV2のモビルワーカーでアタック」
伏せられるバーストなど一切警戒しない迷いなき攻撃宣言。モビルワーカーの1体が地を駆け抜けていく。
「ヤン・オーガでブロックはしない。ここは華麗にライフで受けよう!!」
〈ライフ5➡︎4〉ミチル
モビルワーカーの渾身の体当たりがミチルのライフバリア1つに炸裂。先制点を与えるが、その先制点こそ、ミチルの伏せていたバーストカードの条件であって…………
「ライフ減少後のバースト発動、選ばれし探索者アレックス!」
「!!」
「効果で自身をノーコストで召喚。そしてその後アタックステップを強制終了させる」
ー【選ばれし探索者アレックス〈R〉】LV1(1)BP4000
バーストカードが反転すると共に紫色のフードを深く被った紫髪の人型スピリットが出現。その効果により、オーカはこのターンにこれ以上のアタックは不可能となって…………
「………ターンエンド」
手札:3
場:【鉄華団モビルワーカー】LV2
【鉄華団モビルワーカー】LV1
【オルガ・イツカ】LV1(2)
バースト:【無】
普段なら序盤から速攻を仕掛ける鉄華団デッキのオーカ。しかし今回は汎用性の高い防御カード、アレックスに道を阻まれる。
そして帰って来たミチルの3ターン目、彼のデッキはここで加速する。
[ターン04]ミチル
「メインステップ……アレックスの効果、自身を疲労させて1枚ドロー」
早々にアレックスの効果を使用するミチル。アレックスは膝を突くと、彼に1枚ドローの権限を与え、ドローさせる。
そのドローを視認するが、余程良いカードだったのか、ニヤケが取れなくて……………
「この手札、完璧過ぎる。やはり、今年の界放リーグで優勝するのはこの僕、超絶イケメンバトラーの南川ミチル!!」
「いいから早くしろよ」
デッキの回転率に感動するミチルは、その後もニヤケが取れないままターンを進めていく。
「ヤン・オーガをLV3にアップ!!…さらに緑マジック、ライフチャージを発揮。効果でヤン・オーガを破壊」
「ッ!?……自分のスピリットを破壊!?」
せっかくLVを上げたヤン・オーガを、マジックカードの効果によって強制的に自爆させる。
しかし当然そこにも狙いはあって…………
「ライフチャージはその後、リザーブにコアを3つ追加。でもってヤン・オーガLV3破壊時効果でさらに3つのコアをリザーブに追加!!」
「ッ………コアが6個も」
ヤン・オーガとライフチャージ。ここから繰り出されるコンボは合計6個のコアブースト。
バトルスピリッツのゲームにおいて、一度に6つのコアを生み出すこのコンボはあまりにも異端である。
「そして増えたコアを使って、僕はコイツを呼ぶ」
「…………」
もちろん、そのコアを使用しなければコアブーストした意味がない。
これだけのコアブースト量、生半可なスピリットは出て来ないだろう。ミチルがさらに手札からカードを切ると、それだけで緊張感が走り出した。
「そのハンマーは最強の印!!……青の完全体スピリット、ズドモンをLV2で召喚!!…アレックスは消滅だ」
「!」
ー【ズドモン】LV2(4)BP11000
アレックスが消滅し、この場から消え去るも、ミチルの背後から荒波が打ち寄せ、そこから新たなるスピリットが地上へとダイブする。
出現したのは、まるで雷を呼ぶ神であるトールが所持しているようなハンマーを手に持つ、甲羅を背負った怪獣。
その名はズドモン。青属性のデジタルスピリットで、最強とは一歩手前の完全体である。
「デジタルスピリット………今度は青か」
「僕のデッキに色は関係ない。入れてるのはズドモンと、コアブーストとただひたすらに耐え抜くカード達のみ。僕はさらにバーストを再びセットする」
このズドモンに余程自信がある様子のミチル。そのカードに手を掛けると、アタックステップを宣言する。
「アタックステップ!!……ズドモン、やっちゃいなよ」
ズドモンはミチルの指示を受け入れ、雄叫びを上げると、ハンマーを構えて攻撃の姿勢に移る。
「アタック時効果【大粉砕】!!……ズドモンのLV×5枚のカードを破棄!!」
「ッ……デッキ破壊系」
「今のズドモンのLVは2。よって10枚のカードを蹴散らせ!!」
ズドモンの効果はかの有名なMr.ケンドーもやられたデッキ破壊効果。ハンマーを勢いよく地面に叩きつけると、それだけで稲妻が迸ってオーカのデッキを襲い、上から10枚をトラッシュへと追いやった。
まだまだ序盤だが、ここでミチルの狙いはライフではなく、デッキである事を理解する。
「さらにその破棄したカードの中にバーストカードがあれば、相手スピリット1体を問答無用で破壊する!!」
「!」
「LV2のモビルワーカーを破壊!!……ハンマースパーク!」
かなり速いと言える速度で走り出すズドモン。モビルワーカーに接近し、ハンマーに稲妻を纏わせ叩きつける。弱小スピリットであるモビルワーカーがその一撃に耐えられるわけもなく、無惨にもこの場で爆散してしまう。
「………そいつの攻撃はライフで受ける」
〈ライフ5➡︎4〉オーカ
今度はオーカのライフバリアにそのハンマーを打ち付ける。残り4つと、まだまだ多いが、ミチルが見ているのはオーカのライフではなくデッキであるため、この行為自体に大きな意味を持つわけではない。
「ターンエンド。さぁ、デッキがなくなる恐怖に打ち震えろ!!」
手札:2
場:【ズドモン】LV2
バースト:【有】
「………」
相手のライフではなく、デッキを狙う戦法、デッキアウトの存在は知っていたが、実際に対面するのは初めてだ。
そう考えるオーカだったが、直ぐにその思考が鈍る事となる。
アイツの顔が見えたからだ。
「よぉ鉄華。早速予選を突破して来たぞ、全くつまらんバトルをする奴ばかりだった。そっちはどうだ?」
「見て別れよ獅堂、絶賛バトル中だ。邪魔だからどっか行ってろよ」
いち早く予選を突破して来たレオン。バトル場の横からオーカに声を掛けた。相変わらず偉そうだ。
「アイツ、確か現ジュニアNo. 1の獅堂レオン?……あのおチビちゃん、奴と知り合いだったのか」
「鉄華。そんな小物なんぞ、さっさと倒してしまえ、貴様はこのオレと熱いバトルを本戦でしなければ行けないのだからな」
「こ、小物だと!?……獅堂レオン、オマエはこの僕の事を小物だと言うのか!!」
さり気なく侮辱されたミチル。バトル場から身を乗り出し、レオンに物申す。
「それはそうだろう。何せ、貴様のそのスピリットからは貴様の魂も想いも何も感じないのだからな!!」
「はぁ!?」
またまた偉そうな態度で、今度はズドモンを指で指しながらそう告げた。
「バトルスピリッツとは、謂わば魂と魂のぶつかり合い。バトラーの想いと魂を全てスピリットに捧げた者が勝利を手にする。いくら強者であろうとも、ただ勝つためだけにスピリットを使う奴なぞ論外!!」
「なんだとぉ!?」
煽りに煽られ、キレ気味になるミチル。反応すると言う事は図星であると言う事でもある。どうやらズドモンにはこれと言った思い入れはない模様。
そんな2人に「コイツらさっきからうるさいな」とオーカ。
正直レオンは横にいるだけでうるさくて面倒だが、バトルはこのまま続行するしかない。
「はい。言う事は散々言ったろ、じゃあオレのターンな」
「見とけよ獅堂レオン!!……今から僕がこのチビをぶっ飛ばして、僕の方が正しいと言う事を証明してやる!!」
「ああやってみるが良い。鉄華はこのオレがライバルと認めた唯一無二の男。倒せるものならやってみろ」
めちゃくちゃにハードルを上げられながらも、鉄華オーカミは己の巡って来たターンを開始していく。
[ターン05]オーカ
「メインステップ、先ずは3体目のモビルワーカーを召喚。オルガにコア1つを神託……さらにバーストをセット」
ー【鉄華団モビルワーカー】LV1(1)BP1000
3体目となるモビルワーカーが出現。これでオーカの場には2体のモビルワーカーとオルガ。紫シンボルは合計で3つだ。
つまりフル軽減でアイツを呼び出せる…………
「大地を揺らせ、未来へ導け……ガンダム・バルバトス第4形態、LV3で召喚!!」
「!?」
ー【ガンダム・バルバトス[第4形態]】LV3(4S)BP12000
「不足コストはモビルワーカー1体から全てのコアを取り除いて確保、よって消滅する」
2体いる内の1体のモビルワーカーが消滅してしまうが、その代償として上空から白い装甲と黄色い二角なツノを持つ紫属性のモビルスピリット、バルバトス、その第4形態が姿を現した。
「……今現在、モビルスピリットは赤、青、白にしか存在しない。まさかおチビちゃんが噂の紫属性のモビルスピリット使い……!?」
まるで本当にいたのかとでも言いたげな様子で驚愕するミチル。そんな彼に合わせる事なく、オーカはバルバトスと共にアタックステップを駆け抜ける…………
「アタックステップ、その開始時にオルガの【神技】を発揮!!…コアを4つ取り除き、トラッシュから鉄華団カードを召喚する」
「!」
「デッキ破壊をしてもらってちょっと助かったよ。コイツはそれがなければ落ちなかったから、来い、鉄華団のエースパイロット、三日月・オーガス!!…バルバトス第4形態に直接合体!」
ー【ガンダム・バルバトス[第4形態]+三日月・オーガス】LV3(4S)BP18000
ここで鉄華団デッキの伝家の宝刀が決まる。オーカのエース、第4形態がパイロットの三日月と合体し、その力を数段アップさせる。
これで準備は整った。第4形態は武器である黒い鈍器、メイスを手に構える。
「アタックだ、バルバトス!!」
背部のスラスターを逆噴射させ、低空で地を駆け抜けるバルバトス第4形態。この瞬間に発揮できる効果がいくつかあって………
「アタック時効果でズドモンからコア2つをリザーブに置き、そのコアを三日月の効果でトラッシュに送る!!」
「!」
ー【ズドモン】(4➡︎2)LV2➡︎1
バルバトス第4形態によるメイスの一撃がズドモンに襲いかかる。ズドモンはハンマーを盾にそれをガード、それなりのダメージは受けたものの、消滅は免れた。
「前のターン、アレックスごと消滅させて全てのコアをズドモンに置いたのが功を奏したか」
レオンもここは冷静に解釈する。腐っても彼は予選を勝ち上がる実力者、紫属性を相手するに当たって、やはりそれなりに考えていた様子。
「生き残っても、このターンでライフを全て砕けば関係ない。バルバトス第4形態はLV3の時、シンボルを1つ増やす!……三日月のシンボルと合わせて3つのシンボルだ」
「ッ……トリプルシンボルか」
今のバルバトス第4形態は一撃で3つのライフを砕く事ができる。ズドモンが疲労状態である今、ミチルはこれをライフで受ける他なくて………
「ライフで受けよう!!………ぐっ」
〈ライフ4➡︎1〉ミチル
バルバトス第4形態のメイスによる強烈な一撃が、今度は彼を襲う。そのライフは一気に3つ砕け散り、遂に残り1つまで追い詰められた。
オーカとしては、後は場に残っている最後のモビルワーカーで攻撃するだけだったが…………
「だけど全ては計算通り、狂いはしない!!……バースト発動、選ばれし探索者アレックス!!」
「!」
「効果で召喚し、このバトルの終了がアタックステップの終了となる!!」
ー【選ばれし探索者アレックス〈R〉】LV2(2)BP6000
ここに来て再びバースト、再びアレックス。紫のフードを深く被った少女が、又してもオーカのアタックステップを強制終了。何をしても、もうオーカはこのターンでのアタックはできない。
「………バトル終了時、第4形態の効果でトラッシュから第1形態を召喚。不足コストは第4形態のLVを2に下げて確保………オルガに神託してターンエンド」
手札:1
場:【鉄華団モビルワーカー】LV1
【ガンダム・バルバトス[第1形態]】LV1
【ガンダム・バルバトス[第4形態]+三日月・オーガス】LV2
【オルガ・イツカ】LV1(1)
バースト:【有】
紫のシンボルが砕け散り、肩装甲や武器を持たない、バルバトス始まりの形態、第1形態が出現するが、それを出したところでアレックスはどうにもできない。
オーカはそのターンを終了する。
「調子に乗りやがって。紫のモビルスピリットだろうがなんだろうが、この僕のズドモンの敵じゃないって事を思い知らせてやる」
実際、残りライフが1とは言え、ズドモンを仕留められずにミチルへとターンが返って来るこの状況はオーカにとってかなり不味い。
「僕のターンだ!!」
しかし、最早どうしたってこの結果は覆らない。ミチルのターンが再び幕を開けていく…………
[ターン06]ミチル
「メインステップ……アレックスの効果、疲労させてドロー。戦竜エルギニアスをLV1で召喚」
ー【戦竜エルギニアス】LV1(1)BP1000
青い牛のようなスピリット、エルギニアスがその姿を見せる。青のスピリットだが、赤としても扱える得意なスピリットだ。
「マジック、グリードサンダー!!…コスト5以下まで好きなだけスピリットを破壊、散りなよ、モビルワーカー、バルバトス第1形態!!」
「!」
メインステップ中に発揮されるマジックカード。迸る電撃がモビルワーカーとバルバトス第1形態に直撃、それらを爆散させる。
「さらにマジック、双光気弾!!…バルバトス第4形態の付いているパイロットブレイヴを破壊!」
「………」
ー【ガンダム・バルバトス[第4形態]】LV2
ミチルが使った2枚目のマジックの効果により、オーカのBパッド上から三日月・オーガスのカードがトラッシュへと送られる。それによりバルバトス第4形態は弱体化。
「最後にズドモンをLV3にアップ!!……これで【大粉砕】によって破棄できる枚数は3×5で15枚だ!!」
ー【ズドモン】(2➡︎6)LV2➡︎3
LVアップによって力が増幅。それをアピールするかのようにズドモンは雄叫びを上げる。オーカのデッキの残り枚数は精々20枚程度。一撃でほぼ全てのデッキが飛ぶことになる。
「今更後悔しても知らないぞ、全部オマエが弱いのが悪いんだからな!!……アタックステップ!!……ズドモンでアタック、【大粉砕】で15枚破棄だ!!」
「ッ……デッキが」
力強くハンマーを地面に叩きつけ、稲妻を発生させるズドモン。それがまたオーカのデッキを破棄。残り10枚を切った。
さらに、破棄されたカードの中にはバーストカードも確認できて…………
「バーストカード確認!!……追加効果でバルバトス第4形態を問答無用で破壊だ!!」
「ぐっ……バルバトス!」
さっきのお返しと言わんばかりに、ハンマーをバルバトス第4形態に叩きつけるズドモン。バルバトス第4形態は武器であるメイスでガードするも、その一撃はより強力なものだったが、それごとバルバトス第4形態の装甲を打ち砕き、吹き飛ばして爆散させた。
これでオーカの場のスピリットは0。カードもオルガのみだ。
「そして、ここで君に絶望を与える!!…次のターンはない、フラッシュマジック、爆砕轟神掌!!」
「!」
「効果でズドモンを回復!!……つまりこのターン、もう一度大粉砕が使えるってことだァァァァァァー!!」
「そっか」
オーカのリアクションはとても薄いが、これはとてつもなくヤバい状況だ。
つまり、このバトル中にアタック中のズドモンを処理しなければ、二度目の大粉砕で今度こそオーカのデッキは完全に消し飛ぶ。オーカもその事は理解しているのだろうが、慌てる事はなく、いつものように冷静な表情を見せている。
「アタックはライフで受ける………ッ」
〈ライフ4➡︎3〉オーカ
場のスピリットがいない今、オーカはそれをライフで受ける他選択肢がなかった。ズドモンの強烈なハンマーの一撃がそのライフを3にする。
そしてここでオーカの頼みの綱であるバーストが発動して………
「ライフ減少後のバースト発動!!」
「なに、おチビちゃんもライフ減少後のバースト!?」
「あぁ、初陣だ。バルバトス第3形態!!」
ー【ガンダム・バルバトス[第3形態]】LV2(3)BP6000
バーストカードが勢い良く反転、そここら姿を現したのは新しいバルバトス、その与えられた数字は3。右手のライフル銃と左腕のワイヤーアームが印象に残る。
「バルバトス第3形態の効果、召喚後、手札かトラッシュにある鉄華団ブレイヴ、鉄華団ネクサスを1コスト支払って召喚、配置する」
「!」
「散々増やしてもらったからな………異次元の底より現れろ、鉄華団の母艦、イサリビ!!」
ー【イサリビ】LV1
下に伸びた異次元の渦が現れると、バルバトス第3形態はその中に自身のワイヤーアームを伸ばす。そして何かを引っ掛けると、釣りの要領でそれを引っ張り上げる…………
そしてその中から現れたのは濃ゆい紫色をした母艦、イサリビ。オーカの背後へと配置される。
「さらに、鉄華団ネクサスが配置された時、トラッシュにあるマジックカード、革命の乙女の効果発揮!」
「なに、トラッシュから効果を発揮だと?」
「このカードを手札に戻す」
デッキ破壊で散々増えたトラッシュのカードを巧みに使い、複雑な戦術を披露するオーカ。しかし、ここまでの連続効果発揮は確かに見事であると言えたが…………
「フ……実に見事だ。だが、それだけだろ?」
「…………」
「ハッハッハ!!……言い返す言葉もないか!!……終わりだ、回復したズドモンで再アタック!!……【大粉砕】!!」
見応え抜群の連続効果発揮も、デッキ破棄対策ができなければ意味を成さない。ズドモンが今一度ハンマーで地面を叩きつけ、稲妻を発生させる………
そしてその稲妻はオーカのデッキを捉え……………
その残ったデッキのカード全てをトラッシュへと追いやった。彼のデッキは遂に力尽きて0枚となってしまったのだ…………
「ハッハッハ!!……そうだよな、オマエみたいな奴が僕に勝てるわけないよな!!」
完全に勝ちを確信。高笑いするミチル。
しかし、オーカの表情は何故か至って冷静。その後もフラッシュタイミングでマジックカードを切る。
「まだバトルは終わってないぞ。フラッシュマジック、革命の乙女」
「あ?」
「このターンの間、オマエのスピリット全てはアタックかブロックする時、その上のコア1つをトラッシュに置かなければならない」
「なんだよその効果!!……エルギニアスが殴れなくなっただけで意味ないじゃん!!……最後の悪足掻きってか!!」
「この攻撃は、ライフで受ける」
〈ライフ3➡︎2〉オーカ
さっき手札に戻したマジックカード、革命の乙女の効果を発揮させるが、フラッシュ効果ではエルギニアスの攻撃を封じる程度しかない。
ズドモンが三度オーカのライフバリアを砕く。2つ残ったが、このライフもデッキアウトで敗北して仕舞えば0にも等しくなる。
「ターンエンド。ドローするカードがないバトラーはその時点で負け。さぁ敗北者、絶望のスタートステップを宣言しろよ」
手札:0
場:【ズドモン】LV3
【選ばれし探索者アレックス〈R〉】LV2
【戦竜エルギニアス】LV1
バースト:【無】
オーカのデッキは0。そう思い、このターンのエンドを宣言するミチル。
これで間違いなく自分の勝ちだ。そう確信していた。
だが…………
「弱いカードバトラーは皆決まって視野が狭い」
「なに?」
「鉄華のデッキをよく見てみろ」
「は?」
そう言ったのはオーカ最大のライバルであるレオン。彼にそう言われ、ミチルはオーカのBパッドにセットされたデッキゾーンへと目を向ける………
するとそこには信じられない光景が見えて…………
「なんだと………何故デッキのカードが存在しているんだ。しかもたった1枚だけ……!?!」
そう。このターン、確かにデッキのカード全てを吹き飛ばしたはずだったが、何故かオーカのBパッドにはデッキのカードが1枚だけ残されていたのだ。
唖然とするミチルに、オーカが説明する。
「革命の乙女の更なる効果だ。このカードは使用した後、トラッシュではなく、デッキの下に戻る」
「!?!」
「もっとも、デッキが0枚じゃあ上も下も関係ないけど」
「………さ、さっきのフラッシュマジックはそれが目的だったのか!?」
オーカが最後に使ったマジックカード「革命の乙女」…………
そのカード効果により、革命の乙女のカード自身がオーカの最後のデッキのカードとなったのだ。これにより、デッキアウトは免れた。
とどのつまり、オーカに再びターンが巡って来る…………
「ドローするカードさえあれば、文句ないだろ。オレのターンだ」
「!!」
相手の手札は0。ブロッカーはエルギニアスの1体のみ、この奇跡的に生まれた絶好の機会を逃すまいと、オーカはターンを進めて行った。
このターンのドローカードは当然、革命の乙女だ。
[ターン09]オーカ
「アタックステップ!!……行け、バルバトス!!」
速攻でアタックステップまで移行させ、オーカはバルバトス第3形態でアタック宣言を行う。
「倒されてたまるか、エルギニアスでブロッ………」
「フラッシュマジック、革命の乙女!!……コアが1個しかないエルギニアスはアタック、ブロックできない!!」
「なぁッ!?」
ここでも発揮されるマジック「革命の乙女」…………
エルギニアスは動こうにも動けば維持コアがなくなるため身動きが取れなくなる。
終わりだ。後はラストコールをするのみ…………
「そ、そんなこの僕のパーフェクトなデッキが負けるなんて………ら、ライフで受ける……うァァァァーー!?!」
〈ライフ1➡︎0〉ミチル
バルバトス第3形態がワイヤーアームを鞭のようにしならせ、ミチルのライフバリアを彼の叫びと共に打ち砕いた。
これにより、勝者は鉄華オーカミだ。ミチルのBパッドから「ピー……」という甲高い機械音が、まるで彼の勝利、ミチルの敗北を告げるように流れ出す。
「流石だ鉄華、それでこそオレのライバルに相応しい」
「そりゃどーも」
「だが、オレならデッキが0になる前に勝ってたな」
「勝ちは勝ちだろ」
兎に角さっきから横にいる獅堂レオンがうるさい。そう思うオーカだが、直後に敗北した南川ミチルが前へと立ちはだかって…………
「…………なに?」
「………まぁ、負けたもんはしょうがないか。この僕に勝ったんだから、必ず優勝しろよな」
「うん、そのつもりだ」
最後は意外と潔かった彼。オーカは差し出された手を一応握っておく。
これにて、予選Cブロックは鉄華オーカミの勝ち上がりで幕を閉じる。次なる目標はレオンもいる本戦だ。
そして、鉄華オーカミが予選を勝ち上がったこの瞬間から、続々と各予選ブロックの通過者が決まっていった。その中には一木ヒバナや鈴木イチマル、赤羽カレンも確認できて…………
数多の強者を跳ね除けて勝ち上がった上位8名による波乱の本戦が、まもなくスタートする。
******
全ての予選が終わりを迎えた頃、開催地であるジークフリードスタジアムの裏口に1台の車が停車する。黒く磨かれた美しい車体から姿を現したのは、高校生にしてプロバトラーとなり、さらにはMr.ケンドーをも下してモビル王の座にも着くと言う偉業を成し遂げた麗しい少女、早美アオイ。
彼女の執事である青年、フグタももちろん一緒だ。
「……今日はいよいよSTEP2だな、お嬢」
薄暗く、人気もない通行口を歩きながら、フグタがアオイにそう告げた。彼女は静かに頷く。
「えぇ、今日中には必ず見極めなければなりません」
運命をも覆す戦士、デスティニーを持つ獅堂レオン君
天地をも砕く悪魔、バルバトスを持つ鉄華オーカミ君
私と手を組むのは、どっち?
次回、第17ターン「クロスセイバー聖剣無双」