クロスセイバーと言う、通常では不可能とされる『ダブルブレイヴ』を可能とする強力なスピリットで人々を魅了した赤羽カレンの1回戦第一試合。
次は二試合目、鉄華オーカミと鈴木イチマルの友人同士の対決だ。
会場の観客達が今か今かと待ち侘びている中、オーカはその歓声がうっすらと聞こえて来る舞台までの通路を緊張している感じもなく、ゆっくりと歩んでいた。
「ちょっと待ちなさい!!」
「!」
背後から声をかけられ、そちらを振り向く。そこには以前バトルした事がある少女『春神ライ』がいて…………
「あぁ、新世代系女子か」
「なにそのあだ名!?……私は春神ライ!!…新世代系女子じゃない!!」
「そっか」
「ちょいちょい、何でそんなどうでもよさそうなわけ!?」
妙なあだ名で呼ぶオーカに対し、ライは反射的に自分の名前を名乗る。
「で、何の用?」
「無視すんなし!!…………何の用って………そうね」
「………まさか何も考えずに、ただオレに会いに来ただけ?」
「そ、それはだけはない!!」
少し顔を赤くしながら、オーカの言葉を全力で否定する。
「あ、そうだ。そう言えばアンタ、ヨッカさんの弟分なんですってね」
「アニキの事知ってるの?」
「もちろんよ。だって私あの人の家に居候してるし」
「ふーーん」
ライとヨッカの関係性をここで初めて知る事となったオーカだが、対して気にも停めず、寧ろどうでも良さそうな反応を見せる。
「じゃあオレ、試合あるから」
「ちょいちょいちょい、待ちなさいって!!……この界放リーグが終わったら、私との決着を着ける事を、この場で約束しなさい!」
「何急に思い出したように………」
やっぱりオーカとの決着を着けたいライ。何度もバトルを申し込まられるオーカは流石にめんどくさそうな表情を見せる。
「まぁ別にいいけど。て言うかバトルの決着なら、この間オレの負けで終わっただろ?」
「アクシデントで落ちた手札のカードがあったら、まだわからなかったじゃない!!……私の勝利の未来を覆せるヤツはいないって事を証明したいのよ!」
「勝利の未来ってなんだよ………」
ライの発する意味不明な単語。オーカは全くもって理解ができないが、どうやらそれが彼女にとっては凄く大事な事らしい…………
「言っておくけど私、その気になればヨッカさんより強いし、あの時のバトルだって、本気のデッキじゃなかったんだから!!」
「はいはい、わかったから早く試合に行かせてくれ、イチマルが待ってる」
こんな所で何分も道草を食っていられない。ライから逃げ出すように舞台への一本道を進もうとしたその直後…………
また別の人物からの声が耳に入る。今度は若く、太い男性の声だ。
「よぉ……」
「!」
「オマエがヨッカの可愛がってるっつー弟分か?」
体格の良い体つき、トサカのような頭が特徴的なガラの悪そうな男性。その人物は実は今をときめく有名な人物なのだが…………
「そうだけど……誰?」
「……は?」
男性は怪訝な表情を浮かべる。
「知ってる?」
「知らないわよ。ヨッカさんの知り合いじゃない?」
世間の話には極端に疎いオーカとライはその人物について何も知らなかった。絶対に自分の存在に驚かれると思っていた男性は今にもキレそうな程、額から青筋を浮かばせる。
「………このオレを認知してない奴がまだこの世にいるとはな………いいぜ教えてやる。オレの名はレイジ。ライダースピリット使いのトップ『ライダー王』だ」
「ふーーん」
「あ〜…なんかフウちゃんから聞いた事あるかも」
彼の名はレイジ。自らをライダー王だと真っ先に名乗る点や、態度などから、かなりの野心家であるのが窺える。最も、オーカとライにとっては何も関係のない事だが…………
「テメェの兄貴分、Mr.ケンドーこと九日ヨッカとは兄弟弟子の関係なんだよ。オレが弟弟子で、奴が兄弟子だ。オレの方が強いがな」
「そっか」
「Mr.ケンドーって……確かモビル王、とか言う人だったっけ??……ヨッカさんだったんだ〜…納得、どっかで見た事あると思ってたのよね〜」
ライはレイジの言葉から、Mr.ケンドーの正体がヨッカである事をはじめて知る。そんな彼女に、レイジは笑いながら「『元』だがな」と強く訂正を入れた。
「……で、結局アンタはオレに何の用があって来たんだ?」
オーカがレイジに聞いた。彼は口角を上げ、答える。
「いや何、ヨッカは昔から超ムカつく奴だから、その弟分がどんな奴かどうか見に来ただけだ。まぁ結果は案の定、オマエは3つの要素でオレを腹立たせた…………」
1つ『オレ様の存在を知らなかった』
2つ『目上のオレ様に敬語を使わなかった』
3つ『可愛い彼女持ち』
「………え?」
1本ずつ指を折りながら、3つの腹立った理由を述べていくレイジ。その3つ目の理由にライが顔を真っ赤にする。
「ちょ、ちょいちょいちょい、待ちなさいよ!!……私はコイツの彼女なんかじゃ……」
「いいかクソチビ、よく聞け」
「私の話を聞きなさいよ!!」
ライを無視して、レイジがオーカに顔を向ける。大抵のカードバトラーなら卒倒してしまうような、三王らしい王者たるオーラもまた一緒に向けられるが、オーカは普通に平常心を保っている。
「テメェはいつかオレが潰す。二度とバトスピできねぇようにな」
「……そっか。頑張れ」
「オマエが恐怖でバトスピができなくなった時、テメェの兄貴分がどんな顔をするか楽しみだぜ……!」
そう告げると、自己満足したレイジはこの場を去って行った。
残ったオーカとライは結局そんなことのためにこんな所に来たのかとでもお互い言いたげな表情で顔を見合わせた。
「………アンタも結構難儀よね」
「て言うか、早く試合に行かないと」
「…………アイツみたいに再起不能になるまで、とかじゃないけど、私もアンタをバトスピでぶっ倒したい!!……でも、私以外に負けるのは絶対許さないんだから」
「要は勝てって事だろ。応援ありがと」
「ッ!!……ち、違う!!……これは、その……何て言うか、言葉のあや的なヤツ?……でも何か違うような……激励……は絶対ありえないし………え、私今何考えてんだろ……」
「………何て?」
「うっさいわね!!…もういいからさっさと行きなさいよ!!」
「急に声デカ……」
ライに止められ、ライダー王のレイジに何故か宣戦布告される事態に陥っていたオーカだったが、ここに来てようやくジークフリードスタジアムの大きなバトル場へと足を運ぶ事ができた…………
その先には、今回の対戦者であるイチマルが今か今かとオーカを待ち侘びていて…………
「よぉ、随分遅かったじゃねぇか鉄華オーカミ」
大歓声の中、イチマルがオーカにそう告げる。腕を組んでいて、如何にも自信満々と言った感じだ。
「ごめん、新世代系女子とライダー王とか言う奴に絡まれてた」
「!!」
新世代系女子は誰かわからないが、ライダー王の肩書きを持つ者は直ぐに誰かわかった。おそらくイチマルはその人物の事を他の誰よりも知っている…………
「……あぁ、悪い……それオレっちの兄ィだ」
「イチマルの兄ちゃん?」
頷くイチマル。普通ならば誰もが驚愕する事実であるが、オーカは特に驚いてもいない様子。
「何を言われたのかは知らないけど、悪気はなかったと思うんだ、許してやってくれ。あんなんでも、意外と良い所もあるんだぜ?」
「………」
ライダー王レイジの発言を思い返して見るオーカ。どう考えても悪気しかなさそうだと思ったが、流石に空気は読むか、敢えて何も言い返さなかった。
「あっ……これは他の人には内緒な!!……オレっちが兄ィの弟だって知られたら、兄ィに何て言われるか……」
そう言われ、オーカは頭の上に疑問符を浮かべる。
「?……何で、別にいいだろ兄弟なんだし。オレも姉ちゃんがいる事を隠した事ないよ」
「バカヤロー、それとこれとは話が違うんだよ。ほら、三王の1人、ライダー王だろ?…その弟がこの程度だって知られると、色々不味いんだよ。兎に角、黙っててくれよな」
「…………そっか」
兄弟関係はその家庭によって色々と変わって来るのだなと言った程度に考えておくオーカ。一旦この話は忘れる。
「さぁ、役者が揃いました1回戦第二試合!!……鉄華オーカミVS鈴木イチマル!!……早速始めちゃってください!!」
「!!」
解説席に座っている女性アナウンサー紫治夜宵がマイクを片手にそう告げる。そして、2人は盛り上がって来る歓声の中、遂に互いのBパッドとデッキを取り出し、それをセットした。
「まぁ固い話はやめにしようぜ」
「あぁ」
「鉄華オーカミ!!……この時を楽しみにしてたぜ!!……今回、オレっちはオマエに絶対リベンジを果たしてみせる!!」
この時を待っていたのだとでも言いたげな様子で、イチマルは人差し指でオーカを指差す。それに対し、オーカもまた軽く笑みを浮かべて…………
「あぁ、オレもこのバトルを楽しみにしてた。でも勝ちは譲らない………行くぞ、バトル開始だ!!」
………ゲートオープン、界放!!
観客達の盛り上がりが最高潮に達した中、鉄華オーカミと鈴木イチマル、2人のバトルスピリッツが幕を開ける…………
先攻はイチマルだ。初のベスト4に向けてターンシークエンスを進める。
[ターン01]イチマル
「メインステップ……先ずはやっぱりコイツ、仮面ライダーゼロワンだ!」
ー【仮面ライダーゼロワン】LV1(1)BP3000
突如現れた緑のシンボルが破裂。その中より出現したのは卓越された緑の体に赤い複眼を持つライダースピリットの強者、仮面ライダーゼロワン。イチマルのデッキの主軸となるスピリットだ。
「早速来たか」
「召喚時効果の前に手札にあるコイツ、ネクサスのライズホッパー!…ノーコストで配置、さらにトラッシュに1つコアブースト!」
ー【ライズホッパー】LV1
一筋の光が天より降り注ぎ、バイク型マシーンであるライズホッパーがイチマルの横に出現。
「そしてここでゼロワンの召喚時。ボイドからコア1つを自身に追加し、オレっちの手札が3枚以下なら5枚オープンしてその中のカードを1枚手札に加える…………よし、ゼロワンフライングファルコンを手札に加えて、残りはデッキの下に戻すぜ。ターンエンド」
手札:4
場:【仮面ライダーゼロワン】LV1
【ライズホッパー】LV1
バースト:【無】
「………」
「オマエの対策は万全だ。さぁ、どっからでも来やがれ!」
盤面のシンボルと手札を整えそのターンをエンドとするイチマル。次は鉄華オーカミの最初のターンが始まる。
[ターン02]オーカ
「メインステップ………バルバトス第1形態!」
ー【ガンダム・バルバトス[第1形態]】LV1(1)BP2000
地中より飛び出して来たのは、ガンダムの名を持つ白い装甲のモビルスピリット、バルバトス。その最初となる1形態。
ゼロワンと同じく召喚時効果を持つ。
「召喚時効果、3枚オープンして鉄華団カードを1枚手札に加える………オルガを手札に加えて、残りは破棄」
「ッ……早いな、もうソイツが手札に入っちまったか」
「バーストをセットして、ターンエンドだ」
手札:4
場:【ガンダム・バルバトス[第1形態]】LV1
バースト:【有】
鉄華団の強力な創界神ネクサスカードである『オルガ・イツカ』のカードを早々に手札へと加えたオーカ。
緊張感が走る中、バトルは最初の折り返しである第3ターン目へと向かう。
[ターン03]イチマル
「メインステップ……さっき加えたコイツ、フライングファルコンを召喚するぜ!」
ー【仮面ライダーゼロワンフライングファルコン】LV2(4)BP6000
「召喚時効果、ボイドからトラッシュに1コアブーストし、他のライダースピリットにも1コア追加する」
ハヤブサの如く飛翔し、地に降り立つのは、朱色のゼロワン、フライングファルコン。イチマルはその効果でさらにコアブーストを加速させて行く。
しかしその召喚時はオーカのバーストを誘発させるもので………
「召喚時効果発揮後のバースト、もらった!」
「!」
「イサリビ!!…効果でフライングファルコンからコアを1つリザーブに置き、その効果発揮後に配置する」
ー【イサリビ】LV1
伏せられたバーストが勢い良く反転、オーカの背後に現れたのはモビルスピリットも収める事ができる程の大きな戦艦。
フライングファルコンは消滅こそしないものの、コアが取り除かれ、LVダウンしてしまう。
「イサリビの配置時効果、手札を1枚破棄する事で、1枚ドロー……オレは三日月を破棄する」
「!!」
イサリビの召喚時効果を活かし、オーカは鉄華団のエースブレイヴ『三日月・オーガス』のカードを手札より破棄。
イチマルはそのカードを『オルガ・イツカ』の効果でノーコスト召喚し、場のバルバトスにそれを合体させるのが彼の必勝パターンである事を知っている。それが早いターンで来た場合、対処する手段は限られすぎていると言う事も…………
だが…………
「仕方ねぇ、ちょっと早いが見せてやるぜ鉄華オーカミ。オマエへの対策カードをな!!」
「!!」
「緑ネクサス、緑に飲まれた寺院をLV2で配置!!……不足コストはゼロワンとフライングファルコンから確保。よってフライングファルコンは消滅する!」
ー【緑に飲まれた寺院】LV2(3)
「………綺麗だ」
フライングファルコンは維持コアの損失により消滅してしまうものの、入れ替わるようにイチマルの背後には植物で包まれた寺院が出現。おそらくこれが鉄華オーカミへの対策のカードだろう。
「綺麗なだけじゃない。コイツはエゲツないぜ!!……ターンエンドだ」
手札:3
場:【仮面ライダーゼロワン】LV1
【緑に飲まれた寺院】LV2
【ライズホッパー】LV1
バースト:【無】
「………対策だろうが何だろうが、次のターン、オレがやる事は変わらない。行くぞイチマル」
お互いにアタックのない中、オーカの二度目のターンが巡って来る。鉄華団と言う速攻タイプのデッキの都合上、このタイミングでバトルが苛烈になる事は先ず間違いのない事で………
[ターン04]オーカ
「メインステップ……オルガを配置。配置時の神託で、デッキの上からカードを3枚トラッシュに送り、その中にある対象カード1枚につき、ボイドからコア1つを自身に追加。今回は3つ、フルカウントで3つのコアをオルガに置く」
ー【オルガ・イツカ】LV2(3)
フィールドには何も変化はないものの、オーカの場には鉄華団の団長オルガ・イツカのカードが配置される。
そしてオーカは溜まったシンボルとコアを使い、いつものあのスピリットを手札から呼ぶ。
「大地を揺らせ、未来へ導け……バルバトス第4形態!!……LV2で召喚!」
ー【ガンダム・バルバトス[第4形態]】LV2(2)BP9000
上空から白い装甲と黄色い二角なツノを持つ紫属性のモビルスピリット、バルバトス、その第4形態が姿を現した。手に持つメイスを振り回し、早速戦闘態勢に入る。
「4形態……いよいよか」
「鉄華団の召喚により、オルガにコアを1つ追加。これでコア4つ、トラッシュには三日月だ」
攻撃の準備は最大限に整った。オーカはアタックステップへと突入し、締めのオルガの効果を発揮させる。
「アタックステップ!!……その開始時にオルガの効果を発揮、自身のコアを4つ取り除く事で、トラッシュから鉄華団カードを召喚する。オレは三日月のカードを…………」
オルガの効果を適用し、オーカがBパッド上にあるトラッシュへと手を掛けた、その時だった。
イチマルが効果の発揮を宣言したのは…………
「そうはさせないぜ!!……緑に飲まれた寺院、LV2効果!!……永続的に、オマエのトラッシュのスピリット、ブレイヴカードはオマエのカード効果を受けず、その効果を使えない」
「ッ……!!」
「つまり、このネクサスがオレっちの場にある限り、オルガの効果で三日月をトラッシュから召喚する事はできないって事だ!!」
突如、オーカのトラッシュが緑色に光る。それはトラッシュにあるスピリットカードとブレイヴカードには一切触れる事はできないと言う警告。
緑に飲まれた寺院。トラッシュを操る鉄華団のデッキにとって、ここまで厄介なカードはないだろう。
「イチマルの奴、わかりやすく鉄華団を対策して来たな」
「………これって凄い事なんですか?」
観客席で1人呟く九日ヨッカに、その横に着席している春神ライの親友、夏恋フウが聞いた。因みに彼女はカードショップ「ゼウス」でアルバイトをしているが、バトスピの知識は全くない。
「まぁ、大体の紫デッキは死ぬわね」
「あ、ライちゃん。おかえり」
それに答えたのはヨッカではなく、戻って来たライだった。フウの横の座席に着席して、オーカとイチマルの試合を傍観する。
「……全く、負けたら承知しないんだから」
******
舞台は変わって界放市ジークフリード区にあるカードショップ「アポローン」………
アルバイトのオーカは界放リーグに出場。店長であるヨッカはその応援で非番なため、今日はもう1人のアルバイト、雷雷ミツバが店番を担当している。
とは言っても来客のほとんどは店の巨大モニターで放送されている界放リーグを観戦するためで、業務はそれほど忙しくはない。レジ前でのんびりと過ごしていた。
「……イチマルも結構やるじゃない」
長い金髪をぐるぐると指で回しながらそう呟く。余程暇なのがわかる。
だがその時、店の自動ドアが開いて…………
「いらっしゃい…………あ」
「久し振りだねミツバ。中学の卒業以来?」
「ヒメェェェ!!」
そこにら艶やかで長いブロンドヘアの女性。名前は『鉄華ヒメ』………
ミツバの中学までの同窓生であり、鉄華オーカミの4つ離れた実の姉である。
「……あ、鉄華ヒメだ!」
「マジだ、スゲェ美人!!」
「この間買った写真集にサインしてもらおうかな〜!!」
彼女の登場に、周囲の人達、特に男子は大盛り上がり。何を隠そうこの鉄華ヒメ。今をときめくモデルさんなのだ。
「おぉ、凄い人気っぷり。流石は現役モデル。モテるんだね〜」
「あっはは……そんな事……」
「ある!!……謙遜しないで、私が悲しくなるから!!」
18年間彼氏無しのミツバが涙ぐみながら己の拳を固める。彼氏がいないのはヒメも同じだが、ミツバは告白された事さえないのだ。
当然主な理由は破天荒過ぎる性格だからだろう。
「………て言うか、本当にカードショップでバイトやってたんだ。バトスピ強かったもんね」
「まぁね。言うても後半年で卒業だから辞めるけど…………ねぇ」
「ん?」
「オーカがここでバイトしてるの知ってる?」
「…………え?」
そう言われ、ヒメは困惑する。彼女の反応を見て「あ〜やっぱりか〜」とミツバ。
「あの子性格的に黙ってバイトやってそうだなって思ったんだよね。アンタもあんまり家に帰らないでしょ?」
「……どうりで最近「お小遣いは要らない」って言って来たわけだ」
「いや、少しは怪しめよ」
やや天然気味なヒメに、ミツバがビシッとツッコミ。大親友の2人ではよくある光景だ。
「……ウチの店長がオーカをどっかで見つけて、その才能に目をつけてさ。今ではすっかりあの子もバトスピの虜だよ。ほら、今日は大きな大会で絶賛大暴れ中さ」
「………大会って、界放リーグの事だったの」
ふとモニターに目をやると、そこには界放リーグ1回戦を戦う弟の姿。バトスピをやるその仕草に、姉は心配そうに胸元に手を寄せる……………
******
舞台は戻って再びジークフリードスタジアム。イチマルのネクサスカード『緑に飲まれた寺院』の効果で、オーカはトラッシュから三日月はおろかスピリットも蘇生できなくなってしまう…………
「強力な合体スピリットで一気に攻勢に回ろうとした鉄華オーカミ選手でしたが、鈴木イチマル選手の一手でその召喚を封じられました!!……ここまでの状況、アオイさんはプロの目線でどう思われましたか?」
実況席のアナウンサー紫治夜宵が、解説席にいる早美アオイに聞いた。アオイはプロらしく落ち着いた様子で答える。
「スピリットを犠牲にしてまでネクサスを配置したのは正解でしたね。鉄華団、バルバトスが特殊なモビルスピリットである事は間違いありませんが、やはり属性は紫。トラッシュをここで制限されると大きなテンポロスになる事は間違いない事ですから。地味にコアシュートをされてもいいように、維持コアを多く置いているのもGOODと言った所でしょうか。何にせよ、バトルはこれからですね」
この時、アオイは内心で「あなたには勝ってもらわないと困るんですけどね」とも呟く。
そんな彼女から謎の期待が向けられている中で、鉄華オーカミはバトルを続行する。
「鉄華オーカミ!!……オマエなら先ず最初に三日月のカードをトラッシュに送ると思ってたぜ」
「………仕方ない、アタックステップは継続だ。行け、4形態!!……効果でゼロワンとネクサスのコアを1つずつリザーブに送る!」
ー【仮面ライダーゼロワン】(1➡︎0)消滅
ー【緑に飲まれた寺院】(3➡︎2)
「緑に飲まれた寺院には維持コアを余分に2つ置いてる、4形態の効果じゃLVは下がらないぜ!」
「くっ……オルガの【神域】の効果、デッキから3枚破棄して、1枚ドロー」
バルバトス第4形態がメイスを振るい、そこから発生する衝撃波でゼロワンと緑に飲まれた寺院からコアを取り除く。ゼロワンは消滅してしまうが、緑に飲まれた寺院はLVさえも下がらない。
「アタックはライフで受けてやるよ!!」
〈ライフ5➡︎4〉イチマル
バルバトス第4形態が次に狙ったのはイチマルのライフバリア。メイスでそれを1つ木っ端微塵に粉砕する。
「緑に飲まれた寺院の更なる効果!!…オレっちのライフが減らされた時、その数1つにつき1枚ドロー!」
「ッ………ドロー効果まであるのか」
緑のネクサスにありがちな受け身のドロー効果まで備えた緑に飲まれた寺院。イチマルはその効果でデッキからカードを1枚引いた。
「………ターンエンドだ」
手札:4
場:【ガンダム・バルバトス[第4形態]】LV2
【ガンダム・バルバトス[第1形態]】LV1
【イサリビ】LV1
【オルガ・イツカ】LV2(4)
バースト:【無】
ライフが減るたびにドローもされるのであれば、攻撃は控えないと行けない。そう考えたオーカは1形態でのアタックは行わずにそのターンをエンド。イチマルへとターンを譲った。
[ターン05]イチマル
「メインステップ!!……緑に飲まれた寺院に再び3つ目のコアを追加する!…これでまた4形態のコアシュートも効かない」
ー【緑に飲まれた寺院】(2➡︎3)
「続けて行くぜ、ゼロワンシャイニングホッパーをLV1で召喚!」
ー【仮面ライダーゼロワンシャイニングホッパー】LV1(1)BP7000
通常のゼロワンが出現すると、光り輝くバッタと一体化、眩い光の中で強化形態、より刺々しいデザインのシャイニングホッパーへと進化を遂げる。
「アタックステップ……シャイニングホッパーでアタック!…煌臨アタック時効果で、ボイドからコア2つをトラッシュに追加。その後トラッシュのコアの数3つにつき相手スピリット1体を疲労させる………1形態を疲労!」
「!」
ー【ガンダム・バルバトス[第1形態]】(回復➡︎疲労)
シャイニングホッパーから放たれる光の刃がバルバトス第1形態に直撃。たちまち膝を突き、疲労状態となってしまう。
「さらにマジック、ライジングインパクト!!」
「!」
「効果により、疲労状態の相手スピリット1体をデッキの下に戻してシャイニングホッパーを回復させる!!……4形態を倒せ!!」
イチマルの指示を聞くと、上空高く飛び上がるシャイニングホッパー。右足にエネルギーを溜め、そのままバルバトス第4形態へと突っ込んで行き…………
『ラ』
『イ』
『ジ』
『ン』
『グ』
『イ』
『ン』
『パ』
『ク』
『ト』
空間に文字が浮かび上がる中、強烈なライダーキックでバルバトス第4形態の装甲を貫通させるシャイニングホッパー。第4形態は耐えられず、力尽きて爆散してしまう。
それによりオーカはこの攻撃をライフで受ける他なくなって………
「ライフで受ける」
〈ライフ5➡︎4〉オーカ
光の速さでオーカのライフに飛びついて来たシャイニングホッパー。強烈なパンチを繰り出し、そのライフバリアを1つ砕いた。
「よぉし、オレっちはこれでターンエンドだ!!……どうだ鉄華オーカミ、オレっちの戦法に手も足も出まい!!」
手札:4
場:【仮面ライダーゼロワンシャイニングホッパー】LV1
【緑に飲まれた寺院】LV2
【ライズホッパー】LV1
バースト:【無】
シャイニングホッパーをブロッカーとして残し、そのターンをエンドとするイチマル。ライフの差こそ同じであるものの、緑に飲まれた寺院によって、優勢に立っているのは誰がどう見ても彼。
オーカはなんとかこの状況を打破せんとターンを進めて行く。
[ターン06]オーカ
「メインステップ………バトスピってやっぱ面白いな。こう言う戦い方もあるのか」
「!?……何笑ってんだよ」
オーカもただ黙ってメタられるわけにはいかない。このターンから反撃開始だ。
「轟音打ち鳴らし、過去を焼き切れ!!……ガンダム・グシオンリベイク!!……LV1で召喚!」
ー【ガンダム・グシオンリベイク】LV1(1S)BP6000
「に、2体目のモビルスピリット!?」
上空から降り立ったのは薄茶色の分厚い装甲を持つ一機のモビルスピリット。
その名はグシオンリベイク。オーカのデッキにおける第二のガンダムの名を持つモビルスピリットである。イチマルはバルバトスではない鉄華団のモビルスピリットに驚愕する。
「召喚時効果、フィールドのコア2つをリザーブに」
「!?」
「緑に飲まれた寺院からコアを取り除く!」
ー【緑に飲まれた寺院】(3➡︎1)
右手に持つハルバードを豪快に振るって衝撃波を発生させるグシオン。それはイチマルの背後にある緑に飲まれた寺院を揺らし、そこに眠るコアを2つ取り除く。
だが………
「甘いぜ鉄華オーカミ!!……緑に飲まれた寺院のLV2維持コストは『1』……3つ置いてたから、ギリギリまだ効果は適用されている!」
そう。
コアが減らされた今でも、緑に飲まれた寺院はLV2を保っている。グシオンだけでは決定的なダメージを与えられないため、オーカとしてはどうしてもこのメインステップ中にはLVを下げたい所なのだ…………
だからこそ、オーカは手札からもう1枚のカードを使用する。
「マジック『もっとよこせ』を使う!!」
「ッ……今度はなんた!?」
「オレのデッキの上から3枚を破棄………」
「今更トラッシュを肥やしたって無駄だぜ、オマエにトラッシュは使えな………」
「こうしてトラッシュに送った鉄華団のカード1枚につき、相手のスピリット、ネクサスのコアを1つリザーブに置く」
「え、なんだって!?」
イチマルが思わず聞き直してしまうような効果を持つマジック『もっとよこせ』………
要するに今から破棄するカードの中に鉄華団カードが1枚でもあれば、オーカは緑に飲まれた寺院を突破する事が可能であるという事。
「オレは『もっとよこせ』の効果でカードを3枚トラッシュ………鉄華団カードは2枚。よってシャイニングホッパーから1個、緑に飲まれた寺院から1個ずつをリザーブに置く!」
「マジかよ!!」
ー【仮面ライダーゼロワンシャイニングホッパー】(1➡︎0)消滅
ー【緑に飲まれた寺院】(1➡︎0)LV2➡︎1
イチマルのフィールド全体が紫色に包み込まれる。それが晴れる頃には、シャイニングホッパーは消滅し、緑に飲まれた寺院は遂にLV1となった。
「これで、オレのトラッシュは緑の呪縛から解放された」
「くっ……」
「アタックステップ!!……その開始時にオルガの【神技】!!……コアを4つ支払い、トラッシュから三日月をバルバトス第1形態に合体!」
ー【ガンダム・バルバトス[第1形態]+三日月・オーガス】LV1(1)BP8000
すかさずオルガの効果を発揮させ、バルバトス第1形態にトラッシュの三日月を合体させる。普段はサーチ効果しか持たない第1形態も、これで強力な合体スピリットへと一変。
「アタックだ、バルバトス!!……合体した三日月の効果で、ネクサス、緑に飲まれた寺院の維持コアを1つ上げて消滅!!」
「!!」
「追加でリザーブのコアを2つトラッシュへ!!」
ー【緑に飲まれた寺院】(消滅)
背中のブースターで勢い良く宙を翔けるバルバトス第1形態。その突き出した拳はイチマルの緑に飲まれた寺院を捉えて貫く。
そしてその攻撃はここからが本番…………
「ライフだ、来いよ!!………ッ」
〈ライフ4➡︎2〉イチマル
上空からの飛び蹴りでイチマルのライフを一気に2つ掻っ攫って行くバルバトス第1形態。そのライフ数は遂に半分を下回った。
「………ターンエンド」
手札:2
場:【ガンダム・バルバトス[第1形態]+三日月・オーガス】LV1
【ガンダム・グシオンリベイク】LV1
【オルガ・イツカ】LV1(1)
【イサリビ】LV1
バースト:【無】
ライフをこれ以上減らしても意味はない事を悟るオーカ。ここは一度ターンを終了する。
「つ、強ぇ……オレが時間を掛けて対策して来たってのに、オマエはそれをたったの1ターンで超えて来んのかよ。天才すぎだろ」
「………」
「オマエに比べたらオレっちなんて平凡もいいとこよ。でもなぁ、平凡も平凡なりに意地ってもんがある………このターン、見てろよ」
見事にオーカに全てをひっくり返されたイチマル。逆襲に燃えながら迎えたターンを進めて行く。
[ターン07]イチマル
「ドローステップ……ッ!!」
このターンのドローステップ。イチマルは引いたカードを見てニヤつく。その反応は、誰がどう見てもこの状況に適したカード、逆転を狙えるのに十分な強さを持つカードだ…………
「メインステップ!!……オレっちの諦めない心にデッキが応えてくれたぜ、先ずはゼロワン、フライングファルコンを召喚!」
ー【仮面ライダーゼロワンフライングファルコン】LV1(1)BP3000
今回2体目となるフライングファルコンが登場。その召喚時効果でさり気なくイチマルのトラッシュにコアが新たに追加される。
そしてイチマルの大反撃が始まるのはここからだ。
「続けてチェンジ発揮!!……見よ鉄華オーカミ、オレっちの引きの強さを!!……ゼロワンフレイミングタイガー!!」
「!」
「チェンジ効果、オマエのトラッシュのカードは全てゲームから除外する!!」
「なに、除外!?………ッ」
燃え上がる熱き炎が吹き荒れ、オーカのBパッド上にあるトラッシュを襲う。するとそこに眠っていたカード達は全て焼却、跡形もなく消え去ってしまう。
これではトラッシュのカードを使おうにも使う事ができない。
「この効果発揮後、フライングファルコンと入れ替える!!……来いよゼロワン、フレイミングタイガー!!」
ー【仮面ライダーゼロワンフレイミングタイガー】LV1(1)BP4000
フライングファルコンは腰部にあるゼロワンドライバーに別のプログライズキーをセット。機械仕掛けの赤い虎が出現し、それと一体化、フレイミングタイガーへとチェンジする。
「さらに今手札に戻ったフライングファルコンを再度召喚!……効果でフレイミングタイガーとトラッシュにコアを1つずつ追加!」
ー【仮面ライダーゼロワンフライングファルコン】LV2(4)BP6000
フィールドには2体のゼロワンが並ぶ。さらにイチマルはこのターンでオーカを倒すべく、もう1枚のカードを手札から使用する…………
「もういっちょチェンジを発揮!!……対象はまたまたフライングファルコン!!」
「……!!」
「効果により、自分の手札を全て破棄、その後相手の手札の数だけドロー!」
今のイチマルの手札は2枚、対するオーカも2枚。そのため、結果として手札の枚数は変わらないが、それでもこの後に発揮されるチェンジ特有の入れ替える効果は使用可能で…………
「この効果発揮後、対象となったフライングファルコンと入れ替える!!……来いよゼロワンメタルクラスタホッパー!!」
ー【仮面ライダーゼロワンメタルクラスタホッパー】LV2(4)BP10000
その光景はまさに白銀の嵐と言った所か、無数の鋼のバッタの群れが宙を飛び交い、フライングファルコンに纏わりつく。
こうして新たに誕生したのはゼロワンのさらなる進化の形、ゼロワンメタルクラスタホッパー。
文字通り、鋼鉄のゼロワンだ…………
「手札に戻ったフライングファルコンを召喚。効果でコアブースト………ブレイヴカード、アタッシュカリバーを召喚し、メタルクラスタホッパーと合体!!」
ー【仮面ライダーゼロワンフライングファルコン】LV1(1)BP3000
ー【仮面ライダーゼロワンメタルクラスタホッパー+アタッシュカリバー】LV2(4)BP13000
天空から空を切りながら突き刺さったのは、ゼロワン専用の剣。メタルクラスタホッパーはそれを引っこ抜き、合体する。
フィールドには3体のゼロワン。イチマルはこの錚々たるメンバーでオーカに攻撃を仕掛けて行く。
「行くぞ鉄華オーカミ、これで最後だ!!……アタックステップ、行って来いよ、メタルクラスタホッパー!!」
その攻撃の要となるのはやはりメタルクラスタホッパー。その手に持つブレイヴ、アタックカリバーの効果から解決して行く。
「アタッシュカリバーの効果、オマエのグシオンリベイクを疲労させる事で、コアを1つトラッシュに追加」
「グシオン……!?」
ー【ガンダム・グシオンリベイク】(回復➡︎疲労)
アタッシュカリバーを振るい、飛ぶ斬撃を放つメタルクラスタホッパー。それはグシオンの駆動部へと命中。堪らず膝を突いた。
「さらにさらに!!……マジック、2枚目のライジングインパクト!!」
「ッ……またか」
「効果でグシオンリベイクをデッキの下に戻し、メタルクラスタホッパーは回復!!……くらいやがれ!!」
『ラ』
『イ』
『ジ』
『ン』
『グ』
『イ』
『ン』
『パ』
『ク』
『ト』
前のターンと全く同じだ。メタルクラスタホッパーは足にエネルギーを極限まで跳ね上げると、跳び上がり、グシオンの強固な装甲をライダーキックで蹴り飛ばす。
いくら守護神グシオンリベイクと言えどもこの一撃は流石に効いたか、堪らず爆散してしまう。
「メタルクラスタホッパーはアタック時、このスピリットのコアの数以下のスピリットからはブロックされない………でもって、2点のアタック!!」
「………ライフで受ける………くっ」
〈ライフ4➡︎2〉オーカ
メタルクラスタホッパーはアタッシュカリバーでオーカのライフバリアを斬り裂く。その数は残り半数以下、イチマルと同じになる。
そして、次の攻撃をまともに受けてしまったら最後、オーカの敗北だ。
「メタルクラスタホッパーで再度アタック!!……通れ!!」
ここまで来たらと無我夢中になって突き進むイチマル。目標に向かって突き進むその姿は圧巻だが…………
それをたったワンモーションで突き崩すのが、この鉄華団使い、鉄華オーカミだ。
「フラッシュマジック、白晶防壁」
「なッ!?」
「不足コストはバルバトス第1形態から確保。よって消滅………フライングファルコンを手札に戻し、メタルクラスタホッパーのアタックはライフで受ける」
〈ライフ2➡︎1〉オーカ
バルバトス第1形態は消滅。しかしこれで白属性の強力なマジックカード『白晶防壁』は使用できた。
フライングファルコンはイチマルの手札へと戻り、メタルクラスタホッパーの攻撃を受けても、オーカのライフバリアはたったの1つしか砕けない。
「コストの支払いにソウルコアを使った時、このターンの間、オレのライフは1つしか減らない」
「………しぶといな。だけどこの盤面、オレっちの有利に変わりはない!!……ターンエンド!!」
手札:0
場:【仮面ライダーゼロワンフレイミングタイガー】LV1
【仮面ライダーゼロワンメタルクラスタホッパー+アタッシュカリバー】LV2
【ライズホッパー】LV1
バースト:【無】
結果的に2体のブロッカーが残り、そのターンをエンドにせざるを得なくなったイチマル。再びオーカへとターンが巡って来る。
[ターン08]オーカ
「メインステップ!!……4を超えたその先で、未来を掴め!!……バルバトス第6形態をLV3で召喚!!」
「!!」
ー【ガンダム・バルバトス[第6形態]】LV3(4)BP12000
オーカの背後で眼光を輝かせ、飛翔し、地上に降り立ったのは、バルバトスの中で最も大きな数字を持つ第6形態。
大型肉食恐竜の大顎のような形をしたレンチメイスと言う武装と、動きにくそうな重装甲が他のバルバトス達との主な差別点。イチマルは知らないが、ジュニアクラストップのあの獅堂レオンが操るデスティニーガンダムでさえも突破して見せた実力の持ち主だ。
「場に残った三日月と合体。そのままアタックステップだ………バルバトス第6形態、いくよ」
ー【ガンダム・バルバトス第6形態+三日月・オーガス】LV3(4)BP18000
これで準備は完了。オーカはバルバトス第6形態で攻撃を仕掛ける。
そしてこの瞬間、幾つものアタック時効果が解決されて行く。
「バルバトス第6形態のアタック時効果、相手スピリットのコア1つをリザーブに置き、ターンに一度回復する……フレイミングタイガーのコアを取り除き、回復」
「!」
ー【仮面ライダーゼロワンフレイミングタイガー】(2➡︎1)
ー【ガンダム・バルバトス[第6形態]+三日月・オーガス】(疲労➡︎回復)
「さらに三日月の効果。フレイミングタイガーの維持コアを1つ上げて消滅………叩け、バルバトス!!」
ー【仮面ライダーゼロワンフレイミングタイガー】(消滅)
重装甲とは思えない程の俊敏さを見せるバルバトス第6形態。一瞬にしてフレイミングタイガーの背後を取り、レンチメイスを叩きつけた。
フレイミングタイガーはその一撃に耐えられず、あっさり爆散。イチマルの場は、メタルクラスタホッパーのみとなる…………
「バルバトス第6形態の更なる効果。鉄華団スピリットがアタックしている時、相手は相手のスピリット1体を破壊しなければブロックができない」
「ッ………オレの場はメタルクラスタホッパーだけ………」
「バルバトス第6形態は合体によりダブルシンボル……一撃で2つのライフを破壊する………!!」
「くっ………」
イチマルへと迫り来るバルバトス第6形態をどかさんとアタッシュカリバーで斬りかかるメタルクラスタホッパーだが、全く通用しない。
敗北を悟ったイチマルは悔しさよりも先に認められたい人物達の姿が脳裏に浮かんで来た。
それは心から敬愛している一木ヒバナと、粗暴だが、強くて尊敬している、ライダー王である兄レイジ……………
「ち、ちっくしょぉぉぉぉぉぉぉおおお」
〈ライフ2➡︎0〉イチマル
最後に込み上げて来た悔しさを叩き潰すかの如く、バルバトス第6形態はレンチメイスで残ったライフバリアを全て叩き壊した…………
「1回戦第二試合終了!!!……返し返されの激闘の中、勝利をその手にしたのは、鉄華団使い、今大会の超絶ダークホース、鉄華オーカミだァァァ!!!………見事二回戦進出です!!」
アナウンサーの紫治夜宵がマイクを片手にそう叫ぶと、会場の観客達は一斉に轟音のような歓声を上げる。
鉄華オーカミ、界放リーグ本戦で堂々の初勝利を飾った。
次回、第19ターン「Aの復活、デスティニーガンダム進撃」