界放リーグ1回戦第二試合『鉄華オーカミVS鈴木イチマル』…………
鉄華オーカミのバルバトス第6形態がレンチメイスを手に、背部のスラスターで地上を駆け抜ける。目指す先は当然、敵であるイチマルのライフ一択………
「バルバトス第6形態の更なる効果。鉄華団スピリットがアタックしている時、相手は相手のスピリット1体を破壊しなければブロックができない」
「ッ………オレの場はメタルクラスタホッパーだけ………」
「バルバトス第6形態は合体によりダブルシンボル……一撃で2つのライフを破壊する………!!」
「くっ………」
イチマルへと迫り来るバルバトス第6形態をどかさんとアタッシュカリバーで斬りかかるメタルクラスタホッパーだが、全く通用しない。
敗北を悟ったイチマルは悔しさよりも先に認められたい人物達の姿が脳裏に浮かんで来た。
それは心から敬愛している一木ヒバナと、粗暴だが、強くて尊敬している、ライダー王である兄レイジ……………
「ち、ちっくしょぉぉぉぉぉぉぉおおお」
〈ライフ2➡︎0〉イチマル
最後に込み上げて来た悔しさを叩き潰すかの如く、バルバトス第6形態はレンチメイスで残ったライフバリアを全て叩き壊した…………
「1回戦第二試合終了!!!……返し返されの激闘の中、勝利をその手にしたのは、鉄華団使い、今大会の超絶ダークホース、鉄華オーカミだァァァ!!!………見事二回戦進出です!!」
アナウンサーの紫治夜宵がマイクを片手にそう叫ぶと、会場の観客達は一斉に轟音のような歓声を上げる。
「………手に汗握る、熱い試合だったな、2人とも」
会場で見守っていたヨッカが拍手で2人のバトルを讃える。その横で着席している夏恋フウもまたそのバトルに感動しているようであり…………
「わぁ!!……本当に凄いバトルだったね、ライちゃん!!」
「ま、このくらいは勝ってもらわないとね」
座席で腕を組み、足を組み、ツンケンしてるが、ライもオーカの勝利を心のどこかで喜んでいる様子。
「………よし」
勝利を決めたオーカ。1回戦を突破し、次は準決勝で【剣帝】の異名を持つ赤羽カレンと凌ぎを削る事になる。
普段は冷静な彼も、初めての大きな大会の本戦と言う事もあってか、今回ばかりは拳を固め、軽くサムズアップした。
「………オレっちの負けだぜ鉄華オーカミ。今日の所はマジで完敗だ」
「イチマル……」
イチマルがオーカの元まで歩み寄り、そう告げて来た。悔しそうな表情こそ残っているものの、どこか満足気な感じも漂っている。
今の彼の表情を一言で表すのであれば【やり切った顔】と言った所か。
「でも次はこうはいかねぇ!!……もっともっと強くなって、絶対兄ィに認められるんだ」
「……あぁ、イチマルならできるよ」
2人はそう言い合いながら握手を交わす。凌ぎを削り合った両者のカードバトラーシップに、会場の誰もが声援と拍手喝采を届けて…………
******
「………よりにもよってヨッカの弟分なんざに負けやがって、クソ雑魚が」
スタジアムの裏側。誰もいないその場で、イチマルの兄であり、界放市最強カードバトラー集団『三王』の1人、ライダー王の称号を持つ鈴木レイジがそう呟く。
彼に認められんと一所懸命にバトルを取り組んだイチマルであったが、彼の思いは何一つ届いてはいない様子。
「……にしてもあのチビ。オレと同じ紫デッキかよ、これは下位互換確定だな。痛ぶり甲斐があるってもんだぜ」
レイジは最後にそう呟き、その場から立ち去っていった…………
******
「………結局オレっちってば、またベスト8止まりなんだな」
選手のみが通過できるスタジアムから控室までの通路。今イチマルは呆けながらそこを歩いている。
なんやかんやあったが、やはり負けた悔しさは直ぐには拭えない様子。
そんな折、彼に話しかけてきた人物が1人…………
「あ、イチマル」
「ッ……ヒバナちゃん」
それは自分の想い人である一木ヒバナだった。次の1回戦第三試合目が彼女だからだろう、こうして二試合目のイチマルとすれ違って…………
「あっはは……負けちまったよ。やっぱオレっちにはベスト8がお似合いみたいだぜ」
「…………」
イチマルの今の気持ちをなんとなく察したヒバナ。少しだけ間を空けると、口を開く。
「………落ち込むなんてらしくないわね」
「お、落ち込んでないよ!!……ただ……」
思い浮かぶのは兄であるレイジの顔。自分は精一杯バトルをしたが、おそらく彼は自分のことを認めてくれてはいないだろう。
単純に敗北した悔しさだけではない。そう言った複雑な兄弟事情が、イチマルをより苦しめていた。
今の所、身内の中で自分の兄の事を知っているのは鉄華オーカミだけ、流石にヒバナにまで余計な心配はさせられない。
「………まぁいいよ。イチマルはよくやったと思う」
「ッ……!」
珍しく罵倒ではない想い人からの言葉に、イチマルは思わず目を見開く。
「途中までは凄く惜しかったのにね。まぁ相手がオーカだったのもあるんだろうけど」
「ヒ、ヒバナちゃあぁぁぁん!!!……そんなにオレっちの事褒めてくれるなんて、やっぱ本当はオレっちのこと………」
「好きじゃありません」
イチマルのいつものノリを華麗にかわすヒバナ。だがその後、彼に笑顔を向けながら「でもまぁ、イチマルの分まで頑張るよ」と一言。
イチマルもそう言ってもらえて嬉しかったか、手を振りながら、スタジアムのバトル場へと向かう彼女を見送った。
******
「打ち鳴らせ、ウォーグレイモンッッ!!」
あれから数十分が経過し、1回戦第三試合。一木ヒバナが緊張感の中、自身のエースカードであるウォーグレイモンに最後のアタックを命ずる。
ウォーグレイモンはドラモンキラーと呼ばれる鉤爪で、対戦相手の最後のライフを切り裂き、撃破する。
「決まったァァァー!!!……1回戦第三試合、勝ったのは一木ヒバナ選手ッッ!!……ウォーグレイモンを使っての華麗なる勝利です!!」
実況席でアナウンサーの紫治夜宵がマイクを片手にそう叫んだ。会場がさらに盛り上がって行く中、ヒバナは勝利できた事に一安心。
それと同時に、次はほぼ確実に獅堂レオンとの因縁の再戦である事を理解する。
「……もうあの時の弱い私じゃない。勝つんだ、このウォーグレイモンで」
ウォーグレイモンのカードをBパッドから手に取り、そう呟くヒバナ。バトルの舞台に立っているウォーグレイモンもまたその感情を理解しているような表情を見せつつ、この場からゆっくりと粒子化して消滅していった。
******
「さぁさぁ、今年の界放リーグの1回戦も残すところ後1試合となりました!!……最後の四試合目を飾るのは、負け知らずの無敵の孤高の獅子、獅堂レオン!!」
本戦の1回戦も遂にラスト試合を迎える。紫治夜宵がそう告げると、銀髪の少年、獅堂レオンが舞台に上がる。その威風堂々たる姿はまさに界放市ジュニアのトップに君臨する王。
「対するは界放リーグ初出場の五味フメツ!!」
獅堂レオンの初戦の相手。同じく紫治夜宵にアナウンスされると、レオンと同じ舞台に立つ。
やや小柄な体格、紫がかった髪先に、猫背、根暗な目つきなど、その少年はとにかく陰湿な印象を受ける。
「………貴様がオレの相手か」
「ヒッヒッ……獅堂レオン、現在界放リーグ二連覇中の猛者か。相手にとって不足はないね。ところで君、レアカードは好きかい?」
「?」
五味フメツは見た目通りの陰湿な笑い声を上げ、レオンにそう聞いた。
「僕ちゃんは好きだよ。こう見えてカードコレクターでね、最近はモビルスピリット集めにも勤しんでいるんだ。そして、是非是非君の『デスティニーガンダム』もそのコレクションに加えたいと思っている」
「ほぉ」
五味フメツは明らかにジュニアどころか界放市の中でも指折りの実力を持つレオンに喧嘩を売っている。何せ遠回しとは言え、レオンに「デスティニーを寄越せ」と言っているようなものなのだから。
「我が魂、デスティニーガンダムを奪うと言うのか」
「人聞きの悪い言い方だな〜〜……僕はただ僕のコレクションに追加したいだけって言ってるのに」
意地汚い笑顔とコミュニケーションを見せる五味フメツ。それに対してもレオンは気高く口角を上げ…………
「いいだろう。オマエがこのバトルに勝てばデスティニーは譲ってやる」
「ホントに!!……ラッキー」
あっさりとアンティバトルを承諾。通常ではアンティバトルなどご法度なのだが、会話が舞台に立っているものにしか届かないため、結果的にデスティニーガンダムなカードがバトルに賭けられた。
「ヒッヒッ。じゃあもう御託はいらないね、さっさと始めようか」
「…………」
互いにBパッドを展開し、そこにデッキをセット。バトルの準備を終える。
そして…………
………ゲートオープン、界放!!
デスティニーガンダムのカードが賭けられた、界放リーグ1回戦、最後の四試合目が幕を開ける。
先攻は獅堂レオンだ。自分が必ず勝つと心の底から思っているからか、大事なカードであるはずのデスティニーガンダムを賭けられていても堂々とした態度でターンを進めて行く。
[ターン01]獅堂レオン
「……メインステップ。オレは母艦ネクサス、ミネルバを配置する」
ー【ミネルバ】LV1
レオンが配置したのは銀色で、細部が赤で彩られた母艦。名をミネルバ。
いわゆる「母艦ネクサス」を自在に操る事でも有名なモビルスピリットだが、彼のデッキにおいては他のモビルスピリットデッキよりもさらに重要度は高い。
「配置時効果。デッキから3枚オープンし、その中の対象カードを1枚手札に加える。オレは『ザクウォーリア』のカードを1枚手札に加え、残りはデッキの下に戻す。ターンエンドだ」
手札:5
場:【ミネルバ】LV1
バースト:【無】
「ヒッヒッ……次は僕ちゃんのターンだね」
無難な第1ターン目を終えるレオン。次は五味フメツのターン。
このバトルに勝てばデスティニーガンダムを貰える事からか、そのモチベーションの高さが伺える。
[ターン02]五味フメツ
「メインステップ……こっちも先ずはネクサスで様子を見ようかな。ネクサス、英雄皇の神剣」
ー【英雄皇の神剣】LV1
五味フメツの背後に配備されたのは、剣先を下に向けながら宙に浮かんでいる巨大な剣。
シンプルな効果を持っているが、それ故にバトスピ界では有名な1枚。
「さらにバーストをセット、英雄皇の神剣の効果で1枚ドロー………うん、まぁ悪くないかな。これでターンエンドにしよう」
手札:4
場:【英雄皇の神剣】LV1
バースト:【有】
最初のターンは互いに1体もスピリットを召喚しないという、静かな滑り出しとなった。
次は一周回り、レオンのターン。巡って来たターンシークエンスを淡々と進めて行く。
[ターン03]獅堂レオン
「メインステップ……オレは2枚目のミネルバを配置する」
「!!」
ー【ミネルバ】LV1
「配置時効果で再びザクウォーリアを1枚手札に」
レオンの背後には2隻目となるミネルバが出現。第1ターン目と全く同じようにカードを1枚手札に加える。
だが…………
まるでそれを待ち望んでいたかのように、五味フメツが目を光らせ、ニヤリと笑って…………
「待っていたよその効果。相手の手札増加時のバースト発動!!」
「む」
「デジタルスピリット、キメラモン!!」
勢い良く反転した五味フメツのバーストカード。それはこの状況から自分を一気に優位にしてくれる1枚で尚且つ、レオンのデッキには武が悪いカード…………
「バースト効果、ネクサス2つを破壊し、ボイドからコア1つをリザーブに」
「!!」
「ヒッヒッ、気づいたみたいだね。この効果でミネルバは2つとも破壊される!!」
彼の反転したバーストカードより放たれる、禍々しい2つの魔弾が、レオンのミネルバ2隻を貫き撃墜させる。
その後、五味フメツは発動させたカードを手に取り、再びカード名を叫ぶ。
「この効果発揮後、自身をノーコスト召喚する………現れよ異端なる完全体デジタルスピリット、キメラモンッッ!!」
ー【キメラモン】LV2(3)BP9000
突如蠢き出す地中。そこから咆哮を張り上げながら姿を現したのは、グレイモンのボディやガルルモンの毛皮、カブテリモンの甲殻など、さまざまなデジタルスピリット達が合成されて作り出された異形のデジタルスピリット。
その名はキメラモン。4本の腕と4枚の翼を広げ、強い存在感を示す。
「フン。爽快だな」
「こう見えて僕ちゃん賢いからさ、今までの君のバトルを研究してたんだよね。そしてそれで分かった事は、君のデッキは『ネクサス破壊』に弱いと言う事」
「…………」
「デスティニーガンダムは確かに強力なモビルスピリットだ。アタック時や【VPS装甲:コスト7以下】もそうだけど、1番は対象のネクサスを疲労させて回復する効果。アレで何度もデスティニーガンダムにアタックされるのは流石にヤバすぎ。そう思って今回、キメラモンを採用したのさ……コイツも中々良いレアカードだろ?」
長々と語る五味フメツ。だが言っている事は確かな話ではあるのだ。レオンもそれは自覚している…………
「お喋りが好きなようだな。ザクウォーリアを1体召喚してターンエンドだ」
手札:5
場:【ザクウォーリア】LV1
バースト:【無】
己のデッキの弱点を喰らいはしたものの、動揺は一切せず、次の一手を繰り出す獅堂レオン。その場には緑色で1つ目のモビルスピリットが召喚された。
彼の実力をとやかく言ってくる者達も大勢いるが、この動きが取れるだけでもわかる者には彼に相応な実力を所持しているのが直ぐに理解できる。
[ターン04]五味フメツ
「メインステップ………もう一度バーストをセット、英雄皇の神剣で1枚ドロー。さらにマジック、ストロングドローでデッキから3枚引き、2枚を捨てる」
メインステップの開始早々、止まらないドローコンボ。
五味フメツは手札の質をより高みへと向上させると「アタックステップ」を宣言して……………
「アタックステップ!……さぁキメラモン。奴のライフを八つ裂きにして来い!!……アタック時効果でザクウォーリアを破壊して1枚ドローだ」
「!」
キメラモンの4本の腕から放たれる熱線が、レオンのザクウォーリアの見るも無惨な姿へと変形させ、爆散させる。
しかしレオンもただ黙って見ておくだけではない。
「ザクウォーリアの破壊時効果。ボイドからコア1つを白属性のザクかトラッシュに追加。その後手元へ移動する」
コア1つがトラッシュへと追加される。破壊されたネクサスのシンボル分には及ばないが、返しの自分のターン、これで少しは楽に動けるだろう。
「本命のアタックはライフで受けてやろう」
〈ライフ5➡︎4〉獅堂レオン
獰猛に襲い掛かってくるキメラモン。その鋭い顎が、牙がレオンのライフバリアを捉え、粉々に粉砕する。
「僕ちゃんはこれでターンエンド。デッキの相性差、多分とんでもないけど、精々頑張って。後、負けたら君のデスティニーを僕ちゃんに上げる約束、忘れないでよね」
手札:5
場:【キメラモン】LV2
【英雄皇の神剣】LV1
バースト:【有】
レオンの場を再びガラ空きにし、余裕の表情でそのターンをエンドとする五味フメツ。
かなり劣勢だが、それを感じさせない飄々とした表情をみせながら、レオンの返しのターンが幕を開けて行く…………
[ターン05]獅堂レオン
「メインステップ。3枚目のミネルバを配置する」
ー【ミネルバ】LV1
3隻目のミネルバがレオンの背後に配備される。そしてその効果もフルで発揮させていく…………
「配置時効果。オレは我が魂、デスティニーガンダムを手札に加える」
「!」
3枚目のミネルバの配置時効果、ここでようやくデスティニーガンダムを手札に引き込む事に成功するレオン。このまま次のターンにでも召喚できれば劣勢を覆す事ができるが…………
五味フメツはここで彼がデスティニーガンダムを手札に引き込む事さえも読んでいて…………
「バースト発動、再びキメラモン!!」
「!」
「もう一度ミネルバを破壊してコアブースト、そしてLV1で召喚」
ー【キメラモン】LV1(1)BP7000
1つ前のターンと全く同じだ。勢いよく反転したバーストカードから放たれた魔弾がレオンのミネルバを貫き撃墜させ、五味フメツの場には2体目のキメラモンが地獄の咆哮と共に姿を現した。
「残念だったね。ネクサスは絶対に使わせないよ」
「フン。このオレがデスティニーだけで芸のない奴に見えるか?……まぁ良い、貴様がそこまで言うのであれば、このデスティニーガンダムで勝ってやろうではないか………オレは手札と手元からザクウォーリアを連続召喚」
ー【ザクウォーリア】LV1(1)BP2000
ー【ザクウォーリア】LV1(1)BP2000
ここまでデスティニーガンダムの対策をされているのであれば、逆にそのデスティニーガンダムを使って勝ってやろうと心に誓うレオン。そんな彼の場には2体のザクウォーリアが展開される。
「ターンエンド。さぁ、オマエの実力、このオレに見せて見るがいい」
手札:5
場:【ザクウォーリア】LV1
【ザクウォーリア】LV1
バースト:【無】
「こ、これは凄い。あの王者獅堂レオンが、界放リーグ初参加の五味フメツに圧倒的劣勢を強いられております」
実況席にいるアナウンサー紫治夜宵がマイクを片手にそう言葉を落とす。隣の解説席に座っているモビル王早美アオイは「これに合わせて私も何か喋らないと」と思い、自分も徐にマイクを手に取る。
「ネクサスは今のバトルスピリッツにとっては欠かせないモノ。デスティニーガンダムだけでなく、他のデッキ達に対しても、キメラモンは有効なカードであると言えますね。彼の今大会に対する強い熱意も感じ取れます」
一見、ただのレアカードが好きなだけの陰湿なコレクターに見えるが、実際のデッキは大会の環境をメタった構築となっている。
アオイの言う通り、理由はどうあれ、実は彼は相当な強い熱意があって界放リーグに望んでいたのかもしれない。
[ターン06]五味フメツ
「僕ちゃんのメインステップ。2体目のキメラモンをLV3にアップ」
メインステップ開始直後。1つ前のターンに召喚されたキメラモンのLVが1から3へと飛躍的に跳ね上がる。
「アタックステップ、最初に召喚した、LV2のキメラモンでアタック!!……その効果でザクウォーリア1体を破壊し、1枚ドロー」
「………ザクウォーリアの破壊時効果、ボイドからコア1つをトラッシュへ。その後手元へ移動」
再び4本の腕から放たれるキメラモンの熱線。2体いる内の1体に命中し、それを爆散させる。
対するレオンも破壊時効果でコアブーストを行うものの、どちらがより大きなアドバンテージを得ているのかは明白。そしてその差をさらに広げるべく、五味フメツは手札にある1枚のカードを切る…………
「ここからさらに君を追い詰める!!……フラッシュ煌臨、対象はアタック中のキメラモン」
「!」
スピリットカードにスピリットカードを重ねる事で行われる煌臨の効果。そのエフェクトにより、キメラモンの足元から儀式でも始まるかのように赤いルビーの紋章が浮かび上がる…………
「その炎は全てを焼き焦がす………現れろ、合体魔王獣ゼッパンドン!!」
ー【合体魔王獣ゼッパンドン[ウルトラ怪獣2020]】LV2(3)BP10000
赤いルビーの紋章がキメラモンの足下からそれを包み込むように天空へと移動、その後消滅したかと思えば、キメラモンは一瞬にして黒い鱗、赤い衣を持つ魔王獣ゼッパンドンへと姿を変えていた。
「これもかなりのレアカードなんだ。3枚揃えるのに苦労したよ」
「そうか。ならばそのカード、強いんだろうな」
「もちろんさ………召喚煌臨時効果、BP7000以下のスピリットかネクサス1つを破壊、そして破壊したカード効果を発揮させない」
「………」
「当然、ザクウォーリアだ。破壊時のコアブースト効果は無効だよ」
ゼッパンドンの口部から放たれる火炎弾がレオンのザクウォーリアに被弾。ザクウォーリアは跡形もなく消し飛ぶ。
しかも今回は破壊時効果も発揮させてもらえないため、コアブーストさえも不発に終わる。
「さらに煌臨していた場合、デッキから2枚ドロー……これで僕ちゃんの手札は合計8枚、対する君は4枚。2倍の差が開いちゃったね〜〜」
「………ゼッパンドンのアタックはライフで受けよう」
〈ライフ4➡︎3〉獅堂レオン
ゼッパンドンの爪による引き裂く攻撃がレオンのライフバリア1つをあっという間に切り裂く。
そしてそのバックには既にキメラモンが待機していて…………
「ゼッパンドンはバトル終了時、自らの効果で回復。そして2体目のキメラモンでアタック!!…効果で1枚ドローだ!!」
「それもライフで受けよう」
〈ライフ3➡︎2〉獅堂レオン
今度はキメラモンがレオンのライフバリアへと飛び込み、それを1つ、豪快に噛み砕く。
「ヒッヒッ……油断は禁物、ゼッパンドンは一応ブロッカーとして残しておこうか、僕ちゃんはこれでターンエンド!」
手札:9
場:【キメラモン】LV3
【合体魔王獣ゼッパンドン[ウルトラ怪獣2020]】LV2
【英雄皇の神剣】LV1
バースト:【無】
「す、凄すぎる五味フメツ!!……あの誰も敵わないと言われた絶対王者、獅堂レオンを相手にここまで一方的な優位を保っています!!…信じられません!!」
絶対王者の地位が揺らぎかねないこの状況、アナウンサーの紫治夜宵が篤く実況する。手札と場、ここまでアドバンテージに差が開いた会場の皆も流石にここからの逆転は無理なのではと感じ始めている……………
そんな折、獅堂レオン本人が自分のターンを前にして口を開く。
「………1つだけわかった事がある」
「ん?」
「貴様の使うそのカード達、そいつらからは全く持って魂を感じん」
「………は?」
何を偉そうに言い出すかと思えば、意味のわからん事を…………
レオンの言っている意味のわからなかった五味フメツ。内心では「さっさとデスティニーガンダムを寄越してくれないかな」とも思っている。
「……一応聞くけど、どう言う意味?」
「貴様のそのスピリット達は貴様の仲間ではない、ただの道具になっている………と言えばわかりやすいか?」
「…………」
レオンにそう言われ、ゆっくりと意味を確認する五味フメツ。そしたら段々と笑えて来て…………
「プッ……ヒッヒッ、ヒャァッハッハッハッ!!……スピリットは仲間?…なにそれ本気で言ってんの!?…そんなわけないだろ、スピリットはバトルに勝つための道具だ、コレクション品だ!!……じゃあ何、君は鉛筆とか消しゴムとかにも仲間って呼んでるの?……滑稽極まり無しだね」
「成る程、これは重症だな」
「重症は君だろ!!」
中々噛み合わない2人、その後レオンは「ならば見せてやろう、我が魂を……!!」と告げ、王者らしい迫力を見せつけ、巡って来た己のターンを開始していく…………
[ターン07]獅堂レオン
「メインステップ……運命をも覆す我が魂!!……デスティニーガンダムをLV2で召喚!!」
ー【デスティニーガンダム】LV2(2)BP15000
蔓延る雷雲。そこから放たれる落雷と共に姿を見せるのは、赤き機翼を羽ばたかせる白きモビルスピリット、レオンの魂、デスティニーガンダム。
「おぉ!!……これがデスティニーガンダム!!……欲しい、必ず手に入れてやる。そして君の後は、鉄華オーカミの持っているバルバトスだ」
「アタックステップ、翔け抜けろデスティニー……!!」
五味フメツの言葉を無視し、速攻でアタックステップへと移行してデスティニーガンダムで攻撃を仕掛けるレオン。
そしてその強力なアタック時効果が繰り出される………
「アタック時効果、ゼッパンドンを破壊して、そのシンボル分のダメージを貴様のライフに与える」
「ッ……!!」
〈ライフ5➡︎4〉五味フメツ
デスティニーガンダムの巨大なビームライフルで撃ち抜かれるゼッパンドン。堪らず地面に伏せ、大爆散を起こした。
そしてそのビームライフルの勢いは止まる事を知らず、そのまま五味フメツのライフバリアをも貫通して見せた。
「くっ………流石の破壊力だ。でもネクサスがないから、その力は100%ではないよね!!……ライフで受ける」
〈ライフ4➡︎3〉五味フメツ
二発目のビームライフルが五味フメツのライフバリアを襲い、その数をさらに減らしてしまうが、ネクサスがレオンの場にない関係上、回復と、それに伴うこれ以上のアタックは不可能で…………
「………ターンエンドだ」
手札:5
場:【デスティニーガンダム】LV2
バースト:【無】
デスティニーガンダムで強烈な一打を浴びせるも、このターンのみでは決め切れず、致し方なしと言った様子で、レオンはそのターンをエンドとする。
次は未だ圧倒的優位に立っている五味フメツのターンだ。
[ターン08]五味フメツ
「メインステップ……2体目のゼッパンドンを召喚する」
「!」
「キメラモンのLVを2まで下げ、LV3だ」
ー【合体魔王獣ゼッパンドン[ウルトラ怪獣2020]】LV3(4)BP16000
これまたキメラモンと同じく2体目。強力無比なスピリット、ゼッパンドンが再びその場に姿を現す…………
「アタックステップ!!……やはり君と僕のデッキの相性差は最悪のようだね、ゼッパンドンでアタックッ!!……このターンで終わりだ!!」
レオンのライフが0になる算段のついた五味フメツ。2体目のゼッパンドンで攻撃を仕掛ける。
前のターンに唯一のスピリットであるデスティニーガンダムでアタックを行なってしまったレオンはこれをライフで受けるしない。
「ライフで受ける」
〈ライフ2➡︎1〉獅堂レオン
ゼッパンドンの鋭い爪の一撃が、今一度レオンのライフバリアを切り裂く。誰もが終わったと思ったその瞬間、レオンは冷静に手札にあるカードを1枚、Bパッドへと叩きつけた…………
「ライフが減った事により、手札にある絶甲氷盾の効果を発揮!!」
「!?」
「このバトルの終了時、貴様のアタックステップを終了する」
レオンが放ったマジックカードは『絶甲氷盾〈R〉』………
ライフが減少した際にノーコストで使用できる特別なマジックカードである。これを放たれた今、五味フメツはキメラモンでもゼッパンドンでもアタックを行えなくなり…………
「………バトル終了時、ゼッパンドンは回復する………ターンエンド」
手札:9
場:【キメラモン】LV2
【合体魔王獣ゼッパンドン[ウルトラ怪獣2020]】LV3
【英雄皇の神剣】LV1
バースト:【無】
2体のブロッカーを残し、そのターンをエンドとせざるを得なくなった五味フメツ。
しかし手札にまだ何かあるのか、その表情は未だに余裕を感じさせる。
レオンはその余裕を崩すべく、己の魂を込め、本気でターンを進めていく…………
[ターン09]獅堂レオン
「メインステップ……モビルスピリットの武器は母艦ネクサスだけではない、オレはパイロットブレイヴ、シン・アスカをデスティニーガンダムに合体!!……そしてデスティニーガンダムをLV3にアップ」
「ッ……ここでパイロットブレイヴ!?」
ー【デスティニーガンダム+シン・アスカ】LV3(5)BP28000
獅堂レオンのデッキのパイロットブレイヴがここに来て登場。デスティニーガンダムの見た目こそ変化はないものの、確かなパワーアップを果たす。
「ヒッヒッ……だがいくら強くなろうと一度のアタックじゃ僕ちゃんのライフには届かない!!」
「………それはどうかな?」
「!?」
「アタックステップ」
キメラモンとゼッパンドン。2体の強力なブロッカーを前に、レオンはパイロットブレイヴ、シン・アスカと合体したデスティニーガンダムで勝負を仕掛ける。
「デスティニーでアタック!……そのアタック時効果で再びゼッパンドンを破壊し、そのシンボル分、貴様にダメージを与える」
「!!」
〈ライフ3➡︎2〉五味フメツ
上空からゼッパンドンに接近するデスティニーガンダム。身の丈ほどはある巨大なビームサーベルを手に取り、ゼッパンドンへと一閃…………
ゼッパンドンは堪らず力尽き、爆散してしまう。そしてそれに伴う爆風が、五味フメツのライフバリア1つを消し飛ばした。
さらにこの瞬間、レオンの召喚したパイロットブレイヴ、シン・アスカの効果を遺憾無く発揮させる。
「ここで合体中のシン・アスカの効果を発揮。デッキの上から1枚をオープンし、系統『ザフト』『FAITH』を持つカードならば、召喚、配置、使用する事ができる」
「なに、それじゃあネクサスを引けば………」
「デスティニーは自身の効果で効果で回復し、このオレが勝利する」
シン・アスカの効果でデッキトップに手を添えるレオン。確かにこのタイミングでネクサスカードをドロー、そのまま配置できれば、デスティニーは自身の効果で回復して勝利を捥ぎ取る事ができる…………
だが………
「ヒッヒッ……だけど僕の手札には3枚目のゼッパンドンがある。ネクサスが来ても直後に煌臨、効果でそのネクサスを破壊できる」
「…………カードをオープン」
「何が来てもお終いだ!!」
勢い良く引いたオープンカード。レオンはそれを視認する。
それを見るなり、口角を上げて…………
「オレは『ザフト』を持つ創界神ネクサス、ギルバート・デュランダルを配置!!」
「ッ……創界神!?」
ー【ギルバート・デュランダル】LV1
レオンが配置したのはオーカの鉄華団で言う所の『オルガ・イツカ』にあたるカード『ギルバート・デュランダル』…………
このカードはネクサスであっても、その中で希少な存在創界神ネクサス。その特性を知っている五味フメツは唖然とした様子で、開いた方が塞がらない。
「創界神ネクサスは通常のネクサスを対象にした効果を受けない………」
「その通りだ。そして我が魂デスティニーガンダムの回復効果は、創界神ネクサスをも対象にしている」
「ッ……!?」
「よって、このギルバート・デュランダルを疲労させ、回復させる!!……起き上がれ、我が魂!!」
ー【デスティニーガンダム+シン・アスカ】(疲労➡︎回復)
ゼッパンドンは飽くまでネクサスを破壊するだけで創界神ネクサスまでは対象に取れない。
それ故にレオンの創界神ネクサスは破壊できないのだが、デスティニーガンダムは違う、創界神ネクサスをも対象に取り入れたその効果で回復状態となり、このターン二度目のアタック権限を得る。
シン・アスカ。そして創界神ネクサスの登場は、五味フメツの計算は完全に瓦解させた。
「ク、クソッ!!……なんでここに来てこんな……ブロック、ブロックだキメラモン!!」
デスティニーガンダムの行く道をキメラモンが阻む。長い4本の腕でデスティニーガンダムを捕らえようとするも、デスティニーガンダムの気迫に弾き飛ばされ、地に叩き伏せられる。
「フラッシュ、煌臨発揮!!……キメラモンを対象にゼッパンドンを煌臨する」
ー【合体魔王獣ゼッパンドン[ウルトラ怪獣2020]】LV2(3)BP10000
キメラモンが立ち上がり、咆哮を張り上げると、再び地面から赤いルビーの紋章がキメラモンの身体をくぐり抜け、その姿を本日3体目となるゼッパンドンへと変化させる…………
「煌臨時効果。デッキから2枚ドロー……」
回復したデスティニーガンダムを止めるためのカードをドローすべく、五味フメツは煌臨したゼッパンドンの効果を発揮させるが…………
「くっ………何故何もカウンターのカードをドローできない!?……僕ちゃんの対策は万全だったはずだ」
その手札の合計は10枚。普通にバトルを行っただけでは到達しえない領域まで手札を増やした五味フメツであったが、カウンターカードなどを何も引けず…………
デスティニーガンダムの攻撃をただ受け入れるしかなくなって………
「それは貴様のカード達に、デッキに魂が込められていないからだ」
「!?」
「そんな奴がここ1番で最高のドローなど、できるわけがなかろう!!……やれ、デスティニーッ!」
巨大なビームライフルから極太のビームを照射するデスティニーガンダム。その先には当然煌臨したゼッパンドンがいる。
ゼッパンドンは身を守ろうと周囲にバリアを展開するが、それは意味を成さず、あっさりと砕かれ、その身体を貫かれる。最後には力尽き、横に倒れて爆散して行った。
「オレもバトルに勝利するのは好きだ。勝つためにカード1枚1枚を吟味し、デッキの完成度を高めるのは大いに結構!!……だが自分のスピリットを道具などとほざく奴は論外だ!!……ラストアタックだ、デスティニーッッ!!」
「そ、そんな馬鹿なァァァーー!?!」
〈ライフ2➡︎0〉五味フメツ
この勝因は、魂の有無の差である。
そう言わんばかりのデスティニーガンダムの一撃。強烈なビームが五味フメツのライフバリアを包み込み、残ったそれを全て破壊…………
いつものように、獅堂レオンの魂はそれを勝利へと導いた。
「勝者、獅堂レオンッッ!!……鮮やか過ぎる華麗な大逆転劇で勝利を収めましたァァァー!!」
アナウンサーの紫治夜宵がマイクを手にそう叫ぶと、会場の観客達の多くも大興奮してレオンとデスティニーガンダムに対して拍手喝采。
「………今年で一番つまらんバトルだった。やはりオレを楽しくさせてくれるのは、奴だけか」
勝利の余韻も干渉もなく、Bパッドを閉じてこの場からさっさと立ち去っていくレオン。
彼の言う「奴」とはおそらく、唯一ライバルとして認めた鉄華オーカミの事だろう。
「………カードに魂………か。フ……僕ちゃんも今度大量のコレクションからお気に入りの1枚を見つけてみるとするか」
負けはしたものの、意外と清々しい様子を見せる五味フメツ。デッキをアップデートし、獅堂レオンにリベンジを誓うと、彼もまたすぐさまこの場から去って行った……………
「以上で1回戦、全ての試合が終了いたしました!!……続く2回戦はこの後1時間のインターバルを置いてからのスタートとなります。気になる第一試合は『鉄華オーカミ』と『赤羽カレン』!!……乞うご期待ください!!」
最も対戦数の多い1回戦の全てのプログラムが終了した。会場の観客達は与えられた1時間の休憩時間、購買でパンなどの食べ物を購入してり、トイレに行ったりなどをしている。
「………私ちょっとお手洗いに行ってくるね」
「うん。いってらっしゃい」
「人混むだろうから気をつけて」
「大丈夫ですよヨッカさん。子供じゃないんですから」
春神ライの友人、夏恋フウがそう告げると、会場のあちこちにあるトイレへと向かって行った。
「……で、界放リーグはどうだライ。一応みんなオマエと年齢は同じくらいだぞ」
2人っきりになった所で、九日ヨッカがライに聞いた。ライは口を尖らせ「むぅ〜」と唸り声を発する。
「なんか普通って感じ。私の方が100倍強そう」
「ワッハッハ!!……そりゃそっか。オマエはオレより強いもんな。このくらいの大会、どうって事ないか」
ライは直後に「ただ……」と、言葉を付け足す。
「あのバカチビ。アイツだけはどうも引っ掛かるのよね」
「ん?……あぁ、オーカか。確かにアイツは不思議だよな」
「…………」
ライが気になるのはやはり『鉄華オーカミ』…………
バトル中に『自分がバトルに勝利する未来が視える』と言うライの謎めいた力。それは殆どの相手には発揮される。
だがあの時、鉄華オーカミとバトルしたあのバトルは、生まれて初めてその未来が覆されかけたバトル。だからこそ、ライはもう一度彼とバトルをし、本当に決まった未来を覆す力があるのかを確かめたいのだ。
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「ふぅ………実況解説も、これでひと段落ですね。早美さん、今から昼食を一緒にどうですか?」
マイクの音源を一旦消し、一息ついたアナウンサーの紫治夜宵と、解説役で呼ばれた高校生プロバトラーにして界放市を代表する三王と呼ばれるカードバトラーの1人、早美アオイ。
紫治夜宵は、歳上のお姉さんらしく、優しくフレンドリーな感じでアオイに接する。
「………ありがとうございます。ですが今日は遠慮しておきます。今からお仕事やそのスケジュールに関するレスポンスをしなければいけませんので」
「あら、そうですか。それは残念」
そう言うと、礼儀正しく頭を下げ、この場から立ち去っていくアオイ。その背中を見た紫治夜宵は「大人びてるな〜…椎名ちゃんが同じ年齢だった時はもっと騒がしかったぞ」とコメントを残した。
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界放リーグが行われているジークフリード区のスタジアム『ジークフリードスタジアム』…………
その舞台の地下には数多くのバトル場が存在しており、ここで界放リーグが行われる際は、その予選をここで行うのだ。鉄華オーカミ達も早朝、ここで予選のバトルを行っていた。
ただ今は本戦の真っ只中、簡単に言えば今年の役目は終わったのだ。故に人1人いない……………
早美アオイを除いては…………
「………言われた通り、1人で来ましたよ」
反響する彼女の勇んだ声。だがその中には恐怖や不安も感じ取れる。
無理もない、何せ、今から彼女が邂逅を果たそうとしているのは…………
一度世界を滅ぼしかけた、伝説の悪魔なのだから。
「ヌッフフ、お待ちしておりましたよ、早美アオイさん」
「ッ……!」
やや左から、喉が焼け焦げたような声が聞こえて来た。アオイはその方へ身体ごと首を向ける。
そこにいたのは、自動で動く車椅子に乗った、包帯だらけの男。その不自由な姿は見ているだけで痛々しい…………
見ただけではとてもではないが誰かは特定できない。しかしアオイにはわかっていた、彼は間違いなく…………
「………貴方が、Dr.A……!?」
「そうですとも。こうしてお会いするのは初めてですね」
6年前、界放市どころか世界全体を破滅へと追いやろうとした未曾有の大事件『A事変』…………
それを起こした全ての元凶である悪魔の科学者『Dr.A』…………
この界放リーグ真っ只中の今、彼とアオイの関係性が明らかになる。
次回、第20ターン「聖剣を砕け」