「今日から学校か、面倒だな。勉強わかんないし」
とある日の朝方。とあるマンションの一室。
無造作に伸びた赤い髪が特徴的な少年「鉄華オーカミ」は怠そうに新調したてであろう紺色の学ランを怠そうに着用していた。
それは今日から転向する事になった中学の制服。身体が小さいオーカミはこれから伸びる事が期待されているのか、その制服のサイズは大きく、少々だぼだぼである。
「でも、学校が終わったらバイトだ。またバトスピができる」
ふと机にあるバトスピのデッキに目が行くと、それを学ラン裏のポケットに仕舞う。どうやら昨日味わったバトスピをもう一度やりたい様子。
アニキ分であるヨッカに言われるがまま成り行きで始めたバトスピ。しかしその存在は既にオーカミの中ではより大きなモノになっていて………
こうして、オーカミは楽しみを心の奥底に仕舞い、マンションを出たのだった。
******
ここは界放市。ジークフリード区、デスペラード区、キングタウロス区、オーディーン区、ミカファール区、タイタス区の6つの区域に分けられた日本有数のバトスピ都市である。
その内の1つ、ジークフリード区にあるとある中学校。時は朝方、その教室の一つにて、長い黒髪を二本に結っているツインテールが特徴的な少女、一木ヒバナは学生カバンの中にある教材を机の中に入れていた。朝のホームルーム前のこの時間帯、学生としては当然の作業だ。
そしてそんな彼女に声を掛けて来た人物が1人。
「おはようヒバナちゃん〜〜…休日はオレっちに会えなくて寂しかっただろ?」
「……」
「アレ、なにその反応?…お〜いヒバナちゃぁ〜ん!!…オレっちだよ、ヒバナちゃんのファン1号のイチマル君だよ〜!!」
ヒバナの知り合いなのか、緑色でウェーブの掛かったチャラついた髪が印象的な男子生徒がナンパ紛いな口調で喋り掛けて来た。
特に彼には興味がないのか、白々しい目を向ける。
「はぁ……朝っぱらから元気ねイチマル。1個上の学年のくせに下級生の教室まで来るなんて」
「そりゃもうだってヒバナたんにいち早く会いたくてさ〜!!」
ヒバナよりも1つ年上のイチマルと呼ばれるチャラついた少年。
彼はとにかく美少女であるヒバナの大ファンであるようで、毎度の如く学校では懲りずにヒバナにアピールすべく声を掛けている。
そんな彼は「ところで」とヒバナに話題を振ると………
「聞いたヒバナちゃん!?…この間街のどこかのカードショップで未知のモビルスピリットを使うカードバトラーが出たって!!」
「え、未知のモビルスピリット?……いやまだ何も聞いてないけど」
「そう。その名もガンダム・バルバトス!!…噂では初の紫属性モビルスピリットらしいぜ〜!」
カードショップに現れた未知のモビルスピリット、バルバトス………
それは先ず間違いなく鉄華オーカミが持つ鉄華団デッキのガンダム・バルバトスの事であろう。
当然ながらオーカミ本人は噂になっている事を自覚していないだろうが、その場にいなかったイチマルがバルバトスの存在を知っている所を見る限り、既にそれなりの知名度はあるようだ。
「で、それが何?」
「よかったら今日そのバルバトスを一緒に探さない??……次いでにデートでも………」
「嫌よ」
「うっ………」
即答で断るヒバナ。
イチマルと言う男はいつもこうだ。ヒバナに話題をふっかけては毎度の如く「デートしよう」に結びつけようとする。
正直言ってこんな明らかに自分の顔だけが目当てのような男はヒバナのタイプではない。
「そう言うのは私にバトルで勝ってから言えっていつも言ってるでしょ?……わかったら早く教室を出て、もう直ぐ授業だし」
「は、はい……わかりました………ねぇ本当にダメ?」
「しつこい!」
かなりキツめに釘を刺していくヒバナ。彼女に頭の上がらないイチマルはしょんぼりしながら教室を出て行く。
その途端にホームルーム開始の鐘が鳴り響く。先生と思わしき女性が教室へと入室して来ると、遊んでいたり話し合ったりしていた生徒は皆、己の机へと着席していく。
「はーい、おはようございます皆さん。突然ですが今日はホームルームの前にこのクラスに入る事になった新しい転校生を紹介したいと思います!」
第一声からまさかの報告。5月の時期に転校生と言うまさかのパターンに教室中の誰もが驚く。
へーー…この時期に転校生って…相当訳有りな子なんだろうな。
生徒達が転校生の話題でざわつき始める中、ヒバナが内心でそう考えた。確かに4月ではなく5月と言う中途半端な時期に転校するのは相当な訳有りな人物である事は勘ぐる事ができる。
「みんな静かに。それじゃあ呼びますね、入って来て〜」
先生が生徒の皆を鎮め、教室の外で待機している生徒を呼び、教室内へと入室させる。
その転校生とは。
「あ、あの子アポローンの……!?」
その姿を見るなり思わず声が漏れ出るヒバナ。無理もない、何せ転校生と言うのがつい先日カードショップ「アポローン」でバイトを始めたと言うあの鉄華オーカミだったのだから…………
オーカミは特に緊張感も感じていない無愛想な表情のまま、チョークで黒板に自分の名前を記入していく。
「鉄華オーカミです。まぁ、よろしく」
「あの子、同じ歳だったんだ………」
クラスメイトに向かって軽くお辞儀をするオーカミ。ヒバナはあの小柄なオーカがまさか自分と同じ14歳の中学2年生だった事に驚愕している。
「よろしくね鉄華君。それじゃあ席は、1番後ろの一木さんの横とかどうかしら?」
「!!」
まさかのご指名。オーカミは先生に言われるがままヒバナの席へと向かう。その道中、当然ながら2人は目が合った。
「あ、ショップの女の子」
「あっはは……よろしくね〜」
人の事を大抵は名前で覚えないオーカミ。一度カードショップ「アポローン」で名前を名乗ったヒバナの事を「ショップの女の子」と呼んでいるのがその証拠である。
ヒバナはヒバナで彼が歳下だと思っていたとは言えない。取り敢えず愛想笑いで誤魔化していく。
オーカミも性格上故か、それ以上に口を開かず、そのまま空いている席に着席した。
その後は滞りなく授業が始まって行ったのだが、ヒバナは彼とは一言も喋れず、遂には放課後になってしまった。
******
「……結局あれから一言も喋らなかったな〜…ホント何考えてるかわからない子だわ。ヨッカさんはなんであの子を弟分にしたんだろ?」
カバンを肩に下げ、帰宅しようとするヒバナ。
カードショップ「アポローン」の店長九日ヨッカとは古くからの知り合いであるが、そんな彼に弟分がいた事など聞いた事がなかった。
そんな事もあってオーカミに少々興味が湧いているのだが………
「ん?……あれって鉄華?」
そんな時、ふとあのオーカミの姿が確認できた。だがその周囲をガラの悪そうな男子生徒3人が囲んでいて…………
「オマエが今日転校して来たヤツか」
「うん、そうだけどアンタ達誰?」
「おいおチビちゃん、そんな事も知らないのか?…この方はここら辺でも札付きの悪、毒島さんだ!」
「ちゃんと敬語使えよな!!」
「ふーーん」
ガリガリでヒョロヒョロな取り巻き2人が言うには一番図体の大きい男子生徒は「毒島」と言うらしい。
彼らが妙に上から目線なこともあり、オーカミはいつもより薄いリアクションを見せる。
「で、その札付きの何とかが何の用?」
「あぁ!?…決まってんだろテメェ、先ずは持てるだけの金を置いていきな」
体の小さいオーカミ。カツアゲ常習犯の彼らにとっては格好の獲物であるとして目をつけられていたようだ。
如何にも小物くさい連中。オーカのは面倒くさそうに………
「嫌だ。お金は大事にしろって姉ちゃんに言われてる」
「はぁ!?」
「だから、あげる理由が無い奴にはあげない」
これと言って脅しに怯える様子もなく、淡々とした様子でそう告げたオーカミ。
事実正論である。せっかくバイトで稼いだ金を他の誰かのために使うわけがないのだから………
「なんて生意気なヤツ!!」
「やっちゃってくださいよ毒島さん!!」
「おうよ!!…目にものを見せてやるぜ!!」
もちろんこの行為は彼らの沸点となる。毒島はオーカミの胸ぐらを掴み上げると、今にも殴りかからんとポージングを取る。
絶体絶命のピンチにしか見えないこの状況。しかしオーカミは内心では「面倒くさい」としか思っておらず、その冷静とも呼べる無表情を一切崩さない。
だがそんな時だ。この騒動に首を突っ込んできた人物が1人。
「ちょっとやめなさいよ!!」
「あ、ショップの女の子」
こう言う状況にはいても立ってもいられなくなったか、正義感の強いヒバナがその手を離せと言わんばかりにしゃしゃり出た。
「おぉ、あの有名な一木ヒバナか、どうした。今オレ達は大事な取り引きの最中だ……なぁ?」
「決裂したけどね」
「あぁ?…今からたっぷりオレに金を注ぐ事になるんだよ」
「何が取り引きよ、一方的に鉄華から金を取ろうとしていただけじゃない!!」
オーカミの胸ぐらを離しながら毒島がヒバナに言った。強気なヒバナは一切物怖じせずに立ち向かう。
しかし………
「それともなんだ?…オマエが金蔓になってくれるのかよ!!…やれオマエら!!」
「「はい毒島さん!!」」
「キャッ!…何すんのよ、離しなさいよ!!」
毒島がそう指示すると、2人の取り巻きがヒバナの身動きを止めるべく腕を捕まえる。その後本人はゆっくりと彼女の元へと歩み寄り………
「プロバトラーの娘だからってあんまいい気になんじゃねぇぞ。どちらが上かって事を今この場でハッキリさせてやる」
「3人がかりでよく言えたわねこの卑怯者!」
女の子1人相手に3人で掛かってきた毒島達。これが卑怯者と言わずしてなんと言うか。
だがそんな事彼らの知った事じゃない。毒島は固めた拳をヒバナの方へ向けると…………
「なんとでも言え、今からその整った顔、ぐちゃぐちゃにしてやるぜ!!」
「!!」
全力で頬を殴りつけた。
はずだった。思わず目を閉じてしまったヒバナは痛みを感じないことを不思議に思い、その目を開眼させると、そこにはその毒島の腕を片手一本で止めていたオーカミの姿が………
「な、テメェいつの間に……!」
「姉ちゃんが言ってた。女の子に手出しするヤツには容赦するなって………これ以上この子に何かするって言うならオレがアンタをぶっ飛ばす」
「!!」
その言葉にヒバナは思わず顔が赤くなった。身を呈して自分を庇っているこの鉄華オーカミと言う小さな少年がとてつもなくかっこよく見えたのだ。
「は!?…テメェ如きチビがこのオレをぶっ飛ばせるわけねぇだろ?…こんなの直ぐ振り解いて……ふんッ!!…ふんッ!!……アレ?」
何とかオーカミの手を振り解き、ヒバナをぶん殴ろうとする毒島だが、まるで万力に挟まれたかの如くその腕はピクリとも動かない。
「オレも鬼じゃない。直ぐにこんなことやめるって言うならやめておくよ」
「オマエ、誰に口聞いて………」
「二度は言わない。オレは働いて金を稼いでいる。オマエも金が欲しいんだったらこんなことしてないで、さっさと働け」
「!!」
殺気にも似た途方もないオーカミの圧力。鋭い眼光は毒島を威嚇するには余りにも十分過ぎるものがあった。
彼は力を抜き、ゆっくりと振り上げた手を下ろす。その際にオーカミの拘束も外れる。
「い、行くぞオマエら………」
「う、ウッス毒島さん!」
「ちょっと待ってくださいっス〜!」
コイツにはどう足掻いたところで喧嘩では勝てない。そう本能で悟った毒島は、取り巻きの2人を連れてどこかへと去っていく。
「大丈夫?」
「あ、うんありがとう。ごめんね、助けに来たつもりが逆に助けられちゃった」
「いいよ別に気にしなくて、姉ちゃんの言いつけを守っただけだから」
先程のオーカミの変貌ぶりにヒバナは驚きを隠せない様子だが、助けられた事に感謝の言葉を告げる。
「じゃ、気をつけて」
「あ……ちょっと待って!!…この後よかったら何かお礼させて欲しいんだけど……」
「いや、だから気にしないでいいって」
「え〜…でもこのままだと私の気持ちがいたたまれないし……私のためだと思ってお願い、何かやらせて」
「………」
どうしてもお礼をしたいのか合掌をしながら懇願するヒバナ。
正直しつこいと思っているオーカミ。しかし彼はここでもまた一緒に暮らしている実の姉の言葉を思い出す。
その内容は………
ー『いいオーカ?…人によるけど、女の子の頼みは絶対に聞く事。それが歳の近い子とかなら尚更よ!』
そうだ。そう言っていた。家庭の都合上、自分を養ってくれた姉には逆らえない。
「わかったよ、そうだな………」
正直彼女に恩を売ってしまった事は不本意だが、取り敢えずうんと悩んで考えてみる。
すると、1つの案が脳裏に浮かんで………
「あ、じゃあバトスピやろう。アンタ結構強そうだし」
「え……鉄華ってバトスピできたんだ」
「うん。デッキもらったから昨日はじめた」
「昨日って………」
一昨日の会話からなんとなく鉄華オーカミはバトスピをやっていないと認識していたヒバナ。
だがこれは彼女にとっても好都合。何と言ったって意中の相手とバトスピができるのだから………
「まぁいっか!…よし、そうと決まればアポローンに直行よ。どうせ今日もまたバイトなんでしょ?」
「そうだね。そっちの方が効率がいいし」
バトルする場所も決まったところで、2人はこの街のカードショップの一つ「アポローン」へと向かった。
******
ここはカードショップ「アポローン」………
界放市ジークフリード区にあるカードショップの1つであり、若き店長「九日ヨッカ」が切り盛りしている。
そしてそんな今日も大勢のカードバトラーで賑わっているアポローン店内にご満悦なヒバナと少々機嫌が悪そうなオーカミが来店して来て………
「こんにちはヨッカさん!」
「おぉいらっしゃいヒバナ………とオーカ?…なんだこの組み合わせは」
「ご無沙汰してますアニキ。なんか新しい学校のクラスメイトだった……それだけ」
「ハッハッハ!!…成る程な、オマエら身長差あるけど一応同い年だからな」
エプロン姿で出迎えるヨッカ。赤いエプロンであるため、褐色肌と白髪がより際立って見える。
「私たち、ここのバトル場使いたいんですけど、オッケーですか?」
「ん?…そりゃいいけど、オマエらバトルすんのか?」
「うん。このショップの女の子強そうだから」
「なッ……オーカ、オマエが自分からバトルを申し込むとは!!…もうすっかり立派なカードバトラーじゃねぇかコンチクショー!!」
「アニキ何で涙目になんの」
オーカミが実力者のヒバナにバトルを申し込んだと聞いて感激の余り涙目になるヨッカ。そんな熱苦しい彼にオーカミは少々呆れ気味。
「よしオーカ。オマエが申し込んだバトル、このオレが見届けてやるぞ!」
「仕事は?」
「はは……本当に鉄華の事好きなのねヨッカさん」
兎に角無愛想を極めた弟分、オーカミがかわいいヨッカ。店の仕事を放ったらかしにして2人と共に店内のバトル場へと向かった。
ー………
店内のバトル場。今日は平日という事もあり来客は少ない。
だが、こうして今2人のカードバトラーが合間見えていた。
その名は鉄華オーカミと一木ヒバナ。既にBパッドを展開し、デッキをそこにセットしている。そしてオーカミのアニキ分且つここの店長ヨッカが見守る中、それは堂々開始される………
「いくよ鉄華。一木花火の娘、一木ヒバナのバトルを見せてあげるわ!」
「誰それ。まぁいいや……やろう」
………ゲートオープン、界放!!
コールと共に遂に幕を開けた2人のバトルスピリッツ。
先攻はオーカミだ。昨日教わったターンシークエンスの順番を守りながらのスタートである。
[ターン01]鉄華オーカミ
「スタートステップ、ドローステップ、メインステップ………」
「おぉ、昨日がはじめたってだったのに、もう先攻のターンシークエンスを覚えてるんだね!」
「まぁね」
スピリットを召喚できるメインステップ中。じっくり手札を眺め、オーカミはその中で一番強いカードを抜き取り、Bパッドへとセットした………
それは………
「先ずはコイツだ。来い、ガンダム・バルバトス第1形態!!」
「え……バルバトス!?」
ー【ガンダム・バルバトス・第1形態】LV1(1)BP2000
蠢く地中から飛び出して来たのは鉄華団デッキの象徴ガンダム・バルバトス。その第1形態。肩の装甲が剥き出しになっているため、機体としては不完全であると言える。
モビルスピリット自体は、対して珍しいモノではない。ただ、それが噂になっていた未知のモビルスピリット、バルバトスなら話は変わる………
「見た事のないモビルスピリット……まさか鉄華があの噂のモビルスピリット使い!?」
「噂?」
「あぁ、今オマエちょっとした有名人だぞ。なんてったって誰も見た事がないカードを使ってるんだからな」
「そういうもんか」
それをまさか今日知り合った転校生が所持しているとはヒバナも思ってはいなかった。驚愕してしまうが、反面オーカミは自分が少し噂になっていた事を淡々と受け入れる。
「まさか鉄華が噂のバルバトスを持ってたなんて、これはより燃えて来たわ……!!」
「召喚時効果。3枚オープンして鉄華団カードを加える………じゃあ鉄華団モビルワーカーを手札に加えて残りを破棄」
よりその闘志を燃やすヒバナ。オーカのは良い加減にバトルを進めていき、バルバトス第1形態の召喚時効果を発揮。
「先攻の1ターン目はアタックステップができない。これでターンエンド」
手札:5
場:【ガンダム・バルバトス[第1形態]】LV1
バースト:【無】
「相手にとって不足無し!…行くよ、私のターン!」
やる気は十分。
初心者であるとは言え手は抜かない。
そう言わんばかりの勢いでヒバナは己の最初のターンを進めていく。
[ターン02]一木ヒバナ
「メインステップ……それじゃあ先ずはネクサスカード、勇気の紋章を配置するわ!」
「!?」
ー【勇気の紋章】LV2(1S)
そのカードをBパッドに置いた瞬間、ヒバナの背後に太陽を模した巨大な紋章が出現した。
そんな中「ネクサスカード」と言う初めて聞くワードに、オーカミは頭の上にハテナのマークを浮かべていて………
「って言うかアニキ、ネクサスカードってなに?」
「ネクサスカードってーのは場に配置する事で様々な効果でバトルをサポートするカードの事だ。その代わりBPがなくアタックもブロックもできない」
「ふーん」
オーカミのアニキ分、ヨッカがネクサスカードについてザックリ説明する。
「これでターンエンド。鉄華のターンだよ!」
手札:4
場:【勇気の紋章】LV2
バースト:【無】
ネクサスの配置に殆どのコアを費やしたヒバナ。そのターンをエンドとする。
ネクサスカードについて一通りは理解したオーカミは返って来たそのターンを進めていく。
[ターン03]鉄華オーカミ
「メインステップ……サポートすると言っても、ブロックできないカードならこのターンで一気にライフを叩く。来い、鉄華団モビルワーカー、2体!!」
ー【鉄華団モビルワーカー】LV1(1)BP1000
ー【鉄華団モビルワーカー】LV1(1)BP1000
バルバトス第1形態の横に出現したのは銃火器を装備した2台の車両、鉄華団モビルワーカー。
オーカミはネクサスカードである勇気の紋章がブロックできない事を知り、このターンでヒバナのライフを一気に破壊する気なようだ。
「バルバトス第1形態のLVを2に上げてアタックステップ!!……行け、バルバトス!!」
レベルが上昇した瞬間、ヒバナのライフを討つべく走り出したバルバトス第1形態。
当然な事に、前のターン勇気の紋章を配置した事でスピリットが場に存在しないヒバナはそれをライフで受ける他ない。
しかし、その表情はまるでその攻撃を待ち望んでいたかのようなものであり…………
「ふふ、ライフで受ける!!」
〈ライフ5➡︎4〉一木ヒバナ
俊敏な動きから放たれるバルバトス第1形態の拳。ヒバナのライフが1つ砕け散って行った。
だが、このタイミングでオーカミはネクサスカード、勇気の紋章の恐ろしさを知る事となる。
「待ってたよその攻撃!!……勇気の紋章の効果発揮!!」
「ッ……このタイミングで効果!?」
「私のライフが減った時、BP5000以下のスピリット1体を破壊……よって鉄華団モビルワーカーを1体破壊!」
「!!」
太陽を模した紋章の中心から放たれる火炎弾。それは瞬く間に2体いる鉄華団モビルワーカーの内の1体に直撃。
耐えられるわけもなく呆気なく爆散してしまった。
「今のは………」
「どう?…これがネクサスカード、勇気の紋章の発揮できる効果。BPの低いスピリット達はこれで返り討ちにできちゃうんだから!」
「……鉄華団モビルワーカーの破壊時効果。他の鉄華団スピリットが存在する場合、デッキからカードを1枚破棄して1枚ドロー」
「へ〜そんな効果あったんだ。でもその程度、雀の涙って感じだね……勇気の紋章の効果は私のライフが減るたびに効果を使える。BP5000以下のスピリットしかいない鉄華はもうこれで攻撃はできない」
ライフの減少時にBP5000以下と言う弱いスピリットを迎撃できる勇気の紋章。BPを上昇させづらいこの序盤ではこのラインを超えるのは中々難しい。
それが故にアタックはやりづらい。
序盤はスピリットを失わないようにプレイングしていくのがセオリーであるからだ。
しかし、この鉄華オーカミは…………
「残った鉄華団モビルワーカーでアタック」
「なッ!?」
この一瞬のタイミングで勇気の紋章の効果を理解していたにもかかわらず、何の迷いもなく鉄華団モビルワーカーで攻撃を仕掛けて来た。
その意外な行動にバトスピ上級者であるヒバナも驚きの表情を見せる。だがコアも大してない自分はライフで受ける他ない。
「仕方ない、ライフで受ける!!」
〈ライフ4➡︎3〉一木ヒバナ
鉄華団モビルワーカーが備えている銃火器から放たれる弾丸がヒバナのライフバリアをさらに穿つ。
そして当然の如くこのタイミングでも勇気の紋章の効果が起動する。
「勇気の紋章の効果でBP1000の鉄華団モビルワーカーを破壊!」
全く同じ光景が再び起こる。鉄華団モビルワーカーは勇気の紋章の中心部からから放たれる火炎弾によって爆散した。
「こっちももう一度鉄華団モビルワーカーの破壊時効果でデッキを1枚トラッシュに破棄して1枚ドロー」
「何で破壊されるとわかっていてアタックを………」
高々1枚ドローするためにスピリットを失いに来た理由がわからないヒバナ。
本来、バトル序盤において、スピリットとは残すモノ。シンボルを確保し、さらなるスピリットを呼ぶために残しておくのが定石、セオリーなのだ。
初心者とは言え、トップカードバトラーと互角に渡り合える程の実力を持つ九日ヨッカにバトルを教えてもらったのなら考えなくともそのくらい理解できる筈………
だが、このオーカミにも攻撃を仕掛けた理由があって。
「そりゃまぁ、攻めないと勝てないゲームだから」
「!!」
それは至って単純明快過ぎる理由。
ブロッカーとしてスピリットを残す事が無駄であると考えているオーカミらしい考え方である。
「ハッハッハ……ヒバナ、コイツにバトスピのセオリーは通用しないぞ。何てったってこのオレの弟分なんだからな」
「成る程、かっこいいじゃん!」
高笑いしながらヒバナにそう告げるヨッカ。彼女もオーカミがどう言ったカードバトラーなのかをあらかた理解を示し始める。
「これでライフの差はオレの方が上だ。ターンエンド」
手札:6
場:【ガンダム・バルバトス[第1形態]】LV2
バースト:【無】
前のバトルと同様、オーカミはブロッカーを一切残さないフルアタックでそのターンをエンドとする。
次は一木ヒバナの番。初心者である鉄華オーカミに自分の実力を見せつけるべく己のターンシークエンスを進めていく。
[ターン04]一木ヒバナ
「ドローステップ時、勇気の紋章のLV2効果……ドローステップでドローする枚数を1枚増やし、その後1枚をトラッシュに破棄する」
「まだそんな効果あったのか」
勇気の紋章の第二の効果がここで発揮。ヒバナの手札の枚数そのものに変化はないが、その質を確かに向上した。
「リフレッシュステップ、メインステップ!!……行くよ鉄華、よーく見てよね、私のスピリット!!」
「!!」
「来い、デジタルスピリット、完全体、メタルグレイモン!!」
ー【メタルグレイモン】LV1(1)BP6000
ヒバナの場で赤いシンボルが砕け散ると、その中から出現して来たのは左半身がサイボーグと化した獰猛な肉食恐竜のようなスピリット、メタルグレイモン。
その圧巻のサイズはバルバトスにも負けず劣らず。
「……ライフを減らしすぎたのが裏目に出たなオーカ。普通はこんな早いターンにメタルグレイモンは召喚できないぞ」
ヨッカがそう言葉を漏らす。その内容や見た目からして、この眼前のメタルグレイモンがどれだけの強敵なのかをオーカミは瞬時に理解する。
そしてその予感は的中。ヒバナはメタルグレイモンの効果を早速発揮させて………
「メタルグレイモンの召喚時効果、BP12000以下のスピリット1体を破壊!!……バルバトスはもらったよ!」
「ッ……バルバトス!!」
胸部のハッチから一つの巨大なミサイルを発射するメタルグレイモン。それは疲労状態により膝をついているバルバトスに直撃。
流石のバルバトスと言えども、これには堪らず爆散してしまった。
「ふふ……これで鉄華のスピリットはゼロ!!…私もアタックステップに行かせてもらうわ!!…行きなさいメタルグレイモン!!」
「……ライフで受ける!!」
〈ライフ5➡︎4〉鉄華オーカミ
メタルグレイモンは左腕に備え付けられたアームでオーカミのライフバリアを1つ叩き壊した。
「これで私はターンエンド!」
手札:4
場:【メタルグレイモン】LV1
【勇気の紋章】LV2
バースト:【無】
堂々と腕を組みながらそのターンをエンドとするヒバナ。余程そのメタルグレイモンに自信があるのだと言える。
次は勇気の紋章と合わせてスピリットが0体となってしまったオーカミのターン。逆転すべくそのターンシークエンスを進めていく。
[ターン05]鉄華オーカミ
「ドローステップ………ッ」
ドローステップのドローで何か良いカードでも引けたのか、それを視認するなり目の色が変わるオーカ。
そのカードとはつい先日、初めてのバトルスピリッツで偶然にも強力なカードバトラーであるヨッカを降したスピリットカード。
そしてこのターン、何の迷いも躊躇もなく、オーカは勝ち星を目指してそれを召喚して見せる。
「メインステップ、今度はこっちの番だ……来い、ガンダム・バルバトス第4形態!!」
ー【ガンダム・バルバトス[第4形態]】LV2(2S)BP9000
メイスと呼ばれる黒くて巨大な戦棍を片手に上空から着地して来たのは、ガンダム・バルバトス。その第4の形態。第1形態とは異なりしっかりと装甲が施され、機体としては万全の状態である。
「ッ……さっきのバルバトスが進化した姿?……いや、これが本来の姿って感じか」
「アタックステップ。反撃だ、バルバトス!」
「!!」
エースカードである第4のバルバトスで攻撃を仕掛けるオーカミ。バルバトスはメイスを手にヒバナのライフ目掛けて走り出す。
「バルバトス第4形態のアタック時効果、相手スピリットのコア2個をリザーブに置く」
「!!」
「メタルグレイモンからコア2個をリザーブに……よって消滅する!」
その構えは槍投げの如く。
メイスを黒い槍のようにメタルグレイモンに向けて投げ飛ばすバルバトス第4形態。攻めつつ、敵の強力なスピリットをここで倒す事ができれば、オーカミは一気に優勢に立てる。
しかし、それはもちろん倒せたらの話ではあるが。
「!!」
その光景にオーカは目を疑う。
無理もない。効果で消滅するはずのメタルグレイモンがバルバトス第4形態のメイスの一撃を弾き返したのだから………
「作戦は悪くなかったけどね…メタルグレイモンは疲労状態の時、スピリット効果を受けない。よって、バルバトス第4形態の効果は無効!」
「効果が通用しないスピリット、そんなのもいるのか……フッ、やっぱりいいなバトスピは……良い感じに思い通りにならない所とか特に」
生まれて初めて効果耐性のあるスピリットの強さを知るオーカ。一々これでもかと自分に対して壁を用意してくれるバトスピ。オーカミは思わず口角を上げる。
さらにヒバナは、オーカミに追い討ちをかけるように手札からカードを1枚切った。そしてそれは彼女の持つ最強のスピリット。父親を真似て使用している自分のマイフェイバリットカード。
「そしてこの瞬間、フラッシュ、ソウルコアを支払い【煌臨】を発揮!…対象はメタルグレイモン!!」
「!?」
「究極進化!…現れろ、ウォーグレイモン!」
オーカミの理解が追いつかないままありったけの咆哮を張り上げるメタルグレイモン。そのままその体を真っ赤な炎で包まれていき、姿形を大きく変えていく。
やがてその中にいるメタルグレイモンだったそれは、腕にある鉤爪で周囲にある炎を斬り裂き姿を見せる。
それはデジタルスピリットの中でも最上級の究極体スピリット、竜人型のウォーグレイモンだ。
ー【ウォーグレイモン】LV1(1)BP9000
「煌臨時効果。BP合計15000まで好きなだけスピリットを破壊!」
「!」
「バルバトス第4形態を破壊よ!」
登場するなり両掌から身の丈以上の火球を形成していくウォーグレイモン。それを全力で向かってくるバルバトス第4形態へと投げつける。
ヨッカのラゴゥをも倒して見せたバルバトス第4形態も流石にそれには耐え切れず、堪らず爆散してしまった。
「どう鉄華!……これが私のエースカード、ウォーグレイモンよ!」
「って言うか、煌臨って何」
ヒバナのエースカードの事はどうでもいいが、兎に角今はこの状況に関する理解が欲しいオーカミ。
そんな弟分にアニキであるヨッカが答える。
「コアの中に赤くて一際大きいのがあるだろ?…それはソウルコアっつってバトル中に1つ以上増える事がない特別なコアだ」
「赤いコア……あぁこれか」
「煌臨はそのソウルコアを使ってスピリットを更なる姿に進化させる効果。ヒバナのウォーグレイモンはそれを持っていたわけ」
「ふーーん」
オーカミは味気ない様子でウォーグレイモンの煌臨、そしてバトル中に1個しか持つ事が許されないソウルコアにも理解を示す。
「ソウルコアを使いこなす事がバトル上達の秘訣。鉄華も覚えておくといいよ」
「わかった……使いこなしてみる」
「いや、そんなすぐにはできんだろう………」
無愛想で感情が読めないバトスピ初心者、オーカミに対して少しずつ、それでいて優しくバトスピのイロハを教えていくヨッカとヒバナの上級者2人。
向上心は高い様子のオーカミだが、少なくともこのターンはスピリットを全滅させられて何もできないためエンドとなる。
「じゃあ次は私のターンだね」
そう言いながらヒバナがターンを進めていく。
[ターン06]一木ヒバナ
「メインステップ!!…勇気の紋章のLVを2に、ウォーグレイモンのLVを3に上げ、コストにソウルコアを支払いグレイモンを召喚!」
「ッ……またソウルコアがコストに」
ー【グレイモン】LV1(2)BP4000
ヒバナのスピリット、ネクサスのレベルが最大なる中、新たに出現したのは立派な三本の頭角を持つ恐竜型のデジタルスピリットグレイモン。
一度ソウルコアの強さを知ったオーカミはこの召喚のコストにソウルコアが使用された点を警戒しており………
「さぁアタックステップ!!…ここからがウォーグレイモンの真骨頂よ、行けぇ!!」
光り輝く強い眼光を放ち、両腕の鉤爪を構えて走り出すウォーグレイモン。
前のターンの時点でそんなウォーグレイモンのせいで場のスピリットを空にされたオーカミにはそれを防ぐ手立てがなくて………
「ライフで受ける!!」
〈ライフ4➡︎3〉鉄華オーカミ
ドラモンキラーと呼ばれるウォーグレイモンの鋭い鉤爪。そこから繰り出される強烈な一撃はオーカミのライフを紙切れのように斬り裂いた。
だが、ヒバナの言う通り、ここからがウォーグレイモンと言う最上級デジタルスピリットの真骨頂であって………
「ウォーグレイモンのアタック時効果、トラッシュにあるソウルコアをウォーグレイモン自身に置き、鉄華のライフ1つをボイドに送る!」
「なに……ぐぁっ!!」
〈ライフ3➡︎2〉鉄華オーカミ
煌臨時とは比べものにならない程の火球を形成して投げ飛ばすウォーグレイモン。それに直撃したオーカミのライフバリア1つは塵一つ残らず消し炭にされてしまう。
これがウォーグレイモンの第二の効果。トラッシュにあるソウルコアを自身の上に移動させる事で、敵のライフ1つを、リザーブではなく、使用できないボイドへと送るのだ。
「グレイモンはブロッカーに残してターンエンド……鉄華には悪いけど、このバトル、私の勝ちね!」
手札:3
場:【ウォーグレイモン】LV3
【グレイモン】LV1
【勇気の紋章】LV2
バースト:【無】
「……強い」
初心者ながらヒバナの強さをその身に感じるオーカミ。思わず感嘆の声が漏れる。
しかし諦めたわけではない。初心者なりの意地を見せつけまいと返って来た己のターンを進めていく。
[ターン07]鉄華オーカミ
「ドローステップ!………ッ」
ドローステップでドローしたカードを思わず見つめるオーカ。直感が強い彼はそのカードに微かな可能性を感じたのか、直後にメインステップまで急行し、そのカードを手札から切る。
「リフレッシュステップ、メインステップ。マジック、リターンスモーク……効果でコスト4以下のスピリットを召喚」
「コスト4以下?……私の場に勇気の紋章があるのを忘れちゃった?…今更鉄華団モビルワーカーや第1形態を出しても無駄だよ」
オーカミが発揮させたマジックカードはリターンスモーク。コスト4以下のスピリットをトラッシュから復活させると言う代物。
だがBP5000以下のスピリットを破壊できる勇気の紋章がある今で弱いスピリットしか復活できないマジックカードを使っても一見無駄に見える。
しかし………
「いや違う。ここで蘇らせるのは鉄華団モビルワーカーでも、バルバトス第1形態でもない。オレが蘇らせるのは、バルバトス第4形態だ!!」
「!?」
「鉄の華は決して散らない……今一度大地を揺るがせ、バルバトス第4形態!!」
ー【ガンダム・バルバトス[第4形態]】LV3(4)BP12000
オーカミの場に蔓延する紫の煙。その中よりウォーグレイモンにより破壊されたバルバトス第4形態がメイスを振るってその紫の煙を吹き飛ばしながら復活した姿を見せる。
「なんでエースカードが復活!?…そのスピリットのコストは確か5だったはず」
ヒバナの言う通り、バルバトス第4形態のコストは5。通常ではリターンスモークの効果では蘇る事はできないが………
「理屈は簡単、オレも使ったんだよ。ソウルコアをな」
「!!」
「リターンスモークのさらなる効果。コストの支払いにソウルコアを使えばコスト4以下ではなくコスト6以下のスピリットを復活させる」
「ウソ……まさかもうソウルコアを使いこなしてるって言うの!?」
復活の秘訣はソウルコア。つい先までソウルコアの名前すら知らなかったオーカミだったら、このリターンスモークの効果は使えなかったことだろう。
オーカミは今、己の成長の早さと直感の鋭さをヒバナに見せつけたのだ。
「3体目の鉄華団モビルワーカーを召喚してアタックステップ……行け、バルバトス第4形態!」
ー【鉄華団モビルワーカー】LV1(1)BP1000
本日3体目となる鉄華団モビルワーカーが出現すると、ほぼ同時にヒバナの残り3つのライフを目掛けて走り出すバルバトス第4形態。その瞬間に再び強力なアタック時効果が発揮される………
「アタック時効果でグレイモンのコア2つをリザーブに置く……よって消滅!」
「!」
バルバトス第4形態は黒々とした巨大なメイスを振り下ろし、グレイモンを撃沈させる。全力で地面に叩き伏せられたグレイモンは堪らず爆散。
これでウォーグレイモンが疲労状態である事から、ヒバナのライフを守るスピリットはゼロ。後は3点分のライフを破壊するだけだ。
「バルバトス第4形態はLV3の時、紫のシンボルを1つ追加する!」
「ダブルシンボル効果まであるの!?……ら、ライフで受ける!!」
〈ライフ3➡︎1〉一木ヒバナ
再びメイスを横一閃に荒々しく振るうバルバトス第4形態。それによって生み出される強烈な一撃がヒバナのライフバリアを一気に2つ砕いた。
しかし………
「だけど勇気の紋章の効果で3体目の鉄華団モビルワーカーを破壊!」
「………鉄華団モビルワーカーの破壊時効果でデッキを1枚破棄してドロー」
又しても発揮される勇気の紋章の効果。全体的にBPの低い鉄華団にとってはやはりメタのカードとして機能している。
そんな勇気の紋章の中心から放たれる火炎弾が3体目の鉄華団モビルワーカーを容易く焼き尽くした。
淡々と鉄華団モビルワーカーの破壊時効果を発揮させるオーカだったが、場のスピリットはアタックを終えたバルバトス第4形態のみ。
そのターンを終え、次のヒバナのターンでウォーグレイモンがバトルの決着をつけに行く。
はずだった。
「どう鉄華!…これで私の勝ちね!」
「いや、鉄の華は決して散らないと言ったはずだ…………バルバトス第4形態のさらなる効果!!…自分のアタックステップ中、場のスピリットがアタックしたバトルの終了時、コストを1つ支払い、トラッシュの鉄華団スピリットを召喚!!」
「!?」
「蘇れ、ガンダム・バルバトス第1形態!!」
ー【ガンダム・バルバトス[第1形態]】LV2(3)BP5000
バルバトス第4形態の緑色の眼光が光り輝くと、まるでそれに呼応するかの如く、オーカミの場で紫のシンボルが砕け、その中よりバルバトス第1形態が復活を果たす。
「そ、そんな……またトラッシュからスピリットを復活!?」
「勇気の紋章はライフを減らした時にスピリットを破壊する。だけど減らした時に既にゼロだったら関係ないだろ。これで終わりだ、決めろ、バルバトス第1形態!!」
復活早々、最後のライフを砕くべく、野獣の如く地を駆けるバルバトス第1形態。勇気の紋章の破壊効果ではタイミングが遅い、そのためヒバナはこの瞬間に敗北を確信して…………
「負けたか、良いバトルだったね鉄華。ライフで受ける!」
〈ライフ1➡︎0〉一木ヒバナ
最後は潔くその攻撃を受け入れるヒバナ。バルバトス第1形態がトドメと言わんばかりに全力でラスト1つのライフを殴り壊して見せる。
………ピー……
とヒバナのBパッドから甲高い音声が鳴り響く。これにより、勝者は鉄華オーカミだ。戦いの中で見事成長を遂げ、バトル上級者である彼女に勝利して見せた。
「よし」
オーカミは己の勝利と成長を実感すると、その拳を固く握りしめながら第1、第4形態のバルバトスを見つめる。
その後、バトル終了に伴い、2機のバルバトスとウォーグレイモンが消えていく中、オーカミとヒバナは互いに詰め寄っていき………
「悔しい私の負けか〜!!…結構本気だったんだけどな……にしてもすごいね鉄華、とても初心者には見えなかった。最後のターンとか特に!」
「ありがとう。まぁでも正直ラッキーパンチだったと思う」
カードの効果どころか種類さえをも知らないで勝利してしまったオーカミ。
自分にはまだまだ知る事が沢山ある事を教えてくれたバトルだったと感じる。
「ねぇ。その、また私とバトルしてくれる?」
「うんいいよ、楽しかったし、ショップの女の子が良ければだけど、寧ろこれからもお願いしたいくらいだ」
「ッ……本当に!?」
照れ臭そうにそう聞いたヒバナ。オーカミとしてはその答えは当然OK。実力者であるヒバナとたくさんバトル出来ればその分上達すると考えたからだ。
喜ぶ表情を見せるヒバナだったが、気掛かりもあり…………
「でもその『ショップの女の子』って呼び方やめて欲しいな……私一木ヒバナって名前だから、普通にヒバナって呼んでよ」
「ん?…わかった。じゃあそうする。これからもよろしくヒバナ」
受け入れるのが早いオーカ。速攻でヒバナを変な渾名ではなく名前で呼ぶ。ヒバナはその声を心の記憶に仕舞うと、もう一つオーカミに聞いた。
「次いでにさ、私もヨッカさんみたいに鉄華の事オーカって呼んでも良い?」
「ん?……別にいいけど」
「ありがとう!!…これからもよろしくねオーカ!」
特に深い意味も理解しないまま、互いを名前で呼び合う関係となったオーカミとヒバナ。彼女が差し出して来た右手をオーカミは徐に握り返す。
「オレはなんか尻が痒くなって来たぞ」
その光景を側から見ているカードショップアポローン店長九日ヨッカ。甘酸っぱいワンシーンに思わず自身の尻を掻いていた…………
次回、第3ターン「VSゼロワン、革命のパイロットブレイヴ」