バトルスピリッツ 王者の鉄華   作:バナナ 

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第23ターン「王者の鉄華」

長く続いた界放リーグも遂に決勝戦。

 

この舞台で競い、戦うのは未知のカード群、鉄華団を操る鉄華オーカミと、天下無双のモビルスピリット、デスティニーガンダムを所持する絶対王者、獅堂レオン。

 

互いに一進一退の攻防を続け、バトルは終盤。鉄華オーカミは巡って来たこの自分のターンで決着をつけるべく、最強のバルバトス、第6形態を召喚したのであった…………

 

 

******

 

 

「アタックステップ!!……この瞬間、オルガの【神託】の効果、コアを4つボイドに置く事で、トラッシュから鉄華団カードを召喚する………オレは三日月を召喚し、6形態と直接合体」

 

 

ー【ガンダム・バルバトス[第6形態]+三日月・オーガス】LV2(3)BP16000

 

 

決着をつけるとでも言いたげな勢いで、鉄華オーカミはオルガのコアを使用し、トラッシュから三日月をバルバトス第6形態に合体させる。

 

 

「行くぞ、獅堂」

「フ………来い鉄華」

 

 

熱く鋭い視線をぶつけ合う鉄華オーカミと獅堂レオン。そしてフィールドのバルバトス第6形態とデスティニーガンダム。

 

決戦の火蓋が切って落とされる。

 

 

「アタックだ、バルバトス第6形態!!」

 

 

大型恐竜の大顎のような形をした巨大武器、レンチメイスを手にフィールドを駆けて行くバルバトス第6形態。その狙いは当然獅堂レオンの残り3つのライフ………

 

だが、その前にいくつか発揮される効果があって………

 

 

「バルバトス第6形態のアタック時効果、相手スピリット1体のコアを1個リザーブに置き、ターンに一度だけ回復する」

「……無駄だ、デスティニーは【VPSシフト装甲:コスト7以下】でその効果は受けん」

「それは知ってる。オレが狙うのは、インパルスだ」

 

 

ー【ガンダム・バルバトス[第6形態]+三日月・オーガス】(疲労➡︎回復]

 

 

散々睨み合っていたデスティニーガンダムではなく、その横にいるインパルスガンダムに攻撃を仕掛けるバルバトス第6形態。

 

上から振りかぶってレンチメイスを叩きつける。

 

 

「インパルスの効果、ターンに一度、相手によってフィールドを離れる時、ボイドからコア1つを自身に置く事でフィールドに留まる」

 

 

ー【インパルスガンダム】(1➡︎0➡︎1)

 

 

「まだだ、今度は三日月の効果でインパルスの維持コアを1つ上昇、消滅させる」

「………」

「追加効果でオマエのリザーブのコア2つをトラッシュへ送る」

 

 

ー【インパルスガンダム】(1)消滅

 

 

フィールドに留まった束の間、インパルスガンダムにもう一度バルバトス第6形態のレンチメイスが襲い掛かる。大顎に挟まれ、噛み砕かれてしまう。

 

 

「バルバトス第6形態の更なる効果で、鉄華団スピリットのアタック中、オマエは自分のスピリット1体を破壊しなければブロックできない………要するに、デスティニーしか場にいないオマエは、コイツのアタックをライフで受けるしかない」

 

 

バルバトス第6形態はインパルスガンダム撃破後、今度は獅堂レオン目掛けて走り出す。

 

 

「よし!!……ここでライフを破壊できれば、6形態の転醒条件を満たせる、転醒さえできれば転醒時効果でデスティニーガンダムを破壊、そのままオーカは勝てる!!」

 

 

獅堂レオンに6形態が近づいて行く中、そう告げたのはこのバトルを誰よりも1番近くで観ている一木ヒバナ。

 

彼女の言う通り、鉄華オーカミの狙いは6形態の転醒、それに伴う転醒時効果でデスティニーガンダムを破壊、そのままフィニッシュしようと言うモノ………

 

確かに、これが決まれば勝負はもう決まったようなモノ…………

 

だが、相手はジュニアには対等に渡り合える者が存在しないとまで言われているあの絶対王者、獅堂レオン。

 

鉄華オーカミのこの一手を、読めていないわけがなくて………

 

 

「フ………フラッシュマジック、リミテッドバリア」

「!?」

「不足コストはデスティニーから確保。よってLV2にダウン………これにより、このターンの間、コスト4以上のスピリットではライフは減らない」

 

 

咄嗟に放たれた1枚のマジックカード。

 

バルバトス第6形態の前方に、まるで獅堂レオンのライフを守るべく、半透明の薄いバリアが展開される。バルバトス第6形態はレンチメイスでそれを何度も砕こうと試みるが、結局は砕けず、一度自陣のフィールドへと帰還する。

 

 

「成る程、考えたな」

「え、なになにどゆことすか!?」

 

 

獅堂レオンのリミテッドバリア。数多くある防御マジックの中で、何故獅堂レオンがそれを選択したのかを察した九日ヨッカ。彼はそれを横にいる鈴木イチマルに説明する。

 

 

「バルバトス第6形態は『相手によってフィールドを離れる時』と『相手のライフが減った時』に転醒できる。そして、その転醒ができれば、デスティニーガンダムも倒せたんだが………」

「ッ………獅堂レオンはそれを阻止するためにリミテッドバリアでライフを減らないようにした!?」

「そう言う事。思っているよりずっとやばい状況だぞこれ」

 

 

相手のライフが減った時に転醒できるバルバトス第6形態。獅堂レオンはそれを見越した上でリミテッドバリアを使い、自身のライフが減少しないようにした。

 

つまり、今のバルバトス第6形態ではデスティニーガンダムを倒す事はできない…………

 

 

「………けど、オレにはまだリミテッドバリアの対象圏外のモビルワーカーがいる。アタックだ………コイツのアタックが通ってもバルバトス第6形態は転醒できる……!!」

「………」

 

 

負けじとアタックを試みる鉄華オーカミ。コスト1のモビルワーカーが車輪を回転させて地を駆け抜けて行く。

 

バルバトス第6形態の効果により、獅堂レオンはこのアタックもデスティニーガンダムでブロックする事はできないが………

 

 

「フラッシュマジック、ドリームハンド」

「!!」

「不足コストはデスティニーから確保。よってLV1にダウン。効果により、コスト3以下の相手スピリットを全て手札に戻す…………散れ、モビルワーカー!!」

「くっ………!!」

 

 

冷気で固められた巨大な腕がフィールドを走るモビルワーカーを薙ぎ払い、それを粒子に変換。鉄華オーカミの手札へと強制的に戻す。

 

 

「絶対王者であるこのオレが、一度見たカードの対策をしないとでも思ったか?」

「………ターンエンドだ」

手札:2

場:【ガンダム・バルバトス[第6形態]+三日月・オーガス】LV2

【オルガ・イツカ】LV1(2)

バースト:【無】

 

 

当然悔しさはあるものの、獅堂レオンの言葉には耳を貸さず、そのままターンを終える鉄華オーカミ。ブロッカーとしてバルバトス第6形態が待機する形となった。

 

次は今一度獅堂レオンのターン。リフレッシュステップでデスティニーガンダムは回復状態となり、眼光を輝かせ立ち上がる。

 

 

[ターン11]獅堂レオン

 

 

「メインステップ………さぁ、悪魔退治と行こうか」

「………」

「白のパイロットブレイヴ、シン・アスカを、我が魂デスティニーガンダムへと直接合体!!……そのままLV3にアップさせる」

 

 

ー【デスティニーガンダム+シン・アスカ】LV3(5)BP28000

 

 

「BP……28000………!」

 

 

ここを勝負所と見た獅堂レオンはこのタイミングでパイロットブレイヴを導入。ただでさえ単体で殆ど敵うスピリットがいないデスティニーガンダムをさらに強化する。

 

 

「アタックステップ………出陣せよ、デスティニー!!」

 

 

続け様にアタックステップへと突入。シン・アスカと合体しているデスティニーガンダムはこのタイミングでいくつか発揮できる効果があり…………

 

 

「先ずはシン・アスカのアタック破壊時効果。デッキからカードを1枚オープン、それが対象カードならば召喚、使用、配置できる」

 

 

これはデスティニーガンダム自身の効果ではなく、合体しているシン・アスカの効果。それにより、獅堂レオンは『コアスプレンダー』のカードをデッキからドローして見せる。

 

 

「オープンカードはコアスプレンダー……よってこれを召喚する!!」

 

 

ー【コアスプレンダー】LV2(3)BP3000

 

 

インパルスガンダムの中心、コアを担う重要な戦闘機、コアスプレンダーが再びこのバトルで姿を見せる。

 

 

「ギルバートに神託し、召喚時効果。デッキから2枚オープンし、その中の対象カード1枚を手札に加える………オレはこの効果でフォースインパルスガンダムを手札へと加える」

 

 

コアスプレンダーは獅堂レオンに手札と言う名の恵みを与える。

 

そして当然ながら、デスティニーガンダムのアタック破壊時はからだけではない。本領発揮は自身がLV1から持つあの効果…………

 

 

「デスティニーガンダムのアタック時効果、このスピリットのBP以下のスピリット1体を破壊して、その破壊したスピリットのシンボル分のダメージをオマエに与える」

「くっ………」

「対象は当然合体しているバルバトス第6形態………破壊し、2点のダメージを喰らうがいい!!」

「ッ………!!」

 

 

〈ライフ4➡︎2〉鉄華オーカミ

 

 

デスティニーガンダムの持つ巨大な機関銃から極太のレーザー砲が放たれる。それは瞬く間にバルバトス第6形態と鉄華オーカミのライフバリアを飲み込んで行った……………

 

 

「相手によってフィールドを離れる時、バルバトス第6形態は【零転醒】でフィールドに残る!!……断ち切れ、バルバトス第6形態!!」

 

 

ー【ガンダム・バルバトス[第6形態・太刀装備]+三日月・オーガス】LV2(3)BP19000

 

 

ライフバリアとバルバトス第6形態の装甲が砕け散って行く中、バルバトス第6形態が装甲をパージし、武器をレンチメイスから太刀に切り替える。

 

そしてその鋭い一閃でデスティニーガンダムのレーザー砲を断ち切った。

 

 

「転醒アタック時効果、最もコアの少ない相手スピリット1体を破壊………今オマエの場で一番コアが乗ってないのは………」

「フ……コアスプレンダーだ」

 

 

転醒を果たしたバルバトス第6形態の一太刀はデスティニーガンダムではなく、召喚されたばかりのコアスプレンダーへと向けられる。

 

コアスプレンダーは一刀両断され、撃墜してしまうものの、これにより、この状況で鉄華オーカミが最も破壊したかったであろうデスティニーガンダムは健在となって………

 

 

「フラッシュ、デスティニーガンダムの効果、ギルバートを疲労させる事で自身を回復!!」

 

 

ー【デスティニーガンダム】(疲労➡︎回復)

 

 

デスティニーガンダムの最も厄介とされる回復効果もここで再び発揮。もう一度行動できる権利を与えられた。

 

残りライフ2つでこの状況、鉄華オーカミはライフで受けるわけにはいかなくて…………

 

 

「ブロックだ、バルバトス第6形態……」

 

 

転醒したばかりのバルバトス第6形態でブロックするしかなかった。

 

バルバトス第6形態は身の丈程はある長い太刀でデスティニーガンダムに立ち向かって行くが、前とは違い、その動きは全て見切られ、回避されてしまう。

 

そしてデスティニーガンダムはバルバトス第6形態の動きの一瞬の隙を突き、機関銃そのものを胸部の装甲へと突き刺して、ゼロ距離でレーザー砲を放とうとする…………

 

 

「………フラッシュマジック、白晶防壁」

「!!」

「不足コストはバルバトス第6形態から確保……合体している三日月ごと消滅させ、トラッシュに送る」

 

 

ー【ガンダム・バルバトス[第6形態・太刀装備]+三日月・オーガス】(3➡︎0)消滅

 

 

危機的状況に陥ったバルバトス第6形態。だがその直前にマジックの不足コストとなった事で消滅し、難を逃れる。

 

 

「白晶防壁の効果、相手スピリット1体を手札に戻す」

「デスティニーにその効果は効かんぞ」

「………知ってるよ。白晶防壁の追加効果、ソウルコアを払った事により、このターン、オレのライフは1つしか減らない……こっちの方はデスティニーでも防げないだろ?」

 

 

獅堂レオンとて、カードショップ『アポローン』でバトルした際にそれを使用したのだ、白晶防壁の効果を忘れているわけがない。

 

デスティニーガンダムが如何に強力なスピリットであっても、このターン、鉄華オーカミのライフはもう1つしか減らされない。

 

 

「………ならその1つをいただいて行くぞ。デスティニーで再アタック!!」

 

 

バルバトス第6形態との戦闘は不発に終わったデスティニーガンダム。今度は鉄華オーカミの方へと目をつける。

 

この瞬間に合体しているシンの効果が発揮されるも、今回デッキからオープンされたカードは対象外、そのまま獅堂レオンのデッキの一番下へと送られた。

 

 

「ライフで受ける………ぐっ、ぐおぉぉぉ……!!」

 

 

〈ライフ2➡︎1〉鉄華オーカミ

 

 

接近して来たデスティニーガンダムが拳で鉄華オーカミのライフバリアを砕く。白晶防壁によって貼られた結界によって1つは残るものの、その数は遂に残り1つとなってしまった…………

 

 

「……奇しくも白晶防壁で凌いだか。だが、エンドステップ、ギルバートの【神技】を発揮!!」

「!!」

「コアを3つ支払う事で、『コアステップ』『ドローステップ』『リフレッシュステップ』のいずれか1つを行う。今回は『リフレッシュステップ』を行い、トラッシュのコアをリザーブに戻し、デスティニーとギルバートを回復させる」

「なに!?」

 

 

アタックステップは乗り越えたものの、創界神ネクサス『ギルバート・デュランダル』の効果により、獅堂レオンのコアとスピリット、ネクサスが全て回復。返しのターンの防御を万全なモノとして見せる。

 

 

「ターンエンド」

手札:3

場:【デスティニーガンダム+シン・アスカ】LV3

【ギルバート・デュランダル】LV1(2)

バースト:【無】

 

 

「…………」

 

 

デスティニーのカードパワーの高さ、高度なプレイング、2つの力を見せつけ、獅堂レオンはそのターンをエンドとする。

 

それに伴って湧き上がる歓声の中、鉄華オーカミは頭の中を『絶望』の二文字で固めてしまう。

 

 

「よ、ヨッカさん。これ、大丈夫すよね!?……鉄華オーカミの奴、勝てますよね!?」

 

 

会場にいる鉄華オーカミの友達、鈴木イチマル。彼の勝利を信じている彼は、不安を取り払おうと、隣にいるヨッカに聞いた。

 

だが、返答は彼が望んでいたものではなくて…………

 

 

「………正直厳しいな」

「!!」

「オーカの手札は1枚だ。しかもそれは効果によって戻った『モビルワーカー』で確定………強力なデスティニーガンダムがブロッカーとして立ちはだかる事を考えると、次のドローステップの1枚でこれをひっくり返せる確率はほぼ0に等しい」

「そ、そんな……ここまで来て」

 

 

この状況、どう足掻いても鉄華オーカミに勝ち目がない事は、イチマルとてわかっている事ではあった。

 

だが、自分を認めてくれている数少ない友人である彼の勝利を願わずにはいられない。

 

 

「………負けんなよ、鉄華オーカミ………勝てよ」

 

 

鈴木イチマルは鉄華オーカミを想い、悔しさに歯を噛み締めながら苦しそうに重たい声援を送る。そんな彼の肩に九日ヨッカは手をそっと置いて…………

 

 

「慌てんなイチマル、確率はほぼ0に等しいとは言ったが、まだ0になったとは言ってない………オーカを信じろ、何てったって、アイツはオレの弟分なんだからな、この土壇場で絶対何かするに違いないぜ」

「何で自信満々でそんな事言えるんですか」

 

 

九日ヨッカの堂々とした宣言に、春神ライがひとツッコミ。

 

しかし、そんな彼の期待とは裏腹に、鉄華オーカミはこのバトルを諦めかけていて……………

 

 

「獅堂レオン君。まさかここまで強いなんて、正直ジュニアどころかそこら辺のプロにも勝てるレベルだわ………流石は、あのカードバトラーを師に持つだけはあると言った所かしら?」

 

 

解説席にいる早美アオイ。ここまでの獅堂レオンのバトルを自分なりに頭の中で分析し、やはり彼がジュニアの中では頭が何個分も突き抜けている事を再確認する。

 

そして、一番こちら側に引き入れたい人材であると言う事も…………

 

 

「ここまで戦った事は褒めてやる。確かにオマエは強くなった、このオレとデスティニーの渇きを癒すくらいにはな………だがそれ止まりだ。オマエに勝利と言う名の道は決して開かれない、諦めろ」

「…………」

「………オーカ」

 

 

絶望的な状況でターンが回って来る中、獅堂レオンが鉄華オーカミにそう告げた。

 

一木ヒバナはそんな鉄華オーカミの哀愁漂う背中を、後ろからただ心配そうに見つめる事しかできない。何の力にもなってやれない事が歯痒かった…………

 

 

「………オレの、負け……!?」

「そうだ、オマエの負けだ、鉄華オーカミ。オレと、オレのデスティニーの前に散るがいい」

「ッ…………」

 

 

鉄華オーカミは、手札に残った唯一のカード『モビルワーカー』と、場に残っている『オルガ・イツカ』のカードを眺め、瞬時にこれまでの事を、まるで走馬灯のように脳裏へと浮かび上がって来た。

 

 

自分の家にデッキが送られて来たあの日の事…………

 

一木ヒバナをはじめとした、友人ができた日の事…………

 

それに伴う事で生まれた、楽しい日々の事…………

 

このかけがえのないモノは、全てバトスピが自分にくれたモノだ。これからも大事にしていきたい、勝ち負けに拘らず、純粋に楽しんでいたい。

 

 

だが、今この瞬間だけはこう強く願った……………

 

 

このバトルに、獅堂レオンに『勝ちたい』と…………

 

力の差があり過ぎて、今の自分では何をしても通用しない相手なのはわかっている。理解も納得もしている。だが勝ちたい、どうしようもなく勝ちたい…………

 

このバトルに勝って、カードバトラーとして一歩前進したい。喉から手が出る程勝利が欲しい。

 

そう言った彼の早まった気持ちが実を結んでしまうかのように…………

 

 

偶然か、それとも必然か………

 

それを叶えられるだけの力が、与えられてしまう。

 

 

 

「!!!」

 

 

 

ー!!

 

 

 

極限まで追い詰められた鉄華オーカミ。突然、そんな彼の右目が血のような赤い輝きを放つ。

 

それに真っ先に気づいたのは他でもない、彼の対面者である獅堂レオン。

 

 

「………鉄華?」

「…………」

「オマエ、その目は………」

 

 

一声かけて見るが、返事はない。そして今一度その目を注意深く見てみると、その右目には鉄華団のあの赤い華のマークが刻まれている。

 

ただならぬ気配、まるで野獣にでも睨まれた感覚に陥った獅堂レオンは、手札のカードを強く握り、身を固めた…………

 

 

「オレはオマエには絶対負けない…………行くぞバルバトス、オレにもっと、力をよこせ」

 

 

明らかな異変に戸惑う様子もなく、まるでこれがさぞかし当たり前であったかのように、鉄華オーカミはデッキのカード達にそう告げる。その右目から血の涙が流れ出ていた。

 

そして、まるで流れる血を糧にするかの如く、鉄華団のカードで固められたそのデッキは淡い赤色に包み込まれて行った………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この世界には、一部地域にしか伝わらない、こんな言い伝えがある。

 

 

『カードバトラーとデッキ、決して離れる事のない二つの存在が一つになる時、血を代償に勝利への道を約束する』

 

 

そして人々は、その領域に到達したカードバトラーを、絶対的な力と言う意味合いを込めて、王者(レクス)と呼び、恐れた。

 

 

 

 

 

 

******

 

 

 

「お、おおおおおおおおおおおお!!!!………これは王者(レクス)の力だ、間違いない」

 

 

どこにあるのかもわからない程薄暗く、不気味な部屋でBパッドのモニターを通してこの試合を観戦していたDr.Aは獅堂レオンに次いで鉄華オーカミに起こった異変と変貌に気がつく。

 

どうやら、それが何なのかも理解している模様。

 

 

「エクセレントエクセレントエクセレントエクセレントエクセレントエクセレントエクセレント!!!!………これは豊作だ。最高じゃないか鉄華オーカミ」

 

 

焼け焦げた声で無駄にテンションを跳ね上げるDr.A。よっぽど鉄華オーカミが目覚めた謎の力が珍しかったに違いない。

 

 

「ふふ……『王者(レクス)』が発動したと言う事は、もう獅堂レオンに勝ち目はないね。これはこれで、面白い展開だ…………どっちも、使えるかもしれない」

 

 

また怪しげな発言、セリフを吐き捨てるDr.A。彼がいったいこの界放市でまた何を企んでいるのかは、神のみぞ知る……………

 

 

 

******

 

 

 

[ターン12]鉄華オーカミ・王者

 

 

「メインステップ!!……鉄華団モビルワーカーを召喚し、ネクサスカード、ビスケット・グリフォンを配置」

 

 

ー【鉄華団モビルワーカー】LV1(1)BP1000

 

ー【ビスケット・グリフォン】LV1

 

 

右目に鉄華団のマークである赤い華が刻まれた鉄華オーカミ。右目から流れる流血による痛みなど気にする事なく、手札からスピリットとネクサスを展開。

 

元から場にいる創界神オルガにコアが置かれていく。

 

 

「ビスケットの効果、このネクサスを疲労させる事でデッキから1枚オープン、それが鉄華団カードなら手札に加える」

「ッ………」

「オレがオープンするのはバルバトス第4形態!!……よってこれを手札に加えて、召喚する」

「なに!?!」

 

 

大地を揺らせ、未来へ導け…………

 

ガンダム・バルバトス第4形態………

 

LV3で召喚!!!

 

 

 

ー【ガンダム・バルバトス[第4形態]】LV3(4)BP12000

 

 

 

この土壇場でカードがカードを呼び、繋がっていく。不屈の闘志でバルバトス第4形態、その3枚目がフィールドへと参上する。

 

だが、獅堂レオンが驚愕しているのは、ここ一番で発揮される鉄華オーカミの引きの強さではない。

 

 

「赤チビ………今アイツ、カード効果でカードをオープンする前に捲れるカードを言い当ててた」

「え、マジ!?」

「本当なのライちゃん!?!」

 

 

会場の観客席にいる春神ライがそう言った。

 

そうだ。鉄華オーカミはデッキトップにあるカードの名前をズバリ言い当てたのだ。裏側のカードを言い当てるなど、自分のデッキとは言え、未来を予知する能力でもない限りは不可能な事である。

 

 

「て、鉄華オーカミの奴、まさか占い師だったのか!?」

「いやイチマル、占い師でも多分無理だぞ………でも妙ださっきから、オーカオマエ、どうしちまったんだ」

 

 

九日ヨッカも弟分に起きている妙な異変に気がつく。思わず質問を投げかけるが、当然それに返事が返って来るわけはない。早美アオイとDr.Aの件の事もあって、少しだけ不安と言う文字が彼の頭の中を泳いだ。

 

 

「アイツ、ひょっとして未来が見えてるの??……私と同じで」

 

 

ここまで劇的な変化はしないが、春神ライもまたバトルの未来を見る事ができる。それだからか、彼女は今の鉄華オーカミに釘付けになり、妙なシンパシーを感じ取っていて…………

 

そして、会場中の誰もが鉄華オーカミに起きた異変に気がついていく中、バトルは続いていく…………

 

 

「デッキトップのカードを言い当てただと…………!?!」

「アタックステップ、その開始時にオルガの【神技】を再び発揮!!……コアを4つ支払い、トラッシュから三日月を再召喚し、バルバトス第4形態に直接合体!!」

「!!」

 

 

ー【ガンダム・バルバトス[第4形態]+三日月・オーガス】LV3(4)BP18000

 

 

束の間、オルガの効果で三日月も復活。バルバトス第4形態が強化され、鋼鉄のボディが擦れるような音が、まるで悪魔の咆哮のように響き渡る。

 

 

「モビルワーカー、アタックだ」

 

 

車輪を回転させ、モビルワーカーが大地を駆け抜ける。その狙いは当然獅堂レオンのライフバリアだ。

 

 

「………オマエのそれが何なのかは知らんが、いいだろう!!……真っ向から向かって来るのであれば、迎え撃ってくれる!!……フラッシュ、フォースインパルスの効果発揮、自身を召喚する」

 

 

ー【フォースインパルスガンダム】LV2(2)BP7000

 

 

デスティニーガンダムの横に出現したもう一機のモビルスピリット、フォースインパルスガンダムが登場。向かって来るモビルワーカーをその両拳で押さえ込む…………

 

 

「ブロック時【零転醒】!!……ソードインパルスガンダム!!」

 

 

ー【ソードインパルスガンダム】LV2(2)BP9000

 

 

「転醒時効果で回復」

 

 

瞬時にその色を青から赤へと切り替えるインパルスガンダム。今のこの姿はソードインパルスガンダムだ。捕まえたモビルワーカーを天空高く飛ばすと、巨大な剣で一刀両断、木っ端微塵に爆散させて見せる。

 

 

「モビルワーカーは破壊時、自分のデッキから1枚破棄して1枚ドローする」

 

 

ソードインパルスガンダムにモビルワーカーが破壊され、鉄華オーカミは一旦モビルワーカーの破壊時効果を発揮させるが…………

 

真の狙いはそこではなくて…………

 

 

「ここで、バルバトス第4形態の効果!!」

「!!」

「自分のアタックステップ中、各バトルの終了時、トラッシュから鉄華団スピリットを1コスト支払って召喚する…………再び現れろ、バルバトス第6形態!!」

「………」

 

 

ー【ガンダム・バルバトス[第6形態]】LV2(3)BP10000

 

 

バルバトス第4形態がメイスを天に翳すと、それに共鳴するように地中からバルバトス第6形態が飛び出し、復活を果たす。

 

 

「な、なんかさっきから変。この感じ、いつものオーカじゃない………なんか、嫌」

 

 

バルバトス第4形態と第6形態が互いに鋼鉄の歯車が擦れ合うような咆哮を上げる様子を眺めながら、一木ヒバナがそう呟く。

 

鉄華オーカミのバトルに人情味を感じなくなったのだ。言い例えるのであれば、バトルに勝つためだけに作られた戦闘マシーンにでもなった感じだろうか。

 

何となくそれを肌で感じ取った一木ヒバナは、それに嫌悪感を抱かずにはいられなかった。鉄華オーカミが心の底からバトルを楽しんでいた事を知っているからだ。

 

 

「復活した第6形態でアタック!!……アタック時効果でソードインパルスのコア1つをリザーブに置き、回復」

 

 

ー【ソードインパルスガンダム】(2➡︎1)LV2➡︎1

 

ー【ガンダム・バルバトス[第6形態]】(疲労➡︎回復)

 

 

バルバトス第6形態が駆ける。前のターンから格段にパワーアップしているのか、低姿勢になり、野獣のような動きでソードインパルスガンダムに近づき、レンチメイスの一撃で叩き潰す。

 

ソードインパルスガンダムは辛うじて生き残るものの、そのLVは1へとダウンしてしまう。

 

 

「効果で鉄華団スピリットのアタック中、オマエはスピリット1体を犠牲にしないとブロックできない」

「ぐっ………それはライフで受ける」

 

 

〈ライフ3➡︎2〉獅堂レオン

 

 

バルバトス第6形態のレンチメイスによる一撃が獅堂レオンのライフバリアにも突き刺さる。その総数は遂に下半数を下回り、2となった。

 

そして、この行為はバルバトス第6形態の持つ転醒のトリガーともなって…………

 

 

「バルバトス第6形態の【零転醒】!!……転醒アタック時効果で最もコアの少ないソードインパルスを破壊!!」

「チィッ……!」

 

 

ー【ガンダム・バルバトス[第6形態・太刀装備]】LV2(3)BP13000

 

 

自身の重厚な装甲をパージするバルバトス第6形態。その飛び散った装甲がソードインパルスガンダムを押し潰し、それを爆散へと追いやる。

 

 

「第6形態でもう一度アタック!!……その効果で今度こそデスティニーを破壊だ」

「………!!」

 

 

目でも追いつけない速度で駆け抜けるバルバトス第6形態。デスティニーガンダムへと襲い掛かり、その両手に握る太刀で何度もその鋼鉄の身体を切り刻んで行く。

 

この猛攻に流石のデスティニーガンダムも堪えたか、力付き、無惨にも大爆発を起こす。

 

これにより、獅堂レオンのフィールドは壊滅。ブロックできるスピリットは誰もいない。

 

だが、これで終わる絶対王者ではない。

 

 

「シンのアタック破壊時効果、デッキから1枚オープンし、それが対象のカードならば召喚、配置、使用ができる」

「………」

「鉄華、オマエがカードを断言できると言うのでアレば、オレもやってやろう!!………ズバリ、オレが今からドローするカードは、我が魂、デスティニーガンダムだ!!」

 

 

負けじと、カードバトラーとしてのプライドを賭けて………

 

獅堂レオンはデッキの上から1枚をドロー、そしてそのカードを視認するなり、その口角を上げた。

 

 

「フ………やはり勝利の女神はオレに味方するようだ。再び降臨せよ我が魂!!……デスティニーガンダム!!」

 

 

ー【デスティニーガンダム】LV3(5)BP23000

 

 

「…………」

 

 

揺るがないプライドと執念が実を結んだ。獅堂レオンは2枚目となるデスティニーガンダムのカードを見事引き当て、シン・アスカの効果で召喚して見せる。

 

もちろん、彼は鉄華オーカミと違って、Dr.Aが『王者』と呼称していた力はない。己の運命力を信じ、手繰り寄せ、見事自力で引き当てたのだ。

 

 

「デスティニーガンダムよ、その手で奴を、バルバトス第6形態を叩き潰せ!!」

 

 

再び出現したデスティニーガンダムに刃を向けるバルバトス第6形態。野獣の如く勢いで襲い掛かるが、デスティニーガンダムはその刃を真剣白刃取りで受け止め、その刃をへし折る。

 

動きを見切られている事を悟るバルバトス第6形態。次の動きに転じようとするも、その間にデスティニーガンダムの拳が顔面にクリーンヒット。頭部を吹き飛ばされ、爆散してしまう…………

 

 

「ハァッ………ハァッ………どうだ鉄華、デスティニーはまだギルバートを疲労させる事で回復もできる」

「………」

「このバトル、オレの勝ちだ!!」

 

 

全身全霊を持って鉄華オーカミ、バルバトス第6形態の猛攻を受け止めた獅堂レオン。息を切らしながらも、己の勝利を確信する。

 

だが…………

 

鉄華オーカミは唯一フィールドに残ったスピリット、バルバトス第4形態を指差して…………

 

 

「バルバトス第4形態の効果、自分のアタックステップ中、各バトル終了時、トラッシュから1コストで鉄華団スピリットを召喚する」

「…………なに!?」

「もう一度来い、バルバトス第6形態!!」

 

 

ー【ガンダム・バルバトス[第6形態]】LV1(1)BP7000

 

 

絶望の効果発揮宣言。バルバトス第4形態がメイスを天に翳すと、地中から再びバルバトス第6形態が飛び出して来る。

 

戦いの中、迫り来る猛攻の中、獅堂レオンはこの効果を完全に失念していた。

 

 

「………オマエがあそこでブロックして来るのはわかってた」

「ッ………鉄華、オマエまさか本当に未来が見えているとでも言うのか!?」

 

 

今の自分は未来が見えている。そう言う意味合いを含んだ事を話す鉄華オーカミ。

 

そうだ。自分が勝利する未来が見え、必ず勝てるようになる。それがDr.Aの言っていた『王者』の力なのだ。

 

だからもう、獅堂レオンは決して彼には勝てない…………

 

 

「バルバトス第4形態でアタック!!……効果で残ったシン・アスカを破壊。さらに第6形態の効果で、このアタックはスピリット1体を破壊しなければブロックできない………そして、今のオマエのフィールドはデスティニーガンダムだけだ」

「!!」

 

 

前のターンまでとは比較しようもないほどの速度で動き回るバルバトス第4形態。デスティニーガンダムがそれをどうにか止めようとするも、速さ故に形成された残像から飛び出して来るメイスの嵐によって機体に深刻なダメージを受け、片膝を突いてしまう…………

 

この光景を見た獅堂レオンは、ようやく自分がこのバトルに敗北してしまう事に気がつく…………

 

 

「………馬鹿な、負けるのかこのオレが。師匠からバトルを教わった、このオレが」

「行け………バルバトス!!」

 

 

デスティニーガンダムを軽くあしらったバルバトス第4形態は、メイスを構え直し、獅堂レオンのライフバリア目掛けて一直線に走り出す。

 

当然、彼にもうそれを防ぐ手段はない。

 

 

「鉄華………鉄華オーカミィィィィィィィィィ!!!!」

 

 

悔しさに歯を噛み締め、叫び、拳を握る獅堂レオン。

 

鉄華オーカミの勝ちだ。誰もがそう確信した。

 

 

だが…………

 

 

 

「………なに………!?」

 

 

 

バルバトス第4形態が獅堂レオンのライフバリアへと迫った次の瞬間、メイスを握っている右手が、その腕ごと爆散した。そして次々と各部位が内部爆発を起こしていき、バルバトス第4形態は完全に機能を停止、その場に倒れ込んでしまう…………

 

 

、これで………オレの勝ち………だ」

 

 

鉄華オーカミは自分の意識が段々と遠のいていくのを感じた。そして、やがて完全に力尽きた彼は、右目や鼻から多量の血を流しながら、バルバトス第4形態と同じくその場に倒れ込んでしまう…………

 

この光景に誰もが息を詰まらせた。ざわつき、空気が殺伐とした。

 

 

「オーカァァァァァァー!!!」

 

 

思わず飛び出したのは九日ヨッカ。会場の観客席から舞台へと飛び降りてオーカの元まで駆け寄っていく。

 

 

「だ、誰か支給担架を用意してください!!」

 

 

実況席にいるアナウンサー、紫治夜宵がそう声を荒げて周囲の大会スタッフやテレビのディレクターを仰ぐ。

 

そして、解説席にいる早美アオイは、戸惑いつつも、冷静な表情を装い、マイクを片手にそう宣言するのであった。

 

 

鉄華オーカミは獅堂レオンのライフを破壊する前に倒れました。

 

よって、鉄華オーカミは負傷退場として扱い、このバトル、勝者は獅堂レオンとします。

 

 

 

 

「………は?」

 

 

獅堂レオンはそのアナウンスに耳を疑った。しかし、今は抗議する気力もなく、何故かその場で倒れ、Mr.ケンドーに介抱されている鉄華オーカミを、ただただ漠然と眺める事しかできなかった。

 

界放市の界放リーグとは、世界的にも注目が集まる、バトルの祭典。

 

だが、未だかつて、ここまで盛り下がってしまった決勝戦は、他になかった事だろう…………

 

 




次回、第24ターン「トランザムライザー」
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