真夏の日差しが照り付ける中行われた今年の界放リーグジュニア。例年よりもレベルの高い試合が連発した今大会であったが、最後の決勝戦、鉄華オーカミVS獅堂レオンで問題が発生する。
バトル中、鉄華オーカミが目から多量の血を流し、倒れてしまったのだ。しかもバトルの勝敗が彼の勝利で終わる、その瞬間にだ。その後、彼は倒れた直後に慌てて駆け寄って来た、九日ヨッカと一木ヒバナ、鈴木イチマルらも同伴の上で病院へと搬送された。
バトル中に人が倒れると言う、界放リーグどころか全バトルスピリッツの中でも類を見ない前代未聞の問題が勃発した中、麗若きモビル王、早美アオイが困惑する観客達へ『今年の界放リーグは、獅堂レオンの優勝だ』と告げて……………
******
鉄華オーカミが倒れ、病院へ搬送されてから、およそ5分程経ったか。いい加減観客達も落ち着きを取り戻しつつある中、獅堂レオンは漠然と舞台に立ち続けた。
その背中はまるで「結果が認められない」「この行き場のない力はどこへぶつければいい」のだと言わんばかりだ。
「………え、え〜〜っと……搬送された鉄華オーカミ君ですが、救急班の方によりますと、意識はあるようで、命に別状はなさそうとの事ですので、会場の皆さんはご安心ください」
実況席にいるアナウンサー、紫治夜宵がマイクを片手にそう補足する。その後彼女は一旦マイクを口元から離し、隣の解説席にいる早美アオイに声を掛ける。
「どうしましょうかアオイさん」
「何をです?」
「何って、この後直ぐ行う予定になった、優勝者と貴女によるエキシビジョンマッチですよ。結果的に今年の優勝も獅堂レオン君になりましたけど、なんかもう雰囲気がバトルって感じじゃないじゃないですか」
夜宵の率直な質問に、早美アオイは軽く笑みを浮かべる。
「ふふ、そんな事ですか。雰囲気なんかどうでもいいです。私はただ優勝者とバトルできればそれでいいのです」
「えぇ、そんな勝手な。これ全国生中継なんですよ?」
「では私は舞台に向かいますわね」
「あぁちょっとぉ!?」
解説席から立ち上がり、舞台へと登っていく早美アオイ。夜宵はその様子に「今時の若い子達って勝手な子ばっかり」と小声で毒吐く。
そして、早美アオイは、1人舞台で突っ立っている獅堂レオンと対面した。
「どうもご機嫌よう、レオン君。先ずは優勝おめでとう…………知ってると思うけど、私は早美アオイ………貴方と同じくモビルスピリットの使い手です」
「…………何の用だ」
獅堂レオンは冷たい目で彼女を見る。
「歳上相手に不躾ですわね。決勝戦前にも申し上げたではないですか、あなた方のどちらか勝った方が私とバトルをすると」
「…………オレは、勝っていない」
その瞳は縄張りを守る野獣の如く。どうやら、獅堂レオンは鉄華オーカミとのバトルに納得ができていない様子。
「いいえ、貴方は勝ちました。そして優勝したんです、この界放リーグで見事三連覇を成し遂げたんです、おめでとう」
「何が三連覇だ、オレは認めない………アイツのバトルスピリッツが、オレを上回ってはダメなんだ。もう一度鉄華とバトルするまで、ここを離れるつもりはない。早く去れ、名ばかりの王が」
頑なに、頑固に、我儘に。
獅堂レオンは鉄華オーカミとのバトルを求める。自分のバトルスピリッツが奴のバトルスピリッツに負けるわけがないと、今度こそ見せつけるために…………
だが…………
「………あのまま行くと、貴方は負けてました」
「!!!」
現実と言う名の厳しさを、早美アオイはぶつける。
「オーカミ君の目が赤く輝いた時、全てが変わった。アレが何なのかは残念ながら私にもわかりません………ですが、これだけは言える。貴方のバトルスピリッツは、彼のバトルスピリッツには敵わなかった」
「ッ………ふざけるな!!」
王者の怒号によって、会場は再び険悪な雰囲気に包まれていく。
「ふざけてなどいませんよ、正直に告げただけです。どちらにせよ、オーカミ君には、私たちにも理解できない、何か特別な力があるのかも知れませんね…………貴方はそんな力、欲しくありませんか?」
「!!」
「私達と共にくれば、貴方はあの力に、強さに必ず手が届く……そう約束しましょう」
唐突な勧誘。獅堂レオンは咄嗟に早美アオイの狙いは最初からコレであったのと、彼女の背後には不穏な何かが存在するのを察知した。
そしてその答えは…………
「強さとは、己で磨き続けるモノ………誰が貴様の怪しげな手など取るか」
当然「No」だ。
今は精神的に相当辛い状況にある獅堂レオンだが、己の感性を見失う程ではない。彼女からの勧誘にキッパリと断りを示した。
その返事を聞くなり、早美アオイは「……ふうっ」と肩の力を抜き、ため息をすると、流れるように懐から己のBパッドを取り出した。
「ではこうしましょう。私がバトルに勝ったら貴方は私達に協力する………逆に貴方が勝てばオーカミ君との再戦の舞台を整えてあげる。どうです、悪い気はしないでしょう?」
「鉄華との……再戦」
納得が行かなかったバトル。その相手との再戦が迫るのを感じた獅堂レオン、自ずとその手は、Bパッドを展開させていた………
「ふふ、ようやくやる気になってくれましたか」
彼のやる気を焚きつけた早美アオイ。自分のデッキをBパッドへとセットし、バトルの準備を終える。
それを見ていたアナウンサー紫治夜宵は、マイクを片手に声を荒げる。
「おおっと遂にバトルが始まるみたいですね!!……色々ありましたが、見事三連覇を成し遂げた運命をも変える荒ぶる獅子王、レオン!!………対するは16と言う若さでプロになり、界放市最強の称号「三王」も獲得した、天才すぎる美少女早美アオイ!!……同じモビルスピリット使いと言うのもあって、このバトル、一つも目が離せない予感がしてなりません!!」
あの有名な新モビル王、早美アオイのバトルと言う事も幸いし、決勝戦でサイレントモードになってしまった観客達は燻られ、次第にいつものような轟音という名の大歓声を張り上げていく…………
「なんか飽きた。帰ろっかフウちゃん」
「え!?……帰るの!?」
2人会場に残された春神ライと夏恋フウ。唐突にライがフウに提案した。
「もうちょっとバトル見て行こうよ〜〜折角来たんだし」
「でもなぁ、アイツも何故かぶっ倒れちゃったし………って言うか、アイツが搬送された病院に行かないと」
「お?……それはつまりやっぱり脈アリって事?」
「ち、違うわよ!!……ただ私はアイツとの決着をつけたいだけ!!」
「うん、取り敢えず病院でバトルはまずいんじゃないかな」
なんだかんだで搬送された鉄華オーカミが心配な春神ライ。
彼女がどうしてもと言うので、夏恋フウはそれに賛同、2人共々このジークフリード・スタジアムから去って行った。
そして場面は変わり再びスタジアム内の舞台、獅堂レオンと早美アオイのバトルの準備は既に整っている。
「では始めましょうかレオン君。貴方は挑戦者、故にこのバトル、先攻を与えましょう」
「黙れ。施しは受けん、寧ろ貴様が先攻で来い」
「あら強情なのね………じゃあお言葉に甘えましょうか」
手札を構える両者。そして、会場中の誰もが彼らに期待する中、それは遂に幕を開ける…………
………ゲートオープン、界放!!
エキシビジョンマッチがスタートする。先攻は先程の会話通り、早美アオイだ。会場中の期待が彼女に集まって行く中、場慣れした涼しい表情で彼女はターンを進めて行く。
[ターン01]早美アオイ
「メインステップ………私は母艦ネクサス、プトレマイオス2を配置します」
「!」
ー【プトレマイオス2】LV1
早美アオイの母艦ネクサスと言えばプトレマイオス、しかし今回はその後継機にあたる第二のプトレマイオス。その効果は最初のプトレマイオスとは全くの別物であり…………
「配置時効果、デッキから4枚オープン、その中の対象カードを手札へ……」
合計4枚、オープンされて行く彼女のデッキのカード。その中にある1枚へ手を差し伸ばす。
「それでは私はこの『ダブルオーライザー』を手札に加えて、残りはトラッシュに破棄………ターンエンドです」
手札:5
場:【プトレマイオス2】LV1
バースト:【無】
「…………」
「どうしましたレオン君、貴方のターンですよ?………ひょっとして、この私に臆しましたか?」
「な訳ないだろう。オレのターンだ」
早美アオイは獅堂レオンの意識がややバトルから逸れているのを感じた。理由は明白、前のバトルが忘れられないのだろう…………
[ターン02]獅堂レオン
「メインステップ…………界放市のモビルスピリット使いモビル王………相手にとって不足はない。ネクサス、侵されざる聖域を配置」
ー【侵されざる聖域】LV1
獅堂レオンの背後に配置されるのはこの世の聖を表現したかのような楽園。このネクサスカードはバトスピのルールにおいて制限1、つまりデッキに1枚しかいられない強力なカードである。
「侵されざる聖域はコスト8以上のスピリット全てに赤以外の【装甲】を与える効果を持つ。これで我が魂デスティニーは貴様自慢の効果は通用しなくなった」
「ふふ、初手から制限カードをドローするなんて、引きが強いのね」
「さらに母艦ネクサス、ミネルバを配置」
ー【ミネルバ】LV1
立て続けに配置されるのは純白の母艦、ミネルバ。獅堂レオンのデッキの中でも重要な役割を担う存在である。
「配置時効果でコアスプレンダーを手札に加える………これでターンエンドだ」
手札:4
場:【侵されざる聖域】LV1
【ミネルバ】LV1
バースト:【無】
初手に万全の対策を整え、そのターンをエンドとする。モビル王である早美アオイが如何にしてこれをさらに対策していくかが気になる所である。
[ターン03]早美アオイ
「メインステップ………ガンダムキュリオスを召喚します」
ー【ガンダムキュリオス】LV1(1)BP2000
オレンジ色を基準とした低コストのモビルスピリット、ガンダムキュリオスが彼女の場に出現する。
「召喚時効果でコア1つをブースト、さらにそのコアを使いもう1体のキュリオスを召喚します」
ー【ガンダムキュリオス】LV1(1)BP2000
並び立つ2体のキュリオス。2体目の効果でまたさり気なくコアが1つブーストする。そしてスムーズな動きでそのコアを使い、カードを使用して行く………
「マジック、ストロングドロー。デッキからカードを3枚引いて2枚捨てます…………捨てるのは『ガンダムキュリオス[トランザム]』2枚」
「ッ………進化系か」
早美アオイのデッキ「CB」のデッキの特徴を理解している獅堂レオン。彼女のトラッシュに送られたカードに警戒心を抱く。
ただ、警戒したからとて、ではあるが。
「アタックステップ!!……キュリオスでアタック、その効果【トランザム】で自身を手札に戻し、今トラッシュにあるキュリオストランザムを召喚します」
「やはりそう来るか……」
ー【ガンダムキュリオス[トランザム]】LV1(1)BP3000
2体いるキュリオスのうち1体が赤い粒子をその身に纏い、光輝く。これでキュリオスは一時的に高BPのスピリットとなったが、早美アオイの狙いはそこではなくて…………
「キュリオストランザムの召喚時効果、ボイドからコア1ずつを自身とプトレマイオス2に追加」
「…………」
「続けてもう1体のキュリオスも【トランザム】………その召喚時効果で再び同じ効果を発揮させます」
「このターンで合計6コアもブーストか……」
キュリオス2体がトランザム化。結果的に彼女は合計6コアものコアを追加させた。
「アタックステップは終了、エンドステップ。このタイミングでキュリオストランザム2体は場を離れ、トラッシュへと戻ります。ターンエンド」
手札:6
場:【プトレマイオス2】LV2
バースト:【無】
キュリオストランザムの寿命は短い、コアを加速させると言う役目を終え、この場から粒子と化して消滅する。
[ターン04]獅堂レオン
「メインステップ………コアスプレンダーをLV2で召喚」
ー【コアスプレンダー】LV2(3S)BP3000
「召喚時効果でデッキから2枚オープン、その中の対象カードを手札に加える…………今回は対象はない、だがオープンされたこのカード『終末の光』は自身の効果で手札へ加わる」
「オーカミ君との試合でも見せたあのマジックですか」
見た目は戦闘機、転醒する事でモビルスピリット、インパルスガンダムになる獅堂レオンの軸となるスピリットの1体、コアスプレンダーがジェット音を鳴らしながら彼の場に出現。
その効果で決勝戦でも見せた強力な除去マジックカード『終末の光』が手札へと加わった。
「バーストをセットしてアタックステップ………コアスプレンダーでアタック!!……そしてこのフラッシュタイミングで【零転醒】を発揮、1コストを支払って転醒させる!!……来い、インパルスガンダム!!」
ー【インパルスガンダム】LV2(3S)BP6000
コアスプレンダーを中心に鋼鉄の装甲が装着、モビルスピリット、インパルスガンダムがここに爆誕する。
「インパルスガンダム、良いですね!!……真正面で見るとよりカッコいい」
「一々御託を並べるな………インパルスのアタックは継続中だ!!」
「ふふ……ライフで受けます」
〈ライフ5➡︎4〉早美アオイ
インパルスガンダムはビームライフルの銃口を早美アオイに向け、エネルギー弾を射出。彼女のライフバリア1つを撃ち抜いた。
「ターンエンド………」
手札:4
場:【インパルスガンダム】LV2
【侵されざる聖域】LV1
【ミネルバ】LV1
バースト:【有】
できる限りの行動を行い、そのターンをエンドとする獅堂レオン。デスティニーガンダム召喚への準備が進んでいく中、ターンは早美アオイへと移り変わる。
[ターン05]早美アオイ
「メインステップ………キュリオス2体を再び召喚します。効果でコアブースト」
ー【ガンダムキュリオス】LV1(2)BP2000
ー【ガンダムキュリオス】LV1(2)BP2000
メインステップの開始直後、早々にキュリオスが復活。コアがさらに増加して行く。
「レオン君、私には貴方の気持ちは手に取るようにわかります」
「なんだ急に、御託は要らないと言って………」
「貴方、オーカミ君が怖いんでしょう、恐ろしいんでしょう?」
「………なに!?」
動揺する獅堂レオン。彼はそんな事はあり得ないと心中で叫ぶが、その隙に早美アオイは手札から最初のターンに加えていた自身のエースを呼び出して…………
「舞いなさい、天高く!!…ガンダムをも超越する戦士、ダブルオーライザー!!」
ー【ダブルオーライザー】LV3(6)BP16000
その輝きはまるで流星の如し………
上空から一線の光と共に地上へと出現したのは、ガンダムの名を持たない、いや、ガンダムを超越したからこそ、その名を持たないモビルスピリット、ダブルオーライザー。
手に持つ二振りのブレードを宣戦布告するように獅堂レオンへと向けた。
「召喚時効果、CBスピリット全てに1つずつコアブースト致します」
今の早美アオイのフィールドにはダブルオーライザーを含めて3体。それぞれにコアが追加された。
「さらにガンダムスピリットが2体以上いる時、相手の手札を全てオープンして手元に置きます」
「ッ………手札を!?………ぐっ」
獅堂レオンのBパッドが青く点滅し、手札を引き寄せる。その合計4枚のカードはBパットに貼り付けられ、早美アオイもそれを確認できるようになった。
バトルスピリッツはカードゲーム。カードゲームにとって手札を全て公開しなければならないと言う状況はその時点で情報アドバンテージをドブに捨てるも同義。獅堂レオンはそんな行いを早美アオイのエース、ダブルオーライザーに強制的にさせられてしまったのだ
「公開された4枚のカードは『終末の光』『ミネルバ』『コアスプレンダー』『リミテッドバリア』………まだデスティニーガンダムは引き込んではいませんでしたか」
「そんな事より、このオレが鉄華を恐れているとはどう言う事だ、オレは絶対王者、獅堂レオンだぞ!!………そんな訳がなかろう!!」
「いえ、貴方はオーカミ君を恐れています。正確には、あの子に眠る、不思議な力に」
「………!!」
「貴方は悟ってしまったんです。あの力の前には敵わないと………本当は再戦がしたくて会場に立っていたんじゃない。なすすべなく敗北しかけた事による恐怖から足が動かなくなっただけなんですよ」
「!!!」
彼女の言葉に怒り心頭。獅堂レオンは遂に声を荒げて…………
「ふざけるな、対して歳も変わらん分際で!!!………オレが、誰にバトルの教えを乞うてもらったと思っている!!」
「芽座葉月」
「ッ……!?」
獅堂レオンは、彼女の口から突然出てきた名前に困惑する。
「知ってますとも、貴方に一からバトルスピリッツを叩き込んだのは他でもない、伝説のカードバトラーの1人『芽座葉月』…………」
やがて、頭の中に登ってきた怒りは疑問に変わる。
………「この女は何者なのだ」と「何故そんな事まで知っているのか」と……………
そう。獅堂レオンが度々「師匠」と呼称していた人物、それが芽座葉月。知名度も高い伝説のカードバトラーである。
「そんなに驚かないでください。私、元々貴方かオーカミ君のどちらかに協力を要請する予定でしたから、事前に調べさせてもらいましたのよ…………もっとも、オーカミ君の過去は全く調べられませんでしたが」
「…………」
「悪名高いでも有名な芽座葉月………貴方と彼がいったいどのような関係を築いていたのかは謎でしたが、確か芽座葉月の最後は妹である芽座椎名に敗北して死…………」
「死んでなどいない!!!」
その言葉を言い切る前に、獅堂レオンはそれを否定する。
「師匠がオレを残して死ぬ訳がない。いつか必ず帰って来る………それまでに、芽座椎名のような楽しむだけのバトルではなく、師匠が教えてくれた勝利のみに意味がある事を証明し続けなければならないのだ!!……師匠の弟子である、このオレが!!」
「…………成る程、それが貴方のプライドと言う事ですか」
初めて胸の内を誰かに話した獅堂レオン。何を言っているのかは余り理解できないが、どうやら彼のあの異常なまでにバトルの勝利に執着する理由は、過去に大きく起因しているらしい……………
「ですが、もうこれ以上勝つ事なんてできませんよ?………何てったって相手はこの私なのですからね」
直後に彼女は「アタックステップ」と静かに宣言して、いよいよ召喚したスピリット達を動かして行く。
「アタックステップ…………行きなさい、ダブルオーライザー!!」
アタック宣言を受けるダブルオーライザー。その眼光が光輝く。
「アタック時効果、相手の手元のカードを1枚破棄し、コスト8以下のスピリット1体を破壊………私は「終末の光」を破棄してコスト5のインパルスガンダムを破壊します」
「ッ………だがインパルスは1ターンに一度、相手の効果によってフィールドを離れる時、ボイドからコア1つを自身に置く事で残る」
ダブルオーライザーがインパルスガンダムに襲い掛かる。
背中のジェットで一瞬にして間合いを詰めると、二振りのブレードでインパルスガンダムを斬り裂いた。ように見えたが、インパルスガンダムはそれを紙一重でかわしていた。
「やりますね。ではこのアタックはどう受けます?」
「ライフで受けてやる………!」
〈ライフ5➡︎3〉獅堂レオン
狙いはインパルスガンダムから獅堂レオンへ。ダブルオーライザーは再び二振りのブレードを振い、彼のライフを一気に2つ斬り落とした。
だが、それは彼の伏せていたバーストカードの発動条件でもあり…………
「ライフ減少後のバースト発動!!………ソードインパルスガンダム!!」
「!!」
「効果によりオレのライフを1つ回復。この効果発揮後、召喚する!!」
〈ライフ3➡︎4〉獅堂レオン
彼のバーストが勢い良く反転した直後、2つ失ったライフバリアが1つ復活。
そしてその束の間に出現したのは、赤い装甲、身の丈程はある大型の剣を装備したインパルス、ソードインパルスガンダム。
ー【ソードインパルスガンダム】LV2(2)BP8000
「召喚時効果で貴様のキュリオス1体を手札に戻す」
「………」
巨大な剣を振るう事で発生した斬撃波がキュリオス1体を斬り裂く。それは消滅してしまい、早美アオイの手札へと帰還する。
「ならば残ったキュリオスでアタック……【トランザム】の効果で自身を手札に戻し、トランザム化。召喚時効果でコアを1つずつ自身とプトレマイオス2に追加」
ー【ガンダムキュリオス[トランザム]】LV2(2)BP4000
再び赤い粒子を纏いてトランザム化するキュリオス。その効果で一気に2つのコアをブーストさせた。
「エンドステップ、キュリオストランザムはトラッシュへと戻ります。上手く凌ぎましたね………私はこれでターンエンドです」
手札:6
場:【ダブルオーライザー】LV3
【プトレマイオス2】LV2
バースト:【無】
歳上としてもプロとしても余裕を見せながらそのターンをエンドとする早美アオイ。場には疲労状態につき片膝を突いたダブルオーライザーが1体のみ。
そして会場の観客達の期待を一心に背負わされながら、獅堂レオンのターンが幕を開けて行く。
[ターン06]獅堂レオン
「メインステップ………インパルスのLVを1に下げる」
ターン開始の早々、リザーブにコアを溜める獅堂レオン。そして直後にこのターンのドローステップで引き込んだあのスピリットカードをBパッドへと叩きつける…………
「運命をも覆す、我が魂!!!………デスティニーガンダムをLV2で召喚!!」
ー【デスティニーガンダム】LV2(2)BP15000
「来ましたかデスティニーガンダム………やっぱりカッコいいですね」
暗雲、落雷と共に現れたのは、獅堂レオンの絶対的エーススピリット、白き装甲、黒と赤の機翼を持つ天下無双のモビルスピリット、デスティニーガンダム。
遂に早美アオイのエースであるダブルオーライザーとあいまみえる。会場の誰もがその2体による激突を心待ちにしていたが…………
「………オレはこれでターンエンドだ」
手札:0
場:【デスティニーガンダム】LV2
【インパルスガンダム】LV1
【ソードインパルスガンダム】LV2
【侵されざる聖域】LV1
【ミネルバ】LV1
バースト:【無】
そんな期待を蹴り飛ばすように、獅堂レオンはそのターンをエンドとした。
「おおっと獅堂レオン、これはどう言う事だ!?……折角のデスティニーガンダムでアタックを行わずしてそのターンを終えてしまったァァァ!!!」
実況席の紫治夜宵がマイクを片手に声を荒げる。無理もない、この場面は誰がどう見てもデスティニーガンダムでアタックを行い、圧を掛けるべき状況だったからだ。
この行動には流石に納得がいかなかったか、会場中の殆どの者達は獅堂レオンへとやじや中傷的な言葉を飛ばし、浴びせた。
「………いいんですか?」
「構わん。返しのターンで必ず勝利する」
「…………」
このミスは、散々揺さぶられた精神が限界を迎えつつあるからなのか、決勝まで戦い続けて疲弊しているからなのかは定かではない。
だが、そんな彼に対しても早美アオイは容赦など一切なくて…………
「いえ、貴方に返しのターンなんてありません。このターンで終わらせます」
「………!!」
凍りつくような声色で獅堂レオンにそう告げると、彼女は迎えた己のターンを開始して行く…………
[ターン07]早美アオイ
「メインステップ………は、もう必要ありませんかね。このままアタックステップへと移行させていただきます………行きなさい、ダブルオーライザー」
開始早々にダブルオーライザーが天空を飛翔する。
「アタック時効果、貴方の手元にある『リミテッドバリア』のカードを破棄、インパルスガンダムを破壊します」
「………インパルスガンダムは自身の効果で1ターンに一度だけ疲労状態でフィールドに残る」
宙に止まるダブルオーライザーは、そのままブレード1本を地上にいるインパルスガンダムに投下。片腕を斬り落としてみせるが、爆散までには至らなかった。
そして、早美アオイはまるでそれを見越していたと言わんばかりに、手札からあるカードを1枚手に取って…………
「フラッシュチェンジ発揮!!……対象はダブルオーライザー!!」
「ッ……モビルスピリットがチェンジだと!?」
「その効果でコスト合計10まで相手スピリットを好きなだけ破壊………消え失せない、2体のインパルスよ!!」
「くっ……!!」
ダブルオーライザーの両肩を中心に赤い高エネルギー粒子が円を描くように放出され、獅堂レオンの全スピリットを飲み込んで行く。
デスティニーガンダムは辛うじて生き残るも、インパルスとソードインパルスは忽ち粉塵と化してこの場から消滅して行った…………
この光景を目の当たりにして、とてもではないが普通の【チェンジ】の効果とは思えない。これから、何かとんでもないスピリットが来るのだと、獅堂レオンは流れ出て来る冷や汗と共に感じた。
「そしてこの効果発揮後、対象のスピリットと回復状態で入れ替わる…………顕現なさい、全てを超越する赤き流星…………トランザムライザーッッ!!」
ー【トランザムライザー】LV3(7)BP25000
放出した赤い高エネルギー粒子を身に纏い、己が力としたダブルオーライザーの姿、トランザムライザーが遂にそのベールを脱ぐ。
デスティニーガンダムが霞んで見えてしまうようなその存在感に、獅堂レオンは度肝を抜かれた。
「………トランザムライザー………なんだ、このスピリットは!?」
「知らないのも無理はないです。これは私の協力者に最近開発してもらったダブルオーライザーの進化系なのですから………」
「協力者……?」
「えぇ、貴方もこちら側に来たらこう言うのがもらえるかもしれませんね。活躍次第だけど………」
この時の獅堂レオンには知る由もなかっただろうが、早美アオイのここで言う『協力者』とは、おそらく『Dr.A』の事で間違いないだろう…………
「トランザムライザーの効果………自分のターンのフラッシュタイミングに互いの手札を全て手元に置く」
「なに、オレの手札は既に0枚、置く意味などないぞ」
トランザムライザーの発揮できる効果は、ダブルオーライザーのフラッシュタイミング版と言った所。
一見、獅堂レオンの現在の手札が無い関係上、全くもってメリットがないように思える。
だが、そんな事はなくて…………
「この効果で私も合計7枚の手札を全て手元に………その後、自分の手元が5枚以上ある時、このスピリットのシンボルを青の5つにする……」
「ッ………クインテットシンボルだと!?」
つまり5点だ。トランザムライザーは一撃で初期ライフを全て駆逐できる怪物と化す。
「く、クソ………ブロックだデスティニー!!」
「無駄よ。目標を駆逐しなさい、トランザムライザー!!」
咄嗟にデスティニーガンダムにブロックを支持するが、全く持って相手にならない。デスティニーガンダムの砲撃、斬撃は全て光の速さでかわされ擦りもせず、終いにはブレードで胸部を貫かれてしまう…………
獅堂レオンは、忽ち爆散してしまう哀れなデスティニーガンダムをただ眺める事しかできず…………
「トランザムライザーはチェンジにより回復状態、もう一度アタックできる…………行きなさい」
「!!」
今度こそ本当に負ける。そう確信した。
今まで師である芽座葉月のために最強であり続けた。どんなに強力なカードバトラーやスピリットが相手でも、デスティニーとならば超えられると思っていた…………
だが、気がついた。
どんなに苦労しても、血の滲むような努力をしても届かない存在がこの世にはある事を…………
「フラッシュ効果でこのバトル中、トランザムライザーをクインテットシンボル化…………どう、私強いですよね?……一緒に来る気になれましたか?」
早美アオイの最後の問いに、獅堂レオンは…………
「………黙れ、ブス」
力の差と言うものに震えながらも、その口は抵抗の意のある言葉を告げた。
「そ………残念ね」
「…………ッ!!!」
〈ライフ4➡︎0〉獅堂レオン
ガンダムを超えたダブルオーライザー、それをさらに超えたトランザムライザーが、ブレードを振い、獅堂レオンの残り4つもあったライフバリアを全て串刺しにした……………
ー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
早美アオイの圧倒的な勝利に、会場中の一人一人が声を荒げ、轟音のような歓声を形成した。
精神的、肉体的にも疲労し切っていた獅堂レオンは久し振りに敗北と言う名の悔しさを感じつつ、その場で片膝を突いた。そんな彼に、早美アオイは近づいていき…………
「………これは私の連絡先です。興味があったらそこに連絡をください………来れば必ず、Dr.Aが貴方を強くしてくれます」
「ッ………Dr.A……だと!?」
早美アオイがBパッドを使い、自身の連絡先を送信する中、獅堂レオンは途中で聞こえてきた『Dr.A』の名に思わず耳を疑った。
「馬鹿な………奴は芽座椎名が倒したはずじゃ」
「信じるか信じないかは貴方次第です。個人的には信じる事をオススメします…………貴方ももう負けたくはないでしょう?」
「…………」
「後、この事は他言せぬよう、お願いします…………」
どこか掴み所のない、と言うか意味のわからない早美アオイの言葉。獅堂レオンがその全てを理解できまま、彼女はジークフリードスタジアムの舞台を後にした。牙の抜かれた百獣の王を残して…………
後に今日の界放リーグの関する情報が掲載された新聞の一面には「モビル王 早美アオイ、界放リーグに飛び入り参加で人気が大爆発!!」と記載されていたものの、対照的に決勝戦を盛り上げた筈の鉄華オーカミと獅堂レオンの事は全く触れられてはいなかった。
今年の界放リーグは、世間的には結果として、カードバトラーとしての彼女の人気が飛躍的に上がっただけであった。
「ヌッフフ…………さぁもうすぐ出番だね、私が開発した、6枚のゼノンザードスピリット達」
私が神となる礎を築き上げて来てくれたまえ………!!
次回、ゼノンザード編開幕………
第25ターン「未来読み解く新世紀」………