第25ターン「未来読み解く新世紀」
「……………どこ?………暗い」
気が付けば鉄華オーカミは闇の中にいた。四方八方を見渡しても目の前は真っ暗で冷ややかな闇ばかりである。
「さっきまでバトルしてなかったっけ……………あの後どうなったんだ」
界放リーグの決勝戦最中に起こったあの現象の事は覚えている。その力のせいで最終的に気を失ってしまった事も……………
「…………バルバトス………?」
物音を感じたと思えば、そこにはバルバトスがいた。姿はおそらく第4形態、武器は持たず、オーカミの方を真っ直ぐ見つめていた。
その機械の眼はまるで彼に何かを無言で訴え掛けているように見える。
「…………」
なんとなくそれに気づいたオーカミはバルバトスへと近づき、そこに手を伸ばす。バルバトスもまた手を伸ばし、互いに触れ合う……………
そしてそこから眩い光が溢れ出て、闇を振り払っていき…………
******
「…………ッ……んん?」
朧げに目を覚ます。オーカミは自分がベッドの上で眠っていた事を理解した。その周囲に自分の良く知る人物達が大勢いる事も…………
「オーカ!!」
「………姉ちゃん?」
「オーカ、良かった………」
「やっと目を覚ましやがったか〜〜」
自分の姉『鉄華ヒメ』が感極まった様子で優しく抱き締めた。周囲のヒバナやイチマルの言葉と反応、今自分が着せられている服、ベッドやカーテン、匂いなどから、ここは病院である事を察した。
「オマエ、試合中にぶっ倒れて搬送されたんだぜ………大丈夫か?」
「アニキ………うん、大丈夫」
周囲にいるのは「九日ヨッカ」「一木ヒバナ」「鈴木イチマル」「鉄華ヒメ」…………
皆自分を心配でここにいる事は理解しているため、彼は申し訳なさそうに顔をすくめる。
「なんかごめん、心配掛けて」
「本当よオーカ、生中継で急に倒れるから、姉ちゃん心臓が持たなかったよ」
「ごめん」
出て来る言葉が常々「ごめん」しか思い浮かばない。
「………ねぇアニキ、決勝はどうなったの?」
オーカミがヨッカに聞いた。彼は静かに頷き、答える。
「……あの後、ライフを破壊する直前で倒れたから、オマエは負け扱いになって、結果レオンが優勝したよ」
「………そっか」
「そう落ち込むな、実質オマエの勝ちだったろ?……誇りを持てよ」
「途中凄かったもんねオーカ!!……めっちゃ集中してたって言うか」
「ホントだぜ、あのレオンを追い詰めたんだもんな!!……マジすげぇよ!!」
イチマルもヒバナをみんな口を揃えてオーカミを褒めてくれるが、彼自身はそんなに嬉しそうな表情もせず、寧ろ苛立ったような表情さえ見せて……
「………なんかよくわかんないけど、アレはもう来ないで欲しいな、気持ち悪いし、インチキしてる感じがある」
「インチキ?」
この時、オーカミはまだ皆にバトル中にそのバトルの未来が見え続けた事を言ってはいない。そのため、皆は彼のその言葉に疑問符を浮かべる。
自分もどうやって使ったのかもわからないあの力。しかし、どうやらオーカミ的にアレは邪道であると感じている様子。
「兎に角、無事でよかった………じゃあオーカ、姉ちゃん仕事に戻るから。終わったらまた来るね。何か食べたい物とかある?」
「別にいらないよ」
「あ、さよならヒメさん!!」
「お疲れ様ですヒメ姐さん!!」
「ふふ、これからも弟をよろしくね、ヒバナちゃん、イチマル君」
「………なんかもう仲良くなってる」
「あ、ヨッカさんも、弟をよろしくお願いします」
「あぁ、任せてください。コイツの面倒はオレが見ます」
そう言って病室を抜け出していく鉄華ヒメ。おそらくモデルの仕事が入っていたのだろう。
そしておそらくオーカミが寝ている間、彼女は初対面であるはずのヒバナ、イチマルとも仲良くなっていた。彼女のコミニケーションの高さが一目瞭然である。
「………って言うか、オーカのお姉さん、最近有名になった超凄いモデルさんじゃん!!……いいなぁ、羨ましい」
「そんなに凄いの?」
「凄いよ!?」
ヒバナが眺望の眼差しを向けながらオーカミにそう言った。
「はいはい2人とも、オーカの事はオレに任せて、今日の所はもう帰りな」
「えぇ、折角オーカが目を覚ましたのに!?」
「そうだぜヨッカさん、オレっちなんてまだ1ミリも喋っちゃいませんよ?……鉄華オーカミとオレっちによる激しく熱かりし第1回戦を語り合いたいんですけど?」
ヨッカがヒバナとイチマルに帰宅するよう促す。少々強引な気もするが、時刻はとっくに夜の時間帯を回っているため、まだ中学生である彼らを帰宅させる行為は至極妥当な考え方でもある。
「どうせ明日までは様子見で入院って話だから、また明日来ればいい」
「………それもそうですね、じゃあねオーカ、また明日来るから〜」
「うん、ありがとう」
「……んんん!?……待てよこれはヒバナちゃんと夜のデートを楽しめる絶好のチャンスなのでは!?」
「行くわけないでしょ?」
「だから早く帰れって」
やがて、ヒバナもイチマルも病室を後にする。
結果的にオーカミの病室は、彼とその兄貴分であるヨッカのみとなった。
「………オーカ、オマエあの試合、バトルの未来が見え続けたんだろ?」
「!!」
2人きりになって、ヨッカが初めて振った話題は決勝戦のあの謎めいた現象の話。まだ誰にも相談していなかったこの話をドンピシャで言い当てて来た彼に、オーカは僅かに眉を顰める。
「………なんでわかったの?」
「試合中、ライの奴が多分そうだと言ってた、アイツも似たような力があるから、きっと過敏に反応してたんだろう」
「…………バトルの未来が見える力。そう言えばそんな事言ってたな………じゃあアレは新世代系女子と同じ力なのか?」
「実際の所はよくわかんねぇ。アイツは未来を見ても倒れたりはしないしな」
「…………」
以前春神ライから聞いた、バトルの未来が見えると言う話。決勝戦でオーカミに起こったあの出来事も、ひょっとしたらその力と同類のモノなのかもしれない。
「『一瞬だけ未来が見える』と『見え続ける』とでは負担が変わって来るのかもな」
「………でもオレ、あの力嫌いだ。インチキで勝ってるみたいで」
「…………」
「あの時は勝つのに無我夢中で知らない間に使ってたけど、できればもう二度と使いたくないな。使い方わからないけど」
「…………そうだな。オレもオマエが怪我して病院に搬送される所なんてもう見たくねぇわ」
オーカミは、あの力を使えば、どこまでもバトルの勝ちに拘る獅堂レオンと同じだと考えているのだろう。そして、アレは自分が勝ちに拘った結果発動した力なのだとも……………
だからもう二度と、使いたくなかった。勝ちに拘る自分など、見たくないから……………
「………誰?……さっきから喧しいな、ゆっくりと本も読めないじゃないか」
「!!」
突然カーテンが開き、隣のベッドの患者が顔を覗かせる。青水色の髪色に中生的な顔立ちの少年で、背格好はオーカミと殆ど変わらない程だと思われる。
「あぁすまんすまん!!……オレもそろそろ帰ろうかな」
「………アレ、君ひょっとして鉄華オーカミ?……今日の界放リーグに出てた、鉄華団の使い手」
「そうだけど、誰?」
詫びるヨッカを他所に、少年の眼にはオーカミの顔が映っていた。そして、彼が鉄華オーカミ本人である事を確認すると……………
「マジ!?……まさか昼間の界放リーグに出てた凄い人が僕と同じ病院、しかも同じ病室に入院して来るなんて!!」
「あんまりめでたくはないけどね」
「めでたいさ、準優勝おめでとう!!」
手を取り、興奮を露わにする。どうやら彼もバトルスピッツが好きな、界放市の1人のカードバトラーではあるようだ。
「あ、申し遅れたね、僕の名前はソラ!!……『早美ソラ』です、よろしく!!」
「よろしく」
「わぁ嬉しいな〜〜!!……バトルの話ができる入院患者なんて久し振りだよ〜〜!!……今日は夜通し、僕とバトルの話をしようね、オーカミ!!」
「うざい」
「ガーーーン!!」
軽くオーカミに一蹴されて落ち込むソラ。『バトルの話ができる入院患者なんて久し振り』と言う一文から、病院生活はかなり長いモノと思われる。
そんな彼の名前を知ったヨッカは、ひょっとしてと思い…………
「………早美ソラって………もしかして」
「あぁ、おじさんは勘が良いですね」
「おじさん………おじさんか」
「そうです。僕はあの美しすぎるモビル王、早美アオイ姉さんの実の弟です!!」
ー!!!
2人して衝撃が走った。しかしそれも致し方ない、何せ今目の前にいる明るい少年は、あの早美アオイの実の弟なのだから…………
「今日の姉さんの試合は凄かったな〜〜……進化したダブルオーで優勝者の獅堂レオンをボコボコにしたんだから!!……やっぱり姉さんのバトルは最高だ」
「獅堂の奴、負けたのか」
「早美アオイの弟…………」
自分の姉の話を誇らしげ且つ自慢気に話すソラ。少々シスコン気味みたいだが、どうやら姉弟仲は良好な様子。
そんな彼を見ながら、ヨッカは思い返していた。あの時、会場裏で盗み聞きした、彼女と悪魔の科学者『Dr.A』の会話を…………
…………『君は本当に優秀だ。私の与えたカードを巧みに使い、プロとなり、モビル王にまで登り詰めた。今後もその優秀な腕前を私のために振るってくれたまえ』
…………『ところで、私との約束はいつ果たしてくれるのでしょうか?』
…………『安心しなさい。私はこう見えて、約束は守る男さ。計画の全てをクリアしてくれたら君の要求を飲む。そう言う約束だったね』
約束。病弱の弟。さらにDr.Aはどんな厄病も完治できると言われている………………
まさか約束って言うのはこの子の病を治す事なんじゃ!?
「アニキ、どうかした?」
「ッ………いや、なんでもねぇ」
オーカミに声をかけられ、ヨッカは思わずハッとする。
早美アオイ、彼女のルーツを見た気がした。確証はないものの、彼女はおそらく弟である早美ソラの病を完治させるために、Dr.Aと手を組んでいると考えられる。
「…………だとしたら、一刻も早く止めてやらねぇとな」
「え、何を??」
「あ、悪りぃ、気にすんな」
オーカミもソラもヨッカの言葉に疑問符を浮かべるが、ヨッカの心の内など、理解できる訳もない。
******
同時刻、春神ライは鉄華オーカミがいるであろう病室の前まで来ていた。何度も何度もそこに入室しようとするものの、彼との会話の切り口を考えると、中々その手が伸びなかった。
「………来たはいいものの、仮に起きてたらなんて言って入ろう…………『負けた無様な姿を見に来てやったわ』………は、ちょっとかわいそうか。『……アンタが心配だったから様子を見に来ただけよ』………いや、そもそも私はアイツの心配なんて………」
入口の近辺をうろちょろして独り言を呟いていくライ。周囲の看護師達からもあまり良くない方向性で注目を集めつつある。
そんな折、彼女に話しかけて来る人物が1人……………
「君、私の担当の患者様の友人か何かかい?」
「!!」
「タイミング的に鉄華オーカミ君かな?………先程起きたと言う知らせが入った。もうきっと大丈夫だろう」
声を掛けて来たのは、整った顔立ちに加えメガネを掛けている誠実そうなお医者様。セリフから、オーカミの担当をしている人だろう。
見た目は結構若い。若いがどこか若づくりしてる感があるため、ライは年齢的には自分が居候させてもらっている探偵事務所の探偵『弾田ギン』とそんなに変わらない、50手前くらいの年齢ではないかと予想する。
「友人………ってわけじゃないんですけど、まぁ成り行きでって言うか………でも起きたならもう安心ですね」
ライがそう言うと、お医者様は顎に手を当て「うむ……」と声を漏らし、少し考える。
「ふーむ成る程、つまり君は彼に愛情があってここに来たと」
「…………は、はぁ!?」
突拍子もないセリフにライは思わず顔を赤面させる。
「愛しい彼が界放リーグで倒れ、こうして病院まで心配で駆けつけて来たんだね…………あぁなんと愛情の深い少女なのだろうか。実にエクセレントだ」
「ち、違う!!……私はアイツを………えーーーっと、あ、そうだ」
「そうだ?」
「アイツをバトルでぶっ倒すためにここに来たんです!!」
「え、でもさっき『起きたならもう安心ですね』って言ってなかった?」
「それは言葉の綾ってやつです、忘れてください」
ライはこんな事を言ってはいるが、大体はウソ。本当はオーカミがめちゃくちゃ心配でここまで来た。何故かはわからないが、ライは彼に何かあると胸がざわつくらしい。
「………むぅ、でも患者さんとバトルするって言うのはちょっといただけないな。折角具合も良くなって来てるみたいだし」
「うぐっ………それを言われたら言い返す言葉がないんですけど」
お医者様はまた顎に手を当てながら考えると、軽く笑みを浮かべながら「なら………」と言葉を続ける…………
「なら………代わりに私とバトルしようか」
「…………はい?」
「バトルがしたかったんだろう?……だから彼の代わりにこの私が相手を務めよう、こう見えて少しは腕が立つんだよ?」
「あぁいや、そう言うわけじゃ………」
「よし!!……そうと決まったら屋上にレッツゴーです。ここら辺は他の患者様にご迷惑だからね」
「えぇちょいちょいちょい!?」
聞く耳を持たれず、少々強引に引っ張られ、ライはお医者様に先導されていく。
今更「アレはウソです」とも言い辛いため、結局ライは抵抗をやめて一緒に屋上へと向かった。
******
病院の屋上、干された白い毛布や布団が干されているこの場所にて、春神ライと医者は互いにBパッドを展開、デッキをセットしてバトルの準備を進めた。
いくらここが総人口の9割がカードバトラーの界放市とは言え、そしてここが病院とは言え、まさか医者とバトスピする事になるとは、春神ライも思ってもいなかっただろう。
「いや〜〜楽しみですね。こう見えて腕は立つとは言いましたが、結構久し振りなんですよね。若い頃を思い出します」
「………この人、本当は自分がバトルやりたいだけなんじゃ」
「む、何か?」
「あぁいや、なんでもないです」
小声で思わず出て来た悪口を誤魔化すライ。
医者自身が『若い頃』と言及している事から、やはり彼女の見立て通り若くてスマートな見た目の割に、それなりに歳を食らっているみたいだ。
「申し遅れましたね。私の名前は『嵐マコト』………マコト先生と呼んでください」
「は、はぁ………私は『春神ライ』です」
「春神ライ、ですか…………ふむ、良い名前ですね。実にエクセレントだ」
その割には妙な間があったなと心の中でツッコむ。その後、こんなバトル、さっさと終わらせるかとも思い、彼女はBパッドを嵐マコトに向かって構える。
「……それじゃ始めますかお医者様」
「え、マコト先生と呼んでと言ったのに…………まぁいいでしょう。手加減はしませんよ!!」
「それはこっちのセリフ!!」
………ゲートオープン、界放!!
人の命を守護するホワイトタワーの頂上にて、13歳の少女春神ライと、ドクターである嵐マコトによるバトルスピッツが開始される。
先攻は春神ライだ。そのターンを進めていく。
[ターン01]春神ライ
「メインステップ………ネクサス、ドラゴンズミラージュを配置」
ー【ドラゴンズミラージュ】LV1
ライの背後に竜が刻み込まれた紋章が出現。このカードはミラージュと言う効果を持つネクサスカードで、バーストゾーンでミラージュとして使うか、フィールドでネクサスとして配置するかを選ぶ事ができる。
今回は後者、ライはこれをネクサスとしてフィールドに配置している。
「ターンエンド」
手札:4
場:【ドラゴンズミラージュ】LV1
バースト:【無】
「ふむ、赤デッキですか」
次は嵐マコトのターン。彼は指先でメガネを定位置に戻しながら、そのターンを進めていく。
[ターン02]嵐マコト
「では私のメインステップ…………私は、赤のメダル『タカ・クジャク・コンドルコアメダル』を配置します」
「ッ………!!」
ー【タカ・クジャク・コンドルコアメダル】LV1
「配置時効果で2枚オープン……緑のメダル『クワガタ・カマキリ・バッタコアメダル』を手札に加えて、残りは破棄」
フィールドには特に何も出現しない。だがマコトのBパッドには確かにそのカードは配置されていた。
………『タカ・クジャク・コンドルコアメダル』
ライは思う。自分の勘が正しければ、このデッキは間違いなくアレだと。
「そのデッキ………まさかライダースピリットオーズ??……具利度王国の」
「その解答、非常にエクセレント!!………そう、このデッキは具利度王国のオーズ一族が使用する伝説のライダースピリットオーズデッキ!!」
具利度王国…………
王国と呼ばれてはいるが、日本に存在する街の名前の1つである。ただそこにいるオーズ一族の操るオーズは、この世界の人々にとっては余りにも有名な存在である。
「これはオーズ一族の本物のオーズデッキじゃなくて、全てレプリカカードさ………色んな伝説のカード達が私みたいな庶民のデッキにも入ってくれるんだ、良き時代だよね。それにしてもライちゃん、よくメダルのカードだけでデッキがわかったね」
「まぁ、具利度王国にはお父さんと一度行った事がありましたから」
「…………へぇ〜〜そうなのか」
また会話に妙な間があった。そんなに具利度王国に行った事が羨ましかったのだろうか。
「私、1年くらい前までお父さんと2人で世界中を旅してたんで」
「ほぉ………君のお父さんとはなんだか気が合いそうな気がするね。じゃあ今はお父さんとこの界放市にいるのかな?」
「………あーごめんなさい、今お父さん行方不明で………」
「…………そうか、それはすまないね」
春神ライの父親は今現在行方不明。ライは彼を探すためにこの界放市を訪れているのだ。
「………なかなかにKY。エクセレントな質問じゃなかったね」
「いや、別に!!……全く気にしてないです!!」
「ふふ、話が逸れてしまったが、折角のバトル、楽しもう………私はこれでターンエンドだ」
手札:5
場:【タカ・クジャク・コンドルコアメダル】LV1
バースト:【無】
脱線してしまった話を半ば強引に引き戻しつつ、そのターンをエンドとした嵐マコト。
次は春神ライのターンだ。
[ターン03]春神ライ
「ドローステップ、配置されたドラゴンズミラージュの効果でドロー枚数を1枚増やして、その後1枚捨てる」
配置されているドラゴンズミラージュの効果がここで起動。ライの手札の質はより向上していくが…………
「………メインステップ、アタックステップは共に無し。ターンエンド」
手札:5
場:【ドラゴンズミラージュ】LV1
バースト:【無】
そのままターンを終了とする。1ターン1ターンの動きが重要となっていく現代バトルスピッツにおいて、このドローゴーは致命的な戦術と言えて………
「むむ……手札事故かな?」
「はは、そりゃどうでしょう?……次のターンから怒涛の攻撃が待ってるかもね」
なんて口でブラフを立ててみるが、実際はマジで手札事故である。ライは内心で「もうちょっと新デッキの構築錬らないとなぁ」と呟きつつ、次のターンへと意識を向けた。
[ターン04]嵐マコト
「メインステップ………手札事故だとしても、容赦はしませんよ。緑のメダル『クワガタ・カマキリ・バッタコアメダル』を配置」
ー【クワガタ・カマキリ・バッタコアメダル】LV1
「配置時効果でボイドからコア1つを赤のメダルへ」
赤に続き、今度は緑のメダル。その効果で赤のメダルにコアが追加された。
「続けて黄のメダル『ライオン・トラ・チーターコアメダル』を配置」
ー【ライオン・トラ・チーターコアメダル】LV1
ライダースピリットオーズ関連の3枚目。今度はネコ科の動物達の力を宿した黄色のコアメダルカードだ。
「これでターンエンド」
手札:4
場:【タカ・クジャク・コンドルコアメダル】LV1
【クワガタ・カマキリ・バッタコアメダル】LV1
【ライオン・トラ・チーターコアメダル】LV1
バースト:【無】
ライとは違い順調に己のデッキを回していく嵐マコト。コアブーストとシンボルの配置両方を行い、そのターンをエンドとした。
次は春神ライのターン。手札事故を脱却すべく、巡って来たターンを進めていく。
[ターン05]春神ライ
「ドローステップ……もう一度ドラゴンズミラージュの効果、ドロー枚数を1枚増やして1枚破棄する…………」
………「よし、なんとかなりそうね」と内心で呟くと、彼女はそのままメインステップへと移行していく。
「メインステップ!!……ロケッドラを召喚」
ー【ロケッドラ】LV1(1)BP1000
ライの場に現れたのは、可愛らしい姿をした小さなドラゴン。背中に小型ロケットを背負い込んでいるのが印象的である。
「手札事故は脱却したのかな?」
「そんなモン、最初っからなってないわよ!!………来なさい、宙征竜エスパシオン!!」
「!!」
ー【宙征竜エスパシオン】LV2(2S)BP7000
赤のシンボルが砕け散ると共に出現したのは、鋼鉄の装備をその身に纏う赤きドラゴン。その名も宙征竜エスパシオン。
「エスパシオン………良いカードをお持ちで」
「アタックステップ開始時、エスパシオンのLV2、3の効果を発揮!!……トラッシュにあるソウルコア以外のコアを機竜スピリットかネクサスに置く。この時、自分の手札が4枚以下なら、デッキから2枚のカードをドローする………私はトラッシュにある3つのコアをロケッドラに追加、LVを上げつつ2枚ドロー!!」
ー【ロケッドラ】(1➡︎4)LV1➡︎2
アタックステップの開始をトリガーに、エスパシオンの持つ強力な効果が起動。機械音混じりの咆哮を張り上げると、ライのトラッシュにあるコアは忽ちフィールドへと移動。さらに手札も大きく増加させる。
「よし、そのまま行けエスパシオン!!」
すかさずエスパシオンに攻撃の指示を送るライ。エスパシオンが機翼を羽ばたかせ、嵐マコトのライフバリアへと飛び掛かっていく。
「………ライフで受けましょう」
〈ライフ5➡︎4〉嵐マコト
エスパシオンが嵐マコトのライフバリアを勢い良く噛み砕き、ここに来てようやくライフが変動する。
しかし彼はこの攻撃に汗一つかかず、涼しい顔のまま、あるカードの効果発揮を宣言して…………
「今のアタックはいささか早計でしたね〜〜……私のライフが減った事により、赤のメダルの【零転醒】の効果を発揮します」
「ッ………ネクサスカードの転醒」
「リザーブのコア1つを自身に置き、現れなさい仮面ライダーオーズ タジャドルコンボ!!」
タカ!!
クジャク!!
コンドル!!
♪タ〜〜ジャ〜〜ドルゥゥ〜〜!!
ー【仮面ライダーオーズ タジャドルコンボ】LV1(1)BP6000
妙に陽気な音楽と共に3枚の赤いメダルが合体。
フィールドには炎が吹き荒れ、それを吹き飛ばす形で伝説のライダースピリットオーズ、その赤で統一された姿であるタジャドルコンボが雄々しい姿を見せる。
「オーズ………」
「タジャドルの転醒アタック時効果、相手のコスト6以下のスピリット1体を破壊します」
「!!」
「私は君のロケッドラを破壊!!」
タジャドルは登場するなり左手から炎の弾丸を打ち飛ばす。それはライの場にいるロケッドラに命中、ひとたまりもなく爆散していった。
「破壊したタイミングがアタックステップならボイドからコア1つを自身に追加」
「くっ……メダルのネクサスがそのままオーズに変身するのか………ターンエンド」
手札:6
場:【宙征竜エスパシオン】LV2
【ドラゴンズミラージュ】LV1
バースト:【無】
効果を知らなかったとは言え、手痛いカウンターを食らってしまった春神ライ。致し方なくここはターンエンドを宣言。
互いに場が温まって来た中、嵐マコトのターンが開始されていく。
[ターン06]嵐マコト
「メインステップ………ここでスピリット導入、オーズの基礎、仮面ライダーオーズ タトバコンボ!!」
「!!」
タカ!!
トラ!!
バッタ!!
♪タ・ト・バ!!……タトバタ・ト・バ!!
ー【仮面ライダーオーズ タトバコンボ[3]】LV2(3)BP8000
上から赤、黄、緑のメダルが光を放ちながら重なり合い、合体していく。そしてその光の中より現れたのは、仮面ライダーオーズの原点、仮面ライダーオーズタトバコンボ。
「召喚時効果で2枚ドローして、その後2枚捨てます。さらに緑のメダルにコアを3つ追加」
前のターンと同じく手札とコアをフル回転させていく嵐マコト。直後に「アタックステップ」を宣言して…………
「アタックステップ!!……お行きなさいタトバコンボ、その効果でトラッシュにある青のメダル『シャチ・電気ウナギ・タココアメダル』をノーコストで配置します」
ー【シャチ・電気ウナギ・タココアメダル】LV1
タトバコンボが腕のトラクローと呼ばれる武器を構えると、嵐マコトのBパッド上に青のメダルカード『シャチ・電気ウナギ・タココアメダル』のカードが配置される。
そして、フィールドに疲労しているエスパシオンしか存在しないライは、この攻撃をライフで受ける他なくて…………
「アタックはライフで受ける」
〈ライフ5➡︎4〉春神ライ
タトバコンボがライのライフバリアに急接近。腕に装着されたトラクローでそれを1つ切り裂いた。
さらに、タトバコンボの効果はまだ終わってはおらず…………
「タトバコンボのアタック時効果、バトル終了時、このスピリットを手札に戻す事で、フィールドにあるコアメダルネクサス1つを裏返す」
「!!」
「私はタトバコンボを手札に戻し、緑のメダルを転醒させる………現れなさい、ガタキリバコンボ!!」
クワガタ!!
カマキリ!!
バッタ!!
♪ガ!ガタガタキリッバ!ガタキリバ!!
タトバコンボは腰部にあるドライバーに別のメダルを装填し、スキャニング。またまた謎めいた音声と共に、オール緑色のコンボガタキリバコンボへと姿を変えた。
「転醒時効果、ボイドからコア1つずつを自身とネクサスに追加します………私はガタキリバと青のメダルにコアを追加」
ー【仮面ライダーオーズ ガタキリバコンボ】LV2(4)BP10000
「赤に続いて、今度は緑のコンボか………緑だからコアブするってわけね」
「まだまだ、ガタキリバの効果はこんなモノではないよ。LV2の効果、オーズスピリット全てに青のシンボルを1つずつ追加する」
「!!」
「よって、タジャドルとガタキリバは今現在、一撃で2つのライフを砕ける、ダブルシンボルスピリット!!………飛び立て、タジャドルでアタック!!」
ガタキリバは自身と全く同じ姿をした分身を3体作り出し、内1体はメダルをスキャンし直し、2体目のタジャドルへとチェンジする。
これでタジャドル、ガタキリバ、それぞれ2体ずつ。ガタキリバの効果によるダブルシンボルを表現しているモノだと思われる。
「タジャドルの転醒アタック時効果、コスト6以下のスピリット1体を破壊してコアブースト!!……今度はエスパシオンを破壊しましょう!!」
「ぐっ……!!」
炎を纏いて突撃する2体のタジャドル。エスパシオンはそれらに焼かれ、打ち砕かれ爆散。
「オーズはまだ増えますよ。オーズのアタックをトリガーに、黄のメダルの【零転醒】を発揮。現れなさいラトラーターコンボ!!」
ライオン!!
トラ!!
チーター!!
♪ラタ、ラタ、ラトラァータァー!!
ー【仮面ライダーオーズ ラトラーターコンボ】LV1(1)BP5000
「今度は黄色」
「転醒時効果で2枚引き、2枚捨てます」
タジャドルのアタックをトリガーに現れたのは、ネコ科の動物達で構成された黄のメダルで変身した仮面ライダーオーズ、ラトラーターコンボ。その黄金の輝きが嵐マコトのBパッドに力を与え、彼にドローをさせる。
「さぁタジャドルのアタックは続いてますよ!!」
「ッ……ライフで受ける」
「では2点のダメージを受けなさい!!」
〈ライフ4➡︎2〉春神ライ
2体のタジャドルがライの眼前に現れ、炎を纏ったその拳で1つずつそのライフバリアを砕いて行く。
「ふむ、残りライフ2。ならこの攻撃で終わりかな?……ラトラーター!!……ガタキリバの効果でそのシンボルは2つ!!」
「………」
ガタキリバが分身を生み出し、2体目のラトラーターへとチェンジ。2体となったラトラーターはトラクローを展開し、瞬足の足でフィールドを駆け抜けていく。全ては春神ライのライフバリアを破壊し尽くすために……………
ここまでは完全に嵐マコトのペース。伝説と呼ばれるライダースピリットオーズのカード達を巧みに操り、ライを翻弄した。
だが、まるでその流れが大切断されるかの如く、春神ライが口角を上げ、手札にある1枚のカードを切った。
「フラッシュアクセル!!……天馬機獣ペガスペース!!」
「!!」
「効果によりこのターン、私のライフはコスト4以上のスピリットからは減らされない。ラトラーターのアタックはライフで受けるわ!」
〈ライフ2➡︎2〉春神ライ
ラトラーターの鉤爪がライのライフバリアに突き刺さろうとした瞬間、半透明のバリアが前方に展開され、その攻撃を弾き返して見せる。
これによりこのターンは少なくともオーズ達では彼女のライフを破壊する事はできなくなって…………
「ふむ。まぁ手札事故していたのなら、防御札の1枚は握っていて当然でしょう…………私はこれでターンエンドです。次のターンで必ず決着をつけて見せますよ〜〜!」
手札:4
場:【仮面ライダーオーズ タジャドルコンボ】LV2
【仮面ライダーオーズ ガタキリバコンボ】LV2
【仮面ライダーオーズ ラトラーターコンボ】LV1
【シャチ・電気ウナギ・タココアメダル】LV1
バースト:【無】
このターンでの決着は不可能と見た嵐マコトはエンドステップを迎えてターンを終了。次のターンで決着をつけると、歳不相応に張り切っているが…………
「フ………残念だけど、もう貴方に次のターンは回って来ない」
「え?」
「既に勝利の未来は見えてる………」
さぁ、ラストターンの時間です!!
指パッチンし、その勢いで人差し指を嵐マコトへと向けながら、いつものセリフを決める春神ライ。
嵐マコトが彼女の言葉に疑問を抱きながらも、そのままターンが開始されていく。
[ターン07]春神ライ
「メインステップ………先ずはロケッドラ2体を連続召喚」
ー【ロケッドラ】LV1(1)BP1000
ー【ロケッドラ】LV1(1)BP1000
本日2、3体目のロケッドラがライのフィールドに出現。軽減シンボルを確保する。
そして直後に手札から更なるカードを引き抜いて…………
「そして、弾丸の嵐と共に、戦禍を鎮めよ!!………エヴァンゲリオン新2号機αをLV2で召喚!!」
「!?」
ー【エヴァンゲリオン 正規実用型 新2号機α】LV2(3)BP10000
上空からライのフィールドに降り立ったのは、顔と胸部、右腕が赤、それ以外が灰緑色と言ったアンメトリーな外観のスーパーロボット。
そのサイズ感からも、一見モビルスピリットのようにも見えるが、実はそうではなくて…………
「え、エヴァンゲリオンスピリット……世界三大スピリット『デジタル』『ライダー』『モビル』をも超越すると言われる伝説のスピリット………」
「そう。最近私が得た、新しい力だ!!」
「………君を過小評価していたよ。実にエクセレントだ」
「過小評価されてたのか」
………『エヴァンゲリオンスピリット』
彼の言う通り、世界にその名を轟かす世界三大スピリットである3つのカードをも凌ぐ、その存在自体が最早伝説級とされるスピリット。
今までの春神ライのデッキと言えば『新世代』であったが、どう言うわけか今はこの赤属性のエヴァンゲリオンスピリットを使用しているようだ。
「アタックステップ!!……行くわよ新2号機!!」
早速。新たな力だと称する新2号機αにアタックの指示を送る。新2号機αはその指示を聞き入れるなり巨大なマシンガンを両手に構える。
「アタック時効果、BPをプラス10000してデッキから2枚ドロー」
赤属性のエヴァンゲリオンスピリット。そのエースたる新2号機αには、赤属性らしい攻撃的な効果が敷き詰まっている。先ずはBPが一気に跳ね上がり、ライにデッキから2枚のカードをドローさせた。
もちろん、これだけで終わるわけがない。
「そして、このフラッシュタイミング……新2号機の更なる効果を発揮、自分の手札1枚を破棄する事で、相手のBP10000以下のスピリット1体を破壊するか、新2号機に赤のシンボルを1つ追加する」
「!!」
「気づいたようね。この効果にターンに一度のような制約はない!!……アンタにフラッシュが無いって言うなら、問答無用でこの効果を連打させてもらうわ!!」
自身の手札を破棄する事で強力な効果を発揮できるエヴァンゲリオンスピリット、新2号機。その効果が今、嵐マコトとその操るオーズ達に牙を向ける…………
「先ずは手札を3枚破棄!!……フィールドにいるタジャドル、ガタキリバ、ラトラーターを殲滅!!」
「なんと!!」
マシンガンと背中に装備された多重ミサイルをフルバースト。ありったけの火力がオーズ達を襲い、爆散と言う名の轟音が鳴り響いた。
「追加で手札2枚を破棄。今度はシンボルを2つ追加…………この時、トラッシュに送られた赤のパイロットブレイヴ『式波・アスラ・ラングレー-WILLE-』は1コスト支払う事で召喚できる………ロケッドラ1体からコアを貰って、新2号機に直接合体!!」
「エクセレント!!……パイロットブレイヴまで使い熟す事ができるのですね」
ー【エヴァンゲリオン 正規実用型 新2号機α+式波・アスカ・ラングレー-WILLE-】LV2(3)BP25000
モビルスピリット同様パイロットブレイヴまで扱えるエヴァンゲリオンスピリット。ロケッドラ1体は消滅してしまうものの、式波・アスカ・ラングレー-WILLE-が合体した事により、新2号機αのシンボルは、自身の効果で追加した分と合わせて…………
「シンボル4点、クアドラプルシンボル!!!……貰ったわ!!」
指で4を表し、そのまま新2号機に行けと言わんばかりに拳を握って前に突き出す。
それに応えるように新2号機は武器をライフルに取り換え、構えると、その銃口に真っ赤に燃えるエネルギーを装填していく。
「フ………面白いバトルをしますね、ライフで受けます」
嵐マコトが敗北を認め、少しだけ笑みを浮かべながらそう宣言すると、新2号機はライフルから赤い極太のレーザー光線を発射。
それは難なく彼のライフバリアを、彼がと飲み込んでいき、破壊して見せる……………
〈ライフ4➡︎0〉嵐マコト
全てのライフが破壊され、彼のBパッドからは敗北を告げるように「ピー……」と言う無機質な音が流れ出した。
その音を自身の勝利の音色だとも理解している春神ライは、それを聞くなり又しても握り拳を固め「よし」とガッツポーズして見せる。
「………まさかあの状況から一気に逆転されるとは思ってもいませんでしたよ。エクセレントガール」
「エクセレントガール…………」
嵐マコトからの妙な呼び方に、春神ライは微妙な反応。
「ところで、なんで自分のターンが回って来る前に勝利宣言なんてしたんだい?……アレで負けたら恥ずかしいでしょうに」
「あぁ、大丈夫ですよ。勝利宣言した私は絶対に負けませんので」
「………凄い自信だね」
一瞬だけだが、勝利の未来を見る事ができるとは言わなかった。
そんな事言ったらこのお医者様は食いついてきて、一生その事について質問攻めされそうだったからだ。
「それじゃ、私帰るんで。またバトルしましょう、嵐マコト先生」
「じゃあね。恋路、実るといいね」
「だ、だから恋とかじゃないですって!!……誰があんな赤チビ」
………『誰も鉄華オーカミ君の事とは言ってないんだよな〜〜』と思いつつ、嵐マコトは手を軽く振りながら、屋上から去っていく春神ライを見届ける。
因みに春神ライに帰る気はなく、この後鉄華オーカミに会うつもりだ。
「…………アレが春神ライ…………か」
嵐マコトは小さくなっていく春神ライの背中を見届けながら、最後にそう呟いた。その声を聞いた者は誰もいない。
******
一方でここは鉄華オーカミと早美ソラのいる病室。2人は2つのベッドの間にテーブルを置き、その上にカードとコアを置き、バトスピをしているようである。
何をするにしてもBパッドが必要になってくるこの時代に、この古参なやり方でバトルするのは非常に珍しい。
「オレのアタックステップ………バルバトス第1形態でアタック」
「む………むむむ………フラッシュは何もない」
「オレもない」
「ライフで受ける!!………ぐぁぁ負けたァァァ……これで5連敗だ。やっぱり界放リーグ準優勝者は格が違うや」
どうやら2人のバトルは鉄華オーカミが連戦連勝している様子。
「テーブルでのバトル、ちょっと新鮮だ」
「病院内はBパッドを使ったバトルは禁止だからね…………まぁ最も、体の弱い僕じゃBパッドを使った激しいバトルなんてできないんだけど」
「…………」
ソラのその表情は少し悲しそうだった。やはりここでの生活はかなり長いモノだと思われる。普通にバトルする事を夢見ているのだろう。
「オーカミ、恥ずかしい話、今の僕は姉さんに生かされてるだけなんだ。何の役にも立たない、寝ているだけの棒切れ同然。唯一の家族で、誰よりも愛している姉さんのために、何もしてやれないんだ」
出会った時の明るさとは打って代わって悲観的になるソラ。しかし、この歳でそれだけ長い病院生活を送っていれば、そう言う考えに至らない方がおかしいとも言える。
そんな彼に対し、オーカミは…………
「オレも同じだよ。姉ちゃんに生かされてるだけ………姉ちゃんの稼いだ金で飯を食ってる最低な奴だ」
同情していた。姉という大きな存在に養われ、それに罪悪感と不満を感じている点が、彼らは共通していた。
「でもオーカミはバイトしてるんだろ?……僕なんかより全然マシじゃないか」
「あんなはした金じゃ対して変わらないよ。もっと稼げるようになって、姉ちゃんを楽させてあげたいんだ……………あ、そっか、そのためにバイトしてたんだ。バトスピも、その給料が上がるからって言う理由で始めたんだった…………」
「??」
話している途中で、オーカミは自分がバトスピを始めたルーツを思い出した。ソラは突然独り言を呟き始める彼に対して疑問符を浮かべる。
だが、確かな事は、自分達2人は似た境遇にいるという事。
「はは……何はともあれ、僕達似た者同士って事だね。僕の目標も姉さんを楽させてあげる事なんだ」
「………そっか」
「うん。病気治したらバトスピのプロになって、絶対にお金を稼ぐんだ…………よし、何ならオーカミも一緒にバトスピのプロを目指そうそうしよう!!」
「何でそうなる」
「そうならない方が不思議だって!!………僕の病気が治るその日まで、待っててね!!」
ソラは前向きな少年だった。自分を養うために苦労しているであろう姉のために生きようと必死だった。
そんな彼と、オーカミは僅か一夜にして親睦を深め、友となって行った。一方、病室の扉の向こう側にいるライはその会話を聞くなり、扉を開けるのを止めて、大人しく去っていった…………
次回、第26ターン「アイカツ☆オンステージ」