バトルスピリッツ 王者の鉄華   作:バナナ 

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第27ターン「黒い鎧のデジタルスピリット」

「アニキ……オレ、バトスピ辞めます」

「…………は!?」

 

 

そんな言葉から、その1日は始まった。

 

ヨッカにとっては、平凡な、何気ない日常に爆弾でも投下されてしまったような気分であったに違いない。

 

ただ無理もない。何せ、あの可愛がってた弟分、鉄華オーカミ。彼が、あの界放リーグをバトスピ初めて3ヶ月で準優勝と言う偉業を成し遂げた彼が、『バトスピを辞める』と突然告げて来たのだから…………

 

 

「これ、オレのデッキです。売ろうと思います」

「待て待て待て待て!!!………勝手に話を進めんな、何で急に辞めるなんて」

 

 

今いる場所はカードショップのアポローン。2人はスタッフだが、まだ時間は朝方なので客足は無い。それを見越して、オーカミは自分の鉄華団のデッキを、レジ前のヨッカの目の前に置いた。

 

もうこれはいらない。遊び終わったおもちゃは売ろう。

 

まるでそう告げるように…………

 

 

「何でって………あきたし」

「嘘つけ、なんだ今の間は………あらかた予想はついてるぞ、指図め、あの過保護な姉ちゃんにそう言われたからってとこだろ?」

「…………」

 

 

無言は肯定を表す。

 

ヨッカにそう言われると、オーカミは昨日の夕方に起こった出来事を思い出して…………

 

 

******

 

 

「単刀直入に言うわオーカ…………バトスピを、やめて欲しい」

「………え?」

 

 

前日、自分の家にて、不穏な空気の中、オーカミは、姉である鉄華ヒメからそう告げられた。

 

唐突であったためか、もしくは意外だと思ったためか、オーカミにしては珍しく困惑した様子を見せる。

 

 

「な、何で………ダメなのか、バトスピするの……!?」

「………」

 

 

ヒメは黙って首を縦に振る。

 

 

「………昔ね。言われたんだ、死んだお父さんに…………『オーカミのバトスピには気をつけろ』って」

「……オレの、父さん?」

 

 

彼女の口から出て来たのは、彼ら姉弟の父親の話。

 

父親はオーカミが生まれてまだ間もない頃に亡くなっている。だからオーカミはその父親の事を全く知らないのだ。

 

 

「仕事で忙しくてわからなかった。貴方がバトスピをはじめてて、しかもそのショップでバイトしてたなんて…………ずっと興味を持たなかったから勝手に安心してた」

「バイト黙ってたのはごめん………忙しい姉ちゃんを、少しでも楽させたくて………」

「私なんかに余計な気遣いはしなくていい………好きな事をやって遊ぶのは全然いい………でも、でも………」

 

 

ヒメは拳を硬く握り締め、声を震わせる。その頭の中には界放リーグ決勝で目から血を流しながら倒れる弟の姿。

 

 

「お願いだから、バトスピだけは辞めて………!!」

「………姉ちゃん」

 

 

普段のお淑やかな姉からは、考えもつかない言動に切羽詰まった様子。理由は全くもってわからないが、オーカミはこれがただ事ではない事を理解した…………

 

そして思い至った。「姉ちゃんを困らせるくらいなら、もうバトスピは辞めよう」と…………

 

 

******

 

 

「大会中にぶっ倒れたからだろ!?……確かにあん時はビビったけど、あんなのただのアクシデントだ。オレからもオマエの姉ちゃんに説明してやるから、バトスピは辞めるな」

 

 

バトスピをはじめてからと言うもの、精神的な何かが良い方向に変化して来たオーカミに、ヨッカは辞めさせるもんかと、どうにか説得しようとするが…………

 

 

「………アニキがなんて言ってもダメだ。オレは今日限りでバトスピを辞める」

「オマエ、姉ちゃんの言う事を何でもかんでも鵜呑みにすんじゃねぇよ。偶には逆らって、自分はこうしたいって言う意思を伝えたらどうだ……どうせちゃんと話し合ってもないんだろ?」

「………」

 

 

オーカミは姉であるヒメに逆らった事はなく、ましてやワガママな気持ちなど伝えたこともない。それは、彼が自分の体1つでお金を稼いでいる姉の事を知っているからである。

 

寧ろ忙しい姉に迷惑をかけないようにしたい、何か力になってあげたいと常々思っている。その一環として、バトスピを辞める事が姉にとっていい事ならば、辞める以外の選択肢はない…………………

 

 

「なんで最初っからオレが本当はバトスピを辞めたくない前提みたいで話を進めんだよ。辞めるのはオレの勝手だろ、別に姉ちゃんのせいじゃないよ」

「だってオマエ、あんなに楽しそうにバトルしてたじゃねぇか」

「…………」

 

 

そんな折、店内の自動ドアが開き出す。

 

慌てて「いらっしゃいませ」と口にするヨッカ。そして、その人物を目に入れるなり、さらに畏まる。

 

 

「え、アルファベットさん!?」

「九日か。そう言えばカドショの店長が本職だったな」

「いや〜〜そうなんすよ。こっちの方の仕事も、中々忙しくて………」

 

 

ツンツンした茶髪の髪に、サングラスを掛けている「アルファベット」と呼ばれる謎の男。ヨッカとは知り合いみたいだ。

 

 

「………そんなに忙しそうには見えないが?」

 

 

アルファベットが、少しズレたサングラスを指先で定位置に戻すと、ガラガラの店内を見渡しながら、ヨッカにそう言った。

 

 

「いや、今からですよ。今日は今からどっと忙しくなる予定なんす」

「そうか」

「………誰」

 

 

今度はオーカミがヨッカに聞いた。

 

 

「あぁ、この人は界放警察の警視、アルファベットさんだよ。ちょっと顔見知りなんだ」

「警察………」

「アルファベットの名前はコードネームで、本名は秘密にしないと行けないらしい」

 

 

界放警察。その名の通り、界放市の警察である。

 

彼、アルファベットはその警視であり、様々な事件を調査する権限を持っている。

 

 

「で、アルファベットさん。今日は何の用があってここに?……事件の聞き込みかなんかすか?」

「今日はオマエに用はない」

「いや言い方」

「オレが用があるのは……オマエだ、鉄華オーカミ」

「え………オレ?」

「オーカに?」

 

 

界放警察の警視、アルファベットが用があるのは、ヨッカではなく、オーカミだった。オーカミは「何か逮捕されるような悪い事したっけな」と考えてみるが、特に思い当たる節がない。

 

 

「あの……オレ別に何も逮捕されるような事してないですけど」

「バカか。正確には、オマエのバトルスピリッツに用がある」

「!!」

「ジュニアとは言え、界放リーグで準優勝したあの力………オレにも見せてみろ」

「…………」

 

 

アルファベットの興味が唆られるのは、オーカミのバトルスピリッツ。是非、彼と一度バトルしたい。そう言う要望なのだろう。

 

だが、もうオーカミは…………

 

 

「オレはもう、今日限りでバトスピを辞めるんだ。デッキももうすぐ売り払う」

「………なに?」

「悪いけど、バトスピやるなら、他を当たってくれ」

 

 

そう。もうバトスピは辞めるのだ。

 

唯一の肉親で、且つ、自分の中では絶対的な存在である姉のヒメに、そう言われたのだから……………

 

 

「あ、あ〜〜すんませんアルファベットさん、コイツ、なんか色々あったみたいで…………まぁでも1週間、いや今日中にオレが、またバトスピの魅力を教えて…………」

「いや九日、その必要はないぞ」

「え?」

 

 

どうにかしますと言ってくるヨッカを、言葉一つで一蹴すると、アルファベットは自身のデッキを、彼、鉄華オーカミへと突き付ける。

 

 

「鉄華オーカミ。オマエが今日限りでバトスピを辞めると言うのならそれでもいいだろう。だが、このオレの挑戦を断る事は許さない」

「??」

「オマエには、今すぐこのオレとバトルしてもらう。オマエの、華々しい引退試合としてな」

「………!!」

 

 

強引な誘いを受ける。確かに『今日限りで辞める』と言っているだけで、現時点で辞めた訳ではないが…………

 

 

「………オーカ」

「アニキ」

「オレもオマエに、このアルファベットさんとバトルして欲しい。それをやり終えてからじゃないと、このデッキを売るなんて真似、させないからな」

「………わかった」

 

 

ヨッカはオーカミの手にそっと鉄華団のデッキを握らせる。

 

 

「よし、ならば場所を変えるぞ。こんなチンケな店では、引退試合は務まらんからな」

「チンケって………まぁいいや、頑張れよオーカ!!」

「………うん」

 

 

正直、オーカにとっては気乗りしないが、こんな状況になってしまったのなら仕方ない。大人しくバトルして、ヨッカとアルファベットを納得させる、最短距離でバトスピを辞めるには、それしかない。

 

 

「じゃあコイツを借りて行くぞ」

「はい、アルファベットさん。そいつの事、よろしく頼みます」

「あぁ」

 

 

アルファベットはオーカミを連れ、一度アポローンを後にする。本日店は1人しかいないため、店番しないといけないヨッカだったが…………

 

 

「……やっぱ気になるし、店番サボって………と言うか今日はもう店閉めて、オレも行くか」

 

 

どうしてもオーカミのバトルが気になる彼は、店を閉めてでもオーカミのバトルを見に行こうと決意するが…………

 

 

「ん?……え、あれ」

 

 

お客さんが来た。しかも大勢。老若男女問わず、途端に客足が伸びてしまう。これでは店は閉められない上にオーカミのバトルも見届けられない。

 

どうにかしてお客さんを退かそうと考えるヨッカだったが………

 

 

「ちょっ、ちょっと………あぁ、うん。いらっしゃいませ〜」

 

 

諦めた。数が余りにも多過ぎる。今回の件、一度全てこの街の警視、アルファベットに託す事にした。オーカミの事が心配ではあるが、ハードボイルドな彼なら、必ずオーカミにバトスピ魂を再燃させてくれると信じて、今日は業務に明け暮れる。

 

 

******

 

 

一方でアルファベットとオーカミは、アポローンのある市街地からやや外れた場所にある、路地裏にまで足を運んでいた。

 

少し暗い上、妙に薄気味悪い所で、とてもではないが気持ち良く引退試合ができる場所とは思えない。少なくともオーカミはそう感じていた。

 

 

「………アンタ、さっきアポローンを『チンケな店』って言ってたけど、ここの方がよっぽどチンケな場所だろ」

「マジレスが好きなようだな。オレのバトルは、極力周囲には見せたくない。それだけだ」

「??………見られたくない理由でもあんの?」

「………」

 

 

アルファベットは「そんな事より」と、オーカミの質問を一蹴し、半ば強引に話題を切り替える。

 

 

「このバトル、賭けをしようじゃないか」

「賭け?……アンタ警察だろ。そんな事していいのかよ」

「良い。オレがルールブックだ」

「………な、なんて無茶苦茶な奴」

 

 

仮にも警察の、しかも警視が、まだ中学生のオーカミ相手に賭けを仕込んで来た。普通に、常識的に考えて、これは犯罪。

 

だが全ては許される。何せその相手があの優秀過ぎる警視、アルファベットなのだから…………

 

 

「オマエがオレに勝った時は、好きにしろ。だが、オレが勝った時は、オマエの鉄華団のデッキを貰うぞ」

「なッ!?!」

「何を驚いている。今しがた、売ろうとしていたではないか。それとも何だ、金か?……安心しろ、その時はたんまりとお小遣いをくれてやる」

「いや………そう言うのじゃ………」

 

 

アルファベットが賭けて来たのは、まさかの自分のデッキ。確かに、誰も見た事がないと言われているカードだらけの不思議なデッキなのだから、当然と言えば当然なのかもしれないが…………

 

 

「…………わかった。それでもいいから、やろう」

「ふむ。判断は早い方か」

 

 

オーカミはこの息が詰まりそうな展開から、早く脱出したい余り、彼の要求を飲み込む。

 

どちらにせよ、関係はない。もうすぐバトスピは辞めるのだから、デッキなんてあったって、無駄なだけだ。そう考えていた…………

 

 

「ならば直ぐに始めよう。そして見せてみろ、界放リーグでレオン相手に見せた、オマエの強さを」

「………一々うっさい奴………もういいから、さっさとやるよ」

 

 

互いに距離を取り、Bパッドを展開し、デッキをそこにセット。バトルの準備を瞬時に完了させる。

 

そして始まる。鉄華団のカード達の運命を決めるバトルスピリッツが…………

 

 

………ゲートオープン、界放!!

 

 

いつものコールで、鉄華オーカミの引退試合が幕を開ける。

 

先攻はアルファベットだ。鉄華オーカミとその使用カード、鉄華団の実力を見るべく、己のターンを進めて行く。

 

 

[ターン01]アルファベット

 

 

「メインステップ……犀ボーグを召喚。召喚時効果でコアブーストし、LV2へ」

 

 

ー【犀ボーグ〈R〉】LV2(2)BP5000

 

 

アルファベットが呼び出したのは、サイの見た目をしたサイボーグ。その名前もなんの捻りもなく、犀ボーグだ。先行はコアステップを行えないが、彼はこの犀ボーグの効果でコアを増やす。

 

 

「ターンエンド」

手札:4

場:【犀ボーグ〈R〉】LV2

バースト:【無】

 

 

アルファベットはターンエンドの宣言。オーカミへとターンが巡って来る。

 

 

[ターン02]鉄華オーカミ

 

 

「メインステップ……ネクサス、イサリビを配置」

 

 

ー【イサリビ】LV1

 

 

初手でオーカミが呼び出したのはネクサスカード。鉄華団の赤い花のマークが刻まれた母艦、イサリビが、彼の背後へと現れた。

 

 

「配置時効果、手札のカード1枚を破棄する事で、1枚ドロー………ターンエンド」

手札:4

場:【イサリビ】LV1

バースト:【無】

 

 

オーカミはイサリビの配置時効果で手札の質を向上させ、一旦ターンを終了する。

 

互いに緩やかなスタートを切り、バトルはアルファベットの第3ターン目へと移行する。

 

 

[ターン03]アルファベット

 

 

「メインステップ………2体目の犀ボーグを召喚。効果でコアブースト」

 

 

ー【犀ボーグ〈R〉】LV2(2)BP5000

 

 

現れたのは2体目となる犀ボーグ。その効果でまたコアが増えて行くのを見届けると、アルファベットは手札にある1枚のカードを切り、己のBパッドへと叩きつけた…………

 

 

「マジック、ソウルドロー……不足コストは2体の犀ボーグをLV1にして確保。コストにソウルコアも使用する………その効果により、デッキから合計3枚のカードをドロー」

 

 

2体の犀ボーグのLVが下がる。しかし、それらから抜き取られたコアは、ドローマジックの礎となる。

 

ソウルドロー。コストの支払いにソウルコアを含めれば、デッキから3枚のカードをドローできる、優れた赤マジックだ。

 

そして、それにより殆どのコアを使い切った彼だが、まだ止まる気配はなく…………

 

 

「白の成長期デジタルスピリット、ハックモンをLV1で召喚」

「ッ……デジタルスピリット」

「不足コストは2の犀ボーグから確保、よって2体は消滅する」

 

 

ー【ハックモン】LV1(1)BP2000

 

 

アルファベットの場に召喚されたのは、ホワイトカラーの小竜。ランクの低い、成長期のデジタルスピリットだが、纏っている赤い布や、そこから覗ける鋭い眼光が、そのスピリットをただ者ではないと錯覚させる。

 

 

「ハックモン、召喚時効果発揮………デッキから5枚のカードをオープンし、その中の対象カードを手札へ加える。オレは、このカード、ジエスモンを手札に加え、残ったカードはデッキの下へ」

「………」

 

 

一度に5枚ものカードをデッキからオープンするハックモン。アルファベットはその中から「ジエスモン」と呼ばれる1枚のカードを手札に加えた。

 

オーカミは、そのカードが何なのかはわからないが、チラッと見えたイラストから、かなり強力なスピリットだと認識して………

 

 

「ジエスモン………それがアンタのエースか、サングラスの人」

「………ターンエンドだ」

手札:6

場:【ハックモン】LV1

バースト:【無】

 

 

犀ボーグとソウルドローを巧みに使い、自分のデッキとコアを大いに回転させたアルファベット。一度そのターンをエンドとし、オーカミの第4ターン目が始まる。

 

 

[ターン04]鉄華オーカミ

 

 

「メインステップ………モビルワーカーを1体、LV1で召喚」

 

 

ー【鉄華団モビルワーカー】LV1(1)BP1000

 

 

このターン、オーカミが最初に呼び出したのは、鉄華団のカード達の中では最もコストの軽い、車両型のスピリット、モビルワーカー。

 

 

「デッキのカードをオープンして、その中にある特定のカードを手札に加える力………それができるのは、アンタだけじゃない」

「………そうか」

「来い、バルバトス第1形態!!」

 

 

ー【ガンダム・バルバトス[第1形態]】LV1(1)BP2000

 

 

地中から飛び出して来たのは、鉄華団の象徴たるモビルスピリット、バルバトス、その第1形態。肩の装甲もなく、BPも低いが、有能なのは、その召喚時効果にある…………

 

 

「召喚時効果、デッキから3枚オープンし、その中にある鉄華団カードを1枚手札に加える…………オレはグシオンリベイクを手札に加えて、残りは破棄」

 

 

鉄華団の守護神「ガンダム・グシオンリベイク」のカードが、オーカミの手札へと加えられる。

 

 

「バーストをセットして、アタックステップ。その開始時に、トラッシュにあるバルバトス第2形態の効果……トラッシュから召喚」

「!」

「コストは第1形態から確保、よって消滅」

 

 

ー【ガンダム・バルバトス[第2形態]】LV2(2)BP6000

 

 

バルバトス第1形態が消滅するが、代わりに、機関銃を装備したバルバトス、バルバトス第2形態が召喚される。このカードは、特定のタイミングで、トラッシュから何度でも蘇る事が可能な優れ者だ。

 

 

「………そのカード、前のターンにイサリビの効果でトラッシュに送った物か」

「ふ……アタックだ、第2形態!!」

「…………ライフで受ける」

 

 

〈ライフ5➡︎4〉アルファベット

 

 

バルバトス第2形態が、手に持つ機関銃を発泡し、アルファベットのライフバリア1つを撃ち抜く。

 

 

「エンドステップ。バルバトス第2形態の効果を発揮!!」

「………」

「このターン、アタックしていた時、トラッシュからコスト4以下のバルバトスをノーコストで復活させる………もう一度来い、バルバトス第1形態!!」

 

 

ー【ガンダム・バルバトス[第1形態]】LV1(1)BP2000

 

 

アタックステップは終了しても、オーカミのターンはまだ終わらない。ついさっきトラッシュへと送ったバルバトス第1形態を、バルバトス第2形態の効果で再召喚する。

 

そして、当然ながらその効果も発揮できて…………

 

 

「召喚時効果……デッキから3枚オープンし、その中の鉄華団カードを1枚加える………よし、オレは、オレのエースカード……バルバトス第4形態を手札に加えて、残りを破棄する。ターンエンドだ」

手札:4

場:【鉄華団モビルワーカー】LV1

【ガンダム・バルバトス[第1形態]】LV1

【ガンダム・バルバトス[第2形態]LV2

【イサリビ】LV1

バースト:【有】

 

 

オーカミはエースカードを手札に加え、勢いのままそのターンをエンドとする。

 

そんな彼を見て、アルファベットは軽く口角を上げて…………

 

 

「フ………楽しそうにバトスピするんだな」

「!!」

 

 

…………『そうだ。バトスピは辞めるのに、なんで楽しんでるんだ』

 

オーカミはアルファベットの言葉を受け、そう思った。確かに、今自分は心の底から身体の表面まで、バトルを楽しんでいた。これが終わったらバトスピを辞めると言うのに…………

 

オーカミが自分の気持ちに困惑を見せる中、アルファベットは己のターンを進めて行く。

 

 

[ターン05]アルファベット

 

 

「メインステップ………3体目の犀ボーグを召喚。効果でコアブースト……ハックモンのLVを2へアップ」

 

 

ー【犀ボーグ〈R〉】LV2(2)BP5000

 

 

アルファベットは開始早々に、本日3体目となる犀ボーグを召喚。元々場にいるハックモンのLVも2へと上昇させる。

 

そして、直後に手札から新たなるカードを抜き取る。それは、前のターンに、場のハックモンの効果で加えていた1枚…………

 

 

「【煌臨】発揮!!……対象はハックモン」

「!!」

「ハックモンはこの【煌臨】の対象となる時、自身にコアを3つブーストする…………現れよ、白きロイヤルナイツ、ジエスモン!!」

 

 

ー【ジエスモン】LV3(5)BP14000

 

 

ハックモンが聖なる白き光の力を受け、究極進化を果たす。

 

こうして新たに現れたのは、究極体デジタルスピリットのジエスモン。触れる者全て切り裂く様な尖った外見だが、その姿はスマートとも言え、美しい。

 

 

「ジエスモン………これもデジタルスピリットだったのか」

「ただのデジタルスピリットではない。ジエスモンは伝説のロイヤルナイツの一柱に数えられる存在だ」

「ロイヤルナイツ?」

 

 

アルファベットの口から発された「ロイヤルナイツ」と言う聞きなれない単語に、オーカミは頭にハテナのマークを浮かべる。

 

 

「ロイヤルナイツとは、この世に13種1枚ずつしか存在しない、特別なデジタルスピリットカードの事だ………それを得た者には絶対的な力が与えられる」

「ッ……世界でたった1枚のカード………」

 

 

正直、世界にたった1枚しか存在しないカードと聞いて、オーカミは凄まじくワクワクした。

 

それと、それの所有者とバトスピできてる事に、無表情ながら感動を覚えてしまった。バトスピは今日限りで引退だと、決心したはずなのに…………

 

 

「ジエスモンの煌臨時効果、相手スピリット、ネクサスを3枚まで手札に戻す」

「!!」

 

 

ロイヤルナイツと言うロマン溢れるカード達の存在を知ったのも束の間。そのロイヤルナイツの1体であるスピリットの効果発揮を宣言される。

 

 

「バルバトス第2形態の効果!!……オレの鉄華団スピリットは手札デッキに戻らない」

「ならばネクサスのイサリビにだけ消えてもらおう」

 

 

ジエスモンの周囲に、浮遊する橙色の3つのオーラが出現。その内の1つが、オーカミの背後にあるイサリビに突撃、衝突し、それを粒子化。

 

イサリビのカードを、彼の手札へと強制送還させる。

 

 

「バルバトス第2形態……バウンス耐性を全体付与する力か、中々厄介だ。だが、耐性はバウンスだけなら脅威とまではいかんな………異魔神ブレイヴ『真・炎魔神』を召喚」

「!!」

「そのままジエスモンに合体させる」

 

 

ー【ジエスモン+真・炎魔神】LV3(5)BP20000

 

 

フィールドに現れた逆巻く炎を振り払い、出陣するのは、巨大な竜人。異魔神ブレイヴの真・炎魔神。

 

真・炎魔神は、現れるなり、右手からジエスモンへと光線を放ち、自身とジエスモンを繋げ、合体スピリットとなる。

 

 

「最後にバーストを伏せ、アタックステップ………ジエスモンでアタック!!……先ずはその効果で相手のバーストを1つを破棄」

「!!」

 

 

再び3つのオーラを飛ばすジエスモン。それはオーカミの伏せているバーストカードへと飛び行き、焼き尽くして行く…………

 

そのカードは、前のターンに手札へ加えていた「ガンダム・グシオンリベイク」のカード。

 

 

「さらに真・炎魔神の効果、BP10000以下のスピリット2体を破壊し、その効果を発揮させない」

「くっ………」

「2体のバルバトスを破壊する」

 

 

真・炎魔神は両腕に炎を纏い、そのまま地面を殴りつける。すると、纏っていた炎は踊る様にフィールドを駆け巡り、オーカミの場に存在する2体のバルバトスを焼き払った。

 

 

「………これで、バルバトス第2形態のバウンス耐性付与効果は消えた。ジエスモンの更なる効果、ロイヤルナイツがアタックした時、相手スピリット1体を手札に戻す。消え去れ、モビルワーカー!!」

「ッ………たった1体のスピリットの効果で、オレの場のカードが全滅………!?」

 

 

モビルワーカーに直接接近したジエスモンが、その剣技を振るう。モビルワーカーは切り裂かれ、粒子化。オーカミの手札へと戻ってしまう。

 

 

「くっ……負けるかよ、鉄華団スピリットが相手によってフィールドを離れた時、手札から流星号の効果を発揮!!」

「………」

「このカードをコストを支払わずに召喚する。そして召喚時効果でドロー………」

 

 

ー【流星号】LV1(1)BP2000

 

 

殲滅されたフィールドに現れるのは、ピンク色をした、一筋の希望。

 

鉄華団のモビルスピリット、流星号の効果で、オーカミはデッキから1枚のカードをドロー。辛うじて戦線は維持できた。

 

 

「だが、ジエスモンのアタックを止めれてはいないぞ」

「………アタックはライフで受ける」

 

 

〈ライフ5➡︎3〉鉄華オーカミ

 

 

ジエスモンはオーカミのライフバリアへ到達すると、目では追えない速度でそれを連続で斬りつける。これにより、彼のライフバリアは一気に2つ砕け散った。

 

 

「続け、犀ボーグ」

 

 

追い討ちを掛けるように、続け様に犀ボーグでアタック宣言。だが、オーカミはまるでそのアタックを待ち望んでいたかの様に、緩やかに口角を上げて…………

 

 

「フラッシュマジック、スネークビジョン!!」

「!!」

「効果により、相手スピリット全てのコアを、1つずつになるようにリザーブへと送る………これで、アンタのスピリットはみんなLV1だ」

 

 

毒蛇が巻きつくかの如く、紫のオーラが犀ボーグとジエスモンを襲う。2体とも消滅とまではいかなかったものの、最低LVの1にまで弱体化させられた。

 

 

「犀ボーグのアタックはライフで受ける」

 

 

〈ライフ3➡︎2〉鉄華オーカミ

 

 

スネークビジョンを張り切り、オーカミのライフバリアへと突撃する犀ボーグ。突進攻撃でそのライフバリアを1つ破壊した。

 

 

「………ターンエンドだ」

手札:3

場:【犀ボーグ〈R〉】LV1

【ジエスモン+真・炎魔神】LV1

バースト:【有】

 

 

紫マジック、スネークビジョンの影響こそ受けてしまったものの、オーカミの場とライフの大半を奪い去ったアルファベット。

 

余裕のある表情は崩さず、そのままターンをエンドとした。流星号を場に残したオーカミのターンが幕を開ける。

 

 

[ターン06]鉄華オーカミ

 

 

「メインステップ………モビルワーカー、イサリビを再召喚、再配置」

 

 

ー【鉄華団モビルワーカー】LV1(1)BP1000

 

ー【イサリビ】LV1

 

 

「イサリビの配置時効果、手札1枚を破棄する事で、1枚ドロー………オレは、バルバトス第4形態を破棄」

 

 

ジエスモンによって手札に戻されていたカード達を再展開。そしてオーカミはイサリビで引いたカードをさらに場へと登場させて行く…………

 

 

「創界神ネクサス、オルガ・イツカを配置………神託を発揮させ、デッキから3枚のカードをトラッシュへ………対象カードは3枚、よってコアを3つ追加する」

 

 

ー【オルガ・イツカ】LV2(3)

 

 

 

鉄華団専用の創界神、オルガ・イツカ。フィールドには何も影響を及ぼさないが、バトルの影響は別。

 

それと、それらとの強力な連携を可能にするカード達が、アルファベットに軽くないプレッシャーを与える。しかし、彼はそんなプレッシャーをモノともしていないが…………

 

 

「アタックステップ開始時、トラッシュにあるバルバトス第2形態の効果!!……自身を復活させる」

 

 

ー【ガンダム・バルバトス[第2形態]】LV2(2)

 

 

前のターンに真・炎魔神によって破壊され、トラッシュへと送られたバルバトス第2形態。だがそれはアタックステップ開始時と言うタイミングで何度でも復活が可能。再びオーカミのフィールドへと現れる。

 

 

「鉄華団スピリットの召喚により、神託でオルガにコアを1つ追加………そして【神技】を発揮させ、トラッシュに送った、コイツを蘇らせる」

「…………来るか」

 

 

4つに溜まったオルガのコアを全て取り外し、オーカミはその【神技】を発揮。その効果でトラッシュから召喚するのは、もちろんこのターンにイサリビでトラッシュ送りにしていたあのスピリット。アルファベットもそれが何なのかを直ぐに察する…………

 

 

「大地を揺らせ、未来へ導け!!………ガンダム・バルバトス第4形態!!……LV3で召喚!!」

 

 

ー【ガンダム・バルバトス[第4形態]】LV3(4)BP12000

 

 

「不足コストはモビルワーカーと流星号から確保、よって消滅する」

 

 

モビルワーカーと流星号が維持コア不足で消滅してしまうが、オーカミの場には、エースたる存在、バルバトス第4形態が最大LVで登場。

 

バルバトス第4形態は黒々とした鈍器、メイスを手に、構え、敵であるアルファベットに、鋭い眼光を送る。

 

 

「やるな。まさか1ターンでここまでフィールドを様変わりさせるとは」

「アタックステップは続行だ。行け、バルバトス第4形態!!」

 

 

颯爽とバルバトス第4形態でアタック宣言を行うオーカミ。この時、バルバトス第4形態は発揮できる効果が幾つもあり…………

 

 

「ブレイヴ1つを破壊。この効果発揮後、相手スピリットのコア2つをリザーブに送る!!」

「む……」

「真・炎魔神を破壊し、ジエスモンと犀ボーグを消滅させる」

 

 

ー【ジエスモン+真・炎魔神】(1➡︎0)消滅

 

ー【犀ボーグ〈R〉】(1➡︎0)消滅

 

 

バルバトス第4形態は、メイスを振り翳し、勢い良く地面に叩きつけ、その接地面から岩の破片を連らせる。ジエスモンは紙一重で避けるものの、背後にいた真・炎魔神にはヒット。力及ばす爆散してしまう。

 

 

「ロイヤルナイツを蹴散らせ、バルバトス!!」

 

 

バルバトス第4形態はオーカミの呼び声に応える様に、瞬間的に緑色の眼光を輝かせると、背部のスラスターで跳び上がり、そのまま犀ボーグを踏みつけにし、破壊する。

 

そして手に持つメイスを投げ、それをジエスモンの胸部に命中させた。それにより、胸部を砕かれ、貫かれたジエスモンは倒れ、大爆発を起こした。

 

 

「よし、エースは倒した………バルバトスのアタックは続行中。LV3効果で、今は紫のダブルシンボルだ」

「…………ライフで受けよう」

 

 

〈ライフ4➡︎2〉アルファベット

 

 

メイスを回収したバルバトス第4形態が次に目をつけたのは、アルファベットのライフバリア。勢い良く襲い掛かり、メイスを横一線に振るって、それを2つ破壊した。

 

 

「………行けるぞ。次は第2形態で………」

 

 

前のターンの仕返しと言わんばかりに、アルファベットの場のカードを全て除去したオーカミ。勝ちに急ぐ手がバルバトス第2形態のカードへと手を伸ばした…………

 

その直後だ。アルファベットが伏せていたバーストカードを開いたのは…………

 

 

「追撃は待ってもらおう。ライフ減少により、バースト発動」

「ッ……バースト」

「この効果により、手札が4枚になるまでドロー、相手スピリット1体をデッキの下へ戻す」

「なんだその効果………でも、バルバトス第2形態の効果で、オレのスピリットはその効果を受けない」

 

 

開いたアルファベットのバースト効果は、手札が4枚になるまでドローする効果と、相手スピリット1体をデッキの下戻す効果。

 

これにより、彼の手札は3枚から4枚となるが、デッキの下へ送る方の効果はそうはいかない。バルバトス第2形態が又しても彼の効果を阻む。

 

だが、彼の狙いは、始めからスピリットの除去ではなくて…………

 

 

「この効果発揮後、このスピリットカードをノーコストで召喚する…………現れよ、黒きロイヤルナイツ、アルファモン!!」

「なッ!?」

 

 

ー【アルファモン】LV3(8)BP20000

 

 

アルファベットのフィールド上空から出現する、丸いデジタルゲート。そこから煌びやかな光と共に姿を現すのは、黒き鎧をその身に纏う、伝説のロイヤルナイツの1体、アルファモン。

 

 

「………オマエはジエスモンの事をオレのエースだと言ったな。残念だが、オレの本当の切札はコイツ、アルファモンだ」

「2種目のロイヤルナイツのデジタルスピリット………この人いったいなんなんだ!?」

 

 

先程この世界に13種1枚ずつしか存在しないと聞かされたロイヤルナイツ。

 

何億何兆枚と言うカードが刷られているこの世界で、まさかたった1日で、しかも1回のバトルで、それを2種類も目にする事になるとは、思ってもいなかった事だろう…………

 

 

「………ターンエンドだ」

手札:3

場:【ガンダム・バルバトス[第4形態]】LV3

【ガンダム・バルバトス[第2形態]】LV2

【オルガ・イツカ】LV1

【イサリビ】LV1

バースト:【無】

 

 

アルファモンと言う、圧倒的存在感を持つデジタルスピリットを前にして、そのターンをエンドとするオーカミ。鉄華団のスピリットには基本的にアレに勝てるスピリットはいないため、英断だったと言える。

 

そして迎えるはアルファベットのターン。エース、アルファモンが本格的に動き出して行く事だろう…………

 

 

[ターン07]アルファベット

 

 

「メインステップ………1つ聞こう鉄華オーカミ」

「ん?」

「何故オマエはバトスピを辞める」

「何故って………姉ちゃんにそう言われたからだよ」

「………」

 

 

唐突な質問。アルファベットのサングラス越しから感じる圧に負け、オーカミは思わず本当の事を口走ってしまう。

 

 

「変だろ?………でも、オレにとって姉ちゃんは全部なんだ………これ以上、迷惑は掛けたくない」

「…………」

 

 

姉である鉄華ヒメは、具体的な内容は何も話してはくれなかった。ただ、自分達の父親が関係しているとだけ…………

 

しかし、仮に納得はできなくても、言う事は聞かないといけない。だって姉は、いつも、いつもいつも、いつも。自分のために汗水を流して働いてくれているのだから…………

 

 

「………もう1つ質問しよう。オマエは、バトスピを辞めたいのか?」

「ッ………な訳ないだろ!?」

 

 

アルファベットの2つ目の質問。オーカミはらしくもなく、思わず声を荒げて反発した。

 

その様子を見たアルファベットは、軽く笑みを浮かべる。

 

 

「フ………なんだ、素直になれるじゃねぇかクソガキ。つまりそう言う事だろ」

「………そう言う事って」

「オマエはバトスピを辞めたくない。それでいいじゃねぇか」

「!!」

「もっと素直になれ、大人になったら無駄なプライドが邪魔をして、それを口にできる機会は減っていくもんなんだ。子供の時くらい、ワガママの1つや2つ、口にしていいんだ」

「オレは…………」

 

 

………『そうかオレは、バトスピを辞めたくないんだ。続けたいんだ』

 

………『オレにとってバトスピは、初めて姉ちゃん以外にできた繋がり。それを姉ちゃんに否定されるような気がして、嫌なだけだったんだ』

 

思い出していくバトスピと、それに関係する大事な人達との想い出。こう言った繋がりの想起が、鉄華オーカミの心の中の何かを変えていく…………

 

 

「アタックステップ!!……アルファモンでアタック、アタック時効果発揮、バルバトス第2形態からコア2つを取り除き消滅。さらにアタックブロック時効果、2コストを支払い回復」

「!!」

 

 

ー【ガンダム・バルバトス[第2形態]】(2➡︎0)消滅

 

 

質問は終えたのか、アルファモンでアタックを仕掛けるアルファベット。

 

アルファモンは手を前方に翳すと、その周囲に幾千ものデジタルゲートが開き、そこから無数の波動弾が撃ち放たれる。バルバトス第2形態は避けることも出来ず、殆どが被弾。無惨にも爆散してしまう。

 

 

「アルファモンの回復効果に回数の制限はない。オレのコアが続く限り、攻撃は続くぞ!!」

「フラッシュマジック、オラクルⅦオーバーチャリオット!!」

「………白のマジックか」

「不足コストは、バルバトス第4形態をLV2に下げて確保。これにより、このターンの間、オレのライフはコスト4以上のスピリットと効果では0にされない………そのアタックはライフで受ける」

 

 

〈ライフ2➡︎1〉鉄華オーカミ

 

 

ゆっくりとオーカミの元へ歩み寄るアルファモン。その黒き拳が、そのライフバリアを1つ粉砕して見せるが…………

 

オーカミの使用した白のマジック、オラクルⅦオーバーチャリオットの効果により、少なくともこのターンではライフを0にできなくなってしまう。

 

 

………『アタックステップが終わったわけではない。アルファモンでアタックを継続して、効果でバルバトス第4形態を消滅させるのも悪くないないが…………』

 

 

「いいだろう。返しのターン、全力でオレを討ちに来るがいい………ターンエンドだ」

手札:5

場:【アルファモン】LV3

バースト:【無】

 

 

バルバトス第4形態を倒してからエンドとする選択肢もあったアルファベットだが、オーカミの全力を体験したいと思ったのか、これ以上のアタックは行わず、そのターンをエンドとした。

 

 

「オレ、本当に腹の底からバトスピを楽しんでたんだな……………行くぞ、力を貸してくれ、鉄華団のスピリット達!!」

 

 

熱き闘志を燃やし、鉄華オーカミは迎えた第8ターン目を進めていく。

 

 

[ターン08]鉄華オーカミ

 

 

「メインステップ………バルバトス第4形態を再びLV3に、そしてネクサス、イサリビのLVも2へ上昇!!」

 

 

ー【ガンダム・バルバトス[第4形態]】LV3(4)BP12000

 

ー【イサリビ】(0➡︎6)LV1➡︎2

 

 

場に残ったスピリットとネクサスのLVを最大まで上昇させる。

 

そしてターンは、手札を切る事なく、アタックステップへ…………

 

 

「アタックステップ!!……その開始時、トラッシュのバルバトス第2形態を召喚」

 

 

ー【ガンダム・バルバトス[第2形態]】LV1(1)BP3000

 

 

トラッシュから三度現れるバルバトス第2形態。それにより、オーカミの場に存在する、全ての鉄華団スピリットにバウンス耐性が付与された。

 

 

「これで準備は整った………行くぞ、バルバトス第4形態!!」

 

 

オーカミの指示を受け、バルバトス第4形態がメイスを構え直す。その鉄の眼が映すのは、アルファモンと、それを使役するアルファベットのみ………

 

 

「アタック時効果でアルファモンからコアを2つリザーブへ!!」

「だが、その程度のコア除去では、オレのアルファモンは倒せないぞ」

 

 

バルバトス第4形態は、メイスを地面に叩きつけ、岩の破片を連らせる。いわゆるストーンエッジとなったそれは、アルファモンに命中するが、ビクともせず…………

 

だが、オーカミの真の狙いはアルファモンを倒す事ではなくて…………

 

 

「知ってるさ。オレの勝利条件は、アンタのアルファモンを倒す事じゃない………アンタのライフを0にする事だ」

「………」

「フラッシュ!!……イサリビのLV2効果を発揮!!……このネクサスのコア全てを鉄華団スピリットに置き、このバトルの間、そのスピリットはブロックされない!!」

「なんだと!?……そんな懐刀を隠し持っていたか」

「対象はアタック中のバルバトス第4形態!!……これにより、アルファモンはこのアタックをブロックできない!!」

 

 

イサリビのコア6個全てが、バルバトス第4形態のカード上に置かれる。

 

フィールドではバルバトス第4形態が跳び上がり、そのままイサリビの上に着地。威風堂々とした態度で肩を組み、イサリビが発進した。

 

やがてイサリビは、アルファモンの頭上を飛び越え、それを従えるプレイヤー、アルファベットの元まで辿り着いた。バルバトス第4形態はそのままそこから飛び降り、メイスを振り翳す…………

 

その狙いはもちろん、アルファベットの残り2つのライフバリアだ。

 

 

「バルバトス第4形態は効果でダブルシンボル………これで決まりだ、叩きつけてやれ!!」

 

 

目の前にある使える物を全て使い、アルファベット相手に勝利目前まで来たオーカミ。

 

だが、彼のバトルスピリッツは、オーカミが思っている程、甘くはなかった。

 

 

「フラッシュマジック、シーズグローリー」

「!?」

「バルバトス第2形態のBPをマイナス7000。0になった時破壊する」

 

 

ー【ガンダム・バルバトス[第2形態]】BP3000➡︎0(破壊)

 

 

アルファベットのライフバリアが叩きつけられる直前、稲妻迸る槍が、フィールドで待機中の、バルバトス第2形態の胸部に直撃。呆気なく爆発してしまう。

 

そして、シーズグローリーの真骨頂はここからだ。

 

 

「この効果でスピリットを破壊した時、転醒する………来い、天醒槍ロンゴ・ミニアス」

 

 

ー【アルファモン+天醒槍ロンゴ・ミニアス】LV3(6)BP25000

 

 

バルバトス第2形態を倒し、そのまま地面へと突き刺さったシーズグローリーは、アルファモンの手に吸い寄せられるように、飛び出し、神をも貫く槍、ロンゴ・ミニアスへと姿を変え、アルファモンの手に握られる。

 

 

「転醒時効果、このターンの間、相手のスピリットのアタックでは、自分のライフは1しか減らない」

「ッ!?」

「アタックはライフで受ける」

 

 

〈ライフ2➡︎1〉アルファベット

 

 

バルバトス第4形態の起死回生の一撃が、シーズグローリーが転醒した、ロンゴ・ミニアスの転醒時効果により遮られる。

 

本来減るはずだった2つのライフを1つ残す形で、そのターンをエンドとせざるを得なくなってしまった。まさに今のオーカミにとっては、このアルファベットが取った一手は、絶望の一手だったに違いない。

 

 

「クソ………届かなかった。ターンエンド」

手札:3

場:【ガンダム・バルバトス[第4形態]】LV3

【オルガ・イツカ】LV1(1)

【イサリビ】LV1

バースト:【無】

 

 

悔しさに表情を歪ませ、オーカミはそのターンを終える。

 

全身全霊を込めた、起死回生の一撃。これを凌がれてしまったオーカミに、もうなすすべはない…………

 

 

[ターン09]アルファベット

 

 

「最後の一手はなかなか実物だったぞ………行け、アルファモン!!」

 

 

天醒槍ロンゴ・ミニアスを手にしたアルファモンがゆっくりと動き出す。疲労により片膝をついたバルバトスをスルーし、それは一直線にオーカミのライフバリアへと迫る。

 

ブロックも何もできないため、オーカミはそれをライフで受ける宣言しかできない…………

 

 

「………ライフで受ける」

 

 

〈ライフ1➡︎0〉鉄華オーカミ

 

 

天に掲げたロンゴ・ミニアスを振り下ろし、オーカミの最後のライフバリアを木っ端微塵に粉砕するアルファモン。

 

これで勝負は決した、勝者はアルファベット。バトルの内容とは裏腹に、オーカミとの実力差を感じさせてしまう一戦であった。

 

 

「…………」

 

 

バトルに負け、言葉を失うオーカミ。

 

無理もない、このバトルには「鉄華団のデッキ」が賭けられていたのだから……………

 

 

「バトルはオレの勝ち………約束通り、鉄華団のデッキはオレがいただく」

「…………」

「と、言いたい所だが、気が変わった」

「………え?」

 

 

アルファベットから掛けられた意外な言葉に、オーカミは戸惑う。

 

 

「アレはオマエがバトスピを辞める前提で行ったアンティルールだ。バトスピを続けたいと思った今、フェアじゃない」

「………じゃあ」

「あぁ、そのデッキは、まだまだオマエの物だ。そんな事より、行く所があんじゃねぇのか?」

「!!」

 

 

自分が行くべき場所。それはたった1つしかない………

 

アルファベットにそう告げられたオーカミは、彼を置いて、1人走り出した。

 

 

 

******

 

 

その日の夜。鉄華オーカミが住う住宅、その一室にて、彼の姉である鉄華ヒメは深く考えていた。

 

その理由は、今日、喧騒を変えて帰って来た弟、オーカミからの言葉…………

 

 

………『バトスピを、続けさせてください!!』

 

………『バトスピは、オレに色んな大切な物をくれた、かけがえのないモノなんだ!!………お願いだから、続けさせてください!!』

 

 

あの仏頂面で、ワガママ1つとして言わなかったオーカミが、頭を深々と下げ、自分にお願い事をして来たのだ。当然戸惑い、その言葉に対して何の返答もできなかった……………

 

 

「………バトスピが、あの子を変えてくれたのか………」

 

 

少し見ない間に、いつの間にかオーカミが成長していた事に関しては、とても嬉しく思う。それがバトスピのお陰だと思うと、少し複雑だが…………

 

本当は、やらせてあげたい。しかしどうしても父から言われた「オーカミのバトスピには気をつけろ」と言う言葉が頭を離れない。このままバトスピを続けさせてしまったら、両親だけでなく、オーカミまで失ってしまうのではないかと考えたら、怖くて夜も眠れない………

 

 

「………私はどうしたらいいと思う?……お父さん」

 

 

ヒメは、その日の晩、悩みに悩み続けていた…………

 

 

******

 

 

朝が来た。鉄華オーカミはバイトがある日。そのため、支度し、家を後にしようとする。

 

ドアノブに手を掛けようとしたその時、頭には昨日初めて姉に反抗した言葉が蘇ってくる。「姉ちゃんに嫌われてないだろうか」と、心底心配になってしまうが…………」

 

 

「なぁにそんな所でボーッとしてんの?」

「ッ……姉ちゃん」

「そんな暗い顔ばっかり見せるようだったら、バトスピはやらせないよ」

「!!!」

 

 

オーカミを見届けようと玄関先まで来たヒメの言葉に、オーカミの表情は一転、明るいモノとなる。

 

 

「じゃ、じゃあ……!!」

「うん。やってもいいよ、バトスピ。バイトもね」

「あ、ありがとう姉ちゃん!!」

「ヨッカさんには、迷惑を掛けないようにね」

 

 

直後に「行って来ます」と声を張り、家を後にアポローンへのバイトへ向かうオーカミ。その表情は年相応に明るかった。おそらく、彼の今までの人生の中で1番、嬉しい瞬間だったのだろう…………

 

 

「………これでいいんだよね、お父さん」

 

 

オーカミを見届けた後、ヒメが亡き父に対してポツリと呟いた。

 

不安を完全に取り除けたわけではない。彼女なりに、大きな覚悟が必要だった事だろう。だが決心した、仏頂面で、孤独なあの子を変えてくれたのは、他でもない「バトルスピリッツ」だったのだから…………

 

 

 

 




次回、第28ターン「デスティニーVS赤いエヴァンゲリオン」

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