バトルスピリッツ 王者の鉄華   作:バナナ 

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第33ターン「悲劇のアロンダイ」

 

 

 

 

 

………ゲートオープン、界放!!

 

 

平日の昼間と言う事もあり、全く客のいないカードショップ「アポローン」…………

 

その中にあるバトル場にて、ややはねっけのある緑髪の少年、イチマルと、長い黒髪のツインテールを束ねる少女、一木ヒバナが、コールと共にバトルを開始する。

 

先攻はイチマルだ。オーカミ戦後に新しく練り直したデッキを回すべく、そのターンを進めていく。

 

 

[ターン01]鈴木イチマル

 

 

「メインステップ、先ずはいつものだ。仮面ライダーゼロワンを召喚」

 

 

ー【仮面ライダーゼロワン】LV1(1)BP2000

 

 

デッキを新しく練り直そうとも、彼の操るアーキタイプは変わらない。緑の戦士、ライダースピリットのゼロワンがその場へと姿を現す。

 

 

「手堅く来たわね」

「召喚時効果でコアブースト、ターンエンド」

手札:4

場:【仮面ライダーゼロワン】LV1

バースト:【無】

 

 

いつもの初動で手堅い先攻の1ターン目を終了したイチマル。そのターンをヒバナへと譲る。

 

 

[ターン02]一木ヒバナ

 

 

「メインステップ……ネクサス、黄昏の暗黒銀河を配置」

 

 

ー【黄昏の暗黒銀河】LV1

 

 

ヒバナの初動はネクサス。彼女の背後で逆巻く銀河が、暗黒の中で輝く。

 

 

「ターンエンド」

手札:4

場:【黄昏の暗黒銀河】LV1

バースト:【無】

 

 

お互いに最初のターンを終え、第3ターンに突入する。

 

 

[ターン03]鈴木イチマル

 

 

「メインステップ………オレっちは、ゼロワン フライングファルコンを召喚するぜ」

 

 

ー【仮面ライダーゼロワン フライングファルコン】LV1(1)BP3000

 

 

上空から降り立ったのは、マゼンタカラーのゼロワン、フライングファルコン。その効果は3コストのスピリットにしては破格の効果を持ち…………

 

 

「召喚時効果でコアを1つずつ、トラッシュとゼロワンに追加。ゼロワンはこの勢いでLV2にアップだ!!」

 

 

イチマルは一気に2つのコアをブーストし、コアアドバンテージを大きく稼ぐ。

 

 

「………このターンも動かない、最後にバーストをセットして、ターンエンド」

手札:3

場:【仮面ライダーゼロワン】LV2

【仮面ライダーゼロワン フライングファルコン】LV1

バースト:【有】

 

 

ここまではいつもとなんら変わらない動きを披露するイチマル。このターンもエンドとし、ヒバナへとそれを譲った。

 

ヒバナは彼がいつ新しい動きをするのかを思考に入れつつ、ターンを開始する。

 

 

[ターン04]一木ヒバナ

 

 

「メインステップ………引きも結構強いし、そろそろ動くわよ」

「え、早くない??」

 

 

このターンのドローステップでなかなか良いカードを引けた彼女。戸惑うイチマルを他所に、そのカードをBパッドへと叩きつけ、呼び出す。

 

 

「緑ゴモラをLV1で召喚!!」

 

 

ー【古代怪獣ゴモラ[初代ウルトラ怪獣]】LV1(1)BP7000

 

 

地中から飛び出して来たのは、三日月状の角を持つ大怪獣ゴモラ。赤属性と緑属性の2種類があるが、今回はその中でも汎用性の高い緑ゴモラが出陣だ。

 

 

「み、緑ゴモラ最速着地かよ……ヒバナちゃん容赦ねぇ」

「あったり前でしょ!!……一気に行くわよイチマル、アタックステップ、緑ゴモラでアタック!!」

 

 

勢いに乗ってアタックステップ、ヒバナは緑ゴモラにアタック宣言を送る。

 

そしてこの時、緑ゴモラには発揮できる効果がいくつか存在し………

 

 

「アタック時効果、ゼロワンを疲労させ、そうした時、ターンに一度回復する」

「!!」

 

 

走り出すゴモラ、その瞬間に張り上げる咆哮と共に吹き荒れる緑の風。それがイチマルのゼロワンの力を削ぎ、片足をつかせる。

 

 

「そしてもう1つの効果で、イチマルのバースト効果は発揮できず、コアを2つブースト、LV2にアップ!!」

 

 

緑の風はゴモラに力を与え、そのLVを上昇させる。BPは黄昏の暗黒銀河の効果と合わせて13000まで強化されており、とてもではないが、今のイチマルのスピリット達では太刀打ちができない。

 

 

「………フライングファルコン、ブロック頼む」

 

 

しかしここは敢えてブロックを宣言。両腕を翼に変え、フライングファルコンは緑ゴモラを迎え撃つが、3秒も経たずに尾を振るう攻撃で撃墜され、爆散してしまう。

 

 

「ま、そう来るよね。回復している緑ゴモラで再度アタック!!……その効果でコアを2つブーストし、LV3にアップ!!」

 

 

バトルに勝利した緑ゴモラが再びイチマルを襲う。

 

因みに前のアタックをライフで受けていれば、フライングファルコンは疲労効果の餌食となり、結果的により多くのライフ減少の損害を招く事となっていた。

 

 

「それはライフだ!!」

 

 

〈ライフ5➡︎4〉鈴木イチマル

 

 

「緑ゴモラのLV3の効果、コスト6以上のスピリットが相手ライフを減らす時、さらに1つのライフを破壊!!」

「!!」

 

 

〈ライフ4➡︎3〉鈴木イチマル

 

 

緑ゴモラの角で突く攻撃と尾を振るう攻撃の二連続攻撃が、イチマルのライフバリアにヒット。合計2つが破壊され、残りは3つとなってしまう。

 

 

「ターンエンド。ほらほらどうしたイチマル、新デッキ組んで来たんでしょ?」

手札:4

場:【古代怪獣ゴモラ[初代ウルトラ怪獣]】LV3

【黄昏の暗黒銀河】LV1

バースト:【無】

 

 

「やっぱめっちゃ強ぇ、流石だぜヒバナちゃん………でもオレっちだって負けられない。強くなったとこ、見せちゃうもんね!!」

 

 

イチマルに己のエース、緑ゴモラの力を見せつけ、そのターンをエンドとするヒバナ。

 

だが、イチマルもずっと劣勢続けではいられない。状況を打破すべく、巡って来た己のターンを進めて行く。

 

 

[ターン05]鈴木イチマル

 

 

「メインステップ、ここらで新カードのお出ましと行きますかね……来い、仮面ライダーバルカン アサルトウルフ!!」

「!!」

 

 

ー【仮面ライダーバルカン アサルトウルフ】LV2(4)BP10000

 

 

遠吠えが聞こえて来る。狼のアギトの形をした緑のオーラが空を噛み砕き消滅すると、その中より群青の装甲を纏うライダースピリット、バルカン アサルトウルフが出現する。

 

それこそ、イチマルの新しい力の1つだ。

 

 

「これがイチマルの新しいライダースピリット!?」

「そうともヒバナちゃん、オレっちのデッキは常に進化し続ける、でもって、いつかヒバナちゃんの心を鷲掴みしてみせるぜ!!」

「キモッ!!」

 

 

ヒバナの反応に、イチマルは「酷い!!」とリアクションしながらも、直後にアタックステップへと移行する。

 

 

「気を取り直してアタックステップ。アサルトウルフでアタック、その煌臨アタック時効果を発揮!!」

「来た……」

「相手のスピリット2体を重疲労、緑ゴモラを寝かせてやれ」

「……!」

 

 

アタックステップの開始直後、アサルトウルフの胸部で輝く赤いコアのようなものが、より一層その輝きを増すと、それに合わせるように、ゴモラの周囲の重力だけが強くなり、ゴモラは地面に磔にされるように倒れ込んだ。

 

これこそ、アサルトウルフの効果。煌臨、アタックするたびに相手のスピリット2体を重疲労、つまり、二度の回復でようやく回復状態となる状態にする事ができる。

 

さらに、それだけではなくて…………

 

 

「まだまだ続くぜ、フラッシュ、アサルトウルフのLV2、3のアタックブロック時効果、ターンに一度、疲労状態の相手スピリット1体をデッキの下に戻す!!」

「え!?」

「と言うわけでヒバナちゃん、今重疲労させた緑ゴモラはデッキの下にさよならしてもらうよ!!」

 

 

倒れ込んだ緑ゴモラに、手に持つライフルで強烈な弾丸を放つアサルトウルフ。その弾丸の猛襲は、ゴモラの頑丈な皮膚を難なく貫き、粒子化へと追い込んだ。

 

ゴモラのカードは、ゲーム上戻って来づらいデッキの下へと送られる。

 

 

「………アサルトウルフのアタックはライフで受ける」

 

 

〈ライフ5➡︎4〉一木ヒバナ

 

 

ゴモラが消えた事で一気にヒバナとの距離を詰めたアサルトウルフ。今度はライフルではなく、堅固なその拳で、彼女のライフ1つを木っ端微塵に粉砕する。

 

 

「よっしゃぁ!!……一番厄介な緑ゴモラは倒せた、よくやったアサルトウルフ、ターンエンドだぜ」

手札:3

場:【仮面ライダーバルカン アサルトウルフ】LV2

【仮面ライダーゼロワン】LV2

バースト:【無】

 

 

劣勢からの立て直しに大きく貢献した新カード、アサルトウルフ。イチマルはそのスピリットに大きく感謝し、ターンを終える。

 

そして次は逆に劣勢に立たされることとなったヒバナのターンであるが…………

 

 

「あっはは、やるなイチマルのくせに。でも面白くなって来た………」

 

 

…………『このバトル、このカードで決める』

 

そう思い、ヒバナが目をやったのは、自分の手札にある「アグモン-勇気の絆-」のカード。

 

 

 

 

******

 

 

 

一方その頃、ここは界放市ジークフリード区にある病院の中で最も大きいとされる病院。

 

その病室の一室にいるのは、ここに1日だけ入院した経験のある、赤髪で小柄の少年「鉄華オーカミ」と、早美アオイの弟で、もう何年もここに入院している空色の髪色をした少年「早美ソラ」の2人…………

 

 

「わぁぁ!!……これがバルバトスルプスのカード、めちゃくちゃカッコいいね、効果も強い!!」

「うん」

 

 

ベッドに横たわるソラが手に持っているのは、オーカミの新しいエースカード「バルバトスルプス」…………

 

オーカミが入院して以来、仲良くなった2人。偶に連絡を取り合っていたのだが、最近、オーカミがバルバトスルプスを手にしたと話したら、ソラは『是非生で見たい!!』と言い出し、今のこの時間がある。

 

 

「そんな事より、体の調子はどう?」

 

 

オーカミがソラに聞いた。ソラはオーカミに「バルバトスルプス」のカードを返却しながら答える。

 

 

「それがさ、最近結構体軽いんだよね」

「軽い?」

「うん。このまま空まで飛べそうなくらい軽いよ、不思議だよね、今まで一度もそんな感覚になった事ないのに………オーカミと外でBパッドを使ってバトスピできる日も近いかもね」

 

 

誇張表現だろうが、取り敢えず、ソラが元気そうでよかった。オーカミはそう思考を過らせる。

 

ソラの病気がなんなのかはわからないが、担当医である「嵐マコト」から聞く限りだと、かなり重たい病なのは知っている。健康に向かってくれてるのならなによりだ。

 

 

「あ、そう言えば聞いてよ、今日ひょっとしたら…………」

 

 

ソラが思い出したように言いかけると、直後に病室の扉が開き、青く麗しい長い髪を持つ少女、モビル王の早美アオイが入室して来た。

 

その手には大きな花束を持っている事から、弟であるソラのお見舞いに来たのだろう。彼女のすぐ横には側近である黒スーツの青年「フグタ」も確認できる。

 

 

「姉さん!!」

「ソラ、久しぶりですね。いい子にしてましたか?」

「うん、もちろんさ。今日姉さんが来るって言うから、ずっと楽しみにしてたんだよ、またプロのバトルのお話をたくさん聞かせてよ」

「えぇ、もちろんです」

 

 

………『今日ひょっとしたら姉さんが来るかもしれない』

 

先程ソラが言いかけた言葉はこれだろう。

 

そんな彼とのやり取りを見る限り、大抵の人物は早美アオイの事を『弟思いの良き姉』だと称するに違いない。

 

だが、オーカミは知っている、彼女が自分の友達であるイチマルに、何をしたのかを……………

 

 

「そうそう、メールしたからわかるとは思うんだけど、最近界放リーグ準優勝者のオーカミと仲良くなったんだ!!」

 

 

オーカミとアオイ、おそらくどちらの事情も知らないソラ。何の躊躇も躊躇いなく、友達となったオーカミを姉に紹介する。

 

 

「あなたとも、界放リーグ以来ですわね、オーカミ君」

「…………どーも」

「うっふふ……不思議な縁ですね。まさかあなたがソラとお友達になるなんて」

「…………」

 

 

オーカミに対しても優しい笑顔を振り撒くアオイだが、オーカミはその優しそうな表情の裏側に、黒い何かがあると感じる。

 

 

「おいおい、何ダンマリしてるのさオーカミ。ひょっとして姉さんが美し過ぎて緊張してるな〜〜」

「してない」

 

 

何も知らないソラが、オーカミを茶化す。

 

正直、今すぐにでも早美アオイに飛び掛かって、イチマルに与えた「ゼノンザードスピリット」の事を問いただしたい所だが、ソラがいると話しづらい。

 

 

「ソラ君、今から定期健診の時間だよ〜〜って、アオイさんにオーカミ君も来ていましたか」

 

 

そんな折、病室に入室して来るのは、早美ソラの担当医の男性「嵐マコト」………

 

若々しい顔をしているが、こう見えて40越えの中年男性だ。

 

 

「ご無沙汰しております、先生。ほらソラ、先生が呼んでますよ」

「うん。お話は後で聞かせてね」

「もちろんです。いってらっしゃい」

「じゃあオーカミ、ちょっと行って来るよ」

「あぁ、頑張れ」

 

 

最後にそう告げると、ソラは担当医の嵐マコトと共にこの病室を去っていった。

 

残されたのは鉄華オーカミと早美アオイ、その側近であるフグタのみ。オーカミとアオイはお互いに言いたい事があるのか、顔を見合わせる。

 

 

「…………ゼノンザードスピリット」

「!!」

「あなたが私に問い詰めたいのはこれの事でしょう?」

 

 

ソラに見せていた優しい仮面を外し、アオイはその黒い本性を表す。

 

どうやらオーカミが「ゼノンザードスピリット」に対してある程度知っている事もわかっている様子。

 

 

「イチマルの言ってた通り、やっぱりあのカードはアンタが」

「えぇ、そうです。ゼノンザードスピリットはその強力な力の代償として、憎悪や憎しみを増幅、暴走させてしまう特性がある。イチマル君も大方それに当てられたのでしょう」

「ふざけんな、当てられるのを知っててアンタが渡したんだろ」

 

 

まるでイチマルに与えたのは「ゼノンザードスピリット」と言う名の力だけで、そのリスクに陥る事は想定していなかったかのような言い方に腹を立て、オーカミは静かにその胸の内側にある怒りをぶつける。

 

 

「………まぁいいや、アンタが裏で何をやっていようと、オレには関係ない。でも、二度とオレの仲間や友達に関わるな」

 

 

鋭い眼光でアオイを睨みつけるオーカミ。だが、アオイはそんな彼の言葉を嘲笑うかのように…………

 

 

「うっふふ、怖い怖い。でも、それはできない相談ですね」

「ッ……なに!?」

 

 

そう告げた。それはつまり、これからも、オーカミやその身の回りの人物達に危害を加えると意味、宣言に等しい。

 

 

「あの一木花火の娘、一木ヒバナさん。あの子が持っている「アグモン-勇気の絆-」って言うカード…………アレ、あげたの私なんですよね」

「勇気の絆を、アンタが………ッ」

 

 

事実を教えられ、ヒバナの持つ勇気の絆のカードを思い出す。

 

あの時、準決勝でレオンとヒバナがバトルした時に一度見た時だ。確かに不気味な気配をそのカードから感じた。

 

そして、それが早美アオイからのカードと言うのなら…………

 

 

「相変わらず勘が良いですね。そう、ヤクーツォークだけじゃない、既に種は植えてあります、後は発芽を待つのみ」

「オマエ………!!」

 

 

イチマルだけじゃない。既にヒバナにも手を出していた事実を知り、オーカミの怒りは頂点に達する。

 

姉であるヒメに「女の子を傷つけてはダメ」だと教わっていたが、あまりの卑劣さに思わず拳を振るう。しかし、アオイの側近であるフグタがそれを掌で受け止めた。

 

 

「………いけませんわね。カードバトラーなら拳じゃなくてカードで語らないと」

「黙れ。なら今ここで、オマエはオレが潰す」

「私を倒しても意味なんてありませんよ。そんな事よりいいんですか?……私の情報源によれば、今頃ヒバナさんはイチマル君とアポローンでバトスピしている頃かと」

「!!」

「うっふふ、早く行かないと大変な事になるかもしれませんね〜〜」

 

 

思慮深さと不気味さを感じさせる笑顔を見せながらそう告げる早美アオイ。悔しいが、少なくとも今は彼女の言う通りである。

 

オーカミが一刻も早くやらないといけない事は、彼女を倒す事ではなく、ヒバナに「勇気の絆のカードは危ない」と伝える事だ。

 

 

「…………」

 

 

それを瞬時に理解したオーカミは、すぐさま病室を抜け出し、走り去って行く。

 

 

「フグタ、これで間違いなく最後の赤のゼノンザードスピリットが覚醒する。もうすぐ、もうすぐで6枚全てが揃う…………」

 

 

アオイが側近であるフグタに告げた。その笑みからはまた不気味さを感じさせるが、同時に余裕の無さも感じられて………

 

フグタは少し間を置き、彼女に返答する。

 

 

「………なぁお嬢。ここまで来て言うのもなんだがよ…………本当にこれでいいのか?」

「は?……何を今更、なんでそんな逃げ越し言うのよ。全てはあの子のため、6体のゼノンザードスピリットの戦闘データさえ手に入れば、Dr.Aがあの子の病気を治してくれるのよ!?」

「…………」

「そしたらまた3人で一緒に暮らせる。それだけが私の願いなの。そのためなら、他の人なんてどうなったっていい」

「………あぁ、そうだな」

 

 

目標が目前にまで到達したこの頃。主人であるアオイがやや暴走気味になっている事に、彼女を最も近くで見ているフグタが気づかないわけがない。

 

自分ではもうどうしようもない所まで来てしまった罪悪感と、止めれる立場にいながらアオイを止めてあげられなかった後悔の気持ちが交差し、彼はただ、その場で拳を固く握り締めた。

 

 

******

 

 

舞台は戻り、アポローンのバトル場にて、イチマルとヒバナのバトルスピリッツが続く。

 

イチマルの猛反撃により、緑ゴモラを失ってしまったヒバナだが、彼女の手にはまだエースの1体である「勇気の絆」のカードがあって…………

 

 

[ターン06]一木ヒバナ

 

 

「メインステップ………緑ゴモラを倒したからって調子に乗らないでよねイチマル!!……私のデッキにはまだまだたくさん強いスピリットがいるんだから!!」

「よし、どこからでもかかって来いヒバナちゃん!!」

 

 

どこまでも平和的で、どこまでも普通の、何気ないバトルスピリッツ。

 

だが、そんな平凡は唐突に終わりを迎える…………

 

 

「!!」

 

 

突如、ヒバナの手に持つカードが赤い輝きを放った。そのカードの名は「アグモン-勇気の絆-」……………

 

 

「え、ヒバナちゃんのカードが光った!?」

「こ、これって………!?」

 

 

突然カードやデッキが発光し、進化する現象「オーバーエヴォリューション」…………

 

一瞬だけそれではないかと頭を過ぎるヒバナだったが…………

 

実際には、そんな奇跡的なモノではなくて。

 

 

「ッ………き、キャァァァァァ!?!」

「ヒバナちゃん!?……どうした、ヒバナちゃん!!」

 

 

赤い光はやがて赤い稲妻となり、ヒバナを襲い始めた。

 

もがき苦しむ彼女を他所に、勇気の絆のカードはみるみるうちに変化を成していく……………

 

そして、合計はほんの十数秒だったか、赤い稲妻の迸りは収まり、ヒバナは無言で自分のBパッドの盤面と手札、もとい変化したカードを見つめる。

 

 

「ひ、ヒバナちゃん………おい、ヒバナちゃん!?」

 

 

見た事もない現象に戸惑い、怯えた声を震わせながら、イチマルがヒバナの名を叫んだ。

 

すると、ヒバナは虚な眼光を彼へと向けて…………

 

 

「………ヒバナ………そう、私は一木ヒバナ。あの『一木花火』の一人娘。誰にも負ける事は許されない」

「………え」

「そうだ。私はもう、鉄華オーカミにも、獅堂レオンにも、誰にも負ける訳にはいかないんだァァァァァァァ!!!」

 

 

バトル場に響き渡るのは、まだ中学生の少女が放つとは思えない程の怒号。

 

状況が飲み込めないイチマルは、ただその場で唖然とする事しかできない。

 

 

「な、なな何を言ってんだよヒバナちゃん………いったいどうしたって」

「私は、勇気の絆が変化したこのカードを召喚する!!」

「!?」

 

 

唐突にバトルへと戻り、ヒバナは何かに向ける怒りのままに、勇気の絆が変化したそのカードを己のBパッドへと叩きつける。

 

すると、上空から赤い稲妻が唸り、フィールドへと落雷する。

 

 

「司るは赤。全てを砕く、鳴動の要塞………ゼノンザードスピリット「オリジンズ02」アロンダイ………LV2で召喚!!」

「ッ……ゼ、ゼノンザードスピリット!?」

 

 

ー【「オリジンズ02」アロンダイ】LV2(3)BP12000

 

 

落雷した赤き稲妻の先に出現したのは、要塞を思わせる形容をした、ゴーレム。赤のゼノンザードスピリット「アロンダイ」…………

 

緑のゼノンザードスピリットであるヤクーツォーク程ではないが、ライダースピリットであるゼロワンやバルカンを見下ろす程度にはそのサイズは巨大である。

 

さらにその身体の節々から零れ溢れる闇のエネルギーが、ヒバナの周囲にまとわりつく。イチマルの時と同様、まるでゼノンザードスピリットに心を支配されているかのように見える。

 

 

「ヒバナちゃんがゼノンザードスピリットを!?……なななんで、どう言う事だ!?!」

 

 

ヒバナなの豹変ぶりと赤のゼノンザードスピリットの登場。

 

イチマルを驚愕させ、困惑させ、怯えさせるにはあまりにも十分すぎる内容であった。

 

 

「アロンダイの召喚時効果、自分のデッキを上から2枚を裏向きでフィールドへ、さらにトラッシュのコア1つずつをそれに置き、永続的にBP1000、赤シンボルが1つのスピリットとして扱う」

「ッ……スピリット展開効果!?」

「来なさい、オリジンズ!!」

 

 

ー【オリジンズ】LV1(1)BP1000

 

ー【オリジンズ】LV1(1)BP1000

 

 

アロンダイはその両手を大地へと伸ばし、体内に眠るマグマの力をそこへと注ぎ込む。

 

すると、熱された大地の中よりアロンダイによく似た小型ユニットが一気に2体展開される。

 

 

「アタックステップ………消し炭になりなさい。アロンダイでアタック、その効果でこのターンの間、自分のスピリット全ては相手にブロックされた時、相手ライフ1つを破壊する」

「な………じゃあアロンダイだけじゃなくて、呼び出された小型のスピリットをブロックしてもライフが飛ぶのかよ!?」

 

 

困惑するイチマルを他所にアタックステップへと移行するヒバナ。最初にアタックの指示を受けたのは、ゼノンザードスピリット、アロンダイ。その効果により、このターンの間、イチマルはブロックした瞬間にそのライフが1つ破壊される事となる。

 

つまり、少なくともアロンダイがアタックするターン、ほぼ全てのブロックは無駄になると言う意味に等しい。

 

 

「フラッシュマジック、ファイナルエリシオン」

「!!」

「シンボル1つのスピリット、アサルトウルフを破壊」

 

 

追い討ちを掛けるように赤の除去マジック。聖なる盾より放たれる一筋の光線がアサルトウルフを貫き、爆散させる。

 

そしてアロンダイのアタックは尚も続き…………

 

 

「………ブロックはしない。そのアタックはライフで受ける」

 

 

ブロック宣言などができるわけもない、困惑しつつもライフで受ける宣言をするイチマル。これは間違いなく最善の一手である。

 

だがしかし…………

 

 

「ぐっ…………ぐっ、ぐぁぁあ!?!」

 

 

〈ライフ3➡︎2〉鈴木イチマル

 

 

アロンダイが両手でイチマルのライフバリア1つを豪快に握り潰すと共に、イチマルに激痛が走り出す。

 

神経が抉れてしまうような感覚に、彼は思わずその場で片膝を曲げた。

 

 

「い、いてぇ………これがゼノンザードスピリットの一撃!?」

 

 

………『オレっちはこんな痛みをオーカミに与えてたって言うのかよ………!!』

 

立ち上がると同時に、自分がオーカミにしてしまった事への罪悪感が募って行く。

 

 

「ライフ減少後のバースト、絶甲氷盾!!」

「!!」

「効果でライフ1つを回復し、コストを支払ってこのターンのアタックステップを終了させる!!」

 

 

〈ライフ2➡︎3〉鈴木イチマル

 

 

イチマルがセットしていたバーストを勢いよく反転させる。

 

そのカードは最も汎用性の高い白の防御マジック「絶甲氷盾〈R〉」…………

 

それにより、イチマルのライフバリアは1つ回復し、ヒバナのこのターンのアタックステップを強制的に終了させた。ブロックされようが問答無用でライフを破壊するアロンダイの効果も、アタックステップそのものがなくなって仕舞えば怖くない。

 

 

「………ターンエンド」

手札:3

場:【「オリジンズ02」アロンダイ】LV2

【オリジンズ】LV1

【オリジンズ】LV1

 

 

「なんでヒバナちゃんがゼノンザードスピリットを手にしたのかは全然わかんねぇけど、やる事は1つ。オーカミがオレっちにしてくれた時みたいに、バトルで勝つだけだぜ!!」

 

 

与えてしまった痛みを知り、己の感情に渦巻いていた困惑と恐怖を断ち切ったイチマル。

 

デッキを試すバトルとは打って変わり、勝って取り戻すためのバトルへと身を投じる。

 

 

[ターン07]鈴木イチマル

 

 

「メインステップ………先ずはスピリットを展開しない事には話にならねぇ、オレっちは2体目のゼロワンを召喚!!」

 

 

イチマルのフィールドには3コストでBPも低いライダースピリット「ゼロワン」しか存在しない。

 

心許ないフィールドに更なる仲間を呼び出そうと、手札のカードをBパッドへと叩きつけるが……………

 

彼のBパッドは反応せず、フィールドには何も召喚されなかった。

 

 

「はぁ!?……え、なになに、なんなですか、まさか故障!?!……嘘だろこんな時に!?」

 

 

また慌てるイチマル。

 

だが、この現象は決して彼のBパッドが故障したからと言う理由ではなくて…………

 

 

「赤のマジック「ファイナルエリシオン」は、破壊に成功した時、次の私のスタートステップまで、あなたはコスト3、4、5のスピリットカードを手札から召喚できない」

「ッ………マジかよ」

 

 

………『オレのデッキは大半がコスト3と4。これじゃこのターンは何もできねぇ………!?』

 

ヒバナが「ファイナルエリシオン」の隠された効果を告げる。基本的に【チェンジ】を軸としたライダースピリットのデッキを使用するイチマルにとって、入れ替えの起点となるコスト3、4、5のスピリットらを展開できなくなるのは、かなり辛い。

 

 

「くっ………ちっくしょう…………ゼロワンにコアを追加して、ターンエンド」

手札:4

場:【仮面ライダーゼロワン】LV2

バースト:【無】

 

 

結局何もできず、苦渋のエンド宣言。殆どターンスキップのような扱いとなる。

 

ターンは再びアロンダイに意識を飲み込まれたヒバナへと巡り、さらに絶望的な状況が重なっていく…………

 

 

[ターン08]一木ヒバナ

 

 

「メインステップ………マジック、ファイナルエリシオン」

「な、2枚目!?!」

「効果でゼロワンを破壊し、もう一度手札に同じ規制を掛ける」

 

 

まさかの2枚目となるファイナルエリシオン。

 

出現した聖なる盾の中心部より放たれる一筋の光線が、今度はゼロワンを撃ち抜き、爆発させる。

 

 

「くっ………でも、ゼロワンは相手の効果によってフィールドを離れる時、コアブーストしながら疲労状態で残る」

 

 

爆発はしたものの、爆散はしない。ゼロワンは片膝を地面に置きながらも、ファイナルエリシオンの光線を耐え抜いて見せた。

 

 

「だけど、召喚制限効果は適応される。これで次のターンもあなたは召喚ができない」

「……!」

「もっとも、このターンで終わるけど」

 

 

その声にはもう以前のような温かみなど残ってはいない。ヒバナは何者をも凍てつかせてしまうような冷たい声色でラストターンを宣言する。

 

 

「アタックステップ……アロンダイでアタック、その効果でこのターンもブロックされた瞬間にライフ1つを破壊する」

「ぐっ………!!」

 

 

再びアロンダイが突き進む。この瞬間に、ヒバナのスピリット全てはまたしても効果を獲得。

 

イチマルがどうにかしてブロックしようとも、最低でも合計3回のアタックでゲームセットとなる。

 

 

「このアタックはライフで受ける…………ぐっ、ぐぁぁあ!?!」

 

 

〈ライフ3➡︎2〉鈴木イチマル

 

 

アロンダイがその岩でできた大きな両拳でイチマルのライフバリアを粉々に握り潰す。

 

イチマルはそれに伴ってやってくる激痛に、悲痛な叫びを上げながらもなんとか耐え抜く。

 

 

「続け、オリジンズ」

 

 

容赦のないヒバナの第二撃。今度はアロンダイの効果で呼び出された分身「オリジンズ」…………

 

2体いる内の1体がアロンダイの轍を踏み、イチマルの元へと突き進む。

 

 

「うぉぉぉぉ……耐えろ耐えろ、今1番キツいのはオレっちじゃない、ヒバナちゃんだろうが…………ここで廃れるなら男じゃねぇ!!」

 

 

負け時と全力で己を鼓舞し、立ち上がれた言い聞かせるイチマル。直後に手札から1枚のカードを抜き取り、それをBパッドへと叩きつけた。

 

 

「フラッシュチェンジ!!……ゼロワン フライングファルコン!!」

「!」

「チェンジ効果により、アタックしていないオリジンズを疲労させ、効果発揮後にゼロワンと回復状態で入れ替える!!」

 

 

ー【仮面ライダーゼロワン フライングファルコン[2]]】LV2(7)BP6000

 

 

吹き荒れる突風が、アタックしていない方のオリジンズを疲労させる。

 

さらにイチマルのフィールドでは、片膝を地につけたゼロワンが、プログライズキーと呼ばれる長方形のアイテムをベルトに装填。

 

緑色の通常のゼロワンから、マゼンタカラーのフライングファルコンとなり、さらに回復状態となり、立ち上がった。

 

 

「これで頭数は足りねぇ!!……ブロックしろ、フライングファルコン」

「だけどアロンダイの効果は顕在。ブロックした瞬間、ライフ1つを破壊する」

「ぐっ………!?」

 

 

〈ライフ2➡︎1〉鈴木イチマル

 

 

「だけど、BPはこっちが上だぜ!!」

 

 

イチマルのブロック宣言の瞬間にライフバリアが1つ砕けるが、彼はその痛みになんとか耐える。

 

フィールドではフライングファルコンとオリジンズが取っ組み合い、やがてフライングファルコンがオリジンズを抱き抱えながら飛翔。そのまま地面へと叩き落とし、爆散させる。

 

 

「ターンエンド。しぶとい………早くそこを退きなさいよ。私はこれからももっと多くの勝利を掴み取らないといけないの、勝たないといけないの、一木花火の一人娘として」

手札:3

場:【「オリジンズ02」アロンダイ】LV2

【オリジンズ】LV1

バースト:【無】

 

 

イチマルの時と同じ、ゼノンザードスピリットの影響によってかは定かではないが、己の内側にある心の闇を吐露するヒバナ。

 

自分とは比べ物にならない程に、大きな劣等感を抱えて生きていた彼女の事を知っているイチマルは…………

 

 

「………オレっちの知ってるヒバナちゃんは、もっと強くてかっこいいぞ。おいデカブツ野郎、いい加減ヒバナちゃんから離れねぇとこのイチマル様が黙ってねぇぞ!!………必ずヒバナちゃんを取り戻す!!」

 

 

ヒバナではなく、アロンダイへと怒りをぶつける。

 

心の弱さがあるのはヒバナとて同じである事は理解している。当然、今のヒバナが告げた事が本心である事もだ……………

 

だが、何の脈略もなく出て来て、勝手に人の心を晒し出し、挙げ句の果てには傷つけ合わせる。そんな鬼畜の所業に、イチマルはブチ切れる。

 

 

「オレっちのターン!!」

 

 

自分の知っている、一木花火の一人娘だからと言う大きなプレッシャーにも押しつぶされない、強いヒバナを取り戻すべく、イチマルはそのターンを進めていった…………

 

 

[ターン09]鈴木イチマル

 

 

「メインステップ………」

「ファイナルエリシオンの効果により、あなたはこのターンも、コスト3、4、5のスピリットカードを手札から召喚できない」

「そんなの言われるまでもないぜ。今の手札に対抗策がないなら、引き直すまでだ…………オレっちは仮面ライダーゼロワン メタルクラスタホッパーのチェンジ効果を発揮!!」

 

 

イチマルが使用したのは、大型スピリットの【チェンジ】効果。

 

【チェンジ】は入れ替える効果なので、ファイナルエリシオンの「召喚できない効果」に引っかからない。

 

 

「効果により今ある手札を全て破棄。そうしたとき、相手の手札1枚つき1枚を引き直す………今のヒバナちゃんの手札は3枚。よって3枚のカードをドローするぜ!!」

 

 

手札にある4枚のカードを破棄し、デッキから新たに3枚のカードをドローしていく…………

 

イチマルは恐る恐るそのカードらを視認していき…………

 

 

「よ、よし!!………この効果発揮後、入れ替えだ」

 

 

ー【仮面ライダーゼロワン メタルクラスタホッパー】LV3(7)BP16000

 

 

その光景はまさに白銀の嵐と言った所か、無数の鋼のバッタの群れが宙を飛び交い、フライングファルコンに装着されていく。

 

こうして新たに誕生したのは、ゼロワンの強化形態、ゼロワンメタルクラスタホッパー。その名の通り、鋼鉄のゼロワン。

 

 

「んでもって行くぜ!!………オレっちが手にした、オレっちだけの新しいエースカードを!!」

「!」

「【煌臨】発揮!!対象はメタルクラスタホッパー!!」

 

 

メタルクラスタホッパーのチェンジ効果で引き込んだカードは煌臨の効果を持つカード。それも、イチマルが新たなエースカードとしてデッキに投入した1枚。

 

フィールドにいるメタルクラスタホッパーは、己の身を眩い光へと包み込み、その中で姿形を大きく変化させて行く…………

 

 

「今こそ自分自身を変える、超える!!………仮面ライダーゼロツーをLV3で煌臨!!」

 

 

ー【仮面ライダーゼロツー】LV3(7)BP20000

 

 

やがて完全に形を整えると、メタルクラスタホッパーだったそれは、その身の眩い光を振り払い、ゼロワンの進化形態ゼロツーの姿を顕にする。

 

これこそまさに、イチマルの新たなエースカードにして、切り札。

 

 

「ゼロツー……ゼロワンじゃない……!?」

「あぁ、でもゼロワンとして扱う効果を持ってる。最高の相棒は、限界を超えて最強の進化を遂げてくれた。オレっちも絶対にこのバトルで自分の限界を超えて見せる!!……アタックステップだ!!」

 

 

ヒバナはゼロワンではなく、ゼロツーと言う新たなエースカードの登場に戸惑う。

 

そんな彼女を救うべく、イチマルはアタックステップへと突入する。

 

 

「ゼロツーでアタック!!……その効果でアロンダイを重疲労させることで回復!!」

「ッ……スピリットを重疲労させつつ回復!?」

 

 

イチマルの指示で動き出し、攻撃を仕掛けるライダースピリットゼロツー。高く跳び上がり、アロンダイを踏みつけにし、そのまま踏み台の要領でさらに高く大ジャンプする。その様はまさに大サーカス顔負けの曲芸。

 

踏みつけられたアロンダイは重疲労状態となり、地面へと這いつくばった。

 

 

「さらにゼロツーはダブルシンボル、ライフを2つ破壊する!!」

「………ライフで受ける」

 

 

〈ライフ4➡︎2〉一木ヒバナ

 

 

跳び上がったゼロツーの飛び蹴り攻撃がヒバナなのライフバリアに突き刺さる。それらは一気に2つ破壊され、残りの数もそれと同等になる。

 

 

「追撃だゼロツー!!……その効果で今度はオリジンズを重疲労させて回復!!」

「くっ………なぜ」

 

 

再び跳び上がるゼロツー。アロンダイの分身であるオリジンズが踏み台となり、それをさらに高く舞い上がらせる。

 

そして、このダブルシンボルのアタックに、ヒバナは打つ手が残っていなくて……………

 

 

「なぜ………なんで………私は、一木花火の娘なのに、なんで勝てない」

 

 

おそらく心の奥深くに眠っていたであろうヒバナの可能と悩みの根源。

 

ゼノンザードスピリットのせいで剥き出しになってしまったその感情ごと、イチマルのライダースピリット、ゼロツーが蹴り壊す……………

 

 

「うぉぉお!!……ゼロツービックバン!!!」

「!」

 

 

〈ライフ2➡︎0〉一木ヒバナ

 

 

ゼロツーは爆発のエネルギーを右足に溜め込み、ライフバリアを蹴り壊す際に、それを一気に放出する。

 

これまでのイチマルのバトルスピリッツが全て詰まったその一撃に、ヒバナなのライフバリアは耐えられず、粉砕。その数は遂に0となる。

 

彼女のBパッドから敗北を告げるように「ピー……」と言う機械音が鳴り響くと共に、フィールドに最後まで残ったアロンダイは、分身であるオリジンズ共々、もがき苦しみながら消え去って行く…………

 

 

「か、勝った………勝てた」

 

 

己が夢にまで見たヒバナへの勝利を実感していき、その身に高揚感が込み上げて来るが、視界に倒れるヒバナを目にした途端、ハッとなって彼女の元へと慌てて駆け出した。

 

 

「ひ、ヒバナちゃん!!」

「い……イチマル?」

「おうそうだオレっちだ!!……見たかよ、今日遂に勝ったぜヒバナちゃんに!!」

 

 

立つ力も残ってないヒバナ、イチマルの腕に抱かれながら、掠れた弱々しい声を上げる。

 

対してイチマルは心配ないよと言わんばかりに、大きな声で虚勢を張る。

 

 

「はは、まさかあんたに負けちゃう日が来るなんてね……………仕方ない、約束通り、今度デートしてあげるわよ」

「おぉよっしゃ!!……念願成就したぜ、どこに行こっか」

 

 

イチマルがヒバナに聞いた。本当はどこでもいいし、正直今はデートなんかよりヒバナなの体調の方が心配だったが、ここで笑ってやらねば男が廃ると言う思いから、涙を堪えて彼女に話を合わせる。

 

そしてヒバナは今にも消えそうな声で…………

 

 

「そう………ね。また今度………決め、ましょ………」

 

 

最後にそう告げると、ヒバナは瞳を閉じ、ゆっくりと深い眠りについた。

 

まるで死んだように動かなくなってしまった彼女を見るなり、イチマルは血相を変える。

 

 

「おいヒバナちゃん??……おい、なぁおいって!?……ヒバナちゃん!?!」

 

 

軽く肩を揺らし、必死に何度も呼び掛けるが、一向に目を覚ます気配を見せない。

 

 

「どうなってんだよおい、バトルには勝ったじゃねぇか!?……なんでだ、なんでだよォォォォォォォォォォォォオ!!!!」

 

 

直後、その悲しい叫びに反応するかのように、オーカミと、彼から話を聞いたヨッカがアポローンのバトル場へとようやく足を踏み入れるが、時すでに遅し…………

 

おそらく「勇気の絆」のカードから変化したゼノンザードスピリット「アロンダイ」の影響により、一木ヒバナは深い眠りについてしまっていた。

 

ヒバナと親しい者ならば、誰もが悲しみに暮れるであろうその悲劇。だが、それはまだ始まったばかりである……………

 

 






次回、第34ターン「激昂の武士道、白き荒獅子ヴァイスレーベ」
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