バトルスピリッツ 王者の鉄華   作:バナナ 

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第34ターン「激昂の武士道、白き荒獅子ヴァイスレーベ」

デジタルスピリットカード「勇気の絆」

 

早美アオイが一木ヒバナへと与えたそのカードの正体は「ゼノンザードスピリット・アロンダイ」と言う、絶大な力を得る代わりに、憎悪などの負の感情を昂らせる悍ましい悪魔の魔道具であった。

 

それを使用した一木ヒバナは、イチマルとのバトル後に意識を失い、病院へと搬送される事となった。

 

 

******

 

 

 

ここは界放市ジークフリード区の中で最も大きな病院。そこにある医務室にて、みんなの兄貴分である青年「九日ヨッカ」と、医者で、年齢の割に容姿が若々しい「嵐マコト」が、神妙な面持ちで対面していた。

 

その内容は、突然意識不明の重体に陥ってしまったヒバナについてであり……

 

 

「それでマコト先生、ヒバナは今、具体的にどう言う状況に陥っているんですか」

 

 

ヨッカの素朴な質問に対し、嵐マコトが答える。

 

 

「ヒバナさんは今、所謂植物人間、わかりやすく言うと『眠り続けている状態』と言った所でしょう」

「植物、人間」

「余程辛い事があったのでしょう。肉体的、精神的双方で辛い目に遭わない限り、持病持ちでもない彼女がこれに陥る事など、先ずあり得ませんから」

「……治るんですか?」

「わかりません。力不足で大変申し訳ないのですが、こればかりは彼女自身の生命力に委ねるしかありません」

「そう、ですか」

 

 

ヨッカは何もできない悔しさと、早美アオイ、Dr.Aとのいざこざにヒバナを巻き込んでしまった事に対する嫌悪感と罪悪感、どうしようもなく込み上げてくる己に対する怒りを飲み込むかの如く、その拳を固く握りしめる。

 

 

******

 

 

舞台は少しだけ変わり、同病院の入院室。差し込んで来る夕方のオレンジの日差しが、ベッドで横たわるヒバナの顔を照らし出す。

 

そして、そのすぐそばには、涙を流すイチマルと、こんな状況だと言うにもかかわらず、無表情で黙って突っ立っているオーカミがいて………

 

 

「ぐっ、ぐっぉぉぉお……なんで、なんでこんな事になってんだよ。ヒバナちゃん、頼むから目を開けてくれよ!!」

「………」

 

 

今日行われたイチマルとヒバナのバトル。あの中でヒバナの持つ「勇気の絆」のカードが何故かゼノンザードスピリットへと変貌し、彼女の性格も豹変。

 

ゼロツーの力もあり、辛うじてイチマルが勝利するものの、ヤクーツォークの時とは違い、ヒバナはまるで死んでしまったように意識を失ってしまった。

 

ただ泣く事しかできないイチマルを他所に、全ての元凶を知っているオーカミは、眉を顰め、険しい顔つきを見せる。

 

 

「イチマルのせいじゃないよ」

「でも、でもよぉ」

「ここで泣くのは多分、ヒバナに失礼だ」

 

 

バトルに勝ったイチマルがしていい表情ではない。そう思い、オーカミがイチマルに告げる。

 

だが、イチマルの涙はそれでも止まらないし、止められない。

 

 

「よぉ、オマエら」

「アニキ」

 

 

病室の扉を開けたのは、他でもないヨッカ。ついさっき、この病院のドクターである「嵐マコト」にヒバナの容態に関する事を聞いて来た所だ。

 

 

「アニキ、ヒバナはどうなんだ、治るの?」

 

 

オーカミがヒバナの事についてヨッカに訊いた。彼は軽く首を横に振り、答える。

 

 

「残念だが、天下のお医者様でも、それはわかんねぇみたいだ」

「………」

「そ、そんな……ヒバナちゃん」

 

 

追い討ちを掛けるような通告。増していく悲しさと切なさの中、ヨッカは「だがよ」と告げて…………

 

 

「きっとヒバナなら大丈夫だ。そう簡単にくたばるような奴じゃねぇ。それはオレも、オマエらもよく知っているはずだぜ」

 

 

元気付けようと、今尚も戦い続けているヒバナを信頼してもらおうと、優しく語り掛ける。

 

一見普通の好青年に見えるが、ヨッカとは不思議な男で、彼の言葉には何故か安心感を得られる物がある。さっきまで泣いてばかりだったイチマルも、今では知らずのうちに落ち着きを取り戻している。

 

これも元モビル王・Mr.ケンドーが持つカリスマ性といった所か。

 

 

「そういやイチマル。オーカからだいたいの事情は聞いたぜ。ゼノンザードスピリットだったっけか?………大変だったな」

「あぁ、いや、そんな事ないっすよ」

 

 

ヨッカが話題を少し逸らし、イチマル、ヒバナに危害を加えたゼノンザードスピリットの話とする。

 

同時に、ヨッカは着用している店用の赤いエプロンのポケットの中からある1枚のカードを取り出す。それこそ、元凶である赤のゼノンザードスピリット「アロンダイ」であり………

 

 

「これはヒバナのゼノンザードスピリット。イチマル、悪いがオマエが持ってるって奴もオレに貸してくれないか?」

「え、あ、はいっす」

 

 

イチマルはその言葉に戸惑いながらも、デッキケースに入っているヤクーツォークを取り出し、ヨッカに手渡した。

 

 

「ありがとよ、イチマル」

「何に使うの?」

 

 

オーカミがヨッカに訊いた。それに対し、ヨッカは病室を退室しようと、病室の扉の前まで歩むと、答える。

 

 

「状況から考えて、原因はどう考えてもこのカード達だからな。なぁに、ちょいと調べて来るだけさ、心配すんな」

「………」

 

 

ヨッカは最後にそれだけ告げると、ヒバナなの病室を後にした。

 

 

ー………

 

 

その後彼は急足で病院からも出ると、Bパッドを取り出した誰かの電話を繋げる。

 

 

《九日か、どうしたこんな遅くに》

「アルファベットさん」

 

 

通話の相手は、界放警察の警視「アルファベット」

 

サングラスを掛けた茶髪の青年であり、その殆どが謎に包まれている事でも有名。そんな彼と知人であるヨッカは、意を決して、ある事を告げる。

 

 

「悪いけど、オレは1人で早美邸に乗り込みます」

《なに?》

 

 

2人の追っている人物、悪魔の科学者「Dr.A」

 

その彼が早美アオイの住居である早美邸に潜んでいるのではないかと言う推測の下、2人で早美邸へ乗り込むと言う計画を少しずつ進めていたのだが、アルファベット側が未だその準備を完了できていないと言うにもかかわらず、ヨッカは今から自分1人だけでそこへ行くと告げたのだ。

 

Dr.Aがいるかもしれない以上、どんな危険が待ち伏せしているのかもわからない、1人で乗り込むのは、余りにも無謀が過ぎる。

 

 

《何か策でもあるのか》

「そんなものはないです」

《………無策か、ならやめとけ。何が起こるかわからんぞ》

「何が起こるかわからない??………知らないですよそんな事、こっちは身内が巻き添えになってんだ。もう黙って見過ごす事なんてできねぇ……!!」

《………九日、オマエ何があった》

 

 

オーカやイチマルの前では平然と振る舞っていたが、本当は早美アオイやDr.Aに対して怒り心頭だったヨッカ。

 

この煮え繰り返ったはらわたは、もう彼らを倒さなければ抑えられない。

 

 

「ゼノンザードスピリット」

《……なんだそれは》

「オレも知りません。でも多分、アイツが、Dr.Aが作ったものです」

《!!》

「一応、調べといてください。それじゃ」

《おい待て九日、まだ話は終わって》

 

 

終わってないぞと言い切る前に通話を切る。そしてヨッカは2枚のゼノンザードスピリットを握り締め、諸悪の根源が蔓延っているであろう拠点『早美邸』へと歩みを進めるのであった…………

 

 

 

******

 

 

 

陽の光が完全に消え去った夜。残暑が散り、やや涼しくなって来る時間帯。

 

直径で言うと、大体200メートル程か、それ程にまで広大で雅やかな庭園を持つ豪邸『早美邸』…………

 

その中にある一室にて、早美アオイはただ1人、高そうな座椅子に腰を下ろし、高貴な紅茶を啜っていた。その頭の中にあるのは、常に「ゼノンザードスピリット」と、弟である「早美ソラ」のみ………

 

そんな折、部屋の扉からノックされる音が聞こえて来る。アオイはノックのリズムやテンポで、扉の前にいるのが誰かわかった。

 

 

「なにフグタ、紅茶はまだ枯れてませんわよ?」

 

 

ノックをしたのは、アオイの側近である青年「フグタ」だ。

 

 

「こんな時間だが、お嬢に来客だ。対応してくれ」

「………成る程、そう言う事ね」

 

 

アオイはフグタのその言葉だけで全てを察すると、すぐさまBパッドとデッキだけを持ち、部屋を出た。

 

 

ー………

 

 

ここは早美邸修練場。

 

早美邸の地下に存在し、主に早美アオイがバトルの修練を行うために作られた。もっとも、モビル王となった今では余り使われてはいないが…………

 

 

「早美邸へようこそ、九日ヨッカさん」

「……よう」

 

 

反響しやすいこの場で対面しているのは、早美アオイと九日ヨッカ。フグタが言っていた「来客」とは、ヨッカの事で違いないのだろう。

 

いつもは女性相手なら笑顔を絶やさない彼だが、今日はそんなそぶりすら見せず、終始仏頂面である。

 

 

「いえ、この場ではMr.ケンドーとお呼びした方がよろしいのでしょうか。こんな遅くに、いったいどうななさったんですか?」

「…………」

 

 

その向けられる笑顔、丁寧な口調の全てが、ヨッカにとっては煽りのようにしか思えない。

 

既にその整った顔立ちが崩れるまでぶん殴ってしまいたい所だが、彼ははやる気持ちを抑え、僅かに震える手で2枚のゼノンザードスピリット「ヤクーツォーク」と「アロンダイ」を取り出し、彼女へと投げ渡した。

 

 

「ッ……おやおや、これはイチマル君にあげたヤクーツォークのカード。そしてこっち方は………うっふふ、わざわざ返却しに来てくれたのですね、ありがとうございます」

 

 

アロンダイのカードを見るなり、アオイは計算通りだと言わんばかりに、先程よりもさらに不気味な笑顔を浮かべる。

 

 

「Dr.Aはどこだ?」

「それはお答えできません。ごめんなさいね」

「だったら今すぐここに呼べ!!!」

「…………」

 

 

ヨッカの怒りが遂に爆発する。

 

 

「全く関係のない奴らまで巻き込んで、何のつもりだ!!」

「アレは必要な犠牲です。しょうがないでしょう?」

「な訳あるか!!……君の目的はだいたいわかってる、Dr.Aの言う事を聞き、病気の弟、早美ソラを治してもらおうってんだろ!?」

「!!」

 

 

真実を言い当てられ、早美アオイの顔色は変わる。そのいかにも図星だと告げるような彼女の表情で、ヨッカは自分の予想が真実であると確信。

 

 

「その顔、ホントっぽいな。馬鹿かよ、相手は界放市どころか世界を滅ぼし掛けた最凶最悪のマッドサイエンティストだぞ。素直に言う事聞いて治してもらえるわけねぇだろ。そのせいでイチマルとヒバナは」

「うるさいですね」

「!!」

「あなたのお節介にはもううんざりです」

 

 

ヨッカの言葉を強引に遮ると、アオイは落ち着きを取り戻すために一度深呼吸。そして、また直ぐに猫を被り、笑顔を向ける。

 

 

「失礼しました。最近は忙しくてついつい怒りっぽく…………あ、そうそう、今宵はあなたに是非、お会いしたいと言う方々もいらっしゃってるんですよ」

「オレに、会いたい……方々?」

「えぇ、どうぞお入りください」

 

 

アオイの声が修練場内に反響する。それが耳に入ったのか、扉を開け、この修練場に足を踏み込む人物が2人。

 

1人は界放リーグで三度の優勝を果たした銀髪の少年「獅堂レオン」

 

もう1人は、界放市に君臨する最強のライダースピリット使い「ライダー王」にして、ヨッカとは兄弟弟子の関係にある青年「レイジ」

 

 

「獅堂レオン!?……れ、レイジ!?!……なんでオマエらがこんな所に」

「んだよヨッカ、この状況を見てもまだわかんねぇのか。相も変わらず察しの悪い奴だ。そんなんだから『モビル王』から『元モビル王』になっちまったんだよ、オマエは」

 

 

正直、言われるまでもなく、この早美邸で出会した時点で、なんとなく察しがついていた。

 

だが、信じたくなかった。昔から嫌がらせして来るウザい弟弟子であったが、同じ師匠の元で共にバトルの修行に励み、切磋琢磨し合った仲。

 

心の奥底では熱く、固い絆で結ばれているものだと、思っていたのだから。

 

 

「ニブチン野郎に教えてやる、オレと早美アオイ、そしてDr.Aは初めからグルだったのさ」

「……!!」

 

 

突然の告白に、裏切りの事実に、ヨッカは喪失感を感じ、その表情は悲しみに歪む。

 

 

「ヒャハ、ヒャァッハッハッハ!!……そうだぜヨッカ、オレはオマエのそう言う顔が見たかったんだァァァ!!!」

「………趣味の悪い方ね」

 

 

落ち込むヨッカを大きな声で嘲笑うレイジ。そんな彼を気味悪く思っているのは、アオイだけでなく、獅堂レオンも同じだ。

 

本当に趣味が悪い。

 

 

「オレはこの小娘よりも前にDr.Aと繋がっていた。アイツをプロに推薦したのも、テメェとのタイトルマッチを勝手に取り行ったのもオレ!!」

「な、なんでそんな事を」

「全部オレよりも弱ぇクセに粋がるテメェを失脚させるために決まってんだろ」

「!!」

 

 

つまり、ヨッカ、もといモビル王Mr.ケンドー失脚の原因を間接的に作ったのは彼、ライダー王レイジであると言う事。

 

Dr.Aとの利害が一致したために協力関係となり、早美アオイをプロにし、彼と戦わせるよう裏で取引をしたのだ。

 

 

「オマエ、Dr.Aがオレらの師匠、春神イナズマ先生を誘拐したかもしれない事は知ってんのかよ、知っててここにいるのかよ!?」

「あぁ!?……イナズマなんて知るか、オレの知ったこっちゃねぇ」

 

 

2人にバトルや、もっと大事な事を教えてくれた恩師「春神イナズマ」

 

ヨッカはDr.Aの元部下でもある彼が、今現在、そのDr.Aに計画遂行のために誘拐されているのではないかと推測しているが、少なくともレイジはその事は詳しく知らない様子。

 

 

「オレはずっとオマエが気に食わなかった。強くもねぇクセに粋がり、人気だけは集め、挙げ句の果てにはオレに兄貴面すらして来る。だからオマエを三王から引き摺り下ろしてやりたかったんだよ」

「Dr.Aがどれだけ危険な奴かは、この界放市で暮らしてる奴なら誰でもわかるだろ!?」

「だからテメェのそう言う所が気に食わねぇつってんだろが。オレ様の思い通りにしてくれるなら、悪魔との相乗りなんていくらでもしてやんよ」

 

 

ヨッカを失脚させるため。そんなくだらない動機でDr.Aに協力していたレイジ。

 

ヨッカは彼との付き合いは長いが、まさか彼からそこまで恨まれていたとは思ってもいなかった。イチマルやヒバナの事と言い、予想だにしない衝撃の展開の連続で、その背中からは悲壮感が漂う。

 

 

「オーカから、弟分から聞いた。イチマルは、オマエの弟だったんだろ。なんで危険な目に遭わせた!?」

「ヒャァッハッハッハ!!……あんなゴミ、オレの弟な訳ねぇだろ。ゴミはゴミらしく、リサイクルしようと思ってな!!」

「なん、だと……!!」

 

 

自分の実の弟でさえも、人として認識しないレイジに、ヨッカはまたたちまち頭に血が昇る。

 

 

「レイジ、今すぐオレと戦え、オマエをぶっ倒して、もう一度イナズマ先生との修行の日々を思い出させてやる………!!」

 

 

怒りに身を任せ、ヨッカは懐から取り出した己のデッキを、レイジへと突きつける。

 

 

「やだね」

「なに!?」

 

 

だが、レイジは小指で鼻をいじりながら、それを拒否。

 

 

「勘違いすんなよ。オレだって相手はしてやりてぇ、身内がやられたからとか言うわけわからん理由でのこのこ敵地に乗り込んで来たオマエをわからせてやりてぇさ。だがよ、オマエとやりてぇつって聞かねぇ奴がいんだよ。なぁ、獅堂レオン」

「!!」

 

 

そうだ。

 

すっかり目の前のレイジに夢中になってしまっていたが、ここには何故か界放リーグで優勝を果たした獅堂レオンもいた。

 

 

「同じモビルスピリット使い、年齢は早美アオイよりもさらに下、プロでもない。これに負けたら、もうオマエは恥ずかしくて街も歩けなくなるなぁ」

「レイジ」

「ヒャハ、まぁオマエはバトル中にダッセェ仮面つける小心者だったから関係ねぇか………ヒャァッハッハッハ!!!」

「黙って下がれ、下衆が。ここからはオレの出番だ」

「あぁ?……んだと、このガキ」

 

 

レイジを差し置いて前に出るレオン。その生意気な口調に、レイジはイラつきを見せるも、結局は従い、舌打ちしながら後ろへと下がっていった。

 

 

「九日ヨッカ、もといMr.ケンドー。鉄華とやる前の模擬戦としては悪くない相手だな」

「………」

 

 

向けられる戦意に、ヨッカの怒りは自然に沈静化していく。そして今になって、オーカミから言われた、ゼノンザードスピリットの事を思い出す。

 

 

「ゼノンザードスピリットは、所有者の怒り、憎悪を暴走させるかもしれないって、オーカが言ってたな。オマエも………いや、まさかレイジもそれに当てられてるのか!?」

「さぁ来い。今のオレの力を、オマエにたっぷりと味わってもらう!!」

「…………」

 

 

兎に角今はやるしかない。

 

ヨッカはそう思い、Bパッドを取り出すと、自身の左腕にセット、その後デッキを装填し、バトルの準備を早々に完了させる。それに合わせ、レオンもまた同様の手順で戦闘態勢に入った。

 

 

「そこで見てろよレイジ、これの次はオマエだ」

「ヒャァッハッハッハ!!!………強がるじゃねぇか、やれるもんならやってみろよヨッカ!!」

 

 

………ゲートオープン、界放!!

 

 

怒りや憎悪、憎しみ、微かな希望、純粋な戦闘欲が飛び交う中、ヨッカとレオンによるバトルスピリッツが幕を開ける。

 

先攻はヨッカだ。その背中から悲壮感を漂わせながらも、己のターンを進めていく…………

 

 

[ターン01]九日ヨッカ

 

 

「メインステップ。ネクサス、ヘファイトスの鍛治神殿をLV1で配置」

 

 

ー【ヘファイトスの鍛治神殿】LV1

 

 

ヨッカの背後より、神に与えられし神殿の1つ、背景に溶岩流れる火山が添えられた、ヘファイトスの鍛治神殿が配置される。

 

 

「ターンエンドだ」

手札:4

場:【ヘファイトスの鍛治神殿】LV1

バースト:【無】

 

 

絶賛怒りが心頭中とは言え、バトルでは至って冷静なヨッカ。このターンはネクサスカードの配置のみでターンを終える。

 

次はおそらくゼノンザードスピリットを得たであろう獅堂レオンのターンだ。

 

 

[ターン02]獅堂レオン

 

 

「メインステップ、オレはザクウォーリア2体を連続召喚する」

 

 

ー【ザクウォーリア】LV1(1)BP2000

 

ー【ザクウォーリア】LV1(1)BP2000

 

 

レオンのデッキの歩兵とも呼べる、低コストモビルスピリット、緑の装甲を持つザクウォーリアが2体出現する。

 

 

「バーストをセットし、アタックステップ。今召喚した2体でアタックする」

「なに、アタック!?」

 

 

最初のターンから、これまでの彼とは全く違うプレイングに困惑するヨッカ。

 

獅堂レオンのデッキは白、守りが得意な属性。だと言うにもかかわらず、最初からフルアタックを仕掛けて来るのは側から見れば愚策にも等しい。

 

 

「何を驚く必要がある。貴様が答えるのは2つに1つ、ライフで受けるのか、受けないのか?」

「………そんなの、当たり前体操だな、ライフで受ける」

 

 

困惑こそしたものの、愚策には変わりない。増えたコアを活かしてカウンターを決めてやろうと思考をよぎらせるヨッカ。

 

ザクウォーリアのアタックを全てライフで受けるが………

 

 

「ぐっ、ぐァァァッ!?」

 

 

〈ライフ5➡︎4➡︎3〉九日ヨッカ

 

 

2体のザクウォーリアがヨッカのライフバリアを殴りつけ粉砕。それと同時に、ヨッカの身には内側から抉れるような鋭い痛みが襲い掛かる。

 

 

「な、なんだ今のは!?……いてぇ」

「これは鉄華から聞いていなかったのか?……ゼノンザードスピリットを持つ者が与えるバトルダメージは現実となる」

「ッ……バトルダメージを現実に!?」

 

 

俄かには信じ難い現象だが、あのDr.Aが作ったカードだと言うのであれば納得はできる。が、この痛みをオーカミやイチマルが受けていたのだと思うと、静まっていた怒りがまた沸々と湧き上がって来る。

 

 

「気に食わねぇ顔だな。少しは怖気づけってんだ」

「怒るなら見なければいいんじゃないでしょうか?」

 

 

ヨッカの勇敢な振る舞い、毅然とした表情に苛立ちを覚えるレイジ。それに対してやや辛辣な言葉をぶつけるアオイにも舌打ちを送る。

 

 

「ターンエンドだ。今度は貴様の攻撃をオレに見せてみろ」

手札:2

場:【ザクウォーリア】LV1

【ザクウォーリア】LV1

バースト:【有】

 

 

「全く、偉そうな歳下だな」

 

 

ゼノンザードスピリットが与える痛みにも負けず、ヨッカは自分を慕ってくれる仲間たちのため、勇敢に立ち向かう。

 

 

[ターン03]九日ヨッカ

 

 

「メインステップ、少しお灸を据えてやる、オレはユニオンフラッグカスタムを【トップガン】の効果で3コストで召喚する」

「!」

 

 

ー【グラハム専用ユニオンフラッグカスタム】LV3(4)BP10000

 

 

ヨッカの場に飛来して来たのは、群青色に輝く装甲を持つモビルスピリットの1体「ユニオンフラッグカスタム」

 

このスピリットには、彼のデッキを大きく回転させる役割があり………

 

 

「ユニオンフラッグカスタムの召喚時効果、手札にあるこのブレイヴ、グラハム・エーカーをノーコストで召喚、そのままブレイヴだ」

 

 

ー【グラハム専用ユニオンフラッグカスタム+グラハム・エーカー】LV3(4)BP15000

 

 

彼のデッキの中核を担うパイロットブレイヴ、グラハム・エーカーがユニオンフラッグカスタムとコスト無しで合体。見た目に変化はないが、その性能は飛躍的に上昇している。

 

 

「だが相手スピリットの召喚時効果発揮により、オレのバーストを発動」

「ここで開くか」

「王者の威光、キングスコマンド。その効果でデッキから3枚ドローし、1枚捨てる」

 

 

レオンがユニオンフラッグカスタムの効果に合わせて発動したバーストカードは、青属性の汎用性の高いバーストマジック「キングスコマンド」

 

効果により、手札を増やが、ヨッカはそんなものお構いなしだと言わんばかりに自分のターンを進めていく。

 

 

「ヘファイトスの鍛治神殿のLVを2にアップ。これでオマエはコスト3以下のスピリットでアタックする時、リザーブのコア1つをトラッシュに置かないといけなくなった」

「ザクウォーリアへの対策か」

 

 

3コスト以下のスピリットのアタックに制限を掛ける効果を発揮するネクサスカード、ヘファイトスの鍛治神殿。

 

これにより、レオンはザクウォーリアによるアタックを考えさせられることとなる。

 

 

「アタックステップ、ユニオンフラッグカスタムでアタック、この瞬間合体したグラハムの効果で自身を回復させる」

 

 

このターンからヨッカも攻める。ユニオンフラッグカスタムが腰に備え付けられたビームサーベルを引き抜き、背中のスラスターでレオン目掛けて飛翔する。

 

 

「フラッシュタイミング、今度はユニオンフラッグカスタムの効果でコスト5以下のザクウォーリアを破壊、そうした時、ボイドからコア1つを自身に追加する」

「ほぉ、破壊とコアブーストの両方をやって来るか」

 

 

地面スレスレを飛翔するユニオンフラッグカスタムがザクウォーリア1体にビームサーベルで一閃。その装甲を真っ二つに斬り裂き、爆散させた。

 

だが、ザクウォーリアもただでは転ばない。

 

 

「ザクウォーリアの破壊時、ボイドからコア1つをトラッシュか他のザクに追加。もう1体のザクウォーリアにコアを置くぞ」

 

 

負けじとコアブーストするレオン。しかし、コアが増えたからとて、ヨッカの攻撃を止められると決まったわけではない。

 

 

「そのアタックはライフで受ける」

 

 

〈ライフ5➡︎4〉獅堂レオン

 

 

ユニオンフラッグカスタムの華麗なるビームサーベル捌きが、今度はレオンのライフバリアを襲う。それも1つ両断され、残りは4つとなる。

 

 

「ターンエンド」

手札:3

場:【グラハム専用ユニオンフラッグカスタム+グラハム・エーカー】LV3

【ヘファイトスの鍛治神殿】LV2

バースト:【無】

 

 

強力な合体スピリットを展開しつつ、レオンのスピリットとライフを破壊し、大きくアドバンテージを得たヨッカ。

 

合体の効果により回復したユニオンフラッグカスタムをブロッカーとして残し、そのターンをエンドとする。

 

 

「フン、お灸を据えると言っておきながら、この程度か」

「馬鹿言え……『少し』って言ったろ。オマエさては自分が置かれている状況を理解していないな?」

 

 

ヨッカの発言からして、より強力な攻撃を想定していたレオン。不満という名の愚痴を溢す。

 

 

「パイロットブレイヴ、グラハム・エーカー。合体中、相手のエンドステップ時かフィールドを離れる時【零転醒】でミスター・ブシドーに転醒、その転醒時効果で、九日ヨッカは手札に備えているであろうエースカード「スサノオ」を召喚できる」

「御名答だぜ早美アオイ。流石オレのデッキを調べ尽くしただけの事はあるな」

 

 

バトルを傍観している早美アオイが、レオンに助言するように告げる。彼女の言う通り、このターン、ヨッカは己のエースカードであるモビルスピリット「スサノオ」召喚の準備を進めたのだ。

 

しかし、レオンはそれを聞いてもなお「だからなんなのだ」とでも言いたげな表情を見せ…………

 

 

「オレのターンだ」

 

 

[ターン04]獅堂レオン

 

 

「メインステップ。先ずは手元に送られたザクウォーリアを再びフィールドへと呼び出す」

 

 

ー【ザクウォーリア】LV1(1)BP2000

 

 

前のターンに破壊されたザクウォーリアが復活。

 

低コスト故にヘファイトスの鍛治神殿の効果でアタックがしづらいものの、その何度でも復活できる可能性を秘めた破壊時効果は、主なスピリットの除去手段が破壊に偏っているヨッカのデッキにとって非常に厄介な存在であろう。

 

 

「行くぞ。ネクサス、要塞都市ナウマンシティーをLV1で配置」

 

 

ー【要塞都市ナウマンシティー】LV1

 

 

「ッ……ザフトのネクサスじゃない?」

 

 

ザクウォーリアに続けてレオンが呼び寄せたのはネクサスカード。彼の背後に機械仕掛けの巨大な像が身を置く、霧掛かった都市が出現する。

 

その効果は、元モビル王たるヨッカを驚愕させるには十分過ぎる効果であり………

 

 

「ナウマンシティー配置時効果。手札にある白のスピリットカードをノーコストで召喚する」

「なに!?」

「この効果により、オレは手札からデスティニーガンダムをLV2でノーコスト召喚する」

 

 

ー【デスティニーガンダム】LV2(2)BP15000

 

 

「4ターン目でデスティニーガンダムだと!?」

 

 

ナウマンシティーから警告を促すようなサイレンが鳴り響くと、そこからレオンのフィールドへと飛び出して来たスピリットが1体、彼のエーススピリットである「デスティニーガンダム」だ。

 

彼のデッキからそれが出て来る事自体、当たり前であり、なんの不思議ではない。しかし、全モビルスピリットの中でも五本の指に入るスペックを所有する、コスト9の超大型のスピリットが、僅か4ターンで登場するのは計算違いである。

 

 

「アタックステップ。エンドステップとは悠長だな、早々に貴様のエースを引き摺り出してやるぞ。デスティニーガンダムでアタック、その効果でBP15000以下のユニオンフラッグカスタムを破壊」

「!!」

 

 

アタックステップの開始早々、デスティニーガンダムは上空に飛び立ち、手に持つ巨大なランチャーをユニオンフラッグカスタムへと向け、そこから極太のレーザー光線を放つ。

 

ユニオンフラッグカスタムは胸部を撃ち抜かれ、爆発四散する。

 

そしてそれだけでは終わらない。

 

 

「さらに、破壊したユニオンフラッグカスタムのシンボル分、つまり1つ、貴様のライフをボイドに置く」

「ッ……ぐ、ぐォォォォ!?」

 

 

〈ライフ3➡︎2〉九日ヨッカ

 

 

デスティニーガンダムの極太のレーザーは、ヨッカのライフバリアをも撃ち抜き、内1つを跡形もなく粉砕する。これで残り2つだ。

 

しかし、彼も負けてはいない。身体の細胞が爆発するような痛みに耐え抜き、破壊されたブレイヴの効果を発揮する。

 

 

「くっ………グラハムの効果【零転醒】………自身を裏返し、ミスター・ブシドーに転醒。そしてその効果で、手札からコイツを呼び、合体させる」

「あぁ、さっさと呼ぶがいい」

 

 

ミスター・ブシドーへの転醒を果たすグラハム。その効果で、ヨッカは己の手札にある1枚のカードを、Bパッドへと叩きつけた。

 

 

「その剣技、天空をも斬り裂く!!……モビルスピリット、スサノオを召喚!!」

 

 

ー【スサノオ+ミスター・ブシドー】LV3(5)BP21000

 

 

黒い外装に甲冑を思わせる角を施したモビルスピリット、スサノオがこの場に参上。ミスター・ブシドーとの合体により、デスティニーガンダムよりも強力な存在として、君臨する。

 

 

「待っていたぞスサノオ。さぁデスティニーガンダムはアタック中、これをどう受ける?」

 

 

レオンからの問い掛けに、ヨッカは互いのフィールドと自分の手札を見つめ、答える。

 

 

「スサノオでブロックはしない、ライフで受ける」

「だろうな」

「ぐっ……ぐァァァァァァッ!?」

 

 

〈ライフ2➡︎1〉九日ヨッカ

 

 

デスティニーガンダムは頭部に備え付けられたバルカン砲を掃射。ヨッカのライフバリアを砕き、遂に残り1つまで追い詰める。

 

 

「当然ね。スサノオでデスティニーをブロックすれば、破壊されたデスティニーのコア2つがリザーブに送られる」

「ヒャハ。そうなればヘファイトスの鍛治神殿のコストを満たせるようになり、残った2体のザクウォーリアがアタックして来る。しぶといなヨッカ、だがオレには聞こえて来るぜ、テメェの敗北の鼓動がな」

 

 

スサノオが場に残り、どちらかと言えばヨッカの方が有利な状況であるにも関わらず、早美アオイも、ライダー王レイジも、誰もヨッカが勝つとは思っていない。

 

 

「ターンエンドだ」

手札:3

場:【デスティニーガンダム】LV2

【ザクウォーリア】LV1

【ザクウォーリア】LV1

【要塞都市ナウマンシティー】LV1

バースト:【無】

 

 

彼らがそう思う理由として、間違いなく知っているからであろう。

 

獅堂レオンに与えられた、Dr.Aの魔道具「ゼノンザードスピリット」を…………

 

 

[ターン05]九日ヨッカ

 

 

「メインステップはすっ飛ばして、アタックステップだ。その開始時に、スサノオの【武士道】の効果を発揮、デスティニーガンダムに一騎打ちを所望し、強制バトル」

「お家芸のテキストだな。迎え撃て、デスティニー」

 

 

第5ターンは早々にアタックステップへと突入し、スサノオの【武士道】の効果により、デスティニーと強制バトル。

 

スサノオは薙刀を手に、デスティニーへと斬り掛かる。デスティニーもそれに対抗すべく、長大なビームサーベルを手に取る。

 

地上から上空を何度も行き来し、激突していく両者。だが次第にデスティニーが押され始め、やがてスサノオの振るう薙刀に、その機翼ごとビームサーベルを切断、最後に胸部も両断されて無惨にも爆散する。

 

 

「スサノオが【武士道】でスピリットを倒した時、相手ライフ1つをリザーブに置く」

「!」

 

 

〈ライフ4➡︎3〉獅堂レオン

 

 

デスティニーの爆発の余波は、レオンのライフバリアに二次被害を齎す。

 

さらに、スサノオの攻撃自体は、まだ始まってもいなくて…………

 

 

「スサノオでアタック。合体によりトリプルシンボルだ」

「………ザクウォーリアでブロック」

 

 

デスティニーをも軽々突破して見せるスサノオに、ザクウォーリアごときで相手が務まるわけがない。

 

瞬く間に薙刀で斬り裂かれ、爆散してしまう。

 

 

「破壊時に2体目のザクウォーリアにコアを追加し、自身を手元へ」

「エンドステップ。スサノオの効果でもう一度アタックステップを行う、その時に再び【武士道】を発揮、残ったザクウォーリアを倒し、ライフももらう!!」

「!」

 

 

〈ライフ3➡︎2〉獅堂レオン

 

 

スサノオの効果により、再び【武士道】が発揮。目にも止まらぬ早業で、残ったザクウォーリアと、レオンのライフバリア1つを斬り裂く。

 

これでレオンの場にスピリットは0。ネクサスのナウマンシティーのみとなる。

 

 

「破壊時でトラッシュにコアを1つ追加。ザクウォーリアのカードを手元へ」

「………ターンエンドだ」

手札:3

場:【スサノオ+ミスター・ブシドー】LV3

【ヘファイトスの鍛治神殿】LV2

バースト:【無】

 

 

スサノオが獅子奮迅の如く活躍を見せ、一気にレオンを追い詰める。

 

だが、レオンのその表情に、一切の焦りも感じられなくて…………

 

 

[ターン06]獅堂レオン

 

 

「メインステップ。ザクウォーリア2体を手元より復活させる」

 

 

ー【ザクウォーリア】LV1(1)BP2000

 

ー【ザクウォーリア】LV1(1)BP2000

 

 

「クソ、またそいつらかよ」

 

 

スサノオに容易く蹴散らされようが、ザクウォーリアは幾度となくフィールドへと蘇って来る。

 

召喚直後、レオンは、それらから生み出されるシンボルを糧に、手札より1枚のカードを己のBパッドへと叩きつけた。

 

 

「続けてネクサス、要塞都市ナウマンシティー」

「なッ……2枚目!?」

 

 

ー【要塞都市ナウマンシティー】LV1

 

 

レオンの背後に配置される2枚目のナウマンシティー。そうしたと言う事は、それ即ち、もう一度強大な白のスピリットを呼び出すと言うサインであり………

 

 

「配置時効果発揮。オレはコイツを呼ぶ……!!」

「またデスティニーを!?」

「そんな生温いモノではない」

 

 

突如としてフィールドを襲う猛吹雪。周囲の者の視界が遮られる中、レオンはそのスピリットを呼び出す。

 

 

「司るは白。運命をも噛み砕く、我が牙!!……ゼノンザードスピリット、百獣・ヴァイスレーベ!!……LV3で召喚!!」

 

 

ー【「百獣」ヴァイスレーベ】LV3(6)BP18000

 

 

吹雪の中、レオンのフィールドへと降り立つ、機械仕掛けの白銀の獅子。

 

その名は白のゼノンザードスピリット「ヴァイスレーベ」………

 

それは現れるなり、気高くも猛々しい雄叫び一つで吹雪を掻き消す。

 

 

「こ、これがゼノンザードスピリット……」

「オレが得た、力だ!!」

 

 

初めてゼノンザードスピリットを目の当たりにするヨッカ。

 

今まで感じた事ない、圧倒的迫力に思わず呑まれ掛けるが「自分は負けられないのだ」と強く意思を保つ。

 

 

「………そう言えばよ。なんでオマエはゼノンザードスピリットなんか手にしたんだ。それがなくても十分強いだろ」

 

 

ゼノンザードスピリットの登場により、再び境地に立たされたヨッカが、レオンに訊いた。

 

 

「無論、鉄華オーカミに勝つためだ」

「オーカに?」

「あぁ、オレは今度こそあの赤い目の力を超える!!……そして証明してやる、楽しむためのバトルスピリッツではなく、師匠に教えてもらった、勝つためのバトルスピリッツこそが至高である事を!!」

 

 

高らかに宣言するレオン。それに合わせてヴァイスレーベもまた雄叫びを上げるが…………

 

それを見て聞いたヨッカは、恐怖を忘れ、笑みが溢れた。

 

 

「ぷっ、ワッハッハッハ!!」

「………何がおかしい」

 

 

今度はレオンがヨッカに訊いた。笑われたような気がして、良い気分にはならなかったのだろう。

 

 

「いや、おかしいさ。だって、楽しむためにバトスピする、勝つためにバトスピをする。どっちも当たり前の事だろ?」

「!!」

「そこに優劣はない。そりゃ個人によって優先度は違うだろうけど」

 

 

幼き頃から12の歳まで「芽座葉月」と言う、世間では極悪人扱いされている人物を師匠としていたレオン。

 

彼のバトルに憧れ続けたが故に、彼の価値観こそが全てであった。しかし、ヨッカのその言葉は、今までの考え方を完全に論破するものであり………

 

 

「黙れ!!」

「!」

「貴様とはやはりソリが合わないな。このターンで終わりにしてくれる」

 

 

ヨッカの言葉を煽りとして認識し、怒り心頭のレオン。Bパッドにあるゼノンザードスピリット「ヴァイスレーベ」のカードへと手を掛ける。

 

 

「アタックステップ、ヴァイスレーベよ、奴を噛み砕け!!」

「!」

「ヴァイスレーベの効果、相手は可能ならブロックしなければならない。もっとも、今の貴様にブロックできるスピリットはいないがな」

 

 

ヴァイスレーベで無慈悲のアタック宣言。残りライフが1つのヨッカはこのアタックが通って仕舞えば敗北となってしまうが…………

 

 

「ならブロックしてやろうじゃねぇか。フラッシュマジック、光翼之太刀」

「!」

「その効果により、このターンの間、スサノオのBPを+3000し、疲労状態でのブロックを可能とする、迎え撃て!!」

 

 

白の防御マジックで対処していく。スサノオはその効果を受け、BP24000となり、このターンは疲労状態でのブロックが可能となる。つまり、バトルにさえ勝つ事ができれば全てのアタックを1体で防ぐ事ができるのだ。

 

 

「ヴァイスレーベのBPは18000。対するスサノオのBPは24000……大きいBP差ですね」

「ヒャハ……だがよ、超えるぜ、あのガキは」

 

 

悲しい事に、ライダー王レイジの予測は的中する事となる。

 

 

「フラッシュマジック、双光気弾」

「ッ……!!」

「この効果でパイロットブレイヴ、ミスター・ブシドーを破壊」

 

 

レオンの放った赤属性のマジック「双光気弾」により、ヨッカのBパッド上にある「ミスター・ブシドー」のカードがトラッシュへと誘われる。

 

これによりスサノオのBPは19000まで減少。

 

 

「さらにマジック、アルティメットパワー。ヴァイスレーベのBPを3000上昇」

「なに!?」

 

 

ー【「百獣」ヴァイスレーベ】BP18000➡︎21000

 

 

追い討ちのマジック。遂にヴァイスレーベがスサノオのBPを超える。

 

フィールドではヴァイスレーベが背中に備え付けられたガトリング砲を連射。スサノオはそれを薙刀で弾きながら接近していくが、その動きを完全に見切ったヴァイスレーベが薙刀に噛みつき、その凄まじい咬合力で砕いて見せる。

 

武器を失ったスサノオは一度距離を取ろうと後退しようとするが、ヴァイスレーベはその隙を逃さず、ガトリング砲を再び連射。スサノオの装甲を撃ち抜き、爆散へと追い込む。

 

 

「ヴァイスレーベのLV2、3の効果。バトルで相手スピリットを破壊した時、相手のライフ1つとネクサス全てを消し飛ばす」

「!!」

「終わりだ。歴戦の王、Mr.ケンドー」

 

 

〈ライフ1➡︎0〉九日ヨッカ

 

 

「ぐっ………ぐァァァァァァァァァ!!!」

 

 

スサノオに勝利したヴァイスレーベの雄叫びが、ヨッカのヘファイトスの鍛治神殿と最後のライフバリアを粉々に粉砕する。

 

これにより、勝者は獅堂レオンだ。白のヴァイスレーベを完璧に操り、元三王、元モビル王のヨッカことMr.ケンドーを超えてみせた。

 

 

「ぐっ……イチマル、ヒバナ………ライ、オーカ………」

 

 

体中が焼けるような痛みに意識が朦朧とする中、親しい人物達の顔がヨッカの脳裏に浮かぶ。

 

皆を守るため、負けるわけにはいかない、倒れるわけにはいかない。その意思を持ちながらも、彼は遂に気を失い、その場に倒れ込んでしまう。

 

 

「ヒャハ、ヒャーハッハッハッハ!!!……ざまぁねぇぜヨッカァァァァァァ!!!」

 

 

その光景を見て、誰よりも喜んだのは他でもない、ライダー王のレイジだ。彼の奇妙で汚い笑い声が、この早美邸修練場に響き渡る。

 

 

「よくやった。褒めて使わすぜ獅堂レオン、お礼にジュースでも奢ってやろうかぁ、うん?」

「黙れ、下衆が」

 

 

レイジを軽くスルーすると、レオンは修練場を去ろうと歩みを進める。

 

 

「どこに行くのですか、レオン君」

「オレは、次に訪れるであろう鉄華とのバトルに備え、デッキを練り直す」

「……そうですか」

 

 

バトルの最終局面の際、ヨッカに言われた言葉を意識してしまっていると察するアオイ。彼を止めてケアしようとはせず、敢えて野放しにした。

 

 

「………あぁ、フグタ?……ネズミを捕らえたから牢屋に入れててちょうだい」

 

 

レオンがいなくなった直後、アオイはBパッドの通話機能で側近であるフグタに、倒れたヨッカの処理の命令を言い渡す。

 

 

「ヒャハ、無様無様」

「………ホント、性格の悪いお方ですね貴方は。これで満足なんですか?」

 

 

レイジの性格の悪さに呆れるアオイ。そんな彼に、これ以上はもういいのかと一応問い掛けるが…………

 

 

「はぁ?……なわけねぇだろ。コイツにはとことん絶望を拝ませてやる。そうだな、今度はオレ様の完全下位互換のデッキを持つ、奴の弟分を痛みつけて来るとするか」

「オーカミ君を……?」

「あぁ、獅堂レオンにゃ悪いが、あのチビが傷ついたと知った時のコイツの顔を見るのが、今から楽しみだぜ」

 

 

そう告げると、高笑いしながら、レイジもまたどこかへと去っていった。

 

彼の票的は、憎き九日ヨッカの弟分にして、鉄華団と言う誰も見た事がなかったカード群を操る少年「鉄華オーカミ」……………

 

 

******

 

 

翌朝。朝の日差しがカーテン越しでも感じられるようなら時間に、ヨッカと共に暮らす少女、春神ライは目覚める。

 

 

「ふぁ〜〜あ………ヨッカさん?」

 

 

まだ眠たそうに欠伸をした直後、自分が起きる頃には朝食から昼食までを作ってくれるヨッカの気配を全く感じない事に気がつく。

 

ライはすぐさま家のあちこちを探ってヨッカを探すが、出てきたのは彼の部屋のベッドの下にある18禁の本程度だった。

 

 

「ヨッカさんまたどっか行ってるな。朝まで帰って来ないのは結構久し振りだけど」

 

 

ヨッカとは1年前程から同居しているライ。

 

行方不明になっている彼女の父親を探してくれているヨッカは、それ関連なのか、度々家からいなくなる事があった。故に、彼女にとっては、何の不思議でもなくて…………

 

 

「全く、いつもこのライちゃんを置いて行くとは、良い度胸してるな。仕方ない、今日は私が飛び切りに美味しい物をご馳走様してせんぜよう」

 

 

だが、そのライの料理を、ヨッカが食することはなかった。

 

何せ、彼の身柄は、早美邸にて拘束されてしまったのだから…………

 

 

 






次回、第35ターン「戦慄の滅亡迅雷」
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