バトルスピリッツ 王者の鉄華   作:バナナ 

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第35ターン「戦慄の滅亡迅雷」

九日ヨッカはいなくなって2日が経過。

 

オーカミに病院で「ゼノンザードスピリットの事を調べて来る」と言ったっきり、彼は一向に姿を現さなくなった。

 

その理由は至って単純。早美邸に1人で乗り込み、返り討ちにあって囚われの身となってしまったからだ。

 

ただし、それを知る者は未だごく少数に限られており…………

 

 

******

 

 

界放市ジークフリード区にあるカードショップ「アポローン」………

 

いつもは多くの客で賑わいを見せる人気のカードショップの1つだが、ここ数日、店長の「九日ヨッカ」が姿を見せない事で、その活気は尻すぼみとなっていた。

 

 

「センパイまたサボリか。全く、連絡もつかないし、これはストライキ確定だな〜」

 

 

アポローンのバイトの女性の1人、雷雷ミツバがそう呟く。

 

ヨッカ自体、仕事をサボったりする事は日常茶飯事なためか、現時点では特に心配はしていない様子。

 

 

「よしオーカ、お客もセンパイも来ないし、今日は店閉めてパーっと遊ぶか」

「………」

 

 

ミツバが同じくバイトのオーカミにそう告げるが、その話題に一切の興味を示さない。

 

彼女としては、いつも以上に気分が暗めな弟分を励ましたつもりだったのだが………

 

 

「あぁ、よしイチマル。店閉めるの手伝おうか。今日はとびっきりのお菓子を買って来てるのだ、みんなで食べるぞ」

「………」

「もう、2人ともいつまでそうしてるつもり??……センパイがいなくなるなんていつもの事じゃん」

 

 

オーカミもイチマルも、どこか上の空だ。ヨッカの事もだが、未だに意識を取り戻さないヒバナの事も気掛かりなのだろう。

 

ミツバは、そんな彼らに痺れを切らし、本音を告げる。

 

 

「すんませんミツバさん。正直、ヒバナちゃんがあんなになって、ヨッカさんもここ2日どっか行ってて、なんて言うか、どう気持ちを持って居ればいいかわかんなくて」

「そんなの、2人を信じる。その一択でしょうよ。何があったかわからないけど、ヒバナちゃんの意識は戻るし、センパイも何食わぬ顔で戻って来る。これは当然の摂理ってやつよ」

「…………」

 

 

イチマルとミツバが会話のやり取りをしている中、オーカミは2日前にヨッカから感じた違和感の事を考えていた。

 

まるで自分らを避けて行くような感覚は、未だに染み付いている。

 

ゼノンザードスピリットに関する事のほとんどは彼に伝えた。早美アオイが全ての元凶である事も…………

 

だとしたら。

 

 

「………アニキ」

「何オーカまであんなカッコつけ気にしてんのよ。暇だから、今からバトル場の掃除に行くよ」

「え、だる」

「だるいとか言わない。こうなったらうんと店を綺麗にして帰って来たセンパイを驚かせるわよ〜〜……イチマルはレジよろしくね」

「オレっちレジ担当!?……バイトでもないのに!?」

「つべこべ言わない。終わったら遊びに行くよ」

 

 

オーカミの首根っこを捕まえ、強引に広大なバトル場の清掃に参加させるミツバ。彼女も彼女なりに気を使ってくれているのであろう。

 

そして、彼らが店内のバトル場に赴くと、イチマルはバイトでもないのにレジ前へと立つ。

 

 

「まぁ、きっとミツバさんの言う通りだよな。その内元通りになる、全部」

 

 

ミツバの心遣いは、少なからずイチマルには響いていたようで、彼はその重たい心が、少しだけ軽くなるのを感じた。

 

 

そうだ。

 

きっともうすぐで何もかもが元通りになる。ヒバナも目覚めるし、ヨッカも何食わぬ顔でひょっこり顔を出す。

 

そうに違いない。

 

 

「!」

 

 

そんな折、アポローンの固定電話に一通の着信が入る。

 

しかしそれは至極当たり前の事。ここはカードショップ、お店なのだから。

 

何かわからない事があったら一度保留にしてオーカミらに聞こう。そう思い、イチマルは固定電話から子機を取り出した。

 

 

「はい、もしも」

《おう、ヨッカの弟分か》

「!!」

《久し振りだな、頭の悪そうなテメェにもう一度自己紹介してやる、オレはライダー王のレイジ。界放市の中でも指折りの実力者だ》

 

 

その声を聞くなり、途端に声を詰まらせる。

 

無理もない、何せ通話して来たのは、紛れもない自分の実の兄「鈴木レイジ」だったのだから…………

 

 

《ヒャハ、驚き過ぎて声も出ないか》

 

 

ー『なんで兄ィがアポローンに』

 

心の中はそれで一杯一杯だ。ただ、友好的な態度でない事は、声色からしてなんとなく察しがつく。

 

 

《いいか、今から大事な事を話す。よく聞けよ》

「…………」

《テメェのアニキ、九日ヨッカは預かった》

「!!」

《返して欲しけりゃ、今からFAXに届く指定のポイントまで、1人で来い………来なかったら、愛しのアニキがどうなっても知らないぜ………ヒャハ、ヒャーハッハッハ!!!》

 

 

通話はここで途切れる。すると直後に、FAXに位置情報が届く。

 

 

「兄ィがヨッカさんを誘拐した!?……そんな、馬鹿な」

 

 

信じられない事実に、身も心も震え上がる。

 

だが、それらは直後に「決意」と言う名の2文字で固まり…………

 

 

「何がどうなってんのかさっぱりだけど、止めなきゃ、オーカミじゃなくて、このオレっちが……!!」

 

 

これは自分のやるべき使命だと決意した彼は、位置情報を視認し、覚えると、すぐさまアポローンから走り去っていった。

 

当然、バトル場の清掃をしていたオーカミとミツバはこの事を知らなくて………

 

 

******

 

 

とある場所にある、とある一室。明かりもない暗がりのこの部屋に、サングラスの男はいた。

 

その名は「アルファベット」…………

 

この界放市の警察官の1人、警視である。彼は、床に散りばめられた有象無象の資料を拾っては読み漁り、見当違いの物ならば、また床に捨てるを繰り返していた。

 

 

「九日の残した「ゼノンザードスピリット」と言う言葉。7年前、Dr.Aが使っていたアジトの跡地ならば、何かわかると思ったが………」

 

 

そう。ここはかつて、悪魔の科学者である「Dr.A」が、A事変を起こす際の拠点として使用していた場所。今でもこのアルファベットのみが知る叡智の塊。

 

彼が蘇ったと言う情報を得た時より、この場所を警戒し、盗聴器まで仕掛けていたが、自分の叡智が集っていると言うにもかかわらず、何故か彼は未だにここへ姿を現さなかった。

 

警戒するより前からここに来ていたと言う線も考えられるが、調べた所、そのような形跡は微塵も見られない。

 

 

「ゼノンザードスピリットの情報は、あの被害者共に直接聞くしかないか。そしてDr.A、一度もここに姿を見せないと言う事は、やはり早美邸が奴の今の拠点か、いや、それとも………」

 

 

………『今のDr.Aは、オレが知っているあのDr.Aとは別人なのか?』

 

 

******

 

 

界放市は、日本最大のバトスピ都市であるが、世間一般的に見ても、十分立派な大都市である。

 

大都市であるが故に、ビル影に隠れた広大な裏路地もまた、それに比例するように多い。

 

………『鈴木レイジ』

 

界放市を代表する『三王』の1人『ライダー王』である彼は、目の上のたんこぶであったヨッカの弟分「鉄華オーカミ」を容赦なく痛ぶり、叩き潰すべく、その広大な裏路地の1つで、今か今かと待ち侘びていたのだが……………

 

 

「どう言う事だ」

「………」

「なんでテメェがいるんだよクソゴミ。赤髪のチビはどうした」

「………オーカミなら来ないよ兄ィ。さっき電話に出たのは、オレっちだからね」

 

 

結果的に現れたのはオーカミではなく、実弟であるイチマル。

 

期待してた通りの展開にならず、レイジは額から青筋を浮かび上がらせる。

 

 

「兄ィ、ヨッカさんはどこだ!!」

「知らん」

「なんでヨッカさんを攫ったんだよ。ヨッカさんが何したってんだよ!!」

「知るか」

 

 

いくら辺りを見渡してもヨッカは見当たらない。イチマルはレイジを問い詰めるが、当然ながら質問の答えは返って来ない。

 

 

「兄ィは、そんな事するような人じゃないって信じてたのに、どうしてだ!!」

「黙れカス。テメェごときが偉そうにオレ様の前に立つんじゃねぇ、いいからさっさと赤髪チビを呼んで来い」

「………」

 

 

昔から素行こそ悪かったものの、バトルの実力や、それに対する向上心が強く、イチマルはとても尊敬していた。

 

だがいつしか悪い面が目立つようになり、遂には犯行に走っている。イチマルは、これを止めれるのは、弟の自分しかいないと、悟って…………

 

 

「バトルだ兄ィ」

「あぁ?」

「オレっちがバトルに勝ったら、ヨッカさんを解放して、もうこんな事やめるんだ」

 

 

イチマルは展開されたBパッドを左腕にセットしながら、レイジに告げた。

 

彼のその行為に、レイジはまた額に大きな青筋を浮かび上がらせる。

 

 

「誰にモノ言ってやがる、身の程わきまえろや」

「自分の兄貴にバトスピ挑むのが、そんなにダメなのかよ」

「あぁ?」

 

 

イチマルの煽りに対し、レイジは静かに怒りの炎を燃やす。

 

 

「雑魚の分際で偉そうに………まぁいい、ちょうど良い機会だ、二度と逆らえねぇようにしてやる」

 

 

イチマルに対する怒りのまま、レイジもBパッドを展開し、左腕にセット。そして互いに己のデッキをそこへ装填し、バトルの準備を終える。

 

 

「行くぞ、兄ィ」

「滅亡させてやる、迅雷の如くな」

 

 

………ゲートオープン、界放!!

 

 

日向の当たらないジークフリード区の広大な路地裏にて、ライダー王レイジと、その弟イチマルによるバトルスピリッツがコールと共に幕を開ける。

 

先攻はイチマルだ。狂ってしまった兄、レイジを正気に戻すべく、己のターンを進めていく。

 

 

[ターン01]鈴木イチマル

 

 

「メインステップ……仮面ライダーゼロワンをLV1で召喚」

 

 

ー【仮面ライダーゼロワン】LV2(1)BP2000

 

 

イチマルの初手は、彼のデッキの中で最も召喚の優先度が高い、緑の色のライダースピリット、ゼロワン。

 

 

「その召喚に合わせて、手札にあるネクサスカード、ライズホッパーの効果を発揮。ノーコストで配置し、効果でトラッシュに1コアブースト」

 

 

ー【ライズホッパー】LV1

 

 

天空より差し込んでくる一条の光より、ゼロワン専用のバイク型マシーン、ライズホッパーが出現。その効果によりコアが増加。

 

 

「そんでもってゼロワンの召喚時効果。自身に1コアブーストし、オレっちの手札が3枚以下なら、デッキ上から5枚オープン、その中にあるライダースピリットカード1枚を手札に加える」

 

 

現在のイチマルの手札は3枚。よってこの効果は全て適応。

 

合計5枚のカードがイチマルのデッキトップからオープンされ、彼はその中にある1枚のカードに目を向ける。

 

 

「フライングファルコンを手札に加え、残りはデッキの下へ。ターンエンドだ」

手札:4

場:【仮面ライダーゼロワン】LV1

【ライズホッパー】LV1

バースト:【無】

 

 

ゼロワンデッキの中でも1位2位を争う程に強い動きを行い、多くのシンボルとコアを稼ぐ事に成功したイチマル。

 

幸先の良いスタートを切り、そのターンをエンドとする。

 

 

[ターン02]レイジ

 

 

「メインステップ………性懲りもなくライダースピリットか、オレの真似すんじゃねぇって何度言やわかる」

 

 

メインステップ開始早々に、レイジはイチマルのライダースピリットデッキに対して指摘する。

 

その口振りからして、どうやら何度も口煩く言っていた様子。

 

 

「最初は兄ィの真似だったさ。兄ィのバトルに、ライダースピリットの勇姿に憧れた。でも今は違う、ゼロワンと一緒に、オレっちは兄ィを超える!」

「………」

 

 

レイジの怒りのボルテージが溜まる。

 

 

「テメェ、無能のゴミかと思ったら、どうやらオレを怒らせる才能だけはあるみたいだなぁ」

 

 

直後、レイジは己の手札を引き抜き、メインステップを再開する。

 

 

「創界神ネクサス、アークの秘書・アズを配置」

 

 

ー【アークの秘書・アズ】LV1

 

 

「出た、兄ィのデッキの創界神……」

「オレの女だ」

 

 

レイジが初手で配置したのは、鉄華団のオルガと同様の創界神ネクサスカード。

 

彼の側に、黒く長い髪の少女を模したアンドロイドが出現。赤く光る瞳孔と、妖艶に微笑むその表情には、紫属性らしい邪悪さを感じさせる。

 

 

「配置時の神託。対象は2枚、アズにコア+2」

 

 

アズにコアが2つ追加されたところで、レイジは手札から更なるカードを己のBパッドへと叩きつける。

 

 

「さらに仮面ライダー雷をLV1で召喚」

 

 

ー【仮面ライダー雷[2]】LV1(1)BP2000

 

 

「アズにコア+1、召喚時効果で1枚ドロー」

 

 

レイジが呼び出したのは、全体的に赤みを帯びている紫属性のライダースピリット、雷。

 

その効果で彼はデッキから1枚のカードをドローする。

 

 

「雷……滅亡迅雷の「雷」のスピリット」

「ターンエンドだ。さっさと来い」

手札:4

場:【仮面ライダー雷[2]】LV1

【アークの秘書・アズ】LV2(3)

バースト:【無】

 

 

スピリット、創界神ネクサスとの2枚で2つのシンボルを作り上げたレイジ。このターンを一度エンドとする。

 

 

[ターン03]鈴木イチマル

 

 

「メインステップ、さっき手札に加えたフライングファルコンをLV2で召喚」

 

 

ー【仮面ライダーゼロワン フライングファルコン】LV2(4)BP6000

 

 

「召喚時効果でゼロワンとトラッシュに1つずつコアブースト」

 

 

イチマルのフィールドに呼び出されるのは、2体目のゼロワン、マゼンタカラーのフライングファルコンだ。

 

その効果で2つのコアが追加される。

 

 

ー『兄ィのデッキは「滅亡迅雷」……「滅」「亡」「迅」「雷」それぞれの名を関するライダースピリットが揃った時に真価を発揮する。だったら揃う前に決着をつける』

 

 

レイジのデッキは、あまり速度は速くないが、その分終盤のパワーはかなり高い。

 

それを知っているイチマルは、なるべく早期に決着をつけるため、このターンのアタックステップへと移行する。

 

 

「アタックステップ、フライングファルコンでアタック!!……その効果で3コストを支払って回復する」

 

 

アタックステップの開始早々に、フライングファルコンが両手を翼のように広げて飛び立つ。

 

その際に回復状態となるが、維持コア不足のため、LVは2から1へとダウンする。

 

 

「ライフだ」

 

 

〈ライフ5➡︎4〉レイジ

 

 

フライングファルコンの上空からの飛び蹴りが炸裂し、レイジのライフバリアを1つ砕く。

 

 

「もう一度フライングファルコンだ!!」

「ライフ」

 

 

〈ライフ4➡︎3〉レイジ

 

 

直後に二撃目も直撃。再びライフバリアが砕け散るが、イチマルの怒涛の連続アタックはまだ終わらず…………

 

 

「最後、ゼロワンでアタックだ!!」

「ライフ」

 

 

〈ライフ3➡︎2〉レイジ

 

 

通常のゼロワンでもアタック。跳躍からの、拳を叩き込む一撃が、レイジのライフバリアをさらに1つ砕き、残り半数以下へと追い込む。

 

 

「よし、これで兄ィのライフは残りたったの2つ、ターンエンド!!」

手札:4

場:【仮面ライダーゼロワン】LV1

【仮面ライダーゼロワン フライングファルコン】LV1

【ライズホッパー】LV1

バースト:【無】

 

 

「…………」

 

 

怒涛の連続攻撃により、一気にライフ差で優位に立ったイチマル。

 

一方でレイジは、イチマルが本当に優位に立っていると思っている事に対し、また怒りのボルテージが溜まって…………

 

 

[ターン04]レイジ

 

 

「メインステップ、フライングファルコン2体を召喚」

 

 

ー【仮面ライダーゼロワン フライングファルコン】LV1(1)BP3000

 

ー【仮面ライダーゼロワン フライングファルコン】LV1(1)BP3000

 

 

「兄ィもフライングファルコンを!?」

「アズにコア+2。効果でコアを4つブースト」

 

 

ターン開始早々に呼び出されたのは、イチマルと同じくゼロワンスピリットのフライングファルコン。

 

確かに、ライダースピリットの中でもかなり汎用性に富んだカードではあるが、あの兄が、自分と同じカードをデッキに仕込んでいた事に驚きを隠せない。

 

 

「1ターンだ」

「?」

「1ターンだけ待ってやる。テメェが本当にオレを超えるんなら、その1ターンでどうにかして見せろや、ターンエンド」

手札:3

場:【仮面ライダー雷[2]】LV1

【仮面ライダーゼロワン フライングファルコン】LV1

【仮面ライダーゼロワン フライングファルコン】LV1

【アークの秘書・アズ】LV2(5)

バースト:【無】

 

 

残りライフが半数を下回っているにもかかわらず、意味深にイチマルに1ターンの猶予を与えるレイジ。

 

強者故に重圧の掛かる言動だが、事実かハッタリか定かではない。

 

しかしイチマルには、これが紛れもない事実である事を理解していた。何せ今の自分の相手は、兄、ライダー王レイジなのだから…………

 

 

「兄ィに言われるまでもねぇ、このターンで決める。オレっちの全力をぶつける!!」

 

 

どちらにせよ、イチマルに挑む以外の選択肢はない。

 

囚われの身となってしまったヨッカのために、己のデッキを、ゼロワンを信じ、巡って来たターンを進めていく。

 

 

[ターン05]鈴木イチマル

 

 

「メインステップ、ゼロワン メタルクラスタホッパーのチェンジを発揮」

「!」

「効果により今ある手札を全て破棄。そうしたとき、兄ィの手札1枚つき1枚を引き直す。兄ィの手札は3枚。よって3枚のカードをドローする!!」

 

 

手札にある4枚のカードを破棄し、デッキから新たに3枚のカードをドローする。そしてその中に有力なカードを発見したか、イチマルは「よし」と呟き、その喜びを表す。

 

 

「この効果発揮後、対象のスピリットと入れ替える。オレっちは、ゼロワンをメタルクラスタホッパーと入れ替え、その後LV3にアップさせる!!」

 

 

ー【仮面ライダーゼロワン メタルクラスタホッパー】LV3(7)BP16000

 

 

その光景はまさに白銀の嵐と言った所か、無数の鋼のバッタの群れが宙を飛び交い、ゼロワンに装着されていく。

 

こうして新たに誕生したのは、ゼロワンの強化形態、ゼロワンメタルクラスタホッパー。その名の通り、鋼のゼロワン。

 

 

「んでもって【煌臨】発揮、対象はメタルクラスタホッパー!!」

 

 

立て続けにスピリットを進化させる効果『煌臨』を発揮。フィールドにいるメタルクラスタホッパーは、己の身を眩い光へと包み込み、その中で姿形を大きく変化させて行く…………

 

 

「今こそ自分自身を変える、超える!!………仮面ライダーゼロツーをLV3で煌臨!!」

 

 

ー【仮面ライダーゼロツー】LV3(7)BP20000

 

 

やがて完全に形を整えると、メタルクラスタホッパーだったそれは、その身の眩い光を振り払い、ゼロワンの最強進化形態ゼロツーの姿を顕にする。

 

これこそまさに、イチマルのエースカードにして、切り札。

 

 

「兄ィ、これがオレっちの新しいエースカード、ゼロワンを超えた、ゼロツーだ!!」

「喧しい、吠えるな雑魚が」

 

 

仮にも強者か。レイジはゼロツーから溢れ出る、強力なスピリットのオーラを物ともしていない。

 

 

「アタックステップ、ゼロツーでアタック。その効果で雷を重疲労させて回復だ!!」

 

 

アタックステップ突入直後、ゼロツーはレイジの場にいるライダースピリット、雷に強力な覇気を飛ばし、それを跪かせる。

 

さらに自身を回復状態にし、このターン、2度目のアタックが可能となる。

 

 

「このアタック時効果にターンに一度の制限はない。残ったスピリットも重疲労させて、必ず兄ィのライフ2つを破壊する!!」

 

 

勝利は目前。勢いに乗るイチマルだったが、ライダー王レイジは、それを遇らうように鼻で笑った。

 

 

「………テメェ、この程度で息巻いてたのか。やっぱ雑魚はどう努力しても、雑魚のままか」

「え?」

「余興は終いだ。このオレ様にたてついた事を、今から死ぬ程後悔させてやる」

 

 

イチマルの強さが己に満たない事を再確認したレイジ。完膚なきまでに叩き潰すべく、手札にあるカードを1枚、Bパッドへとセットした。

 

 

「フラッシュマジック、アークの意志」

「!」

「効果により、先ずはゼロツーのコアを1個にする」

 

 

ー【仮面ライダーゼロツー】(7➡︎1)LV3➡︎1

 

 

「なに!?」

 

 

発揮されたマジックカードの効果により、ゼロツーに紫の光が纏わりつく。それはゼロツーの力を最大限に奪い去り、弱体化させる。

 

 

「くっ……だけどゼロツーのさっきの効果はLV1から発揮できる。コアが1個でも残っていれば、オレっちの勝ちだ」

 

 

これだけでも十分に強力なマジック「アークの意志」

 

だが、その本領発揮は、その後の効果であり…………

 

 

「だから雑魚なんだよテメェは。このオレ様が、このタイミングでそんな意味のないマジックカードを使うわけねぇだろが。その後、トラッシュから「滅亡迅雷ライダースピリット」を1体、ノーコストで召喚する」

「蘇生効果!?!」

 

 

紫属性特有の蘇生効果。マジックカード「アークの意志」は、コア除去効果だけでなく、その効果まで内包していた。

 

レイジは直後に「オレはコイツを出す」と告げ、トラッシュからカードを選び、それをBパッドへと叩きつける。

 

 

「その名の元に、全てを滅せよ………仮面ライダー滅 スティングスコーピオン、LV2で召喚!!」

 

 

ー【仮面ライダー滅 スティングスコーピオン[2]】LV2(2)BP10000

 

 

「不足コストは2体のフライングファルコンより確保、消滅させる」

 

 

2体のフライングファルコンがコア不足により消滅する中、レイジのフィールドを覆い尽くす紫の霞。

 

それが徐々に晴れていくと、アークの意志により導かれし紫の邪悪なライダースピリット、滅が顕現していた。

 

 

「ま、マジックカードの効果でスピリットをノーコスト召喚するなんて………」

「テメェには真似できねぇだろ、弱ぇからな。滅の召喚時効果、コア3個以下のスピリット4体を破壊する」

「!!」

 

 

両端に刃が備えられた武器を手に、イチマルのフィールドへと駆けていく滅。瞬きする間もなく、フライングファルコンを斬り裂き破壊する。

 

そして、さらにはゼロツーさえも…………

 

 

「ゼロツー!!!!」

 

 

イチマルの叫びも虚しく、ゼロツーは滅により一刀両断され、爆散。

 

これにより、彼のスピリットは全滅。追撃をする事も、返しのターンの防御を行う事も叶わなくなってしまった。

 

 

「ターン……エンド」

手札:3

場:【ライズホッパー】LV1

バースト:【無】

 

 

絶望のターンエンド。たった1枚、たった1つのマジックとスピリットにより、イチマルの優勢は全てひっくり返された。

 

一見、ただ単に運良くスピリットがトラッシュに落ちていて、マジックが偶然手札に来ていて、奇跡的にそれらが1番強く使えるタイミングがやって来ただけのように見える。

 

だが、それをさも当然の如くやってのけるのは、紛れもない強者の証。

 

イチマルはこのターン、改めて実感した。どんなに性格が捻じ曲がっていても、どんなに人として最低でも………

 

自分の兄、レイジの実力は本物なのだと。

 

 

[ターン06]レイジ

 

 

「メインステップ、仮面ライダー亡を召喚」

 

 

ー【仮面ライダー亡[2]】LV2(2)BP5000

 

 

「召喚時効果、トラッシュにあるライダースピリット「迅」を手札に戻す」

 

 

レイジの場に、鋭い鉤爪を持つライダースピリット、亡が召喚される。

 

彼はそのカード効果で、戻したカードを立て続けて召喚して行く。

 

 

「仮面ライダー迅を召喚」

 

 

ー【仮面ライダー迅[2]】LV1(1)BP2000

 

 

銀の翼、マゼンタの体色を持つライダースピリット迅が召喚される。

 

これにより、レイジの場には4体のライダースピリット。それらは属性以外に共通点はなく、統一感などカケラもないように思えるが………

 

イチマルは知っている。それらが揃えば、自分の負けを意味する事を。

 

 

「兄ィの場に「滅」「亡」「迅」「雷」の名を関する4体のスピリットが揃った………」

「アタックステップ………テメェの力、あの雑魚に思い知らせて来い、滅」

 

 

4体揃った瞬間にアタックステップへと急行するレイジ。手始めに4体の中で最も強いスピリットである滅にアタックの指示を送る。

 

そしてこの時、その真価が発揮されて…………

 

 

「滅のアタック時効果。滅亡迅雷が揃っている時、テメェのライフを2個、ボイドに置く」

「!!」

 

 

亡、迅、雷の3体のスピリットらが、その力を、オーラとして滅1体に注ぎ込む。滅亡迅雷4体のスピリット全ての力を集約させた滅は、手より螺旋状のエネルギー弾を放出する。

 

それは空間を抉り取る勢いでイチマルのライフバリアへと迫っていき…………

 

 

〈ライフ5➡︎3〉鈴木イチマル

 

 

「ぐ、ぐぁぁぁぁあ!?!」

 

 

直撃。接触したライフバリアは塵芥となり、イチマルのリザーブにも残らない。

 

さらにこの通常のバトルでは感じられない痛み。この体中に強い電流が迸るような痛みを、イチマルは以前にも感じた事があるし、与えてしまった事もある。

 

 

「こ、これは……」

「滅の本命のアタックだ」

「ッ……ら、ライフで受ける!」

 

 

〈ライフ3➡︎2〉鈴木イチマル

 

 

「ぐぁ!?!」

 

 

間髪入れずに、滅の本命のアタック。その拳による一撃が、彼のライフバリアを砕き、また痛みを与えた。

 

 

「い、痛ぇ………まさか、嘘だろ。兄ィ、兄ィもゼノンザードスピリットを!?!」

「続け、迅!!」

「兄ィ!!」

 

 

イチマルの声に聞く耳を持たず、そのまま迅でアタックを仕掛けるレイジ。

 

迅は指示を受けるなり、銀の翼で上空へと飛び立ち、大きめのショットガンから紫色のエネルギー弾を放った。

 

 

「ぐッ……ァァァァ!?!」

 

 

〈ライフ2➡︎1〉鈴木イチマル

 

 

エネルギー弾はイチマルのライフバリアを砕き、遂にその数を残り1にまで追い詰める。

 

そしてもう、イチマルの3枚の手札に、これをひっくり返せるようなカードは存在しなくて……………

 

 

「ヒャハ、これで終いだ。滅亡させてやれ亡。迅雷の如くなぁ!!」

「うぉぉぉぉ兄ィィィィィィィ!!!!!」

 

 

〈ライフ1➡︎0〉鈴木イチマル

 

 

イチマルの叫びを鎮静させるように、亡がその鋭い鉤爪でトドメの一撃。彼の最後のライフバリアは無惨にも斬り裂かれ、散って行った。

 

これにより、勝者はライダー王レイジ。まるで赤子の手を捻るような、圧倒的なまでの力の差を見せつけた。

 

 

「ガッ………ァァァァ」

 

 

ゼノンザードスピリット所有者がもたらす、実体化されるバトルダメージ。

 

体が焼けるような痛みに耐え切れず、イチマルは悲痛な叫びを上げながらその場で転がり込んでしまう。

 

 

「ヒャハ、どうだクソ雑魚。テメェごときじゃオレ様に勝てない事を思い知ったか」

「………ッ」

「大人しくあの赤髪チビを呼んで来いや。アイツと約束したんだよ、再起不能になるまで傷みつけてやるってな」

「!!」

 

 

痛みに悶えながらも、イチマルの脳裏に浮かぶのは友人の鉄華オーカミ。

 

一度、ゼノンザードスピリットを使い、バトルで彼を傷みつけてしまった事に罪悪感を覚えているイチマルは………

 

 

「だ、ダメだ………」

「あぁ?」

「オーカミは呼ばねぇ。今の兄ィに絶対に会わせてたまるか………アイツはオレっちを救ってくれた、今度はオレっちが、アイツを守る番なんだ………!!」

 

 

痛みを堪えながらも立ち上がり、ふらつきながらも歩み、制止させるべく、レイジの肩に手を置くイチマル。

 

オーカミはかけがえのない友人。もう二度と傷つけさせやしない。

 

その強い意志が、彼を突き動かした。

 

 

「生意気なんだよ、このゴミクズがァァァァ!!!」

「ガッ!?!」

 

 

負けても尚、己にたてつくイチマルに、レイジの怒りのボルテージは頂点に達し、遂に直接拳で暴力を振るい、イチマルを地に叩き伏せる。

 

その直後も、先のバトルで弱り、何も抵抗ができないイチマルを、殴っては蹴り、殴っては蹴りと言った暴行を繰り返し、執拗なまでに傷みつけていく。

 

 

「いいかよく聞け、テメェは負けたんだよ、このオレ様に!!……負けた奴が勝った奴にベラベラと口を聞くんじゃねぇぞコラァァァァ!!」

 

 

暴力と共に独自の自論を叩き込むレイジ。その自論の言葉一つ一つの節々に、如何に彼が歪んだ性格の持ち主であるのかが容易に想像できる。

 

 

「出しゃばりやがって。バトルの才能なんて一欠片もねぇ癖によぉ!!」

「ガァッ……うァァァァァァァ!!?!!」

 

 

イチマルの右腕を取り、背中の方向に全力で引っ張るレイジ。腕と肩の骨や筋肉が軋み、折れた音が聞こえたと同時に、これまでとはまた違う激痛が走り、イチマルは喘ぎ声を荒げる。

 

 

「……ァァァ!?!」

「ヒャーハッハッハ!!!……その腕じゃあもうろくにバトルはできんなぁ。そうだそうだ、テメェは初めからバトスピなんてする資格すらねぇんだよ」

 

 

左腕で折れたであろう右腕を押さえるイチマル。顔や身体は瘤や痣だらけになり、至る所から流血も見られる。

 

胸の内から勢い良く込み上げる恐怖。身体が、本能が、今すぐにでも逃げるのだとざわついているのがわかる。だが、オーカミやヨッカのため、逃げられないし、逃げるわけにもいかない。

 

小刻みに震えながらも立ち上がり、レイジを睨む。

 

 

「………」

「んだよ、その目は」

「確かに、オレっちはオーカミや兄ィと違って、バトルの才能なんかない。けど、兄ィが人として間違ってる事をやってるのだけは、断言できる!!」

「は?」

「どんなにバトルが強かろうと、センスがあろうと、他人を貶めたり蔑んだりしたらダメに決まってるだろ。そんな事を笑いながら平然とやる兄ィはカードバトラー以前の問題だ!!」

「………」

 

 

だからその目はなんだ。いっちょ前にカッコつけてんじゃねぇぞゴミカスが。

 

力の差はたった今教えてやっただろうが、なんで歯向かう。なんで立ち向かおうとする。さっさと諦めて、このオレに恐れ慄いて無様に逃げ恥を晒せや。

 

昔からそうだ。

 

なんで、テメェはオレよりも強くあろうとする。

 

 

「………もう一本の腕もへし折られてぇみてぇだなぁ!!」

「ぐあっ!?」

 

 

そう告げると、またイチマルを殴りつけ、今一度地面へ叩き伏せる。

 

そしてもう一本の腕もへし折るべく、彼の左腕へと手を伸ばす。

 

ここは界放市ジークフリード区の街の裏側にある広大な路地裏。窮地に陥ったイチマルを助けに来る者など、どこにもいないし、来れるわけもない………

 

はずだった。

 

 

「………おい」

「!!」

 

 

少年の声が聞こえた。レイジは手を止め、その方へと目を向ける。イチマルも同じだ、満身創痍の状態で震えながらも、そこへと視線を移す。

 

 

「な、なんで………」

「ヒャハ。やっとお出ましか、鉄屑野郎」

「オーカミ……!!」

 

 

そこにいたのは鉄華オーカミ。息遣いがやや荒い事から、ここまで走って来たのが窺えるのと同時に、今のこの状況を察して、怒りが堪えられなくなっているのがわかる。

 

 

「………何やってんだよ、オマエ!!」

 

 

いつもクールで冷静な彼らしくない怒声が響き渡る。

 

鉄華団VS滅亡迅雷の幕が切って落される時は、刻一刻と迫っていた。

 

 

 






次回、第36ターン「上位互換、バルバトスルプスVS滅」
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