バトルスピリッツ 王者の鉄華   作:バナナ 

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第4章 早美邸編
第38ターン「王者の力を持つ者達」


鉄華オーカミは、退屈な人生を過ごしていた。

 

好きな物や興味がある物など何もないし、友達と遊んだりもしない。そもそも友達なんて1人もいなかった。

 

その内に秘めていたのは、早く自立して、仕事に追われる姉を楽させてあげたいと言う想いだけ…………

 

 

「ハッハッハ。つまんなそうな顔してるな、オマエ」

 

 

界放市と言う街に引っ越して来て間もない頃。自分よりも遥かに背が高い、白髪のツンツン頭の青年が声をかけて来た。

 

 

「………誰だアンタ」

「悪りぃ、職業柄、つまんなそうにしてる奴には声掛けたくなる性分でね。どうだ、オマエオレと一緒にバトルスピリッツ、通称バトスピをやってみねぇか?……楽しいぞ!!」

「…………ヤダ」

 

 

言うまでもなく、これが鉄華オーカミと、九日ヨッカ、2人の出会いである。

 

 

 

******

 

 

 

「………アニキ」

 

 

早朝。自分の部屋で、今も行方知らずとなってしまったヨッカに想いを馳せながら、鉄華オーカミは目を覚ます。

 

 

「夢………か」

 

 

起床時の癖になっている郵便ポストの確認へと向かう。ドアを開け、外の肌寒さを感じながらも、付近のポストの中を確認する。

 

そしてその中には、又しても達筆な字で「鉄華オーカミ様へ」と書かれた封筒が届いており…………

 

 

「………」

 

 

良い加減慣れて来たオーカミは、無言でそれをポケットへとしまった。

 

 

******

 

 

それから少し時間が経過し、日差しが強くなる昼間。オーカミは待ち合わせ場所である、ヴルムヶ丘公園まで足を運んでいた。

 

ゼノンザードスピリットを得て、正気ではなくなっていたイチマルとのバトルをここでしたのは記憶に新しい。

 

 

「よっ!…オーカミ」

「イチマル」

 

 

ベンチに座っているオーカミに声を掛けたのは、他でもない鈴木イチマル。右腕の巻かれている包帯が痛々しい。

 

 

「……右腕」

「はは、気にすんなよ、オレっちの自業自得だ。直ぐに治るし」

 

 

本人はこれと言って特に気にしてはいないみたいだが、この様子だと、しばらくバトルをするのは不可能だろう。

 

『あの時もう少し早く気づいていたら』と言う後悔の感情が、オーカミの心中に渦巻く。

 

 

「そんな事よりオーカミ、兄ィは、昨日兄ィはどうなったんだ……!?」

 

 

イチマルは、自分の右腕そっちのけで、レイジの事をオーカミに訊く。

 

 

「昨日、オレはバトルの後気を失ってて、気づいたらアネゴと一緒に病室にいた。アネゴが言うには、オレ以外は誰もいなかったって」

「……つまり、何もわかんねぇって事だな」

「うん、ごめん」

「謝るこたぁねって!……一先ずオマエが無事で良かったよ。まぁ兄ィもその内お腹空かせて帰って来んだろ」

 

 

オーカミもイチマルも、もちろん昨日オーカミのためにあの場へと戻って来たミツバも、ライダー王レイジはDr.Aの反感を買ったばかりに処分されてしまった事を知らない。

 

残酷な事に、レイジはもはや改心する余地さえ残されていないのだ。

 

 

「………アイツは、アニキの居場所を知っていた」

 

 

結局のところ聞かずじまいとなってしまっていたが、何故かレイジは行方不明となったヨッカの居場所を知っていた。

 

 

「聞いた感じだと、どこかに捕えられてるみたいなんだ。でも、そのどこかわからないと助けには行けない」

「クソ、もどかしいな。こうしてる間にも、ヨッカさんが苦しんでるのかもしれねぇのに何もできないなんて。おいオーカミ、オレっち達だけでもヨッカさんを捜索した方がいいんじゃ」

「闇雲に探してもダメだ、多分見つからない」

「じゃあどうすんだよ、このまま指咥えたまま何もしないなんて」

 

 

シビアだが、どこに捕えられているのかもわからないため、助けようがない。

 

自分の無力さに拳を握り締めるオーカミだが、そんな彼に助け舟とも呼べる助言を口にする人物が1人…………

 

 

「早美邸」

「!」

「九日はそこにいる」

「え、誰?」

 

 

サングラスを掛けた大柄で茶髪の青年。突然自分達の前に現れたこの人物を、オーカミは知っている。

 

 

「何でいんの、警察の人」

「え、警察!?」

「久しいな、鉄華」

 

 

彼は界放市が誇る界放警察の1人「アルファベット」………

 

その若さと短いスパンの間で、数々の難事件を解決に導いている正真正銘の名刑事だ。

 

 

「早美邸、知らないか?……早美アオイの住居だ。九日はそこに幽閉されている可能性が極めて高い」

「!」

 

 

早美アオイの住居と聞いて、その情報がより有益なモノだと言うことを理解する。

 

早美アオイはDr.Aと契約を結んだ悪女。これまでも危険な特性を持つゼノンザードスピリットを、イチマルを始めとした多くの者達に手渡して来た。彼女なら、ヨッカを幽閉していても何ら不思議ではない。

 

 

「ありがとう。じゃあそこに行けばアニキを助けられるのか」

「え、今から行くのか、1人で!?」

「うん。取り敢えず」

「バカ、取り敢えずじゃねぇよ!!……それって要は敵の本陣って事だろ、そんな所に1人で突っ込んで行く奴がいるか」

 

 

聞いて間もなくそこへと向かおうとするオーカミ。イチマルがそれを言葉で制止させる。

 

 

「そいつの言う通りだ鉄華。仮に我々界放警察が束になっても勝てる保証がない場所に、1人で飛び込んで行くのは余りにも愚行」

「じゃあどうすんの。どうにかできるから、オレみたいな子供に情報を教えたんだろ?」

 

 

オーカミの言う通りだ。確かに、仮にも警察が一般人にそんな危険な情報を安易と流すとは考えづらい。

 

 

「フ……相変わらず勘が鋭いな。そう、だから少数精鋭で乗り込む。メンバーはオレとオマエと、後1人だ」

「後1人?」

「あぁ、そろそろ出て来てもいいんじゃないか?」

 

 

アルファベットが誰もいないはずの草むらに向かって問い掛けると、そこから黄色がかった白髪のショートヘアの少女、春神ライが姿を見せる。

 

 

「え、この子確か、界放リーグの時に一緒に試合観戦した……」

「………新世代系女子」

「誰が新世代系女子よ!!……私には春神ライって言うちゃんとした名前があるって言ってんでしょうが!!」

「オマエだってオレの事赤チビって呼ぶだろ」

「だって赤くてチビじゃない」

「それよりオマエ、ずっとそこに隠れてたのか」

「ふふ、主役登場!!……って感じがしてカッコよかったでしょ?」

「………」

「ちょい!!……何とか言いなさいよ!!」

 

 

出会い頭に、いつも通りの口論がはじまるオーカミとライ。その傍ら、イチマルは彼女が界放リーグの決勝戦で一緒にオーカミを応援した少女である事に気がつく。

 

 

「ちょ、ちょっと待って、ひょっとしてこの子が3人目!?」

 

 

驚いた様子で、イチマルがアルファベットに訊いた。自分よりも年下に見える華奢な女の子が、危険な場所に飛び込んでバトルできるようには見えなかったのだろう。

 

 

「そうだ。早美邸には、この春神と、オレと鉄華で乗り込む」

「マジか。オ、オレっちは一緒に行っちゃダメですか……女の子が一緒に行けて、オレっちが行けないなんて」

 

 

自分だって戦力になると言わんばかりにアピールするイチマルだが。

 

 

「その右腕で何ができる。オマエは戦力外だ」

「………」

 

 

右腕が骨折している今、カードをドローする事すらままならない。手厳しいがアルファベットの言う通り、イチマルは戦力外だ。

 

 

「気にしなくていいよ、イチマル」

「オーカミ………でも、またオマエが危険なバトルを」

「大丈夫。警察の人も新世代系女子もまぁまぁ強いし。アニキの事はオレに任せて欲しい」

「………わかった」

 

 

完全に納得こそできないが、今の自分が戦力外なのは理解できる。イチマルは大人しく引き下がった。

 

 

「何がまぁまぁ強いよ。この3人の中で1番弱いクセに」

「弱くない。オレもアレから強くなった」

 

 

ライがオーカミの言葉に反応し、絡んで来る。

 

 

「へ〜〜だったら今ここで決着を着ける?……界放リーグ後にバトルするとか言って、なんだかんだできなかったもんね」

「うん。いいよ、着けよう、決着」

 

 

自然な流れでバトルする事になる2人。

 

以前はカードショップ「ゼウス」にて一戦交え、ライの勝利で終わったが、オーカミがうっかり受け札を試合中に落としてしまっていたので、ライ自身はまだ彼に勝った気になってはいなかった。故に彼女にとってはずっと待ち望んでいた再戦である。

 

それに、確かめたい事もあって………

 

 

「なんか急にバトル始めようとしてるんすけど、アルファベットさんでしたっけ?……止めなくていいんすか」

 

 

2人がBパッドを展開し、バトルの準備を進めていく中、イチマルがアルファベットに訊いた。

 

 

「構わん。これから共に戦うのだ、互いの実力を知っておくに越した事はない。それに………」

「それに?」

 

 

………『王者の力を持つ者同士の衝突が見られるかもしれないしな』

 

アルファベットはそう言い掛けるが、今、王者の事を教える必要はないと判断し、言葉を呑み込む。

 

 

「ほい。じゃあ本当に強くなったのか、この私に見せてみなさいよ」

「あぁ、バトル開始だ。オマエこそ、今度こそ本気のデッキなんだろうな?」

「もち」

 

 

………ゲートオープン、界放!!

 

 

知らぬ間にBパッドを構え合い、バトルの準備を終えていた2人。アルファベットとイチマルが見守る中、2人のバトルスピリッツが幕を開ける。

 

先攻は春神ライだ。今度こそ本気のデッキで、鉄華オーカミにバトルを仕掛ける。

 

 

[ターン01]春神ライ

 

 

「メインステップ、赤の母艦ネクサス、AAAヴンダーを配置」

 

 

ー【AAAヴンダー】LV1

 

 

ライの背後に出現するのは、機翼を持つ巨大な飛行船。

 

 

「ターンエンド」

手札:4

場:【AAAヴンダー】LV1

バースト:【無】

 

 

ー『アイツは唯一、私の見た勝利の未来を覆し掛けた。このバトルでその力が本物かどうか、そんでもって私には敵わないって事を証明してやる』

 

彼女の心の内側では、己のバトルに対するプライドが渦巻いている。そんな事はつゆ知らず、オーカミは巡って来たターンを進めて行く。

 

 

[ターン02]鉄華オーカミ

 

 

「ドローステップ………ッ!?」

 

 

Bパッドからカードをドローするオーカミ。しかしその途端、突然右目が疼き、右手の指先に痺れが迸る。ドローしたカードは手を離れ、そのまま地に落ちた。

 

 

「ちょいちょい、何やってんの、カード落ちたなら、今度こそちゃんと拾いなさいよ」

「………わかってるよ」

 

 

何事もなかったかのように、オーカミは落としたドローカードを拾い、またターンシークエンスを進めて行った。

 

 

「メインステップ、ネクサス、ビスケット・グリフォンとオルガ・イツカを配置」

 

 

ー【ビスケット・グリフォン】LV1

 

ー【オルガ・イツカ】LV1

 

 

「オルガの神託。対象カードは1枚、よってコア1つをオルガに追加する」

 

 

オーカミも負けじと足場となる、鉄華団のネクサスカード、ビスケットとオルガを配置して行く。通常のネクサスとは違い、この手のカードはフィールドに出現しない。

 

 

「ビスケットの効果で自身を疲労、デッキ上1枚をオープンし、それが鉄華団なら手札に加える………グレイズ改弍は鉄華団、手札だ。ターンエンド」

手札:4

場:【ビスケット・グリフォン】LV1

【オルガ・イツカ】LV1(1)

バースト:【無】

 

 

考えうる限り最高の初動を行ったオーカミ。次のターンで更なる展開をすべく、一度そのターンを終える。

 

 

[ターン03]春神ライ

 

 

「メインステップ。先ずはドラゴンズミラージュをミラージュとして、バーストゾーンにセット」

「……ミラージュ?」

 

 

ライのフィールドにあるバーストゾーン上に、赤いドラゴンの紋章が刻まれる。

 

 

「うっしし、ミラージュも知らないのか〜〜」

「……いいから早くしろよ」

 

 

初めて見るミラージュに疑問符を浮かべるオーカミ。だがその直後、それの恐ろしさを知る事となる。

 

 

「ほい、じゃあドラゴンズミラージュの【セット中】効果。手札にあるコスト4以上の機竜カードを破棄する事で、相手のネクサス、創界神ネクサス1つを破壊する」

「なに……!?」

「手札にあるコスト5の宙征竜エスパシオンを破棄して、創界神ネクサス、オルガ・イツカを破壊」

 

 

ライのミラージュ、ドラゴンズミラージュの効果が発揮。オーカミのBパッド上にあるオルガのカードが早くもトラッシュへと誘われる。

 

 

「くっ……またかよ」

「AAAヴンダーの効果、1ターンに一度、赤の効果で相手のスピリットかネクサスを破壊した時、デッキから1枚ドロー。さらにドラゴンズミラージュの効果に制限はない、2枚目のエスパシオンを破棄して、今度はビスケット・グリフォンを破壊」

「!」

 

 

立て続けに二度目のドラゴンズミラージュ。ビスケットのカードまでもが、オーカミのトラッシュへと落とされる。これでフィールドは0。次ターンに大きなアクションを取る事が困難な状況へと陥ってしまう。

 

 

「ターンエンド。私とのバトルで、シンボルを残せると思うなよ」

手札:3

場:【AAAヴンダー】LV1

バースト:【無】

ミラージュ:【ドラゴンズミラージュ】

 

 

「つ、強い。オーカミが押されてる……あの子、ライちゃんってあんなに強かったのか」

 

 

ライのターンが終わると同時に、そう言葉を落としたのは、イチマルだった。

 

 

「あぁ、普段はあぁだが、奴は強い。少なくとも、この界放市最強と謳われる三王程度なら軽く凌駕しているかもな」

「えぇ!?……そんなに強いのに、何で界放リーグに出なかったんだ」

「色々あるんだ、色々な」

 

 

アルファベットがライの強さの尺度をイチマルに教えたところで、バトルはフィールドを更地にされてしまったオーカミへとターンが巡る。

 

 

[ターン04]鉄華オーカミ

 

 

「メインステップ……オレはランドマン・ロディ2体をLV1で連続召喚」

 

 

ー【ランドマン・ロディ】LV1(1)BP1000

 

ー【ランドマン・ロディ】LV1(1)BP1000

 

 

丸みを帯びた小型のモビルスピリット、ランドマン・ロディが2体、オーカミのフィールドに出現する。

 

 

「アタックステップ。ランドマン・ロディ1体でアタックだ」

「ライフで受ける」

 

 

〈ライフ5➡︎4〉春神ライ

 

 

先にアタックステップを本格的に行ったのはオーカミ。ランドマン・ロディは手に持つマシンガンを掃射し、ライのライフバリア1つを撃ち抜く。

 

 

「……ターンエンド」

手札:3

場:【ランドマン・ロディ】LV1

【ランドマン・ロディ】LV1

バースト:【無】

 

 

先制点は与えたものの、ネクサスが破壊されたがために苦しい状況が続く。オーカミはそのターンを終え、次のライのターンに備えた。

 

 

「ふふん、随分苦しそうね」

「何笑ってんだよ。オマエがそうしたんだろ」

「そりゃ相手の強いカードは先に潰しておくのが鉄則っしょ、創界神ネクサスなら尚更。特にアンタのデッキは見る限り、アレへの依存度が高いしね」

 

 

界放リーグで散々バトルを見られたのもあってか、ライはオーカミの鉄華団デッキに対する理解度が高い。単純なデッキ相性だけでなく、そういった点も、オーカミはこのバトルで不利を取っていると言える。

 

 

[ターン05]春神ライ

 

 

「メインステップ……先ずはロケッドラと、ブレイヴカード、アームストロンガー」

 

 

ー【ロケッドラ】LV1(1)BP1000

 

ー【アームストロンガー】LV1(1)BP3000

 

 

ライのフィールドに出現するのは、背部に小型ロケットを背負った小さなドラゴン、ロケッドラと、赤い装甲、強靭な腕を持つブレイヴのドラゴン、アームストロンガー。

 

 

「さらに手札から、3枚目のエスパシオンを召喚。不足コストはロケッドラから確保」

 

 

ー【宙征竜エスパシオン】LV1(1S)BP5000

 

 

ロケッドラはすぐさま消滅してしまうものの、その代償として、雷雲落雷と共に、機械仕掛けのドラゴン、エスパシオンが現れる。

 

 

「……なんか、強そうだな」

「そう。コイツは強い、と言うよりヤバイ!!……召喚アタック時効果で、BP7000以下のスピリット、ランドマン・ロディ1体を破壊」

 

 

登場するなり、口内から電撃弾を放つエスパシオン。それはオーカミのランドマン・ロディ1体に被弾し、爆散にまで追い込んだ。

 

 

「破壊に成功した事で、AAAヴンダーの効果で1枚ドロー」

「ランドマン・ロディの破壊時効果、オレもデッキから1枚………」

 

 

破壊されてもただでは転ばないのが、鉄華団デッキの特徴。オーカミはランドマン・ロディの破壊時効果でドローを行おうとするが………

 

 

「残念、それは使えない」

「!」

「エスパシオンのこの効果は自分のミラージュがあれば、破壊したスピリット効果を発揮させなくする」

 

 

フィールド荒らしだけでなく、ライはそれに対するリカバリーさえも完全に完封。

 

さらに今、ブレイヴと、それの合体条件に見合うスピリットが1体ずつ揃った。当然次に行うのは、それらの合体だ。

 

 

「エスパシオンとアームストロンガーを合体、さらにLV2へアップ」

 

 

ー【宙征竜エスパシオン+アームストロンガー】LV2(2)BP10000

 

 

アームストロンガーは自身の姿をアーマーへと変化させると、エスパシオンはそれと合体。赤き装甲、手に膨大なエネルギーを宿す、強力な合体スピリットへと変貌した。

 

 

「アタックステップ。その開始時にエスパシオンのLV2からの効果を発揮、トラッシュにあるコアを5個、エスパシオンの上に追加し、LV3にアップ」

 

 

ライのBパッド上にあるトラッシュにあたる場所から、コアがエスパシオンのカードの上へと移動する。

 

 

「これだけじゃない。この時、私の手札が4枚以下なら2枚ドローする」

「ドローまでできるのか」

 

 

コアを戻すだけにあらず、手札まで補い、赤属性のエースカードらしいオールラウンダーぶりを発揮するライのエスパシオン。

 

彼女の手札は2枚であったため、この効果で4枚まで回復した。これは今のオーカミの手札よりも1枚多い枚数。

 

ここまでカードを切り、相手のフィールドを荒らしておいて、手札まで多く抱えられるのは、彼女の言葉を借りると、確かにヤバイと言える。

 

 

「アタックステップ続行、エスパシオンでアタック!!……アームストロンガーの【合体中】効果でトラッシュにあるバースト効果を持たない赤のスピリットカード、エスパシオンを手札に回収」

「!」

「うっしし、流石のアンタも気づいたか、これでまたドラゴンズミラージュの効果を使える、ネクサスを出しても、また破壊されるだけって事よ」

 

 

前の彼女のターンにドラゴンズミラージュのコストとなってトラッシュへと破棄されていた別のエスパシオンのカードが手札へと舞い戻る。

 

 

「召喚アタック時効果で2体目のランドマン・ロディを破壊」

「……」

「当然その効果は無効、ドローはできない」

 

 

再びエスパシオンの口内から電撃弾が放たれ、2体目のランドマン・ロディもそれによって爆散されてしまう。

 

これにより、オーカミのフィールドは又しても更地。だが、彼も何もできないと言うわけではなくて………

 

 

「鉄華団スピリットがフィールドを離れる時、手札にあるグレイズ改弍の効果、自身をノーコスト召喚」

 

 

ー【流星号[グレイズ改弍]】LV2(3)BP3000

 

 

「召喚時効果で1枚ドロー……破壊されたカードじゃなくて、別のカードなら効果は使えるだろ」

 

 

ランドマン・ロディの破壊に反応し、上空より姿を見せるマゼンタカラーのモビルスピリット、グレイズ改弍。その効果により、オーカミは念願のドロー。

 

 

「いいぞオーカミ!……これでエスパシオンのアタックをライフで受ければ、グレイズ改弍をフィールドに残せる!」

 

 

イチマルが叫ぶ。鉄華団のデッキから、フィールドにシンボルが1つでも残れば、そこから大量展開を狙える。

 

これにはライも予想外だと言わんばかりの反応を見せる…………

 

かと思われたが。

 

 

「それは知ってた。フラッシュマジック、レーザーボレー」

「なに?」

「不足コストはエスパシオンから確保、LVは2に下がるけど、その効果でグレイズ改弍を破壊」

 

 

ここでまさかのマジック。天空から照射される赤いレーザー光線が、グレイズ改弍の装甲に風穴を開け、爆散させる。

 

それにより、オーカミのフィールドは今一度更地へ逆戻り。

 

 

「ビスケットでめくれてたカードだし、対策しないわけがないでしょ」

「………」

「さぁ、エスパシオンの本命のアタック!!」

 

 

機翼を広げ、宙を舞うエスパシオン。そしてオーカミのライフバリア目掛けて急降下して行く。

 

 

「ライフで受ける」

「合体によりダブルシンボル、2つ破壊する」

 

 

〈ライフ5➡︎3〉鉄華オーカミ

 

 

エスパシオンは、アームストロンガーとの合体により強度を増したその右腕を振い、オーカミのライフバリアを一気に2つ削り取る。

 

破壊の限りを尽くしたエスパシオンだが、その役目はここで一時終了となる。

 

 

「ターンエンド。さ、どっからでも来なさいよ」

手札:4

場:【宙征竜エスパシオン+アームストロンガー】LV2

【AAAヴンダー】LV1

バースト:【無】

ミラージュ:【ドラゴンズミラージュ】

 

 

赤属性の選りすぐりのカード達を巧みに使いこなし、自分にはアドバンテージを、オーカミにはディスアドバンテージを与え続けるライ。

 

仮にも界放リーグ準優勝者であるオーカミが、ここまで一方的に追い詰められるなど、少なくとも彼とイチマルは思ってもいなかった。

 

 

「流石だな春神、攻防共に隙がない」

「マジかよ、これじゃあ一生逆転できない………オーカミ」

 

 

アルファベットやイチマルが、このバトルに対して思った事、感じた事を告げる中、オーカミは…………

 

 

「………」

「どしたの急にダンマリして、アンタのターンでしょ。それとももう諦める?…サレする?…うっしし」

 

 

本当に諦めてしまったのか、なかなかターンを進めないオーカミ。そんな彼を煽りに煽りまくるライ。

 

 

「フ……」

 

 

だが、オーカミは決して諦めたわけではない。寧ろこの状況下の中で笑って見せた。いつものクールな表情が崩れない程度に。

 

 

「………何笑ってんのよ」

「オマエとのバトル、オレ好きだな」

「え?……は?」

 

 

おそらく恋愛的な意味合いは全くないのだろうが、オーカミの「好きだな」と言う曇り一つない真っ直ぐな感情をぶつけられ、ライの顔は真っ赤になり、頭の先からは湯気が上る。

 

 

「ちょ、ちょいちょいちょい、それどう言う……」

「オレのターンだ」

「話を聞けぇ!!」

 

 

困惑するライを他所に、オーカミは巡って来た己のターンを進めていく。

 

 

[ターン06]鉄華オーカミ

 

 

「メインステップ。フィールドにシンボルはないけど、ライフが減った事でコアは増えた、行くぞ」

 

 

ここからが勝負だ。そう言わんばかりに、オーカミは手札にある1枚のカードをBパッドへと叩きつける。

 

 

「大地を揺らせ、未来へ導け!!……ガンダム・バルバトス・第4形態をLV3で召喚!!」

 

 

ー【ガンダム・バルバトス[第4形態]】LV3(4S)BP12000

 

 

上空から、大地を震撼させる程の勢いで着地したのは、白い装甲、黄色いツノを持つ、鉄華オーカミのエースカード、バルバトス、その第4形態。

 

フィールドのシンボル不足により、5コストをそのまま支払っての召喚だったが、なんとかそのLV3を維持している。

 

 

「……出たわね、バカの一つ覚えのスピリット」

「アタックステップ、4形態でアタック!!」

 

 

オーカミはここでターンをアタックステップへの移行。彼の不意の言葉で動揺していたライも、ここらで冷静さを取り戻す。

 

 

「4形態のアタック時効果で、ブレイヴのアームストロンガーを破壊、この効果発揮後、エスパシオンのコアを2つリザーブに置く」

「!」

 

 

黒き戦棍メイスを、エスパシオンに向かって投擲する4形態。それはエスパシオンの胸部に直撃し、体内にあるコアを、4つの内2つを弾き飛ばす。

 

さらにはその衝撃により、合体していたアームストロンガーが、エスパシオンの元を離れ、飛び出す。4形態はそれを見逃さず、廃部から滑腔砲を取り出し、それを狙撃。見事に命中させ、爆散させる。

 

 

「くっ……」

「さらにLV3効果でダブルシンボルのアタックだ」

「……ライフで受ける」

 

 

〈ライフ4➡︎2〉春神ライ

 

 

投げたメイスを拾いながら、ライの元へと駆け抜ける4形態。メイスによる横一線の一撃が、彼女のライフバリアを一気に2つ砕く。

 

 

「まだ終わらない。バルバトス第4形態は、自分のターン中、各バトル終了時、トラッシュから1コストで鉄華団スピリットを召喚できる」

「……」

「オマエも来い、ガンダム・グシオンリベイク!」

 

 

ー【ガンダム・グシオンリベイク】LV1(1)BP6000

 

 

バトルを終えた4形態が、その眼光を輝かせると、地中より、薄茶色の分厚い装甲を持つ、ガンダムの名を持つ鉄華団のモビルスピリット、グシオンリベイクが出現する。

 

 

「召喚時効果で、エスパシオンのコア2つをリザーブへ、よって消滅する」

「!」

 

 

グシオンリベイクは武器である剣斧ハルバードでエスパシオンを一刀両断。エスパシオンはコア不足によりようやくフィールドから消滅した。

 

 

「……ターンエンドだ」

手札:3

場:【ガンダム・バルバトス[第4形態]】LV2

【ガンダム・グシオンリベイク】LV1

バースト:【無】

 

 

バルバトス第4形態とグシオンリベイクがフィールドに揃った所で、オーカミはそのターンをエンド。盤面差からライフ差まで覆した事から、状況を逆転したと言える。

 

 

「よし!!……4形態とグシオンで形成逆転だ!!……厄介なエスパシオンは倒したし、これで次のターンでオーカミの勝ちだ」

 

 

オーカミの勝利を確信するイチマルだが。

 

 

「……次のターンがあればな」

「え?」

 

 

アルファベットがそう返答する。彼がこのような事を言うのは、春神ライが劣勢時、必ず王者の力を発揮させ、ラストターンを告げる事を知っているからである。

 

 

[ターン07]春神ライ

 

 

「ドローステップ………!」

 

 

左腕に装着しているBパッドに装填されたデッキから、1枚のカードをドローするライ。その際に、ほんの数秒、脳裏に己の勝利の未来、勝利への道筋が浮かび上がった。

 

 

「この未来、覆せるもんなら、覆して見なさいよ」

「ん?」

 

 

さぁ、ラストターンの時間です!!

 

 

指パッチンをしながら、いつもの決めゼリフ。これを聞いて生き延びたカードバトラーは1人もいない。

 

 

「メインステップ。ロケッドラを召喚」

 

 

ー【ロケッドラ】LV1(1)BP1000

 

 

本日2体目となるロケッドラが、ライのフィールドへと出現。さらに彼女は続けて1枚の手札をBパッドへと叩きつける。

 

 

「来い、私のエーススピリット!!……エヴァンゲリオン新2号機α・ヤマト作戦!!」

「!」

 

 

ー【エヴァンゲリオン 正規実用型 新2号機α-ヤマト作戦】LV1(1S)BP8000

 

 

ライのフィールドに、豪快な落雷と共に飛来したのは、伝説のエヴァンゲリオンスピリットの1体、新2号機α・ヤマト作戦。

 

赤と深緑の上下アンバランスな装甲に加え、全身凶器とも呼ばる程の武装を内装、まさに攻撃的なバトルを得意とするライのエースらしいスピリットである。

 

 

「え、あれってエヴァンゲリオンスピリット!?……なんでそのカードをあの子が……まさか実在するなんて」

 

 

そう反応を示したのは、バトルしている2人ではなく、それを見ているイチマルだった。

 

一種の都市伝説のようなエヴァンゲリオンスピリットが、いきなり間近に出現したのだから、無理もない。

 

 

「エヴァンゲリオンスピリット。初めて聞いたな、これも強そうだ」

「世界三大スピリットをも超えるその力を見せてあげるわ!!……アタックステップ、新2号機αでアタック!!」

 

 

エースの登場と共にアタックステップへと移行。ライは早速新2号機αのカードを横に捻り、アタック宣言。

 

この時、新2号機αには発揮できる効果がいくつも存在していて………

 

 

「新2号機αの効果、先ずはトラッシュのコア全てを自身に追加」

「全て!?」

「そう、よってLV3にアップ!!」

 

 

ー【エヴァンゲリオン 正規実用型 新2号機α-ヤマト作戦】(1S➡︎7S)LV1➡︎3

 

 

新2号機α・ヤマト作戦は、己の覇気を飛ばすと、召喚に使用した全てのコアを巻き上げ、自身の体内へ吸収。その強さは限界値を迎え、新たなる効果も獲得する…………

 

 

「続けてLV2、3の効果。合計BP20000までスピリットを破壊する」

「ッ………!」

「BP9000のバルバトス第4形態、B6000のグシオンリベイクを纏めて爆散!!」

 

 

巨大な銃火器を手に、それを掃射。瞬く間にバルバトス第4形態とグシオンリベイクは撃ち抜かれて行き、倒れ、爆散へと追い込まれた。

 

 

「そして手札を2枚破棄する事で、相手ライフ1つを破壊」

「!!」

 

 

〈ライフ3➡︎2〉鉄華オーカミ

 

 

新2号機αは、鉄華団の強力なスピリット達を一掃するばかりか、どこからか取り出したクナイを投げ、オーカミのライフバリアも1つ砕く。

 

 

「アンタの手札に、もうカウンターのカードがないのはわかってる。これで私の勝ちぃ」

「………」

 

 

ライは一瞬だけだが、バトルの未来が見える。

 

それを見逃しはしない、一瞬だけ脳裏に浮かび上がって来る勝利へのルートを、必ず把握する。だからこそこのターン、新2号機αが決め手となり、自分が勝利する事を確信していた。

 

だが。

 

 

「オレは鉄華団スピリットがフィールドを離れた時、手札にあるガンダム・フラウロスの効果を発揮!!」

「………は?」

「これをノーコストで召喚する」

 

 

何もないはずのカウンターが、オーカミの手札にはあった。

 

これは、こここらは、自分が見ていない未来。

 

 

「………その効果の処理前に、破壊をトリガーにロケッドラとAAAヴンダーの効果、それぞれ1枚ずつドロー」

「来い、フラウロス!!」

 

 

ー【ガンダム・フラウロス[流星号]】LV2(3S)BP10000

 

 

流星の如く、オーカミの場へと飛来するのは、マゼンタのカラーをした、バルバトス、グシオンに次ぐ、第3の鉄華団ガンダム、フラウロス。

 

近接戦闘を得意とする2体とは違い、その武装のほとんどが遠距離用の銃火器である。

 

 

「召喚時効果、相手のコア5個以上のスピリット1体を破壊」

「な……にぃ!?」

「コア回収効果が仇になったな………ぶち抜け、フラウロス!!」

 

 

フラウロスは現れるなり、新2号機αへ向け、背部に備え付けられた、2つのレールガンより鉛玉を発射する。

 

新2号機αは咄嗟に片手で半透明のバリアを形成するが、レールガンより撃ち出された鉛玉はそれを容易く貫通し、新2号機αをも貫く。

 

流石の伝説のエヴァンゲリオンスピリットと言えども、これには撃沈。大爆発を下ろし、早々に退場して行った。

 

 

「………やっぱり、そうなの。コイツには」

 

 

ー『コイツには、私の未来を見る力が通用しない。捻じ曲げられる』

 

新2号機αの爆発による爆風を肌で感じながら、ライは内心でそう考える。

 

自分が見る勝利の未来は決定事項。その導き出された手を、効果の順番をミスしなければ、必ず自分を勝利へ導いてくれた。だが、この目の前の赤チビとのバトルはどうだ、それを当然の如く凌いで来るではないか。

 

 

「私も、アンタとのバトル、好きかも」

 

 

思わずそう口にしてしまった。生まれて初めて自分と対等にバトスピできる存在を前に、かつてない程にモチベーションが昂っている証拠だろう。

 

 

「どうした。来いよ、ラストターンなんだろ」

「………そう。このターンでラスト、勝つのは、この春神ライ様だ」

 

 

オーカミの煽りに応えようと、ライは自分のフラッシュタイミングで更なるカードを引き、Bパッドへと叩きつける。

 

しかし、その直後だった。

 

 

「もう十分だろう。その辺にしておけ」

「………警察の人」

 

 

言葉で2人のバトルを制止させたのは、アルファベット。

 

その声でライの手はピタリと止まり、フィールドではフラウロスが「え、終わるの?」と言わんばかりに彼の方へと頭部を向けた。

 

 

「なんで止めるのアルファベットさん。今ちょっと最高に楽しい所なんだけど」

「なら、そのモチベーションは明日に持って行け。鉄華もだ、明日までに今の春神を超えれるような最強のデッキを完成させて来い」

「………」

 

 

そう告げられると、オーカミはBパッドを閉じ、そこに装填されていたデッキを取り出す。すると自動的にバトルが終わり、フィールドに残っていたロケッドラとフラウロスは足元からゆっくりと粒子となり、消滅していく。

 

 

「え、ちょいちょい!!……なんで素直にやめちゃうの!?」

「なんでって……まぁ、明日アニキを助けたいし、そのためなら」

「むぅ……じゃあ決着はまた今度か」

 

 

ライとて、ヨッカを助けたい気持ちは同じ。展開されたBパッドを閉じ、昂っていた心を無理矢理落ち着かせる。

 

 

「では明日、追って連絡を入れる。オマエたち、今日はさっさと家に帰れ」

「どしたのアルファベットさん、なんか急に家に帰そうとして来るじゃん」

「まぁ別にいいだろ」

「サッパリしてんのね、アンタ。じゃあ明日はよろしくお願いしますね、アルファベットさん」

 

 

何を思っているのか、やけに帰宅を催促させて来るアルファベット。別に断る理由もないため、オーカミ、ライ、イチマルの3人は大人しくヴルムヶ丘公園を後にする。

 

そして、アルファベット以外は誰もいなくなったと思った、その時だった。

 

 

「………オレが気づかないとでも思ったか。いい加減姿を見せろ、Dr.A」

 

 

アルファベットは、最早伝説となっている悪魔の科学者の名を口にした。

 

すると、物陰から自動で動く車椅子に腰を下ろしている高齢の男性が1人姿を見せる。包帯が全身にぐるぐる巻きで顔は認識できないが、アルファベットはそれがDr.Aである事を確信する。

 

 

「流石だねアルファベット。いや、芽座葉月と言うべきかな?」

「………その名は捨てた。今のオレは、アルファベットだ」

「ヌッフフ……まさかこうして再開するとは、懐かしいね。7年前、私と君は協力し、もう一歩の所で世界を滅ぼす所まで来たと言うのに、芽座椎名、エニーズさえいなければ」

「………オマエに協力してやった覚えはない」

「またまた、惚けちゃって」

 

 

これは、彼らにしかわからない話である。

 

簡単に説明するのであれば、アルファベットとDr.Aは、元から知人であると言う事。

 

 

「さっきの会話、聞いたよ。アオイ君の所へ行くんだろ?……九日ヨッカを助けに」

「………まるでオマエはそこにいないみたいなセリフだな」

「さぁ、どうでしょう」

「いるのだとしたら、首を洗って待っていろ。オマエはオレが牢獄にぶち込んでやる」

「ヌッフフ……可笑しい可笑しい、本来君もしゃばに居ていい存在ではないと言うのに」

 

 

直後、Dr.Aは「そんな事より」と口にし、話を変える。

 

 

「今日は良いモノを見た。どうやら、王者を持つ者同士が戦うと、その力を打ち消し合って勝利への道筋が不安定になるらしいね」

「………」

 

 

おそらく、先程のライとオーカミのバトルを見ていたのだろう。

 

詰まる話、王者を持つ者同士のバトルは、互いの力を打ち消し合ってしまい、通常のバトルと何ら変わらなくなってしまうのだ。と言う推測を彼は語っている。

 

 

「やはり、王者は素晴らしい。実にエクセレント」

「オマエは、進化の研究をしていたんじゃないのか。王者は進化とは無関係のはずだ」

「ヌッフフ……飽くなき探究心こそが、科学者の心意義さ。さぁ明日、どこからでも掛かって来ると言い、ただし、アオイ君含め、残ったゼノンザードスピリット使いは強いぞ」

 

 

最後にそう告げると、Dr.Aは車椅子に内蔵されたBパッドをタップし、何もない空間からワームホールを出現させると、そこへ向かって行き、やがて姿を眩ました。

 

 

「………奴は、やはり」

 

 

終わってみれば一瞬だった邂逅。だが、そんな中でも冷静だったアルファベットは、今のDr.Aの何かを悟って…………

 

 

******

 

 

場面は変わり、ジークフリード区の市街地。ライとも別れ、今はオーカミとイチマルのみ。その2人も、丁度今からお互いの帰路に着く頃だ。

 

 

「今日のバトル見て思った。オマエはやっぱ天才だ、凄い奴だ。多分、腕が折れてなくても、今のオレっちは戦力外だったと思う」

「ん?……そんな事ないだろ」

 

 

己の弱さを疎んでしまうイチマル。確かに、今日のオーカミとライのバトルを見て仕舞えば、誰もがそう思っても仕方がないと言える。

 

 

「そんな事あるさ。でも、どうしても、ヨッカさんがピンチなのに何もしてやれないのは嫌すぎる。身体がムズムズする」

「そっか」

「だからオマエにコイツを、オレっちの想いを託す」

「!」

 

 

折れていない左手で、イチマルはオーカミにカードを渡し、託す。

 

そのカードは、自身の相棒と呼べる存在「仮面ライダーゼロワン」………

 

 

「いいのか?」

「あぁ、コイツと一緒に、ヨッカさんを救って来てくれ。待ってるかんな」

「うん、わかった」

 

 

イチマルとの友情を胸に、オーカミは明日、ヨッカを助け出すために、春神ライ、アルファベットと共に、早美邸へと赴く。

 

 

 

 




次回、第39ターン「宿命の対決、オーカミVSレオン」
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