バトルスピリッツ 王者の鉄華   作:バナナ 

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第4ターン「バルバトスとダブルオー」

鈴木イチマルによって半ば強制的に始められた決闘も一応幕を下ろし、今は放課後の時間。

 

赤髪で小柄な少年、オーカこと鉄華オーカミと黒髪で腰まで伸びた長いツインテールが特徴的な一木ヒバナは下校し、オーカのバイト先であるカードショップ、アポローンを目指して歩みを進めていた。

 

オーカの事が好きなヒバナは基本的に彼の横を歩くのに抵抗はない。しかし、今回のこの状況に限っては少なからず抵抗があって………

 

 

「で、なんでイチマルがついて来てるわけ?」

「そりゃヒバナちゃん、鉄華オーカミに勝って君とのデート権利を勝ち取るために決まってるっしょ!」

「まだそんな事言ってんの!?…それに、オーカはこれからアポローンでバイトなの、アンタなんかの相手なんかしてらんないのよ」

「じゃあヒバナちゃんがオレっちの相手して〜!」

「イヤよ」

 

 

いくらオーカの横を歩けるからとて、チャラついた緑髪の少年イチマルの存在はヒバナにとって何よりも嫌なようで………

 

 

「ま、いいんじゃないバトルするくらい、バイト前に一回くらいはできると思うし」

「えーーー…連れてくのオーカ?」

「よし来た!…見てろよ鉄華オーカミ、今度こそオマエをボコボコにしてやるからな!」

「よく言うわ、昼間のバトルでは逆にボコボコにされたくせに」

 

 

あの決闘以来、打倒鉄華オーカミな鈴木イチマル。

 

忘れてはいけないのが彼も中学生以下のジュニアクラス大会でベスト8を勝ち取れる程の実力者。それに真っ向からバトルして勝利を収め、ライバルだと認められるオーカのバトルセンスは相当なモノである事がこの時点で窺える。

 

そうこうとしている内に3人はカードショップ「アポローン」へと辿り着いた。颯爽と店内へと入っていくが………

 

その中の様子はいつもと少し違っていて。

 

 

「………なんだこの人集り」

「誰か凄い人でも来てるのかしら?」

 

 

いつもこのアポローンに足を運んでいるオーカだが、これ程大きな人集りは見た事がない。その視線が中央に集まって事から誰か有名人が来店して来たと言うのが妥当な理由と言ったところか。

 

 

「あ……どうやら私のお客様がいらしたようです」

 

 

そちらからも誰の顔も見えないと言うのにいったいどうやって気がついたのか、人集りの中心にいる有名人らしき人物はベンチから立ち上がると、オーカ達の元へと歩みを進めた。

 

その途端に人集りが彼女を避け、遠ざかっていく。余程近づき難い人物なのであろう。

 

こうして、高身長で長い青い艶やかな髪が特徴的な美少女が今、鉄華オーカミの目の前に現れて………

 

 

「無造作に伸びた赤い髪に小さな体、それに見合わない大きな瞳………貴方が鉄華オーカミ君ですね?」

「そうだけど……アンタ誰?」

「え……ちょっとこの人って」

「まさか早美アオイ!?…高校生プロバトラーの」

「うっふふ、バレてしまいましたか」

「そりゃ人集りができるわけだわ………」

 

 

バトスピ初心者のオーカは別として、ヒバナとイチマルは目の前の有名な女性の正体に気がつく。

 

 

「高校生プロバトラー?……バトスピってプロとかあるの」

「あるに決まってんだろバカかオマエ!!…その中でも早美アオイっつったら100年に1人の逸材と言われている15歳の最年少プロだぞ!?…有名人だぞ!?」

「ふーーん」

 

 

鼻で納得を示すオーカ。今現在、自分がどれだけ凄まじい場面に出くわしているのかをまるで理解していない様子。

 

 

「で、そのプロバトラーがオレになんかよう?」

「最近、ここあたりでバルバトスと言う未知のモビルスピリットの出現が噂されていましたわ」

 

 

歳上に対しても敬語を使わないオーカ。そんな彼に対しても丁寧語を抜かないプロバトラーアオイがここに来た経緯を説明しようとしたそんな折、オーカがアニキと呼び慕うカードショップアポローンの店長、九日ヨッカが顔を見せて。

 

 

「それで、気になって調べて行ったらここに辿り着いたんだと」

「あ、アニキ。ご無沙汰してます」

「ありがとうございます店長さん。お陰でこうしてバルバトスの使い手とお会いする事ができました」

「良いって事よ、他でもないプロの頼みだからな」

 

 

どうやら彼女にオーカの鉄華団デッキ、及びバルバトスの事を話したのはこのヨッカであるようだ。

 

 

「あのーー…アオイプロは……」

「アオイでいいですよお嬢さん」

「あ、えっと……アオイさんはひょっとしてオーカとバトルしにここに来たんですか?…状況からして」

「えぇ、おっしゃる通りです。未知のモビルスピリットバルバトス。同じモビルスピリットの使い手である私からしたらこれ程心躍るモノはございません」

 

 

ヒバナがそう質問すると、アオイがそう答えた。

 

同じモビルスピリット使いとして、是非ともバルバトスを使うオーカとバトルして欲しいようだ。バトスピを初めて1週間も経っていないオーカにとって、これは良い経験になる絶好のチャンスである。

 

しかしオーカは…………

 

 

「改めましてオーカミ君。私の挑戦、受けてくれますか?」

「イヤ、やらない」

 

 

ー!!

 

 

まるで当たり前であるかのような表情でそれを断ってしまう。

 

驚愕せざるを得ない周囲。すかさずイチマルがオーカに問い詰める。

 

 

「オマエ、どう言う事だ鉄華オーカミ!!…あのアオイプロとのバトルだぞ!?…なんで断る!?」

「なんでって……そりゃ先にオマエともう一度バトルする約束してたし」

「はぁ!?」

 

 

オーカとて、別にプロのカードバトラーに興味がないわけではない。寧ろ津々であるが、律儀な性格故、イチマルとのバトルを優先しようとしていた。

 

しかし仮にも圧倒的な実力を持つプロのカードバトラーからのバトルの申し出。一生にあるかないかの一大イベント。普通では先ず拒否などと言う選択肢は常人では考えられない。

 

 

「いや、もうオレなんかとのバトルはいいから、さっさとアオイプロとバトルして来いよ」

「イチマルはバトルしなくていいのか?」

「いいったらいいんだよ、ほら」

「……変なヤツだな」

「オマエだよ変なヤツは!!」

 

 

無理矢理アオイとバトルさせようとするイチマルに困惑気味のオーカだが、どちらかと言えばそれは普通の行い。

 

 

「まぁ別にいいや。アイツがあぁ言ってるけど、やる?」

「うっふふ、面白い子ね……でもお心遣い感謝致します。お友達とのバトルもあるでしょうから、手短にやりましょうか」

「………まるで手短で勝てるような言い方だな」

「コラコラオーカ。もうちょっと言葉は慎めよ、オマエももう中二なんだから。しかも相手プロだし、普通に考えたらオマエ瞬殺だぞ?」

 

 

プロ故か、どこか上からな物言いが目立つアオイに対し、少々苛立ちを覚えるオーカ。やや喧嘩腰になるが、ヨッカに言葉で制止させられる。

 

何はともあれ、バトルだ。2人が店内にあるバトル場へと足を運んで行く。高校生でプロのカードバトラーとなった逸材、早美アオイのバトルを一眼見舞いと大勢の来客達もまたそこへと押し寄せて行った。

 

 

「オーカ、勝てるんでしょうか?」

 

 

アオイとオーカが互いのBパッドを展開してデッキをセット、バトルの準備を徐に進めていく中でそれを眺めているヒバナが心配そうにヨッカに聞いた。

 

それに対してヨッカは大人故の余裕を持ち、笑いながら答える。

 

 

「ハッハッハ!!…まぁさっきも言ったけど瞬殺だろうな。先ず経験の差がありすぎる。いくらアイツにセンスがあろうとも逆立ちしたって勝てんよ。でもオレは信じるぜ……アイツの根性ならプロ相手にも喰らいつけるってな」

 

 

弟分であるオーカのバトスピを信じているヨッカ。心の底から信用しているのが窺える。

 

 

「つーかヨッカさんバイトなんていつ雇ったんですか?…どうせなら鉄華オーカミみたいなチビじゃなくてオレっちを雇ってくださいよ〜!!」

「オマエは仕事そっちのけでヒバナのとこに行くからダメ」

「え〜!!…いいじゃねえっすかヒバナちゃんのとこに行ってもさ〜!!」

「いや来ないでよ」

 

 

イチマルの懇願を軽く受け流しながらも、ヨッカとヒバナはバトル場にいる2人の様子を見届ける。

 

どうやら準備は終えたようだ。アオイがオーカに対して一切曇りのない、しかしそれでいてどこか裏がありそうな笑顔を見せつけると………

 

 

「さぁオーカミ君。始めましょうか、楽しい楽しいバトルスピリッツを」

「あぁ、勝負だ髪の青い人……行くぞバルバトス、バトル開始だ!!」

 

 

……ゲートオープン、界放!!

 

 

遂にコールと共にカードショップアポローンのアルバイト鉄華オーカミと高校生プロバトラー早美アオイのバトルスピリッツが幕を開ける。

 

大勢の来客達に注目が集まる中、先攻はアオイだ。そのターンシークエンスを進めていく。

 

 

[ターン01]アオイ

 

 

「それでは参ります。私のメインステップ……バーストをセット」

「………バースト?」

 

 

アオイのターン開始直後、颯爽と彼女の場にはカードが裏側で伏せられる。

 

これはバーストと呼ばれるカード。一般的にカードバトラーであれば知っているカードであるが、バトスピを初めてからまだ日が浅いオーカにとっては未知のカード。

 

 

「あら、バーストをご存知ないのですか?…初心者と言うのもどうやら本当のようですね………バースト、1枚だけ裏側で伏せる事ができる所謂罠のカード、いつ発動するかは伏せたカードバトラー次第です」

「罠……」

「さぁ、私はこれでターンエンドです。どうぞターンを進めてくださいな」

手札:4

バースト:【有】

 

 

なんとなくバーストを理解するオーカ。このターン、アオイはそのバーストをセットする以外は何もせず、エンドとし、それを丁寧にオーカへと渡した。

 

 

[ターン02]オーカ

 

 

「メインステップ。先ずはコレだ、創界神ネクサス、オルガ・イツカを配置!」

 

 

ー【オルガ・イツカ】LV1

 

 

何かが出現したわけでもなく、オーカの場には特に変化はないが、鉄華団デッキ専用の創界神ネクサス、オルガ・イツカが配置される。

 

 

「配置時の神託………よし、対象カードは3枚、よって3個のコアを追加、LV2にアップ」

 

 

トラッシュへと注ぎ込まれる3枚の鉄華団カード。その中には彼のエースカードでもあるバルバトス第4形態のカードも見受けられた。

 

それを見越して、オーカはまた手札のカードを切る。

 

 

「続けて鉄華団モビルワーカーを召喚!……対象スピリットの召喚によりオルガにコアをまた1つ追加」

 

 

ー【鉄華団モビルワーカー】LV1(1)BP1000

 

 

このバトル初めて呼び出されたスピリットは銃火器を備えた車両、鉄華団モビルワーカー。

 

オルガにもコアがさらに追加され、オーカかはいよいよアタックステップへと移行する。

 

 

「アタックステップ、その開始時にオルガの【神技】の効果を発揮……コアを4つ支払い、トラッシュの鉄華団スピリットを呼び起こす……!」

「ッ………いきなりトラッシュからスピリットの召喚!」

「地の底より現れろ、ガンダム・バルバトス第4形態!!」

 

 

ー【ガンダム・バルバトス[第4形態]】LV1(1S)BP5000

 

 

蠢く地の底より地表を砕きながら出現したのは白いボディに黒く巨大なメイスを装備したモビルスピリットの1体、ガンダム・バルバトス第4形態。

 

オルガの効果により最速のご登場である。

 

 

「後攻の最初のターンからエースの第4形態か。アイツ、ここ数日でさらに腕を上げたな」

「当然ですよ!…だってこの私が色々教えてあげたんだから!」

 

 

最初のターンでのエースカードの召喚にオーカの成長を感じるヨッカ。自分の事ではないが、ヒバナもどこか誇らしげ。

 

そんな折、オーカの対戦相手である高校生プロバトラーアオイはそのバルバトスに魅入られていているのか、どこか興奮気味で…………

 

 

「おぉ、これがバルバトス、白いボディに細い腰、黒くて巨大な武器、メイスに王者を表現するような頭部のツノ。素敵、完璧なフォルムですわ」

「?」

「あ。ごめんなさい、つい噂のモビルスピリットを前にはしゃいでしまいました。どうぞターンを進めてください」

 

 

余程バルバトス……と言うかモビルスピリットそのモノが好きなのだろうか、うっとりしていたアオイ。

 

召喚するだけでこうなってしまうのなら、バルバトスを必死になって探していたのも納得である。

 

しかし、だからとて容赦はしない。オーカはアタックステップを続行させて。

 

 

「罠のカードが気になるけど、落ちたらその時はその時だ。アタックステップ続行、行けバルバトス第4形態!!」

 

 

バーストと言う名の罠を全く恐れないオーカの指示を聞き入れるなりメイスを片手に地を駆けるバルバトス第4形態。前のターンでスピリットを召喚しなかったアオイはこの攻撃をライフで受ける他なくて………

 

 

「ライフで受けます!………ッ」

 

 

〈ライフ5➡︎4〉アオイ

 

 

メイスを振るったバルバトス第4形態の渾身の一撃がアオイのライフバリアを1つ粉々に粉砕してみせる。

 

 

「攻撃のモーションも美しいですね、まるで歴戦の武人が乗り移ったかのような豪快さでした」

「次だ。鉄華団モビルワーカーで」

 

 

そして、まだオーカの場にはアタックが可能な鉄華団モビルワーカーが存在する。勝負に関しては女の子であろうとも一切容赦をしない彼はその鉄華団モビルワーカーにもアタックをさせようとそのカードに手を伸ばすが……

 

その前にアオイが事前に伏せていたバーストカードが勢い良く反転して。

 

 

「それは少々お待ちくださいな。ライフの減少でバースト発動!!」

「ッ……ここで罠が」

「ネクサスカード、No.26キャピタルキャピタル!!……効果によりノーコストで配置します」

 

 

ー【No.26キャピタルキャピタル】LV1

 

 

バースト発動と共に背後へと飛来して来たのは空に浮かぶ島。ネクサスカードであるキャピタルキャピタルだ。その効果はネクサスの扱いに長けている青属性らしいものであり………

 

 

「注意してくださいね。このカードが場にある限り、オーカミ君のスピリットは皆ソウルコアが置かれていないとリザーブのコアを1コスト支払わなければアタックできませんから」

「ソウルコアを………ッ!」

「あ、気がつかれました?……うっふふ、お可愛いこと」

 

 

ネクサスカード、キャピタルキャピタルの効果を説明され、察するオーカ。

 

ソウルコアが置かれていないスピリットでアタックする際にリザーブからコアの支払いを要求するキャピタルキャピタル。

 

つまり、裏を返して言えばスピリットにソウルコアを置いておけば良い。しかしその肝心なソウルコアはゲーム中1個しか所有できない。

 

それに加え、今現在オーカのソウルコアはちょうど今バトルを終えたバルバトス第4形態のカードの上、リザーブにも支払えるだけのコアは一切ない。それ即ち残った鉄華団モビルワーカーでは攻撃を仕掛ける事は不可能という事であって………

 

 

「ターンエンドだ」

手札:3

場:【ガンダム・バルバトス[第4形態]】LV1

【鉄華団モビルワーカー】LV1

【オルガ・イツカ】LV1

バースト:【無】

 

 

早速出鼻を挫かれたオーカ。結果的に鉄華団モビルワーカーをブロッカーとして残し、そのターンをエンドとする。

 

次はアオイのターンである。ここからがプロのお手並み拝見と言えるが………

 

 

[ターン03]アオイ

 

 

「メインステップ……何もしません、ターンエンドです」

手札:5

場:【No.26キャピタルキャピタル】LV1

バースト:【無】

 

 

ー!!

 

 

その行動に周囲の誰もが驚きを見せる。

 

無理もない、何せあの有名な高校生プロバトラー早美アオイが貴重な1ターンを無駄に消費してしまったのだから………

 

 

「アンタ、オレの事嘗めてるの?」

「いえいえ、単なる手札事故と言うヤツですよ、何万回もバトルしていれば、一度は訪れる現象です。お気になさらず」

 

 

手を抜かれる事を嫌うオーカは少しだけアオイを疑い、嫌悪感を募らせていく。アオイもアオイでどこか怪しげで落ち着いている様子を見せている。プロ故の余裕か、それとも…………

 

 

[ターン04]オーカ

 

 

「メインステップ。ソウルコアを置いてないスピリットにコストをかけるなら、ソウルコアを置いたスピリットだけでアタックするだけだ……鉄華団モビルワーカーとリザーブのコアを全て取り払い、ありったけのコアをバルバトス第4形態の上に追加!」

「!」

 

 

コア不足により消えていく鉄華団モビルワーカー。それに伴いコアを過剰に追加されるバルバトス第4形態。その上に置かれた合計コア数は6個。最大レベル3の維持コアは4であるため、いくらキャピタルキャピタルの影響下であるとは言え、やり過ぎだと普通は考えるが。

 

オーカもオーカでただ何も考えていないと言うわけではなくて。

 

 

「アタックステップ、バルバトス第4形態でアタック!!…そのLV3効果で紫のシンボルを1つ追加、一撃で2点のライフを破壊できるダブルシンボルになる!」

「ダブルシンボル効果………」

「さらに、バルバトス第4形態は自分のアタックステップ中のスピリットのバトル終了時、1コスト支払う事でトラッシュにある鉄華団スピリットを召喚できる」

「ッ……成る程、そう言う事ですか」

「え。何々、どう言う事ですかヨッカさん!?」

 

 

バルバトス第4形態の効果を説明するオーカ。そしてその考えを瞬時に理解するブロのカードバトラーアオイ。

 

しかし、この複雑な戦略に観客として観戦しているイチマルは理解できていないようで、オーカのアニキ分、ヨッカに問い詰める。

 

 

「簡単な話だ。バルバトス第4形態は場にある限り、自分のスピリットがバトルした終了時にトラッシュから鉄華団スピリットを呼ぶ。そして今、ソウルコアが置かれていないオーカのスピリットはアタックする際にリザーブからコアを支払わないと行けない。だから要はアタックする時にソウルコアを置いて置けば良いって事だろ?」

「あぁ?……そりゃもちろん。でもソウルコアは1個しかないからリザーブにコアがないとアタックはそのスピリットでしか行えない……って、まさか!?」

「そう。バルバトス第4形態の効果でトラッシュから鉄華団スピリットを呼び、そのスピリットの維持コアとしてソウルコアを上に置く。そんでもってその呼んだスピリットでアタック、バトルの終わりにまた同じ事を繰り返せば………」

 

 

キャピタルキャピタルの効果でアタック時にコストを払う事なく、ソウルコアが置かれたスピリットで連続アタックを行う事ができる。

 

だがコアの数的にもこれができるのはこのターンでは2回が限度。しかしそれで十分。ダブルシンボルのバルバトス第4形態と呼び出した2体の鉄華団スピリットのアタックでアオイの4つのライフは破壊できる。

 

 

「凄いオーカ。あの一瞬でそんな戦略を考えたの……!?」

「まぁ、アイツは昔から天才肌みたいな所あるからな」

 

 

素直にオーカの初心者離れした適応力を称賛するヒバナとヨッカ。

 

だが…………

 

 

「でも、今回はそれだけで勝てるわけないけどな」

 

 

玄人として威厳を漂わせながら、アニキ分であるヨッカが腕を組みそう呟くと、プロのカードバトラーであるアオイは笑顔を浮かべながら手札のカードを切って見せた。

 

オーカはこれから彼女の底が知れない実力を痛いほど知る事になる………

 

 

「見た目以上に賢い子……ですがそれを素直に通すわけには行きませんね、フラッシュ、【武力介入】を発揮させます!」

「武力介入!?……また知らない効果だ」

「武力介入は私の持つモビルスピリットの専用効果、これを持つスピリットは相手のアタックステップ中に指定されたコストを支払えば召喚が可能。私はその効果を使いこのカード、ダブルオーガンダムを召喚致します!!」

「ダブルオー……!?」

 

 

ー【ダブルオーガンダム】LV1(1)BP5000

 

 

アオイのライフを目掛けて走り行くバルバトス第4形態の行く道を遮るかのように…………

 

そして何よりそれから主人を守護しようとするかのように…………

 

上空から彗星の如く出現する1機の青色のモビルスピリット。その名はダブルオーガンダム。天使のような外観を持つそれは登場するなり、対になる悪魔に近い禍々しさを放つバルバトス第4形態と睨み合いを続けていて………

 

 

「………ソイツがアンタのモビルスピリットか」

「えぇ、美しいでしょう?…自慢のエースカードの1枚です。ダブルオーガンダムはその召喚アタック時効果でこのターンの間、レベルを最大にします。よってそのBPは12000、LV3のバルバトスと全く同じ」

「!」

 

 

アオイの持つデッキの中ではエースカードの部類に入るダブルオーガンダム。この相手のアタックステップと言う稀有なタイミングで召喚できるそれを今ここで呼び出したと言う事は、まず間違いなく……

 

 

「ダブルオー、バルバトスの攻撃をブロックなさい」

 

 

オーカのバルバトスとバトルさせるためである。

 

睨み合っていた2機の均衡は破られ、バルバトスはメイスを、ダブルオーは剣を握りしめ、互いに衝突していく。

 

火花散る撃ち合いの中、一見互角の勝負に見えたが、バルバトスが今戦っているのは仮にも高校生プロバトラーアオイがデッキに選んだ1枚。このままただで済むはずもなくて。

 

 

「さらにダブルオーがアタック、ブロックした時、このスピリットの【零転醒】を発揮!!……我が愛機ダブルオー、限界を超えて赤々と光り輝きなさい、トランザム!!」

「零転醒!?」

「煌臨と同じ、スピリットを新たな姿へ変化させる効果だ。気をつけろオーカ!」

 

 

ー【ダブルオーガンダム[トランザム]】LV3(1)BP16000

 

 

アオイが叫び、Bパッド上のダブルオーガンダムのカードを裏返す。すると、何もなかった裏側に別のカードが浮き出て来た。

 

直後に転醒カードの説明をヨッカがオーカにすると、互角の勝負を繰り広げていたダブルオーガンダムは突然両肩にある太陽炉と呼ばれる機関から赤い粒子を流し出していく。

 

やがてその赤い粒子は赤い光へ変化。ダブルオーガンダム全身に浸透していき、新たな姿、ダブルオーガンダム・トランザムへと進化を果たした。

 

 

「BPがバルバトス第4形態を超えた……!?」

「ふふ……さぁダブルオートランザム、その赤き剣で悪魔に天罰を!!」

 

 

全くの互角であった勝負はダブルオーガンダムのトランザム化により一変。機械外れの動きでバルバトス第4形態を翻弄し、劇的にダブルオーが有利となる。

 

凄まじい速度に追いつけないバルバトス第4形態は一度メイスを振るうのを止め、一旦立ち止まると、精神統一、ダブルオーの位置を感覚で探る。

 

そして背後に殺気を感じると、そこにメイスで一閃。

 

ダブルオーの迎撃に成功した…………

 

と思われたが、叩きつけたそれはトランザム化したダブルオーの目にも止まらない速さで生み出した幻影。本物のダブルオーは既にバルバトスの背後を取っていた。そしてダブルオーはその赤い輝きを放つ剣でバルバトスの胸部を貫通………

 

モビルスピリットにおいて胸部によるダメージは致命傷。流石のバルバトスも力尽きてしまい、大爆発を起こす。

 

 

「くっ……バルバトス」

「ふふ、バトル終了時に生き残っていなければバルバトス第4形態の効果は発揮できない。良い考えでしたけど、今一歩、ダブルオーには届きませんでしたね」

「でもまだバトルそのモノが終わったわけじゃない……一旦これでエンドだ」

手札:4

場:【オルガ・イツカ】LV1

バースト:【無】

 

 

プロのカードバトラーとしての本質を見せ始めてきたアオイ。ダブルオーの【武力介入】による見事なカウンターを決めた。しかしオーカとてまだ諦めたわけではない。

 

次のターンで切り返すべく、一度そのターンを終え、アオイにターンを渡す。

 

 

[ターン05]アオイ

 

 

「メインステップ。パイロットブレイヴ、刹那・F・セイエイを召喚!」

「ッ……パイロットブレイヴ……!」

 

 

ー【刹那・F・セイエイ】LV1(0)BP1000

 

 

モビルスピリットを強化する存在、パイロットブレイヴを召喚するアオイ。場には特に何も出現せず、影響は齎されないが、確かなプレッシャーをオーカは感じていて………

 

 

「召喚時効果、デッキから2枚ドローし、1枚破棄……その後、手札にあるコスト3のCBスピリットを1コストで召喚。現れなさい、ガンダム・エクシア!!」

「なッ…一瞬で合体先のスピリットを揃えた!?」

 

 

ー【ガンダム・エクシア】LV2(2)BP4000

 

 

青い閃光が地上へと降り立つ。それは背中に大きな太陽炉を有したモビルスピリット、ガンダム・エクシア。登場するなりオーカを威嚇するようにクナイ状の短剣を構える。

 

そしてモビルスピリットとパイロットブレイヴ、この2つの存在が出現してやる事はただ1つ、合体だ。

 

 

「エクシアに刹那を合体!!」

 

 

ー【ガンダム・エクシア+刹那・F・セイエイ】LV2(2)BP7000

 

 

見た目には特に影響はないものの、その緑色の眼光が強く光り輝くエクシア。バルバトスが三日月と合体した時同様のパワーアップを果たしたようだ。

 

 

「ダブルオートランザムに残ったリザーブのコアを置き、レベルアップ………そして、お待ちかねのアタックステップです」

「くっ………」

「行きなさいダブルオートランザム!!…その効果で自身とエクシアをこのターンのみ最大レベルに!」

 

 

コアの数を無視してレベルを上げていくアオイのモビルスピリット達。そしてバルバトス第4形態を失った今のオーカではこの攻撃はブロックできなくて………

 

 

「アタックはライフで受ける!」

 

 

〈ライフ5➡︎4〉オーカ

 

 

ダブルオートランザムはバルバトス第4形態をも真っ向から打ち破ったそのスピードを活かし、オーカのライフバリア1つを剣で粉々に斬り裂く。

 

 

「続きなさいエクシア。刹那の合体時効果で青のダブルシンボルに、さらにエクシアのLV2、3のアタック時効果【強襲:2】……キャピタルキャピタルを疲労させ、エクシアは回復!」

「ッ……ダブルシンボルのスピリットが回復した!?」

 

 

ー【ガンダム・エクシア+刹那・F・セイエイ】(疲労➡︎回復)

 

 

「ヨッカさん、これちょっとヤバいんじゃ………」

「あぁ。下手したらダブルシンボルの2回攻撃でオーカのライフはこのターンでゼロだ」

 

 

ネクサスカードであるキャピタルキャピタルの疲労に合わせて回復したエクシアを見るなり、ヒバナをはじめ、全員がこのターンでオーカは負けてしまうのではないかと察していた。

 

 

「さっきのカウンターと言い、全てが計算し尽くされている、やっぱプロだな……前のターン、何もせずにスキップしたのも、全てはこのターンでの猛攻のためか」

「兎に角頑張れオーカァァァー!!」

 

 

ヤケクソになったヒバナがオーカにエールを送る中、遂に合体したエクシアがオーカに手に持つ刃を向けていた。

 

ブロッカーのいないオーカは当然この攻撃もライフで受ける以外の選択肢はない………

 

 

「ライフで受ける!」

 

 

〈ライフ4➡︎2〉オーカ

 

 

短剣で二度ライフバリアを斬り刻むエクシア。それは2つ破壊され、残りのライフも2となる。

 

 

「終わりですか?……もう少し楽しめると思っていたのですが、まぁいいでしょう、やりなさいエクシア」

「!!」

 

 

最後は静かに、お淑やかに命令を下すアオイ。オーカの眼前にいるエクシアが再び短剣を構え、トドメを刺そうとするが…………

 

オーカはまるでこの瞬間を待ち望んでいたかのように手札のカードを1枚切って…………

 

 

「フラッシュマジック、リミテッドバリア!!」

「ん?」

「効果でこのターンの間、コスト4以上のスピリットのアタックではオレのライフは減らなくなる……さらにコストにソウルコアを使ったので追加効果!…相手ネクサス1つを手札に戻す」

「ネクサスを………」

「そうだ。当然オレはアンタのキャピタルキャピタルを指定、よってそれを手札に飛ばす!……エクシアのアタックはライフだ!」

 

 

〈ライフ2➡︎2〉オーカ

 

 

直前に展開されるライフバリアとは別種のバリア。それがエクシアの攻撃を防ぎ続ける。

 

それに加えて粒子となり、場から消え去っていくキャピタルキャピタル。コストが重いため、再配置には時間がかかる事だろう。

 

 

「どうだ。これで次のターン、オレのスピリット達はソウルコアを置かなくてもアタックが可能、オマケにアンタのスピリットは全て疲労状態だ」

「ッ……まさか、それを狙ってわざとこのタイミングでそのマジックカードを切ったのですか!?」

 

 

実力と経験の無さをその場の創意工夫とひらめきで補うオーカ。リミテッドバリア自体は最初のアタックで使う事もできたが、それではアオイが早々にアタックするのを躊躇い、ブロッカーを残してエンドにしてしまう。

 

そう思ったオーカはわざと最初の攻撃をライフで受け、アオイがブロッカーを残さないタイミングでそれを発揮させたのだ。

 

しかし………

 

それでもプロバトラーと言う壁は余りにも遠く、分厚い………

 

 

「で・す・け・ど………エンドステップ、ダブルオートランザムの効果、自身を手札に強制送還。そしてこの時、転醒後スピリットのダブルオートランザムは転醒前の姿、ダブルオーガンダムに戻ります」

「なに……!?」

「あら、もうおわかりいただけました?……そう、こっちの姿に戻った、と言う事はまた【武力介入】での召喚が可能であると言う事……ターンエンド、私のダブルオーはいつでもアナタの攻撃をお待ちしております」

手札:6

場:【ガンダム・エクシア+刹那・F・セイエイ】LV2

バースト:【無】

 

 

この場から消え行くダブルオートランザム。しかしそれは再び主人であるアオイを守護するための準備とも言える行い。

 

これが自分のターンに召喚されるだけで攻めづらくなる事は前のターンで迎撃されたバルバトス第4形態を目の当たりにしたオーカにとっては百も承知。

 

 

「かッ〜〜〜!!…ここまでかよ。でもアイツにしてはよくやったぜ〜」

「ちょっとイチマル!!…なんでもうオーカが負けるって決めつけてるのよ!!」

「だってヒバナちゃん、このライフ差、モビルスピリットの性能差……この後どうやってアイツが勝つって言うんだよ?」

 

 

この時点で諦めムードに入るイチマル。彼だけではない、この場にいる多くの来客がアオイの勝利を確信していた。

 

ヒバナはオーカの勝利を信じてこそが、この場からの大逆転は正直想像がつかないでいた。

 

だが…………

 

 

「ライフかデッキがゼロになるまで、そしてバトラーが諦めない限り、バトルは終わらない。2人ともアイツの顔を見ろ」

 

 

ー!!

 

 

オーカのアニキ分、ヨッカがそう告げると、オーカの表情に視線を移す2人、そこには新しいおもちゃでも見つけてはしゃいでいるような顔をしたオーカがいた。

 

それはこの絶望的な状況においても未だに諦めていないと言う何よりの証拠である。その顔を見るなり、対戦相手であるアオイは小さく微笑むと………

 

 

「ふふ……感情の起伏に乏しい子かと思っていましたが、そんな顔できたんですね」

「あぁ。アンタが最高に強いから、このバトル、やり甲斐がある……姉ちゃんが言ってたんだ、やり甲斐があるモノ程楽しい事はないって」

「それはそれは、素敵なお姉様ですこと」

「だからこのバトル、全力で楽しませてもらう!!……オレのターン!!」

 

 

やり甲斐のある事はとことん楽しむオーカ。一発逆転への兆しを探るべく、己のターンを進めていった…………

 

 

[ターン06]オーカ

 

 

「ドローステップッ!!………ッ!」

 

 

勝機を掴むべくして引いたドローカード。それを見るなり、オーカの口角が思わず上がる。そのカードとは今日のイチマル戦でも活躍したパイロットブレイヴ『三日月・オーガス』のカード………

 

そしてそれはこのターンでの一発逆転を可能にしてみせる奇跡の1枚。

 

 

「メインステップ!!……先ずは鉄華団モビルワーカーを2体、連続召喚だ!」

 

 

ー【鉄華団モビルワーカー】LV1(1)BP1000

 

ー【鉄華団モビルワーカー】LV1(1)BP1000

 

 

本日2、3体目となる鉄華団モビルワーカーが場を賑やかせていく。その中でオーカは手札にあるマジックカードをBパッドに叩きつけて…………

 

 

「マジック、リターンスモーク!!…これをソウルコアを支払って使う!!」

「ッ……あれは確かトラッシュからスピリットを復活させるマジックカード……」

「そうだ。本当ならコスト4以下のスピリットしか出せないけど、ソウルコアを支払った事により、その上限は6コスト以下に変更された………つまり、コイツが蘇る……再び大地を揺らせ、バルバトス第4形態!!」

「!!」

 

 

ー【ガンダム・バルバトス[第4形態]】LV3(4)BP12000

 

 

オーカの場に蔓延する紫の煙。その中よりダブルオーにより破壊されたバルバトス第4形態がメイスを振るってその紫の煙を吹き飛ばしながら復活した姿を見せる。

 

 

「何度倒されても立ち上がって来るその不屈の闘志、お見事です。しかし、そのままだとまた私のダブルオーの餌食になってしまいますよ?」

「あぁ、だからこそそのままにはしない!!……手札からパイロットブレイヴ、三日月・オーガスをバルバトス第4形態に直接合体!」

「ッ……バルバトス専用のパイロットブレイヴ」

 

 

ー【ガンダム・バルバトス[第4形態]+三日月・オーガス】LV3(4)BP18000

 

 

モビルスピリットを強化するカード、パイロットブレイヴの一種、三日月・オーガスがバルバトスに合体される。エクシアと同様に見た目は何も変わらないが、バルバトスにも別の何かが宿ったかのように緑色の眼光が強く光る。

 

これで準備は整った。そう言わんばかりにオーカはメインステップを終え、アタックステップへと移行する。

 

 

「アタックステップ!!…バルバトス第4形態!!…アタック時効果で相手のブレイヴ、刹那を破壊し、エクシアのコア2つをリザーブに……よってアンタのブレイヴもスピリットも全て消える!」

「!!」

 

 

バルバトスの効果でトラッシュへと送られるパイロットブレイヴ「刹那・F・セイエイ」のカード。その損失に伴い、エクシアが弱体化した瞬間、バルバトス第4形態の振るい上げたメイスがエクシアに直撃。

 

エクシアは堪らず爆散し、この場から消滅してしまう。

 

そして、パイロットブレイヴ、三日月の恩恵を受けたバルバトス第4形態の攻撃はまだ終わらなくて…………

 

 

「三日月の合体時効果。バルバトスと合体していたら鉄華団スピリットの数だけ相手のリザーブのコアを使用不可のトラッシュへと送る!!」

「コアをトラッシュに!?」

「今オレの鉄華団スピリットはバルバトス第4形態と鉄華団モビルワーカーが2体、よって3つのコアをトラッシュに叩きつけてやる!!」

「ぐうっ……!!」

 

 

エクシアを倒した直後のバルバトス第4形態が気迫みなぎる様子で紫色の覇気を飛ばすと、それがアオイのリザーブにあるコアを3つもトラッシュに送って見せる。

 

使えるコアの大半を失ってしまったアオイは、いくらこのターンでライフを減らされ、使用できるコアが増えようとも、6コストもかかるダブルオーの【武力介入】による召喚はできなくなって…………

 

 

「これで少なくともこのターン、アンタはダブルオーを出せない!!…バルバトス第4形態のLV3効果、紫のシンボルが1つ増える……三日月のシンボルと合わせてトリプルシンボルでのアタックだ!」

「ライフで受けます…………ぐっ!」

 

 

〈ライフ4➡︎1〉アオイ

 

 

メイスを振り下ろしたバルバトス第4形態の渾身の一撃。それがプロバトラーであるアオイのライフバリアを一気に3つ破壊した。

 

勢いに乗ったオーカは残った鉄華団モビルワーカーのカードにも手を伸ばし………

 

 

「成る程、これがバルバトスの力」

「トドメだ……鉄華団モビルワーカー、行け!!」

 

 

走り行く車両、鉄華団モビルワーカー。狙うは遂に残り1つとなったプロバトラーアオイのライフ。

 

先程までの劣勢を巻き返し、一気に形勢を逆転させたオーカの勝利に皆が期待する中、何を思ったのか、アオイはその瞳を閉じて。

 

 

「ふふ……思ってたよりもずっと可愛いですね君は、ライフで受けます」

「!?」

 

 

〈ライフ1➡︎0〉アオイ

 

 

最後に不適に笑うと、受け入れるようにその手を差し出し、鉄華団モビルワーカーの体当たりの直撃を受け入れるアオイ。その最後のライフは無惨にも散って行った………

 

彼女のBパッドから「ピー……」と鳴り響く虚しい機械音。同時にオーカの勝利を告げる音色である事に違いないが、オーカはいつものように勝利を実感できず、違和感だけが心の中に残っていて…………

 

 

…………うおぉぉぉおおお!!!!

 

 

「すげぇアイツ、プロバトラーに、早美アオイに勝ちやがった!!」

「噂のバルバトス使いだったよな!?」

「ここのアルバイトさんなんだって!!」

 

 

そんな彼の感情とは裏腹に大いに盛り上がりを見せる店内の来客達。無理もない、公式戦では絶対的な勝率を誇っていたあの早美アオイに黒星をつけたのが少し物変わりした一介のカードバトラーだったのだから…………

 

 

「すご〜いオーカ!!…あのアオイプロを倒しちゃった!!」

「ま、マジかよ……信じらんねぇ………!?」

「いや、これは………」

 

 

オーカの友達、ヒバナは彼の勝利に喜び、自称ライバルであるイチマルは余りに驚愕過ぎる展開に顎を外す程驚いていた。

 

そんな中、オーカしか感じえなかった違和感に、彼のアニキ分であるヨッカは気が付いていた。

 

 

「ふふ、良いバトルでしたオーカミ君。まさか仮にもプロであるこの私が負けてしまうとは」

「アンタ、わざとオレに負けたのか?」

「さぁ?……どうでしょう」

 

 

勘の鋭いオーカは、最後の最後でアオイがわざとライフで受ける選択をした事を見抜いていた。違和感の正体も間違いなくそれ。

 

初心者である自分に花を持たせてあげたかったのかどうかは定かではないが、少なくともオーカは手抜きされた事に嫌気を感じていて………

 

 

「では、私もこの後予定がありますので………ごきげんよう、オーカミ君。今度はゆっくりお話し致しましょうね。一木ヒバナさん、アナタとも是非」

「え……私ですか!?」

「えぇ、楽しみにしてます」

 

 

その後は軽い挨拶を済ますと、アオイはすぐさま店内を出て行く。他の誰よりも近寄り難い彼女がいなくなったからか、店内からは緊張感と言うモノが一瞬にしてなくなり…………

 

 

「オーカやったじゃん!!…すごいよ、あのアオイプロを倒しちゃうなんて!」

「ま、まぁジュニアクラスベスト8に入ったオレっち程じゃないけどな!」

「なんでイチマルが偉そうなのよ、つーかもうオーカはアンタより十分すごいと思うけど」

 

 

緊張感がなくなったのを歯切りに駆け寄るオーカの友達2人、ヒバナとイチマル。しかし、手を抜かれていた事を知ったオーカの表情はどこか暗く、不機嫌そうで………

 

 

「ど、どうしたのオーカ。なんかいつもより元気なさそうだけど」

「別に……」

 

 

女の子のヒバナにもやや冷たく当たってしまうオーカ。そんな彼を見かねてアニキ分であるヨッカが声を掛けて………

 

 

「おいおい。男だったらいつ何時も女の子には優しく接しろよオーカ。ま、バトルで手を抜かれた時のモヤっとした気持ちは痛い程わかるけどな」

「え。アオイプロ、手抜きしてたの?……あんなに強かったのに!?」

 

 

あれだけ敗北する寸前まで終始オーカを片手であしらうようにバトルを続けていたアオイが手抜きをしていたとは思っていなかったヒバナとイチマル。

 

逆に本気を出したらどれくらい強いのかと勘繰ってしまい、イチマルはゾッと背中が震えてしまう。

 

 

「まぁいいや。次はちゃんと本気を出させた上で勝つ。それだけだ」

「おっ……流石オレの弟分だ、よく言った!」

「立ち直り早ーー……オーカらしいけど」

 

 

立ち直るのもまた早いオーカ。どうやらまた1つ強くなる理由を作ったようである。

 

その時、ヨッカは何かを思い出したように「あ……」と言葉を落として………

 

 

「そう言えばもうすぐアイツが帰って来る頃だったな。オーカ含めて働き手3人、また賑やかになりそうだ」

「??」

 

 

ヨッカの呟いた言葉の意味がわからず、頭にハテナのマークを浮かべるオーカ。彼の言う「アイツ」が誰なのかわかるヒバナとイチマルは「あ〜」と納得した様子。

 

どうやらバトルスピリッツと言うカードゲームは、オーカに退屈を与えはしないようだ………

 

 

******

 

 

「♪」

 

 

ここは車が入り乱れる道路。その中の黒い大きな車は他でもない早美アオイが乗る車。オーカとバトルが終わってからと言うモノ、どう言うわけか、凄くごきげんなようだ。

 

車のハンドルを握り、運転しているのは執事らしき黒服を着用した青年。そんな彼は鼻歌混じりでごきげんなようすであるアオイにその理由を聞いて………

 

 

「どうしたエライごきげんだな、何か良い事でもあったかお嬢?」

「えぇフグタ。今日は本当に最高の1日よ。バルバトス使いの鉄華オーカミ君。見た目以上に可愛げのある子でした。バトルの腕は発展途上、勘も鋭過ぎるくらい良い」

 

 

ですが、使えるかはまだわかりませんね。

 

 

今回はオーカを試すようなバトルをした高校生プロバトラーアオイ。

 

車内でもまた意味深な事を呟く。彼女の抱えている何かは、オーカが予想していた以上のモノがあるようで…………

 

 

 




次回、第5ターン「進撃のギドラ、バルバトスは4を超える」


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