バトルスピリッツ 王者の鉄華   作:バナナ 

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第43ターン「運命をも覆す、我が魂」

「さぁアオイ君、遂に明日、私達の計画のファイナルステップだよ」

「ッ……!」

 

 

早美邸での決戦の幕開け前日。この世界の人間なら知らぬ者はいない、悪魔の科学者Dr.Aがアオイにそう告げた。

 

アオイにとっては待ちに待ったであろうその言葉。遂にDr.Aとの約束が完遂され、弟であるソラの病を治してくれる時が来たのだ。

 

 

「私は、何をすれば……!」

「ヌッフフ、簡単さ。カードバトラー達の戦闘データが蓄積された6枚全てのゼノンザードスピリットカードが集結した時に、これを翳すだけでいい」

「……白紙のカード?」

 

 

Dr.Aがアオイに手渡したのは、何も描かれていない真っ白なカード。裏面からバトスピカードであると言う事は容易に判別できるが、それ以外は謎だった。

 

 

「全てのゼノンザードスピリットの力をそれに結集させ、奇跡のカードを手にしなさい。さすれば君は、弟君の病を救う力を手にできる」

「!!」

「そう。僕は優しいからね。最初から君の弟君を助けるために、ゼノンザードスピリットを作り、君と言うカードバトラーを育てていたのさ。大丈夫、君ならできる」

「……私なら、できる」

 

 

アオイは、何の躊躇いもなく、その白紙のカードを受け取った。

 

Dr.Aのその言葉に、嘘偽りがない事を信じて………

 

 

 

******

 

 

早美邸で繰り広げられる決戦。最後の1人となった早美アオイは、手に握る白紙のカードの力を使い、周囲にいた6枚のゼノンザードスピリットを巻き上げ、その力を集結。

 

白紙のカードを7枚目のゼノンザードスピリット『「運命を描く者」ラケシス』へと変貌させたのだった。

 

 

「お、お嬢、そのカードは……!」

 

 

得体の知れないカードの正体について、早美家に長く仕える執事、フグタが震える声で、現在の主人であるアオイに訊いた。

 

 

「病にかかったソラを救うための力。ようやくこの私の手の中に収まったのよ、これでソラは助かる……!」

「そんなカードなんかで坊ちゃんの病気が治るわけ」

「治るわよ、Dr.Aがそう言ってたのだから!!……あの方の科学力は本物、信用に値するわ」

 

 

目が血走り、焦点が合ってないように見える。今のアオイは、自分で冷静な判断ができなくなってしまっているようだ。

 

無理もない、ようやく手にした弟を救うための力。非常な事をしてまで手に入れたそれの重みが、彼女の精神を蝕んでいるのだろう。

 

 

「へぇ、7枚目のゼノンザードスピリット、ちょっと面白そうじゃない。ちょっと赤チビ、ヨッカさんの膝枕役変わりなさいよ」

 

 

7枚目のゼノンザードスピリットとバトルしたいのか、ライが目をギラギラ輝かせながらオーカミにそう告げる。その膝の上には気を失ってしまっている九日ヨッカが確認できる。

 

 

「嫌だ」

「は?」

「アイツはオレが倒す」

「バカじゃないの、アンタじゃアレには勝てないっつーの。せめてアルファベットさん並みの実力はないと無理」

「やってみないとわからないだろ」

 

 

軽く口論になるオーカミとライ。ライはこの場にいる誰よりもバトルの実力が高いため、誰が誰よりも強いと言った強さのランクが瞬時にわかってしまうのだ。

 

 

「ならば、オレが行く」

「!」

 

 

そんな折、2人の前に出るのは、白のゼノンザードスピリットから解放されたばかりのジュニアクラス絶対王者、銀髪の少年獅堂レオン。

 

 

「ちょいちょい、アンタはもっと無理でしょ。大人しく私に譲りなって」

「この状況になってしまったのは、オレにも責任がある。白のゼノンザードスピリットを駆っていたのだからな」

「せめてもの罪滅ぼしのつもり?」

「理由の一つに過ぎないがな。悪いがこのバトルだけは譲れない」

 

 

ライと言い合いながらも、デッキとBパッドを取り出すレオン。

 

彼は以前、界放リーグ制覇後に早美アオイに敗北を喫している上に、今の鉄華オーカミより弱い。故に彼ではどう足掻いても彼女に勝てるわけがない。それはライがそう言わなくとも周知の事実。

 

 

「やめろ」

 

 

そんな無謀と言えるレオンの行動を制止させようとしたのは、サングラスを掛けている界放警察の警視、アルファベット。

 

 

「何故止める」

「死にに行くようなモノだ。今は下がれ」

「下がらん。これはこのオレ、かのレジェンドカードバトラー、芽座葉月を師に持つ、獅堂レオンの物語。どこの誰かは知らんが、貴様の言いなりにはならん」

「………」

 

 

止めても無駄だと察してしまったのか、アルファベットはそれ以上何も言わず、引き下がる。

 

そしてレオンはBパッドを左腕にセットし、早美アオイの方へとそれを構える。

 

 

「うっふふ。最初はてっきりオーカミ君が挑んで来るかと思ったけど、まさかレオン君が私に歯向かうなんてね。白のゼノンザードスピリットが恋しい?」

「……」

「今は私の手の中にあるわ。このバトルのみ、一時的にまた君のデッキに入れてもいいわよ。強かったでしょう、勝てて楽しかったでしょう、ゼノンザードスピリットは本当に素晴らしい」

 

 

アオイがBパッドを左腕にセットしながら、レオンにそう告げる。

 

力の誘惑。以前の彼はそれに負け、悪魔の科学者Dr.Aが作り出した魔道具、ゼノンザードスピリットに手を染めてしまった。

 

 

「あぁ、確かに心地よかった。使っている時は負ける気がしなかった。だが、それだけではダメだと気付かされた。オレはもう、力の誘惑には屈しない。貴様に勝ち、本当のオレを取り戻す」

「……フン、芽座葉月の弟子を名乗り、カッコをつけているだけの小物が、モビル王であるこの私を相手に、生意気ね」

 

 

Bパッドを構え合う2人。互いに己のデッキをそこへと装填し、バトルの準備を完了させる。

 

 

「ここにいる全員、生きて帰さない。全てこの7枚目のゼノンザードスピリットの餌にしてあげるわ」

「言いたい事はそれだけか?……ならば、行くぞ」

 

 

……ゲートオープン、界放!!

 

 

オーカミ、ライ、アルファベット、フグタが見守る中、レオンとアオイの二度目のバトルスピリッツがコールと共に幕を開ける。

 

先攻は早美アオイだ。目の前の歯向かって来た愚か者を排除すべく、7枚目のゼノンザードスピリットが入ったデッキからカードを引いて行く。

 

 

[ターン01]早美アオイ

 

 

「メインステップ、青の母艦ネクサス、プトレマイオス2を配置します」

 

 

ー【プトレマイオス2】LV1

 

 

モビルスピリットを大きくサポートするカードで名の知れる母艦ネクサス。その1つ、蒼き空船プトレマイオス2が、アオイの背後に配備される。

 

 

「配置時効果、デッキ上から4枚オープン。その中のダブルオーライザーを手札に加えて、残りはトラッシュに破棄」

 

 

プトレマイオス2の効果でアオイの手札に加えられたのは、彼女のデッキのエースカード「ダブルオーライザー」………

 

 

「これで私のターン、エンドです」

手札:5

場:【プトレマイオス2】LV1

バースト:【無】

 

 

レオンへとターンが渡る。

 

 

[ターン02]獅堂レオン

 

 

「メインステップ。オレもネクサス、凍れる火山とミネルバを配置する」

 

 

ー【凍れる火山】LV1

 

ー【ミネルバ】LV1

 

 

レオンもネクサス。背後に見てるだけで寒気がする程に氷で覆われた山と、母艦ネクサス、ミネルバが出現する。

 

 

「ミネルバの配置時効果。デッキ上から3枚オープン、ザクウォーリアを1枚手札に加え、残りはデッキ下に送る」

 

 

ミネルバの効果が発揮。レオンは己のデッキの歩兵的存在、ザクウォーリアのカードを1枚手札へと加える。

 

 

「ターンエンド」

手札:4

場:【凍れる火山】LV1

【ミネルバ】LV1

バースト:【無】

 

 

レオンのターンも早々に終了。バトルは一周回り、再びアオイのターンとなる。

 

 

[ターン03]早美アオイ

 

 

「メインステップ。ガンダムキュリオスをLV1で召喚」

 

 

ー【ガンダムキュリオス】LV1(1)BP2000

 

 

「召喚時効果で自身に1つコアブースト」

 

 

今回初めて登場するスピリット。オレンジを基準とした装甲を持つ青の低コストモビルスピリット、キュリオスが飛行形態から人型となり、地上へと降り立つ。

 

 

「さらにアタックステップ、キュリオスでアタック。その効果【トランザム】を使い、トラッシュにあるキュリオス・トランザムをLV2で召喚」

 

 

ー【ガンダムキュリオス[トランザム]】LV2(3)BP8000

 

 

「その召喚時効果により、自身とプトレマイオス2に1つずつコアブースト」

 

 

キュリオスの全身が赤く光り輝き、トランザム化する。その効果によって、アオイのフィールドにコアが貯まっていく。

 

1ターンに累計3つものコアをブーストする強力なコンボだが、レオンもただ手をこまねいているだけではなくて。

 

 

「キュリオスが手札に戻り、貴様の手札が増えたこの瞬間、オレはネクサス、凍れる火山の効果を発揮させる」

「!」

「貴様のターン中に増えた手札1枚につき、貴様は自分の手札を破棄しなければならない」

 

 

ここでレオンの配置したネクサス、凍れる火山の効果が発揮。アオイは手札を1枚増やしたので、同じ枚数1枚を、手札からトラッシュに捨てなければならない。

 

 

「フン、小細工ね」

 

 

アオイは即決で捨てるカードを決め、トラッシュへと破棄する。

 

余裕のある表情を見せているが、これから自分のターンで【トランザム】の効果を使用するたびに手札を捨てなければならないので、凍れる火山自体は、彼女にとってはかなり厄介な存在である事は間違いないだろう。

 

 

「エンドステップ、トランザムしたキュリオスはトラッシュに戻します。ターンエンド」

手札:5

場:【プトレマイオス2】LV1

バースト:【無】

 

 

トランザム化したキュリオスが消滅し、そのターンはアオイからレオンへと渡って行く。

 

 

[ターン04]獅堂レオン

 

 

「メインステップ。ここから仕掛けるぞ、ザクウォーリア2体、連続召喚」

 

 

ー【ザクウォーリア】LV1(1)BP2000

 

ー【ザクウォーリア】LV1(1)BP2000

 

 

緑色の装甲を持つ、白属性の低コストモビルスピリット、ザクウォーリアがレオンの場に2体呼び出される。

 

 

「ミネルバのLVを2に上げ、アタックステップ。2体のザクウォーリアでアタックだ」

 

 

レオンの指示を受け、2体のザクウォーリアが颯爽とアオイのライフバリアを破壊すべく動き出す。

 

 

「愚直なアタックね。全てライフで受けましょう」

 

 

〈ライフ5➡︎4➡︎3〉早美アオイ

 

 

2体のザクウォーリアが連携し、アオイのライフバリアを拳を殴りつけ、それを2つ粉砕する。

 

 

「ターンエンド」

手札:3

場:【ザクウォーリア】LV1

【ザクウォーリア】LV1

【凍れる火山】LV1

【ミネルバ】LV2

バースト:【無】

 

 

迷いのないフルアタックを行い、レオンはそのターンをエンド。アオイのターンへと移って行く。

 

 

「今はレオンの優勢だが、次のターン、早美アオイは十中八九ダブルオーライザーを出して来るだろうな」

 

 

ここまでの展開を見て、アルファベットが呟く。さらにその言葉に疑問を抱いたライが口を開き………

 

 

「アルファベットさんさ。なんで私らの事は大体苗字で呼ぶのに、獅堂の事は名前で呼ぶの?」

「……」

「あぁ、なんか聞いちゃダメな事だったらごめんなさい」

「いや、問題ない。理由は単純、昔からそう呼んでいるんだ」

「昔から……旧知の仲って事?」

「まぁな」

 

 

アルファベットとレオンの関係に関して疑問を抱くライ。旧知の仲と言っても、レオンはアルファベットの事を何も知らなかったし、わからない事だらけである。

 

 

[ターン05]早美アオイ

 

 

「メインステップ。キュリオスを2体召喚」

 

 

ー【ガンダムキュリオス】LV1(1)BP2000

 

ー【ガンダムキュリオス】LV1(1)BP2000

 

 

「召喚時効果でコアブースト」

 

 

今度は2体のキュリオスがアオイのフィールドへ。さらにコアブーストを重ねると、彼女は手札からもう1枚、カードを引き抜く。

 

 

「舞いなさい、天高く!!…ガンダムをも超越する戦士、ダブルオーライザー!!」

 

 

ー【ダブルオーライザー】LV2(3)BP11000

 

 

青き一筋の流星が、粉塵と共にアオイのフィールドへと降り立つ。

 

その名はダブルオーライザー。

 

二振りのブレードを手に取り構え、即座に戦闘態勢に入る。

 

 

「来たか、ダブルオーライザー」

「召喚時効果発揮。CBスピリット全てにコアを1つずつブースト、さらに貴方の手札を全て手元に」

「……!」

 

 

2体のキュリオスとダブルオーライザーにコアが1つずつ追加。さらにレオンの3枚の手札は、Bパッドに表側で貼り付けにされてしまう。

 

その3枚のカードは「アルテミックシールド」「ミネルバ」「輝きの聖剣シャイニング・ソードX」

 

 

「増えたコアを使い、ダブルオーライザーのLVを3にアップ」

「来い、返り討ちにしてやる」

「……その貧相な手札で何を言ってるの貴方。ターンエンドよ」

手札:3

場:【ダブルオーライザー】LV3

【ガンダムキュリオス】LV1

【ガンダムキュリオス】LV1

【プトレマイオス2】LV1

バースト:【無】

 

 

「え、あの布陣でアタックしないのか?」

 

 

攻撃性能の高いダブルオーライザーを召喚しても尚、レオンのライフを破壊しに行かないアオイ。

 

フグタはその行動を不審に思う。

 

 

「待ってるんだろうね。多分、7枚目のゼノンザードスピリット」

 

 

しかし、その不審なプレイングの理由は、春神ライには筒抜けの模様。

 

覚醒した7枚目のゼノンザードスピリットの存在が、よりこの場を不穏にさせる中、バトルは再びレオンのターンへ。

 

 

[ターン06]獅堂レオン

 

 

「メインステップ。オレは手元にある、2枚目のミネルバを配置する」

 

 

ー【ミネルバ】LV2

 

 

「配置時効果、3枚オープンし、オレはその中にある「レジェンドガンダム」を手札に加え、残りをデッキの下に」

 

 

2隻目のミネルバが、レオンの背後に出現。彼はその効果で新たなカードを手札へと加えるが、その手の中には、未だに己の魂である「デスティニーガンダム」は見えず………

 

 

「どうやら、我が魂が引けないみたいですね」

「……」

「貴方はもう強者ではない。力に溺れ、過信し、己の魂までもを失った、哀れで愚かな元絶対王者」

 

 

レオンがデスティニーガンダムを手札に加えようとしている事、今それを手札に抱えていない事を悟るアオイは、不気味な角度で口角を上げ、彼を煽り始める。

 

先のオーカミとのバトルで、レオンは我が魂であるデスティニーガンダムを肝心な時にドローできなかった。今も尚、それを引きずっているのかもしれない。

 

 

「フ……力に過信してる奴はどっちだか」

「なんですって?」

「貴様が力に過信していないと言うのであれば、Dr.Aの力などに頼らずとも、己の力のみで弟の病気と向き合ってみたらどうだ」

「!」

「オレは、この戦いの中で改めて理解した。力とは、与えられるモノではない、他の誰かと高め合っていくモノだ。故に、それを知らない貴様に、オレは負けない。デスティニーも、再び必ず我が手中に収めて見せる。ターンエンドだ」

手札:2

場:【ザクウォーリア】LV1

【ザクウォーリア】LV1

【凍れる火山】LV1

【ミネルバ】LV2

【ミネルバ】LV2

バースト:【無】

手元:【アルテミックシールド】【輝きの聖剣シャイニング・ソードX】

 

 

レオンの意志は固い。もう己の強さに迷わない彼は、ここでターンエンドの宣言。

 

だが、ライフで勝っているとは言え、アオイの場には、強力なダブルオーライザーが存在することに変わりなく、心の余裕は兎も角として、バトル的には厳しい状況が続いている。

 

 

[ターン07]早美アオイ

 

 

「メインステップ、ダブルオーライザーのLVを2にダウン。何が高め合って行くモノよ、向き合ってみろよ。それなら散々やった、でもダメだった、どこに行っても、何をしても……!!」

「お嬢……」

 

 

己に課された悲惨な境遇を嘆くアオイ。それを唯一目の前で見て来た執事、フグタは苦い表情を見せる。

 

 

「だからもうこれに頼るしかないのよ、ソラを救うためには、ゼノンザードスピリットしか、Dr.Aの力しか!!」

 

 

悲痛な想いを唸らせ、叫ぶ。

 

拗れに拗れ、募った負の感情が爆発したアオイは、手札にある1枚のカードをBパッドへと叩きつける。

 

そのカードこそ、悪魔の科学者の知恵の結晶。早美ソラを未知の病から救うために造られた、運命をも捻じ曲げる、奇跡の1枚。

 

 

「司るは全てのゼノンザード。運命をも創造する、奇跡の秘術……運命の図柄を描く者・ラケシス……!!」

 

 

ー【「運命の図柄を描く者」ラケシス】LV2(3)BP12000

 

 

眩い光輪が何重にも重なり、光の速さで回り出す。

 

そしてそれはやがて砕け、弾け飛び散り、中にいる存在がフィールドへと姿を見せる。

 

そのスピリットの名はラケシス。黒服を身に纏い、銀色の長い髪を靡かせる、凛とした女性型のゼノンザードスピリット。

 

 

「アレが7枚目のゼノンザードスピリット、6色のスピリットなのか」

「アンタのエースカードと同じだな」

 

 

オーカミが言っているのは、アルファベットのアルファモンの事だろう。アレも6色のスピリットで、尚且つ「ロイヤルナイツ」と呼ばれる特別なカード群だ。

 

 

「6色のカードって、大体壊れカードだよね。アレ絶対強いよ」

「楽しそうだな、春神」

 

 

本当は自分がバトルしたかったライ。こんな状況だが、7枚目のゼノンザードの効果を楽しみにしているようだ。

 

そしてそれは、直ぐに知る事になる。

 

 

「7枚目のゼノンザードスピリット、ラケシスは、私の思うがままの運命を描く。このバトル、もう貴方の運命は決したわ、敗北と言う名の、ね」

「オレの前で運命を語るとは、良い度胸をしてるな」

「我が魂にさえ見放された貴方に、それを言う資格はないですよ。ラケシスの召喚時効果、相手のトラッシュとライフのコアを入れ替える」

「………は?」

 

 

〈ライフ5➡︎2〉獅堂レオン

 

 

「なに!?」

 

 

ラケシスが手に持つ針のような短剣を天に掲げると、レオンの周囲にあるライフバリアが3枚も消え去る。

 

いや、正確には入れ替わってしまったのだ、ライフバリア5枚と、それに変わる、レオンのトラッシュにある2つのコアが。

 

余りにも摩訶不思議、奇天烈な効果に、レオン始め、バトルを見ている他の者達も驚きが隠せない様子。

 

 

「凄い、召喚しただけでライフが5から2に。やはりこれは、そうなんですね、如何なる運命も思いのままに書き換えてくれる。これさえアレばソラは、ソラは助かる……!!」

「……貴様」

「そのために、貴方達をさっさとぶっ潰しますよ。やっちゃいなさい、ダブルオーライザー!!」

 

 

このターンのアタックステップに突入。ラケシスの効果で大きく減少させられたレオンのライフバリアを斬り裂くべく、ダブルオーライザーが二振りのブレードを構え、飛翔。

 

前のターンはお預けとなったアタック時効果も、ここで発揮される。

 

 

「ダブルオーライザーのアタック時効果、相手の手元にあるカード1枚を破棄し、コスト8以下のスピリット1体を破壊します。手元のアルテミックシールドを破棄して、ザクウォーリアを1体破壊」

 

 

レオンの手元から、白の防御マジック「アルテミックシールド」のカードが破棄され、トラッシュに。さらにフィールドではダブルオーライザーが、ザクウォーリアを1体、ブレードで串刺しにし、爆散へと追い込む。

 

 

「……ザクウォーリアの破壊時効果、ボイドからコア1つをもう1体のザクウォーリアに追加し、カードをオレの手元に」

「そんな効果無意味!!……ダブルシンボルのダブルオーライザーが、貴方の残り2つのライフを砕く」

 

 

ラケシスとダブルオーライザーの強力な連携により、一気に窮地へと立たされるレオン。

 

だが、何も打つ手がないわけではないのか、冷静に1枚のカードを、Bパッドへと叩きつける。

 

 

「フラッシュ、手札にあるレジェンドガンダムの効果を発揮」

「!」

「コストを5にし、このスピリットを召喚できる。来い、伝説呼び覚ましモビルスピリット、レジェンドガンダム!!」

 

 

ー【レジェンドガンダム】LV2(3)BP12000

 

 

レオンのライフバリアを狙わんとするダブルオーライザーの前に立ちはだかるのは、白銀のモビルスピリット、レジェンドガンダム。

 

彼のデッキにおいては、デスティニーガンダムに次ぐ実力を有している強力なスピリットだ。

 

 

「そうした時、相手のBP10000以下のスピリット全てを手札に戻す。失せろ、キュリオス」

 

 

レジェンドガンダムは登場するなり、手の甲からビームを放射。その斜線上に入った2体のキュリオスは瞬く間に粒子化してしまい、アオイの手札へと強制送還されてしまった。

 

 

「よし、これでダブルオーライザーを返り討ちにできるぞ」

 

 

フグタがそう呟く。

 

確かに、今のダブルオーライザーのLVは2。BPは11000。BP12000のレジェンドガンダムなら返り討ちにできる。

 

しかしそれは、アオイがこのタイミングで何もしなければの話であって……

 

 

「その程度で私を超えれると思って?……フラッシュチェンジ、トランザムライザーを発揮……!!」

「!」

「その効果でザクウォーリアとレジェンドガンダムの2体を破壊」

「くっ……ザクウォーリアの破壊時効果で、コアを1つ追加し、自身を手元に」

 

 

ダブルオーライザーの両肩から赤い粒子が、球体を描くように勢い良く放出。それに包み込まれてしまったザクウォーリアとレジェンドガンダムは、対抗する間もなく塵芥となってしまう。

 

 

「そしてこの効果発揮後、ダブルオーライザーと回復状態で入れ替える。顕現なさい、全てを超越する赤き流星…………トランザムライザーッッ!!」

 

 

ー【トランザムライザー】LV2(2)BP16000

 

 

ダブルオーライザーは自身から放出した赤い粒子をその身に纏い、更なる強化形態、トランザムライザーへと進化を果たす。

 

デスティニーガンダムをも凌駕するその気迫に、レオンは半歩後退り、頬からは冷や汗が伝うのを感じた。

 

 

「これで貴方のスピリットは0。ライフも残り2つ。さぁトランザムライザー、愚かな未熟者に制裁を!!」

「レオン……!!」

 

 

その時レオンの名前を張り上げたのは、他でもないアルファベット。

 

彼の事情など知る由もないレオンだが、不思議とそのタイミングで、手札にある最後の1枚を引き抜き、即座にBパッドへと叩きつける。

 

 

「フラッシュマジック、リミテッドバリア」

「!」

「効果により、このターンの間、コスト4以上のスピリットのアタックでは、オレのライフは減らされない。ライフで受けるぞ」

 

 

〈ライフ2➡︎2〉獅堂レオン

 

 

レオンの前方に展開される半透明のバリアが、トランザムライザーが持つ、二振りのブレードによる剣撃から、彼を守護する。

 

 

「ターンエンド。しぶとい、でも次のターンでお終いです」

手札:5

場:【トランザムライザー】LV2

【「運命を描く者」ラケシス】LV2

【プトレマイオス2】LV1

バースト:【無】

 

 

7枚目のゼノンザードスピリットに加えて、ダブルオーの最終進化形態トランザムライザー。

 

驚異的な力を見せつけ、後一歩の所までレオンを追い詰めたアオイは、ようやくそのターンをエンドとする。

 

 

「手札0。場のスピリットも0。こんな状況から巻き返せる可能性は……」

「あるよ」

 

 

レオンが勝利する可能性の低さに落胆仕掛けるフグタだったが、それを否定して見せたのは、レオンから勝手にライバル認定されている鉄華オーカミだった。

 

 

「アイツが勝つって言ったんだ。そんなモン、捻じ曲げてでも引っ張って来るだろ」

 

 

正念場と言う言葉が似合う局面は、まさしく今だろう。皆の期待が一心に集う中、レオンの最後のターンが幕を開けて行く。

 

 

[ターン08]獅堂レオン

 

 

「スタートステップ、コアステップ」

 

 

順調にターンシークエンスを重ねて行くレオン。

 

次はいよいよ彼の運命を左右するドローステップ。狙うカードは………

 

 

「デスティニーガンダム」

「!」

「数あるモビルスピリットの中でも特に力に秀でた、貴方の魂。アレを引けたらこの状況を覆せるかもしれないわね。でも不可能よ、貴方はもう、カードの信頼を失っている」

 

 

アオイも、レオンがこのドローステップで狙っているカードが何かを完全に理解していた。

 

そう。これはオーカミ戦の時と同様、デスティニーガンダムさえドローできれば、勝利に近づく事ができる状況なのだ。

 

 

「確かに、オレは一度ゼノンザードスピリットと言う邪な力に手を染め、デスティニーの信頼を失った。今更虫の良い話なのもわかる。だが、この瞬間のみ、オレは貴様の見る運命を捻じ曲げ、覆す」

「言ってる事、意味不明ね」

 

 

Bパッドに装填されているデッキに、指先を当てるレオン。いよいよ運命のドローステップが開始される。

 

 

「ドローステップ………!!」

 

 

ようやくカードをドローするレオン。緊張感が走る中、引いたそのカードを視認して行く。

 

 

「ドローカードは、デスティニーではない」

「うっふふ、とうぜ……」

「だが、マジック、双翼乱舞」

「!」

「効果により、デッキからさらに2枚のカードをドローする」

 

 

ここで引いたのは、赤属性のドローマジック「双翼乱舞」…………

 

これにより、またデスティニーをドローするチャンスが発生。レオンは颯爽とメインステップへと乗り出し、そのカードを使用、己のデッキの上から、さらに2枚のカードをドローして見せた。

 

そして、そのカードの中には…………

 

 

「フ……引き寄せたぞ、我が魂を」

「ッ………まさか」

 

 

双翼乱舞の2枚目のドローで「デスティニーガンダム」のカードを見事に引き当てたレオン。

 

敗北と言う名の運命が捻じ曲がり、世界が変わったこの瞬間に、アルファベットは口角を上げる。

 

 

「行け、レオン」

「オレはマジック「アンタは俺が討つんだ! 今日! ここで!!」を使用。相手のスピリット1体をデッキの下に戻す、消えろ、トランザムライザー!!」

「なに、効果でトランザムライザーを!?」

 

 

反撃の狼煙が上がる。レオンは、デスティニーガンダムと共にドローしたマジックカードを使用し、アオイのフィールドに存在するトランザムライザーを粒子化、デッキの下へと送り付ける。

 

 

「この効果でBP11000以上のスピリットを戻した時、手札からFAITHスピリット1体をノーコスト召喚する。運命をも覆す、我が魂!!……デスティニーガンダムをLV2で召喚!!」

 

 

ー【デスティニーガンダム】LV2(2)BP15000

 

 

「9コストのデスティニーガンダムをノーコスト召喚ですって!?」

 

 

上空より、腕を組み、フィールドへと降り立つのは、光の翼を持つ白いモビルスピリット。

 

その名はデスティニーガンダム。獅堂レオンの魂である。

 

 

「さらに手元に置かれた、ザクウォーリアを2体連続召喚」

 

 

ー【ザクウォーリア】LV1(1)BP2000

 

ー【ザクウォーリア】LV1(1)BP2000

 

 

前のターンに破壊されたザクウォーリアがこのタイミングで復活。デスティニーと共にフィールドで肩を並べる。

 

 

「アタックステップだ。進撃せよ、デスティニー!!」

 

 

布陣を整えたレオンは、勝利を手にすべくアタックステップへと突入。

 

彼との信頼を取り戻したデスティニーが先陣を切る。

 

 

「アタック時効果、このスピリットのBP以下の相手スピリット1体を破壊する。ゼノンザードスピリット、ラケシスを破壊!!」

「ッ……私のゼノンザードスピリットが!?」

 

 

飛翔したデスティニーが、ビームランチャーをラケシスへと向け、そこから極太のレーザー光線を放出。

 

回避する間もなく、ラケシスはそれに直撃。その麗しい肉体は消滅し、やがて爆散していった。

 

 

「この効果で破壊したスピリットのシンボルの数分、貴様のライフを砕く」

「くっ……!!」

 

 

〈ライフ3➡︎2〉早美アオイ

 

 

ラケシスの凄まじい爆散は、アオイのライフバリアをも巻き込み、それを1つ砕く。

 

 

「デスティニーのアタックは継続中だ」

「負けない、負けられない……キュリオスの【武力介入】を発揮。自身を召喚する」

 

 

ー【ガンダムキュリオス】LV1(1)BP2000

 

 

「召喚時効果でコアブースト。デスティニーをブロックなさい!!」

 

 

アオイは、前のターンでレジェンドガンダムによって手札に戻されたキュリオスを【武力介入】の効果により召喚する。

 

自身のライフを守護すべく、デスティニーへと投げつける。

 

 

「フラッシュ、デスティニーの更なる効果。ミネルバを疲労させる事で回復する」

 

 

効果によりデスティニーが回復。このターン二度目のアタックを可能にした直後、決死の覚悟でキュリオスが懐へと飛び込んで来るが、デスティニーはそれを軽く遇らい、頭部を掴み上げ、それを地面へと叩きつける。

 

凄まじい衝撃に耐えられなかったキュリオスは、ここで爆散した。

 

 

「デスティニー、二度目のアタック!!」

「まだよ、フラッシュで2体目のキュリオスを召喚」

 

 

ー【ガンダムキュリオス】LV1(1)BP2000

 

 

「召喚時効果でコアブーストし、もう一度デスティニーをブロック!!」

「無駄だ。2枚目のミネルバを疲労させ、デスティニーは再び回復する」

 

 

2体目のキュリオスは、登場した瞬間にデスティニーに胸部を鷲掴みにされ、掴まれた掌からエネルギー弾を放たれ、呆気なく爆散して行った。

 

 

「これで貴様を守るスピリットは全て消えた」

「……何の、間違いですか、これは」

「ザクウォーリアでアタック」

 

 

〈ライフ2➡︎1〉早美アオイ

 

 

1体のザクウォーリアがアオイのライフバリア1つを砕き、レオンは遂に彼女を追い詰める。

 

 

「ゼノンザードスピリットによって見せられていた悪夢から、オレは目覚めた。今度は貴様が目を覚ます番だ。これ以上、弟を悲しませるな……デスティニー!!」

「………ら、ライフで、受ける」

 

 

〈ライフ1➡︎0〉早美アオイ

 

 

アオイの眼前へと着地したデスティニーが、その拳で最後のライフバリアを砕く。

 

彼女のBパッドからは、敗北を告げるように「ピー……」と言った機械音が流れ出す。これにより、勝者は獅堂レオンだ。見事デスティニーとの絆を取り戻し、敗北する運命を捻じ曲げて見せた。

 

 

「ウソ、本当に勝っちゃった」

「だから言ったろ。アイツは勝つ、ちょっと腹立つけど」

「どうだ、捻じ曲げて見せたぞ早美アオイ。オレは、オレのまま、強くなって見せる」

 

 

レオンが勝つとは思っていなかったライに、オーカミがそう告げる。

 

最後にレオンがそう宣言すると、バトルは完全に終了となり、フィールドに残ったスピリットやネクサス達が徐々に消滅して行く。

 

 

「お、お嬢」

 

 

バトルに敗北し、片膝を曲げるアオイに寄り添おうとするのは、執事のフグタ。

 

これで終わったのだ。ゼノンザードスピリットによって、悪魔の科学者Dr.Aによって穢されたお嬢の心は浄化される。

 

そう信じていた。

 

だが………

 

 

「あ、ァァァァぁぁぁ!!!……ゼノンザードスピリットが、ゼノンザードスピリットがぁ!?」

「お、お嬢!?」

 

 

奇声を発するアオイ。

 

それには理由がある。アレだけ入念に計画を進め、力を蓄えさせた、7枚のゼノンザードスピリットのカード達が、端から灰となり、今にも消えようとしていたからだ。

 

 

「待って、待ってください。これがなければソラは、ソラは………!!」

 

 

アオイの声も虚しく、ゼノンザードスピリットは1枚残らず、完全に消滅してしまった。

 

 

「嫌だ。嫌だ。あ、ァァァァぁぁぁあ!!!」

「お嬢、お嬢!?!」

「おい、早美アオイ!!」

 

 

最後の希望を失ってしまったアオイ。現実逃避するように、発狂しながら、Bパッドをタッチし、ワームホールを形成。

 

どこに繋がっているのかもわからないその空間に、アオイは足を踏み入れてしまう。助けようとフグタとアルファベットが走るが、時既に遅く、それは完全に閉じてしまった。

 

 

「お嬢、お嬢ォォォオ!!」

 

 

彼女を助けられなかったフグタの叫びが、早美邸に響き渡る。

 

ヨッカ誘拐から始まった、早美邸での決戦。ヨッカの救出には成功したものの、どこか心に蟠りが残ってしまったまま、幕を下ろす事になった。

 

 

 

******

 

 

 

舞台は変わり、ここは界放市ジークフリード区が誇る中央病院。

 

今も尚、植物状態となってしまった一木ヒバナが眠り続けている場所だ。彼女を想う少年、鈴木イチマルは、病室で花瓶の水を変えていた。右腕が骨折していふため、非常にやりづらそうだ。

 

そして、どうにか水を変え終わると、その直後に奇跡が起こる。

 

 

「……あ、イチ……マル……?」

「!?」

 

 

一瞬、耳を疑った。だが、同時にこの時を待ち侘びていた。

 

イチマルの目線の先には、しっかりと目を開け、震えた声で自分の名前を呼ぶ、ヒバナの姿がそこにいて………

 

 

「ヒ、ヒバナちゃん……うぉぉぉぉ!!…ヒバナちゃァァァァん!!」

「ふふ、どーした、のよ……相、変わらず、うるさい、わね」

 

 

泣き崩れながら大いに喜ぶイチマル。その騒々しい様子を見て笑顔になるヒバナ。

 

ゼノンザードスピリットによって、不幸な事件が続いていたが、今この時より、ほんの少しずつ、平和な日常が戻り始める。

 

 

 





次回、第44ターン「悪魔嘲笑、悪夢のゼノンザードデッキ」
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