バトルスピリッツ 王者の鉄華   作:バナナ 

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第44ターン「悪魔嘲笑、悪夢のゼノンザードデッキ」

激闘に激闘を重ねた、早美邸での決戦。

 

囚われた九日ヨッカの救出には成功したものの、ゼノンザードスピリットが消滅してしまったショックにより、早美アオイの感情は崩壊、どこかへ姿を眩ましてしまう。

 

不穏な空気を残したまま、決戦は幕を閉じ、それから1日が経過した。

 

 

******

 

 

「で、ヒバナ。もう身体の調子はいいの?」

「うん。言うて寝たきりになってたの1週間もなかったしね」

 

 

ここは界放市ジークフリード区が誇る中央病室。その数多くある病室の内の一部屋に、つい先日、植物状態から回復した少女、一木ヒバナと、彼女のためにりんごの皮を包丁で器用に剥いて上げている鉄華オーカミの姿があった。

 

 

「よかった。あんまり無理はしないで」

「ありがとう。でもオーカに言われると説得力ないな」

 

 

オーカミはそう告げながら、綺麗に仕上がったりんごを皿に乗せる。

 

 

「オーカ、結構器用だよね」

「そう?」

「所で今日イチマルは?……オーカも来るなら、てっきり一緒かと」

「あぁ、イチマルはヒバナ復活祭をやるとか何とか言って、その準備を」

「相変わらずだなアイツ。嬉しいけどさ」

「コレ言うなって言われてるんだった」

 

 

言葉を交わしながら、ヒバナはオーカミが剥いてくれたりんご1つに手を伸ばし、それを一口。

 

 

「そう言えばイチマルさ。右腕骨折してたんだけど、何かあった?」

「……」

「昨日聞いたんだけど「戦士の古傷が疼いた」とか何だとか言って、全然教えてくれなくて」

 

 

イチマルの骨折は、彼の兄である鈴木レイジによるものだ。

 

きっと、意味のわからない理由でお茶を濁したのは、彼の優しさによるものだ。ヒバナをもうこれ以上ゼノンザードスピリットと関わらせないための。

 

 

「実は」

「実は?」

「アイツ、学校の階段で転んだんだ」

「なんだ〜〜そんな理由か、全くいつもカッコつけたがるんだから」

 

 

それなら、自分も嘘をつくしかない。

 

空気を読んだオーカミは、咄嗟に思いついた嘘をついた。普段から嘘をつかない彼は、その時だけ、ヒバナの目線から視線を逸らす。

 

気遣いのできるイチマルの優しさ、それを知っていて、ひょっとしてと思ったヒバナ。それも全部知っているオーカミは、内心で彼女に対して「ごめん」と呟いた。

 

 

******

 

 

「テメェッ!!」

「!!」

 

 

ジークフリード区の暗く、広い路地裏で響く鈍い音。

 

九日ヨッカとアルファベットだ。ヨッカがアルファベットの頬を、腰の入ったパンチで殴りつけたのだ。

 

 

「……呼び出しておいて早々に殴りつけるとは、一体なんの了見だ九日」

「オレは言ったよな、他の奴らを、オーカとライは巻き込むなって!!」

「奴らが必要な戦力だったから連れて来たまでだ」

「ふざけんなよ、なんだよその理由!!」

 

 

募っていた憤りが爆発するヨッカ。

 

思い出したくもない昨日。知らぬ間にライの膝の上で寝ていた自分。

 

自分もゼノンザードスピリットと戦ったと楽しそうに話すライ。「よかった」と安堵するオーカミ。2人の身体や服装は、汚れていて、傷だらけだった。

 

それからと言う物、それを思い出す度に、心が締め付けられる。

 

 

「頭に血が昇り、むざむざと敵陣に乗り込み、敗北し、洗脳されたオマエに、オレの文句を言う資格などないぞ」

「……!!」

 

 

鼻息荒くアルファベットの胸ぐらを掴みに掛かるヨッカだが、彼の言う事もまた正論。大人しくその手を離した。

 

 

「そんな事より、早美アオイとDr.Aだ。早美邸に、Dr.Aの姿はなかった。逃げた早美アオイが奴とコンタクトを取る前に見つけ出すぞ」

「わかった。だけど次オーカを巻き込む事があったら、オレはアンタの正体が「芽座葉月」である事を告発する」

「好きにしろ。オレが警察官でいられなくなるだけだ。そうなれば、困るのはオマエの方だぞ」

「………!」

 

 

ぐうの音も出ない。やるせない気持ちが、ヨッカの心の中を渦巻いていく。

 

 

「フグタが早美アオイの場所には心当たりがあるそうだ。バトルになる可能性もある、さっさと合流するぞ」

「……あぁ」

 

 

どこまでも、誰が相手でもゴーイングマイウェイを貫くアルファベット。

 

ヨッカは渋々、その目的のためならば手段を問わない、破天荒な警官の後をついて行った。

 

 

******

 

 

「………」

 

 

引いては満ちを繰り返す、波の音が静かに響く。

 

ここは、ジークフリード区にある海岸「アビス海岸」だ。ゼノンザードスピリットと言う名の希望を失った早美アオイは、ただ1人、波風に晒されながらそこに立ち尽くしていた。

 

 

「……ソラ」

 

 

たった1人の肉親、ソラの名を呟く。

 

再びゼノンザードスピリットを得るため、もしくは彼が生き残る方法を聞き直すためか、今のアオイの手にはBパッドが握られており、おそらくその通話機能で、Dr.Aと連絡を取ろうとしていたのだと思われる。

 

落胆した様子からして、それは叶わなかったのだろうが。

 

 

「お嬢、昔からここ、好きだったよな。坊ちゃんと一緒によく来たっけ」

「……」

 

 

早美家に長く仕えている青年、フグタが、ようやくアオイを見つけ出す。目の下に隈がある事から、きっとあれから寝ずに彼女を捜索していたに違いない。

 

 

「さ、一緒に帰……」

「私から希望を奪っておいて、今更どの顔下げて来たのよ!!」

「!」

「アンタが、アンタがあんな連中さえ連れて来なければ、こんな事には……!!」

 

 

内に収まりかけていた憤りが、フグタを視界に映した事で爆発。

 

別にフグタが寝返ろうがそうでなかろうが、結局いつかは戦わなければいけなかったのはわかってはいたものの、その怒りを当たり散らす。

 

 

「夢を見る時間は終わったんだお嬢、オレ達の負けだよ」

「ソラは死んでも良いって言うの!?……見殺しにしろって言うの!?」

「……」

「負けなんて認められない、認めたら、ソラは一生病気のままなの!!……私だけでも味方でいないと、あの子は死んじゃうのよ」

 

 

フグタの話に、全く聞く耳を傾けようとしないアオイ。

 

きっと、弟が死んだ後、自分だけがのうのうと生きていくのが、辛く、我慢できないものだと、悟っているからであろう。

 

 

「ヌッフフ、味方なら、他にもいますよ」

「!」

「Dr.A………!」

 

 

そんな折、姿を見せるのは、自動車椅子で動き、全身が包帯巻きになっている、伝説のマッドサイエンティスト、Dr.A。

 

明らかに畏怖たる存在である彼だが、2人が目を奪われたのは、それだけではない。

 

 

「ソラ……!?」

「坊ちゃん、どうして」

「姉さん、フグタ」

 

 

そう。ソラがいたのだ、病弱で、外に出る事さえ禁じられていた、あのソラが、元気そうな笑顔で、逞しく大地に足をつけていたのだ。

 

 

「どうして?……とは、愚問ですね執事さん。そんなの、私がソラ君の病気を治したからに決まっているではありませんか」

「え」

「アオイ君には、ゼノンザードスピリットの研究を頑張って貰いましたからね。そのご褒美にと思いまして、少し骨が折れましたが、どうにかこうにか」

 

 

相手は仮にも悪魔と呼ばれた科学者。ほぼ無償でソラの病気を治してもらった事に、フグタは違和感を覚える。

 

ただアオイは、そんな事は二の次であって………

 

 

「ソラ、本当にソラ……なの?」

「あっはは、何言ってるの姉さん。僕は僕だよ。この通り、やっと治ったんだ」

「ソラ、ソラァァァー!!!」

 

 

嬉しさの余り、ソラを抱き締めるアオイ。

 

その目からは大粒の涙が零れ落ち、これまでの彼女の苦悩と苦痛の戦いの過酷さを物語っていた。

 

 

「ごめんね、姉さん。今まで苦労させて。でも僕は大丈夫、もう大丈夫なんだよ」

「………知らない間に、大きくなりましたね」

「そりゃそう。病院ではずっと横になってたからね、もう姉さんの背も超えちゃった」

 

 

久し振りの姉弟水入らずの会話。ソラの病気が完治した事により、アオイの表情はかつてないほどに悦びに満ち溢れていた。

 

次の瞬間までは…………

 

 

「ところで」

「?」

「昨日、姉さんを虐めた奴がいるって本当?」

「え」

「Dr.A先生が教えてくれたんだ。僕、そいつを見つけてボコボコにしてやりたいんだよね、この世から消滅させてやりたいんだよね」

「え、いや……」

 

 

その瞳はまるで無邪気な悪魔。殺戮を殺戮と思わない、無垢なる怪物。ソラは間違いなく、昨日の早美邸での決戦の話をしている。

 

アオイの涙はその瞬間に枯れ果てた。

 

ソラのためにと思って動いていたこの数年だが、命を賭けてソラを救おうとしていた事は、悟られてはならないと感じていた。故にそれ関しては、何も教えていないのだ。

 

 

「な、何言ってるのソラ、私は別に虐めなんて」

「もう心配しないで、姉さん。今の僕には力がある……!!」

「ッ……」

「坊ちゃん、それは!?」

 

 

ソラが懐から取り出し、広げてみせたデッキのカード達。

 

それを見るなり、アオイは思わず口を押さえる。無理もない、その中には昨日消滅したばかりの7枚のゼノンザードスピリットが全て揃っていたのだから。

 

しかもゼノンザードスピリットは、その1枚だけでも、長く使えば精神の崩壊を招きかねない代物だ。それを全てデッキに入れている今のソラが尋常ではない何かになっているのは、一目瞭然だった。

 

 

「ソラ、どうやってそのカードを!?……どう言う事なのですかDr.A!!」

 

 

当然ながらその視線はDr.Aへと向けられる。

 

こんな芸当ができるのは、状況的に見ても彼しかいないからだ。

 

 

「ヌッフフ……フフ、ア、アーアッアッアッア!!!」

「!?」

 

 

彼は突然大声で笑い出す。まるでこの状況全てが滑稽だと言わんばかりに。

 

 

「それは実に、エクセレントではない質問だね、早美アオイ君」

「Dr.……A?」

 

 

さらには車椅子から立ち上がる。

 

おかしい。

 

何かがおかしい。

 

Dr.Aは、7年前の芽座椎名との戦いによって傷つき、まともに動ける身体ではなかったはずだと言うのに………

 

 

「君は本当に才女だったよ。だがその反面、心が弱くて、脆くて、扱い易かったなぁ〜」

「何を、言ってるの……!?」

「ずっと……君はエクセレントな僕の掌の上だった、と言う事さ」

「!?」

 

 

Dr.Aは、徐に、己に巻いていた包帯を解く。

 

解かれた包帯の先にあった素顔は、火傷の傷跡など一切残っていない、綺麗な肌だった。そして、その正体は………

 

 

「嘘………嵐、マコト…先生??」

「一体、どう言う」

 

 

そう。ソラが病に侵されて以降、何度も世話になっていた、担当医「嵐マコト」だった。

 

意味と理屈を理解できない現実に、アオイもフグタも混乱する。

 

 

「な、なんでマコト先生が……なんで、なんで……!?」

「う〜ん、君にしては察しが悪いなぁ」

「待て、なら本物のDr.Aはどこに行ったんだ」

 

 

鋭い剣幕で睨みつけながら、フグタがDr.A、いや、嵐マコトに訊いた。

 

 

「史実通りですよ、執事さん。本物のDr.Aはとっくに死んでます、最初からこのエクセレントな僕、嵐マコトが、Dr.Aに扮していたのです」

「何のために!?」

「宝物を、手に入れるためです」

「宝物……まさか、坊ちゃん!?」

「おや、君の方が察しがいいのですか、意外ですね。そう、僕はずっとソラ君が欲しかった、何せあの子は、王者(レクス)の力に溢れているからね」

「ソラが、王者(レクス)を?」

 

 

……『王者(レクス)

 

バトル中、使用者を必ず勝利に導く力。嵐マコトは、ソラにはその才能があるのだと言う。

 

 

「そうだ、ソラ君こそ、僕が求めていた宝物、至高の器、最高のモルモット。そのためにここまで手の込んだ計画を練ったのさ、ゼノンザードスピリットもその一貫」

「じゃあ待って、今のソラは……」

「うん、ゼノンザードスピリットを扱うにあたって最高の改造が施された、僕のエクセレントな傀儡♡」

「そん、な……」

「今までゼノンザードスピリットを使ってバトルをしてくれてありがとうね、アオイ君。お陰で良いデータがたくさん取れましたよ。本当に感謝してもし尽くし切れない」

 

 

絶望から膝をつくアオイ。

 

自分がやって来た事は何一つとして無駄な事だった。全て、その感情を利用されて来たのだと、ようやく気づいてしまったのだ。

 

 

「姉さん、どうしてそんな悲しそうな顔するの?……せっかく僕は元気になったのに」

「ダメよソラ、早くそんなカード捨てて……お願い」

「姉さんこそダメだよ。このカード達の力が身体中から湧き上がって来るんだ。こんなに気持ちいい気分は生まれて初めてなんだ、捨てられないよ」

 

 

アオイが何とかソラを説得させ、ゼノンザードスピリットを捨てさせようとするが、既にそれを必要な身体へと改造されてしまったソラに、その話は通じない。

 

 

「坊ちゃんを、坊ちゃんを元に戻せ!!」

「おおっと、野蛮ですね。流石は元ヤンキー」

 

 

余りにも非人道的な行いに怒り、殴りかかるフグタを、嵐マコトは嘲笑いながら華麗にいなす。

 

 

「お願いです、ソラを……弟を、元に戻してください」

「お嬢……」

 

 

頭を砂浜に擦り付ける程深く下げ、土下座するアオイ。

 

だが、嵐マコトは、その必死の懇願を見るなり嘲笑し………

 

 

「アッアッア……お願いなら、もう聞いたじゃありませんか。ソラ君はこの通り元気だよ」

「違う、こんなの、私のソラじゃない」

「そう、君の捻くれた心がソラ君をそうさせたんだ」

 

 

土下座して顔を上げないアオイに、嵐マコトが耳元で囁く。

 

 

「今までたくさん悪い事して来たよね、善人のふりをして、人を陥れ、騙し、1人はショックから植物状態にまで追い詰められた」

「……!?」

 

 

やめて、それ以上、何も、言わないで………

 

 

「君は根っからのクソ女ですよ。これからその悪業を胸に刻んで生きて行きなさい、人格の変わった弟君と共にね」

「いや……いや、いやァァァァァァぁぁぁー!!」

 

 

これまでの非道に対する後悔が重く重なり、アオイの精神を押し潰す。流れ出す涙が、砂浜に色を塗った。

 

 

「汚い顔で泣くなぁ」

「あ、あぁ、いやだ……ソラァァァ!!」

「泣かないで姉さん。何で泣くの、僕はここにいるのに、せっかく病気を治してもらったのに、何で?……やっぱり昨日、虐められたから?」

「そうですよ、ソラ君。お姉さんが泣くのは、昨日虐められたからです………ねぇ、物陰に隠れている獅堂レオン君」

「!!」

「ッ……」

 

 

嵐マコトがそう告げると、少し離れた茂みから、銀髪の少年、獅堂レオンが姿を見せる。その険しい表情からして、これまでの話は全て聞いていたのだろう。

 

 

「獅堂レオン、何故ここに」

「貴様の後をつけていれば、早美アオイに会えると思ってな。だがまさか、こんな状況になるとは」

 

 

レオンは、ゼノンザードスピリットを使っていた事に対する責任から、アオイを捜索していた。

 

しかし、よもやこんな場面に遭遇してしまうもは、思ってもいなかった事だろう。

 

 

「やぁ獅堂レオン君。お初にお目にかかるね。私がDr.Aこと、嵐マコトだよ。一度メールした事があったかな?」

「……」

「君にも感謝しているよ、白のゼノンザードスピリットを使ってくれたからね」

「黙れ、下衆が」

「oh、手厳しい」

 

 

今まで自分はこんな奴のために戦わされていたのだと思うと、胸糞悪いが過ぎる。

 

物陰に隠れていた時は恐怖から指先が震えていたが、今こうして対面すると、それが怒りへと変換されて行くのが伝わって来て………

 

 

「オレが、早美アオイを虐めた奴だ。かかって来いよ、改造人間」

「獅堂レオン、君が……」

 

 

レオンは己のBパッドを取り出し、それを左腕にセットした。その構えた先には、ソラがいる。

 

 

「そんなに界放リーグで負けた事を根に持っていたのか、陰湿な奴め。僕の姉さんを虐めた罪は重い、死を待って償ってもらう」

「上等だ」

「エクセレント。面白くなって来ましたね」

 

 

ソラもまたBパッドを取り出し、それを左腕にセット。さらには全てのゼノンザードスピリットが詰め込まれた己のデッキを、そこへと装填。

 

恐ろしさを助長するかの如く、途方もない闇のエネルギーが辺り一体に散らばり始める。

 

 

「何故オレ達のために戦ってくれるのだ獅堂レオン!?」

「勘違いするな。これはオレ自身のため、オレがオーカミを超えるために戦うのだ、大人しくそこで見ていろ」

 

 

レオンもまた、デッキをBパッドへと装填する。

 

そして見向きもせず、口を開き………

 

 

「早美アオイ」

「!」

「貴様の罪は確かに重い。だが、周りをよく見ろ、まだ貴様の仲間でいてくれる奴はいるぞ」

「………レオン君」

 

 

レオンがアオイに対し、そう告げると、フグタがアオイに寄り添う。

 

暖かいその温もりに、彼女はまた一筋の涙を溢した。

 

 

「もう準備はできたろ、早く来いよ、なけなしの絶対王者。僕はオマエを、絶対に殺す」

「あぁ、やれるものならやってみるがいい。傀儡に見せつけてやる、我が魂をな」

 

 

……ゲートオープン、界放!!

 

 

「アッアッア、これはまた良いデータが取れそうだ」

 

 

アオイとフグタ、そして今までずっとDr.Aに扮していた嵐マコトが見守る中、獅堂レオンと早美ソラ、2人のバトルスピリッツがコールと共に幕を開ける。

 

先攻はソラ。ゼノンザードスピリットを操るための傀儡となった、彼のターンだ。

 

 

[ターン01]早美ソラ

 

 

「メインステップ。創界神ネクサス2枚「アイリエッタ・ラッシュ」と「アッシュ・クロード」を配置」

 

 

ー【アイリエッタ・ラッシュ】LV1

 

ー【アッシュ・クロード】LV1

 

 

「……なんだ、あの創界神」

「僕だけの特注品さ。配置時の神託をそれぞれ発揮、2種の創界神にコアを1つずつ追加。ターンエンドだ」

手札:3

場:【アイリエッタ・ラッシュ】LV1(1)

【アッシュ・クロード】LV1(1)

バースト:【無】

 

 

ソラは未知なる2枚の創界神ネクサスを配置し、そのターンをエンド。

 

勝利し、少しでもオーカミに追いつくため、レオンのターンが始まる。

 

 

******

 

 

場面は変わり、ジークフリード区の線路を走る電車の中。

 

その座席に座るのは、アルファベットとヨッカ。向かう先は当然アビス海岸。

 

 

「……それは本当なのかよ、アルファベットさん」

「あぁ、先ず間違いないだろう。今のDr.Aは、奴の名を語るだけの別人だ」

「信じられねぇ、確かに包帯ぐるぐる巻きで顔は全くわからなかったけど」

 

 

アルファベットが、ヨッカにDr.Aの正体について話す。

 

Dr.Aもとい徳川暗利と言うマッドサイエンティストだが、今暗躍しているDr.Aは、その徳川暗利とは別の人物であると言う。

 

 

「つか、何でそんな事わかったんすか」

「少し前に、7年前に奴が使っていた研究所を漁った」

「え、何そんな場所知ってたんなら早く教えてくださいよ」

「教える必要はないと判断した。そこに奴はいなかったからな、それどころか埃まみれで、人が出入りしているようにも見えなかった」

「……成る程、頻繁に出入りするなら、部屋は埃っぽくならない。今のDr.Aは、昔のDr.Aとは別人だから、その研究所の場所がわからない、もしくはそもそも知らなかったって事か」

「あぁ、それにオマエが捕らえられた日、救出に向かう前日に一度、奴と接触した事がある」

「!」

「その時奴は『もう一歩の所で世界を滅ぼす所まで来たと言うのに』と語った」

「……何かおかしいんですか?」

「史実において、奴は世界を滅ぼしかけた怪物として語られている。しかし本来の目的は『オーバーエヴォリューション、進化の力によって、世界を進化させ救う』事だ。この考え方の相違が決定打となった。今の奴は間違いなく別人だ」

「………」

 

 

ここまでがアルファベットの推理。と言うよりも推測に近い。

 

電車が小刻みに揺れる中『Dr.A=徳川暗利』と言うヨッカの固定概念が崩れ去る。もしそれが本当なのであれば、師匠である春神イナズマを誘拐したのもそのDr.Aを名乗る人物と言う事になるからだ。

 

 

「でも一体誰がDr.Aの名を語ってまで、何の目的で!?……どうしてイナズマ先生を」

「残念だが、目的まではわからない。だが、正体はおそらく奴だ」

「奴って……!?」

 

 

今のDr.Aの正体を朧げに断定しているアルファベット。

 

ヨッカに少しずつヒントをあげながら、その正体に迫っていく。

 

 

「考えても見ろ。奴は早美アオイに接触した、そして早美アオイの目的は弟であるソラの病気を完治する事だ」

「お、おう……何もわからん」

「これは飽くまで勘だが、奴は相当な卑劣漢だ。早美アオイを裏切り、最後には絶望感を与えるために、身内事情や心の内の情報を得るべく、先ずは彼女にとって、身近な場所へ身を置くに違いない」

「……?」

「ここまで言ってまだわからんのか」

「あぁ、いやオレはアルファベットさんとかライとかと違ってそう言うのは……何、まさかオレも知ってる人なんすか?」

 

 

ヒントを与え続けても正体に気付かないヨッカに、飽くまで推測だが、アルファベットは遂にDr.Aに扮している人物を明かす。

 

 

「嵐マコト」

「!!」

「推測だが、奴が今のDr.Aだ。そしてこの推測は、十中八九的中している」

「マコト先生、なんで!?……あの人まだ40そこらって、Dr.Aはどう見ても70越えの老体だったぞ」

「それを隠すための包帯だろう。声もおそらく加工していた」

 

 

頭の中に直接雷が落ちて来る程の衝撃的な内容だった。

 

オーカミやヒバナの件などで、少し仲良くなっていたヨッカにとっては辛いに違いない。

 

 

「昨日わかった事だが、奴は昔、春神イナズマと同様、Dr.Aの助手をしていた」

「ッ……!?」

「細かな詳細は判明していないが、理由はおそらくそこにある」

「だったら病院に行って、直接事情を聞いた方がいいんじゃ」

「とっくにそうしたさ。しかし既にもぬけの殻。しかも早美ソラ事消えていると言うオマケ付きだ」

「!!」

「故に先ずは早美アオイと接触する。気を引き締めて行け、この事件、一筋縄では行かないぞ」

 

 

電車が途中の駅に停まり、扉が開く。

 

この時、アルファベットの推理がほぼ全て的中していて、アビス海岸が大いに荒れていた事を、まだ2人は知らなくて………

 

 

******

 

 

「ヒバナちゃァァァァん!!…よかったよ無事でぇ、よかったよかったよ〜〜!!」

「あっはは、ありがとうライちゃん」

 

 

ヒバナのいる病院。オーカミとの会話中、いきなり病室の扉が開いたと思ったら、涙目のライがヒバナの胸元に勢いよく飛び込んで来た。

 

ヒバナはライの頭の上に手を置き、そっと撫でる。

 

 

「まさか意識不明の重体になってたなんてビックリだよ、いや〜ホントよかったよかった」

「オマエ、さっきからそれしか言ってないな」

 

 

バトスピアイドルのライブ以降、歳の近い女子同士と言う事もあって仲良くなっていたヒバナとライ。

 

ヒバナが、ゼノンザードスピリットによって病院送りになってしまったのは知らないが、少なくとも心配する気持ちは本当だ。

 

 

「で、何か用があって来たんじゃないの」

 

 

オーカミがライに訊いた。そもそもライがここに来たのは、オーカミのBパッドに連絡を入れたからだ。

 

 

「あぁそうだった。ごめんヒバナちゃん、ちょっとこの赤チビ借りてくわね」

「あ、うん。いいよ」

「おい、袖引っ張んな」

 

 

ライがヒバナにそう告げると、オーカミの深緑色のパーカーの袖を引っ張りながら病室を出る。その様子を見届けたヒバナは「最近あの2人仲良いな〜」と内心で呟く。

 

 

「アルファベットさんからメール、来たんだよね」

「あ?」

 

 

西陽差し込んで来る病院の通路。ライが自分のBパッドに来たアルファベットのメールをオーカミに見せる。

 

そのメールには『今回の事件について話したい事がある、今から鉄華と共にアビス海岸に来い』と書かれていた。

 

 

「アルファベットからメール………アビス海岸に来いって、ここから結構近いけど、なんか急だな」

「それなぁ。でもそれっきりメール返信来ないし、無視するわけにも行かないから、取り敢えず行かない?」

「……」

「どったの」

「いや、何にも。じゃあ行くか」

 

 

アルファベットからの突然のメール。

 

オーカミはそのメールに微々たる違和感を感じるが、それの答えを考えていてもしょうがないと割り切り、ライと共にアビス海岸へと向かう事にした。

 

 

******

 

 

一方、レオンとソラがバトルしているアビス海岸。

 

曇天が蔓延り、波が打ち寄せ、飛沫を上げる中、レオンの第2ターンが始まる。

 

 

[ターン02]獅堂レオン

 

 

「メインステップ、コアスプレンダーをLV2で召喚」

 

 

ー【コアスプレンダー】LV2(3)BP3000

 

 

「召喚時効果、2枚オープンし、その中の対象カードを加える。オレはザクウォーリアを手札へ」

 

 

レオンのフィールドに出現するのは、戦闘機型のスピリット、コアスプレンダー。その召喚時効果でレオンは手札を増やす。

 

 

「アタックステップ、コアスプレンダーでアタック」

「受けるよ、ライフだ」

 

 

〈ライフ5➡︎4〉早美ソラ

 

 

コアスプレンダーの体当たりが、ソラのライフバリア1つを砕く。

 

 

「ターンエンド。後4つ、直ぐに砕いてやる」

手札:5

場:【コアスプレンダー】LV2

バースト:【無】

 

 

「生意気だね、界放リーグでオーカミに負けそうになったくせにさ」

 

 

最初のターンで2種の創界神を配置したソラに対し、レオンは手札増加とアタック。

 

互いにアドバンテージを一通り取りつつ、バトルは一周し、3ターン目。再びソラのターンへと移って行く。

 

 

「……フグタ、私は間違っていたのでしょうか。いや、間違っていましたね。Dr.A、嵐マコトから誘いを受けた、あの日から」

「お嬢」

 

 

バトルが進んで行く中、心に暗い闇が蔓延するアオイが、執事であるフグタに訊いた。

 

きっと、自分の思っている事を言葉にしないと辛いのだろう。誰かの前で本心を口にしないと、身体の震えが止まらないのだろう。

 

 

「そりゃそうだ、オレ達はやり過ぎた。もう一回頭を下げただけじゃ、取り返しがつかない所まで来ちまった」

「……」

「でも獅堂レオンも言ってたろ。まだお嬢の味方でいてくれる人もいる、オレはその1人だ」

「……フグタ」

「やり直そうお嬢。坊ちゃんを取り戻したら、必ず責任の取り方を一緒に考えるぞ」

 

 

止められなかった自分にも責任があると感じているフグタ。窄んだアオイの肩にそっと手を置き、寄り添う。

 

 

[ターン03]早美ソラ

 

 

「メインステップ。緑のスピリット、エイプウィップをLV1で召喚」

 

 

ー【エイプウィップ〈R〉】LV1(1)BP1000

 

 

「先ずは2種の創界神に神託。そして召喚時効果でコア1つをリザーブへブースト、さらに召喚コストにソウルコアを使用していたなら、追加でコア2つをトラッシュへブースト」

「ッ……一気に3つもコアブーストだと」

 

 

ソラは、その身に木々の力を宿す4本腕の猿型のスピリット、エイプウィップを召喚。

 

効果により累計3つものコアを増やした。

 

 

「その程度で驚くようじゃ、この先持たないよ。バーストをセットし、緑マジック、ネオ・ハンドリバースを発揮。コスト確保のため、エイプウィップは消滅。効果により、残った1枚の手札を破棄、新たに3枚のカードをドロー」

 

 

維持コア不足により、エイプウィップが消滅したものの、その見返りは大きい。

 

ソラは新たに3枚のカードをデッキからドローした。

 

 

「ターンエンド」

手札:3

場:【アイリエッタ・ラッシュ】LV1(2)

【アッシュ・クロード】LV1(2)

バースト:【有】

 

 

「………」

 

 

コアと手札を増やし、盤面を整える。

 

この戦法から繰り出される戦略の答えは、間違いなく強力なスピリットの召喚。しかもそれはほぼゼノンザードスピリットで確定。レオンはそれを理解した上で巡って来た己のターンを進めて行く。

 

 

[ターン04]獅堂レオン

 

 

「メインステップ。母艦ネクサス、ミネルバをLV2で配置」

 

 

ー【ミネルバ】LV2(1)

 

 

「配置時効果、3枚オープンし、今度はシン・アスカを手札に加える」

 

 

レオンの背後に配置される母艦、ミネルバ。レオンのデッキカテゴリである「FAITH」のカードを回収できるその効果で、今回はパイロットブレイヴである「シン・アスカ」が彼の手札へと加えられた。

 

 

「さらにザクウォーリアをLV1で召喚」

 

 

ー【ザクウォーリア】LV1(1)BP2000

 

 

コアスプレンダーと並び立つのは、緑色の装甲を持つ、小型のモビルスピリット、ザクウォーリア。

 

 

「アタックステップ、コアスプレンダーでアタック」

「ライフで受けるよ」

 

 

〈ライフ4➡︎3〉早美ソラ

 

 

再びコアスプレンダーが体当たりし、ソラのライフバリア1つを砕く。

 

バトルは順調にレオンが優勢となって行くが、それを妨げるかの如く、ソラは前のターンに伏せていたバーストカードを反転させる。

 

 

「ライフ減少によるバースト、選ばれし探索者アレックス」

「!」

「効果によりこれを召喚。さらに君のこのターンのアタックステップは、終了になる」

 

 

ー【選ばれし探索者アレックス〈R〉】LV1(1)BP4000

 

 

「ついでに創界神達の神託も発揮させてもらうよ。これでそれぞれ3個ずつ、LV2にアップだ」

 

 

フードを深く被った人型のスピリット、アレックスがバースト効果によりソラのフィールドへと召喚される。

 

さらに、その手に持つ杖の先から波動を飛ばし、レオンのアタックステップを強制終了へと追い込む。

 

 

「……ターンエンドだ」

手札:5

場:【コアスプレンダー】LV1

【ザクウォーリア】LV1

【ミネルバ】LV2(1)

バースト:【無】

 

 

致し方なくそのターンはエンドの宣言で見送るレオン。

 

互いに場と手札が温まり、バトルは中盤へと差し掛かる。

 

 

[ターン05]早美ソラ

 

 

「メインステップ。先ずはアレックスの効果だ、疲労させて1枚ドロー」

 

 

ターンの開始早々、ソラはアレックスの第二の効果を発揮。アレックスを疲労させ、アタックもブロックもできなくなった代わりに、追加で1枚のカードをドローする。

 

 

「おい、どう言う状況だよ、コレ」

「!」

「来ましたか、九日ヨッカ……めざ、アルファベット」

「嵐マコト……やはりオマエが主犯か。しかし何故レオンが早美ソラとバトルを……?」

 

 

遅れてヨッカとアルファベットが、アビス海岸に到着。

 

嵐マコトが主犯である事は予想できていたものの、今行われているバトルは想定外だった様で、レオンの存在が、アルファベットの思考を鈍らせる。

 

 

「九日、アルファベットさん。奴はソラ坊ちゃんを改造して、全てのゼノンザードスピリットを操らせてるんだ」

「全てのゼノンザードスピリット!?……どう言う事なんだよマコト先生、どうしてアンタがこんな事を」

 

 

フグタがこの状況を説明し、抽象的にも現状を理解したヨッカは、切羽詰まった様子で嵐マコトに問うた。

 

 

「アッアッア。わからないだろうね、君みたいな超がつく程の凡人には」

「……アンタはホントにDr.Aだったのか、なら何でイナズマ先生を……!!」

「そう。僕はDr.Aだった、そしてもうすぐ、僕は奴をも超越する、エクセレントな存在となるのだ」

「……!?」

 

 

嵐マコトは不気味な笑みを浮かべる。

 

掴みどころのないその言葉と表情が、ヨッカを黙らせた。

 

 

「九日ヨッカ、それにアルファベット。この件はオレがバトルで勝てば問題のない話だ。大人しくそこで見ていろ」

「……レオン」

「さぁ続けるぞ早美ソラ。そろそろ奴らを出して来る頃合いだろ?」

 

 

レオンはそう告げ、皆の意識を自分らのバトルへと向けさせた。

 

そしてソラのメインステップ。増えた手札とコアを使い、レオンの予測通り、あのスピリット達を展開して行く。

 

 

「何勝手に、僕に勝つ気でいるんだ。ムカつく奴、オマエみたいな奴がいるから、姉さんみたいな優しい人達が虐げられるんだ!!」

「なら、オレを虐げてみろ」

「言われなくても!!……創界神ネクサス、アイリエッタのLV2【神域】の効果。自身を疲労させ、ゼノンザードスピリットを召喚するコストを2下げる」

「なに!?」

「さらにもう1つ、アッシュも同様の効果を発揮する、これでゼノンザードスピリットを召喚するコストは、4下がる!!」

 

 

ソラの配置した2枚の創界神ネクサスは、ゼノンザードスピリットの召喚をサポートするためのカードだった。

 

これを活かし、ソラは手札にあるゼノンザードスピリット1枚を己のBパッドへと叩きつけた。

 

 

「司るは赤。ゼノンザードスピリット、オリジンズ02・アロンダイをLV2で召喚!!」

 

 

ー【「オリジンズ02」アロンダイ】LV2(3)BP12000

 

 

落雷した赤き稲妻の先に出現したのは、要塞を思わせる形容をした、ゴーレム。赤のゼノンザードスピリット「アロンダイ」…………

 

2種の創界神ネクサスの効果と軽減シンボルにより、僅か4コストでの召喚だ。

 

 

「赤のゼノンザードスピリット、ヒバナを苦しめたカードを、今度は早美ソラが」

「あぁ、懐かしいね。疑われないために適当な赤のデジタルスピリットに擬態させてたっけ」

 

 

ヨッカと嵐マコトが、それぞれ赤のゼノンザードスピリットであるアロンダイに対して感想を溢す中、ソラはそれの召喚時効果を発揮させる。

 

 

「アロンダイの召喚時効果、デッキ上2枚のカードを、コスト1、BP1000、赤シンボル1つのスピリット、オリジンズとし、僕のフィールドに呼ぶ」

 

 

ー【オリジンズ】LV1(1)BP1000

 

ー【オリジンズ】LV1(1)BP1000

 

 

アロンダイはその剛腕を大地へと伸ばし、体内に眠るマグマの力をそこへ注ぎ込む。すると、熱された大地の中よりアロンダイによく似た小型ユニットが一気に2体展開される。

 

 

「赤のゼノンザードスピリット、追加でスピリットを2枚も展開する力を備えているのか」

「そうだよ。そして、それだけじゃない……アタックステップ、アロンダイでアタック」

 

 

アタックステップに突入するソラ。このタイミングでアロンダイの第二の効果が発揮される。

 

 

「アロンダイの更なる効果。このターンの間、僕のスピリットがブロックされた時、君のライフ1つを砕く」

「ッ……ライフ貫通効果か!?」

 

 

レオンのライフバリア目掛けて突き進むアロンダイ。その力により、レオンは必ずライフを破壊される状況に追い込まれる。

 

 

「この効果は僕のスピリット全域に広がる。展開された2体のオリジンズと合わせて3つのライフを貰うよ」

「……いや、そうはいかない。ここはザクウォーリアでブロックする」

「?」

 

 

アロンダイの進撃を、ザクウォーリアが受け止める。

 

だがその瞬間、アロンダイの発揮していた効果が、ブロックの宣言をしたレオンを襲う。

 

 

「聞いてなかったの?……ブロックしたら、ライフは破壊されるんだって」

「あぁ、わかってる……ッ」

 

 

〈ライフ5➡︎4〉獅堂レオン

 

 

「ぐっ……ぉぉぉお」

「レオン!!」

 

 

アロンダイの溶岩のような身体から発せられる熱が飽和し、レオンのライフバリア1つを焼き尽くす。

 

ゼノンザードスピリット使いが与える痛みが、レオンを苦しませ、アルファベットを叫ばせる。

 

 

「この程度、どうと言う事はない。母艦ネクサス、ミネルバのLV2効果。2コストを支払い、相手のコスト3以下のスピリット全てを手札に戻す」

「!」

「オリジンズのコストは1。全滅してもらうぞ」

 

 

ミネルバの上から1つと、ライフで受けて増えたリザーブのコア1つずつを使い、ミネルバのLV2の効果が発揮。

 

ミネルバのあらゆる箇所から無数のホーミングミサイルが射出。アロンダイから展開された2体のオリジンズは、それに被弾し、粒子化。たちまちこの場から消滅した。

 

 

「チッ……オリジンズは手札に戻る時、破棄される。だけどまだ終わってないよ、アロンダイとザクウォーリアのバトルは、当然アロンダイの圧勝だ」

 

 

フィールドで取っ組み合っているアロンダイとザクウォーリア。

 

奮闘するザクウォーリアだが、それも虚しく、アロンダイの剛腕に捻り潰される。

 

 

「ザクウォーリアの破壊時効果、トラッシュにコア1つを追加し、カードは手元に移動する」

「……ターンエンド」

手札:4

場:【「オリジンズ02」アロンダイ】LV2

【選ばれし探索者アレックス〈R〉】LV1

【アイリエッタ・ラッシュ】LV2(4)

【アッシュ・クロード】LV2(4)

バースト:【無】

 

 

母艦ネクサス、ミネルバの効果により、攻め手を失ったソラ。

 

レオンに対する怒りを、静かに募らせながら、そのターンをエンドとする。

 

 

[ターン06]獅堂レオン

 

 

「ドローステップ……ここで来てくれるか、我が魂よ」

「アッアッア、どうやら良いカードを引けたようだ」

 

 

このターンのドローステップ。レオンはドローカードを視認するなり目の色を変える。彼に「我が魂」とまで呼ばせるカードは、この世でたった1枚しか存在しない。

 

 

「メインステップ、手元にいったザクウォーリアを再度召喚する」

 

 

ー【ザクウォーリア】LV1(1)BP2000

 

 

ザクウォーリアは破壊されても何度でも蘇る。再びレオンのフィールドへと帰って来た。

 

 

「そして、マジック「アンタは俺が討つんだ! 今日! ここで!!」を使用。赤のゼノンザードスピリットをデッキの下へ」

「ッ……アロンダイがデッキの下!?」

 

 

レオンの放った1枚のマジックカードにより、ソラのフィールドに佇むアロンダイが粒子化。そのまま消滅し、カードがデッキの下へと戻された。

 

白デッキにおいて、今のようにスピリットを一撃でデッキ下に沈めるカウンター除去カードは多数存在するが、レオンのこのマジックに関して言えば、更なる追加効果が存在して………

 

 

「この効果でBP11000以上のスピリットをデッキ下に送った時、手札にある系統「FAITH」を持つカード1枚をノーコストで召喚、配置、使用する。運命をも覆す、我が魂!!……デスティニーガンダムをノーコスト召喚!!」

 

 

ー【デスティニーガンダム】LV2(2)BP15000

 

 

「これが、デスティニーガンダム」

 

 

光の翼を持つ、超大型のモビルスピリットにして、レオンの魂、デスティニーガンダムが、腕を組み、彼のフィールドへと降り立つ。

 

界放リーグなどの大きな大会に憧れがあったソラ。レオンとこんな形でバトルさえしていなければ、鋭い剣幕など見せず、大いに喜んでいた事だろう。

 

 

「凄いな、ゼノンザードスピリットを倒しつつ、デスティニーを召喚したぞ」

「フ……そりゃそうだ。何せ、レオンなのだからな」

「いや、アルファベットさん、何で誇らしげなんすか」

 

 

ヨッカが何故か鼻の高いアルファベットにツッコミを1つ入れると、バトルはレオンのアタックステップへと移行して行く。

 

 

「アタックステップ。デスティニーでアタック、その効果で貴様の場のアレックスを破壊し、そのシンボル分ライフを破壊する」

「……!」

 

 

〈ライフ3➡︎2〉早美ソラ

 

 

上空に飛び立つデスティニー、手に持つビームランチャーから極太のビームを照射し、地上にいるアレックスを爆散させる。

 

さらに、その爆発の余波は、ソラのライフバリア1つを砕いた。

 

 

「流石に強い効果だね、だけど好きにはさせない。僕のライフが減った時、その数が3以下なら、このマジック、シックスブレイズはノーコストで使用できる」

「!」

「効果によりBP12000まで好きなだけ破壊。コアスプレンダーとザクウォーリアを破壊し、さらにその効果は発揮されない」

 

 

ライフの減少に反応し、ソラは1枚のマジックカードをBパッドへと叩きつける。

 

彼の背後から飛び出して来る6つの火炎弾が、レオンのフィールドに存在するコアスプレンダーとザクウォーリアを焼き尽くす。本来、破壊されれば、ザクウォーリアの効果が発揮されるのだが、今回はマジックの効果により、それは叶わなかった。

 

 

「ハハッ……これで残ったのはデスティニーだけだね」

「フン、デスティニーさえ残れば十分だ。フラッシュ、ミネルバを疲労させ、デスティニーの効果を発揮、自身を回復させる」

 

 

負け時とデスティニーガンダムの効果を発揮させるレオン。

 

これにより、デスティニーガンダムはこのターン中、二度目のアタックが可能となり、残り2つとなったソラのライフバリア全てを砕ける状況が完成した。

 

 

「それも無駄だ。フラッシュアクセル、己械人シェパードール」

「!?」

「これにより、このターンの間、僕のライフはコスト4以上のスピリットのアタックでは減らされない。デスティニーのアタックはライフで受けるよ」

 

 

〈ライフ2➡︎2〉早美ソラ

 

 

ソラのライフバリア前方に展開される、半透明のシールドが、デスティニーの砲撃や斬撃などの全攻撃を遮断する。

 

 

「どう?……これでこのターンは決め切れないでしょ」

「くっ……オレのターン、エンドだ」

手札:4

場:【デスティニーガンダム】LV2

【ミネルバ】LV1

バースト:【無】

 

 

そのターン中は残り続ける、厄介極まりないシェパードールのシールドを前に、レオンは致し方なくそのターンをエンドとする。

 

次は再びソラのターン。握っている2枚の手札の中には、既に新たなゼノンザードスピリットが確認でき………

 

 

[ターン07]早美ソラ

 

 

「メインステップ、アイリエッタとアッシュの【神域】を再び発揮。召喚するゼノンザードスピリットのコストを4下げる」

「またそれか」

「司るは白。百獣ヴァイスレーベをLV3で召喚!!」

「!?」

 

 

ー【「百獣」ヴァイスレーベ】LV3(6)BP18000

 

 

突如として立ち込める猛吹雪、それを一度の雄叫びで掻き消す、気高き機獣、白のゼノンザードスピリット、ヴァイスレーベがソラのフィールドへと足を踏み入れ、レオンと対峙する。

 

 

「……ヴァイスレーベ」

「アッアッア、君にとっては、かなり思い入れのある1枚だろレオン君」

 

 

嵐マコトがレオンにそう告げて来た。

 

レオン自身、こうなる事は覚悟の上でのバトルではあった。だが、今こうして対面していると、指先の震えが止まらない。

 

ヴァイスレーベから流れ出る黒いオーラを見る度に、如何に自分が愚か者であったのかを痛感させられる。

 

 

「あぁ、そうだな。オレの黒歴史の1つだ、だが、オレは今からそれを倒し、過去を乗り越える」

「アッアッア、カッコいい事言うね」

 

 

震える指先を抑え、堂々の宣言をするレオン。

 

そして彼を、その宣言ごと噛み砕かんと、ヴァイスレーベを操るソラのアタックステップが幕を開ける。

 

 

「アタックステップ、ヴァイスレーベでアタック!!……このアタックは可能ならブロックしなければならない」

「……」

「君のデスティニーはBP15000、対して僕のヴァイスレーベは18000。この勝負は貰った!!」

 

 

雄叫びを上げながら、デスティニーの元へと駆け抜けていくヴァイスレーベ。このまま放っておけば、デスティニーはヴァイスレーベによって破壊され、さらにレオンはライフとミネルバをも失ってしまう。

 

当然、そんな状況下に身を置く訳にはいかない。レオンは過去の異物であるヴァイスレーベを屠るべく、手札にある1枚のカードをBパッドへと叩きつける。

 

 

「フラッシュマジック「アンタは俺が討つんだ! 今日! ここで!!」を使用!!」

「ッ……2枚目!?」

「コレにより、白のゼノンザードスピリット、ヴァイスレーベをデッキ下へ」

 

 

まさかの2枚目の除去カード。ヴァイスレーベはたちまち粒子化してしまい、先のアロンダイと同様にデッキの下へと送られる。

 

 

「さらに追加効果だ。BP11000以上のスピリットを戻した時、手札にある系統「FAITH」を持つカード1枚をノーコストで召喚、配置、使用する。パイロットブレイヴ、シン・アスカをノーコスト召喚し、デスティニーと直接合体!!」

 

 

ー【デスティニーガンダム+シン・アスカ】LV2(2)BP20000

 

 

デスティニーガンダムは、モビルスピリット専用のブレイヴ、パイロットブレイヴと合体し、その力をさらに増加させる。

 

 

「……ターンエンドだよ」

手札:2

場:【アイリエッタ・ラッシュ】LV2(5)

【アッシュ・クロード】LV2(5)

手元:【己械人シェパードール】

バースト:【無】

 

 

レオンの強烈なカウンターカードにより、攻め手を失ったソラは、すぐさまそのターンをエンド。残りライフ2の状態でターンを明け渡す。

 

 

「なんて子なの、この局面でゼノンザードスピリットを糧にして、デスティニーガンダムを強化させるなんて」

「これならあるぜお嬢。獅堂レオンなら、今の坊ちゃんにも絶対勝てる!!」

 

 

オーカミと三度目の激突をした直後から止まらぬ、獅堂レオンの急成長。

 

今の彼の強さなら、必ず坊ちゃんを救ってくれると、フグタは微かな希望を抱きながら、そんなレオンのターンが巡って来る。

 

 

[ターン08]獅堂レオン

 

 

「メインステップ、デスティニーとミネルバのLVを最大までアップ。そしてアタックステップ、我が魂、デスティニーでアタック!!」

 

 

LVが最大の3まで上昇し、ブレイヴとの合体と合わせてBP28000にまで及ぶデスティニー。

 

さらにこの瞬間、合体したシンの効果も発揮されて………

 

 

「シンの【合体中】アタック破壊時効果、デッキ上1枚をオープンし、それが系統「ザフト」「FAITH」を持つカードなら、召喚、配置、使用できる」

 

 

アタック直後に、一筋の閃光と共にカードを引くレオン。そのカードを視認するなり、それをBパッドへ叩きつける。

 

 

「オレが引いたのは、創界神ネクサス、ギルバート・デュランダル。よってこれを配置する!!」

 

 

ー【ギルバート・デュランダル】LV1

 

 

「配置時の神託。対象カードは3枚、よってコアを3つ追加する」

 

 

止まらない豪運、止まない轟音。

 

この圧倒的優勢な状況から、さらに追い討ちをかけるように、レオンは絶対王者だと言わしめた、かつての引きの強さを取り戻して行く。

 

 

「貴様のライフは残り2つ。それに対し、我が魂のシンボルもブレイヴとの合体により2つ……コレで決める!!」

「……」

 

 

ダブルシンボルとなったデスティニーガンダムの手に持つビームランチャーから、再び極太のビーム攻撃が照射される。

 

ソラがこれを諸に食らえば、そのライフは0となり、レオンの勝利となるが、果たして…………

 

 

 






次回、第45ターン「最凶のゼノンザードスピリット」



******


今回、文字数の関係で途中で話を切らざるを得ず、やむなくサブタイトルを変更致しました。
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